「正直えーりんって重いよね」
「ゆかりんもたいがいだけどな」
輝夜がそんな会話を耳にしたのはほんの偶然だった。
たまたまイナバたちの部屋の前を通りがかったときに聞こえてきたのだ。
(えーりん、そんなに太ったかしら?)
思い返すも、輝夜の脳裏には昔から完璧なスタイルだった永琳しか浮かばない。
イナバ達の単なる観察不足だろう、と結論付けて気にしないことにした。
それが、始まりだとも気づかずに。
「えーりんにかかりっきりで最近寝不足だよ」
「俺もゆかりんに……」
(え……?)
次に永琳の噂を聞いたのは、それから三日ほど経ってからのことだった。
場所もこの間とおなじイナバの部屋。
それよりも大事なのは、
(永琳が、イナバにかかりきり……?)
そういえば最近永琳は忙しくて自分に構ってくれない。
研究に熱が入ると相手をしてくれなくなるのは昔からだったが、
(研究じゃなく、イナバに?)
これは、ひょっとして。
いや、しかし自分と永琳とは深い絆で結ばれた仲だし。
輝夜は頭の中をぐるぐると回る考えに押しつぶされそうになりながら部屋に帰っていった。
三度目は、偶然ではなかった。
よく考えてみれば、自分の気づかないような永琳の変化にイナバが気づいているのがおかしいのだ。
そう、自分よりも近く、それこそ抱いてでもいない限りは……。
そう気づいた輝夜はあの部屋を監視することにした。
てゐを抱き込んで手に入れた外の世界の盗聴器。
それをあのイナバたちの部屋にセットさせたのだ。
もし、永琳が自分以外と。
いや、でも永琳は自分と永遠を誓ってくれたじゃないか。
二つの思いに板ばさみになりながらも入れたスイッチ。
そこから聞こえてきたのは、今一番聞きたくなかった声だった。
「さあ、はじめましょうか」
永琳が、なぜ、イナバの部屋に?
「ゆかりんがくたくたになるまでやりましたから自信ありますよ?」
「あら、本当?じゃあ楽しみにしているわ」
そんな、まさか。
「自分もしっかりやりましたよ?」
「それじゃあ結果で示して頂戴?」
複数で、なんて。
自分でも意識しないうちに、輝夜は部屋を飛び出していた。
スパーン!!
「永琳!わたしというものがあり、なが、ら……?」
襖を開けて輝夜が見たのは。
常に無い激しい動きをする輝夜に呆然とする永琳と、
「えーりんの物理化学」
「ゆかりんの有機化学」
を持ち込んで問題を解いている、二匹のイナバだった。
これでちょっとはえーてる臭が収まるといいんだけどね。~因幡てゐ~
自分は著者名で教科書を呼んだことはあまりないですね。
あと、これじゃ余計にえーてる臭が酷くなるんじゃwww
うちの大学だと生物学の教科書のことをレーブン&ジョンソンって呼んでますし
えーてる臭拡大中(化学的な意味ではなく)
ちなみに文系の私は教科書のことを本と読んでいます、はい。
けど、教科書のことはよくわかります。
理系の文化かもしれませんが、有名な先生の本でかつ定番の書だと著者名の方で呼ばれることが良くありまたね。確かにアトキンスの物理化学、使ってました。でかくて重いんですよねぇ、なつかしい。
おもしろかったです。