こぁちぃが届ける幻想郷ニュース作者: 地球人撲滅組合

※壊れが苦手な方は貴方自身のために回れ右

紅魔館の大図書館の隅っこに存在するラジオ放送局、『スタジオヴワル』。
ここは、紅魔館に勤める妖精メイドや幼生メイド、夭逝メイドなどの魅力溢れる世間話を、
小悪魔がそのキュートかつヘビーなデビルイヤーで残さずキャッチ、そして原稿にして幻想郷に発信するラジオ局なのだ。
番組は12日の木曜日の深夜11時から始まる、と、けっこう不定期。
ちなみに、幻想郷内にこのラジオを聴いている者が皆無なのは周知の事実。

オープニングテーマ『割り箸が綺麗に割れて、なんか残念』を流しながら、小悪魔はマイクのスイッチをONにした。

「えー、みなさん、こんばんは。盆栽に勤しむ素敵なお父さん、こんばんは。
恋をする時間もないほど暇な毎日を過ごしている妖精メイド諸君、こんばんは。
叶わない恋を前に、胸の張り裂ける思いを抱く少女諸君、こんばんは。
もしくはこれからキャッキャうふふな夜を迎えようとしている少女諸君、お幸せに。
うちから奪った本を扇風機に当たりながら読んでいるであろう魔理沙ちゃん、
間違って洗顔フォームで歯を磨いて、今夜寝るまでげんなりすればいいのにね。
全世界のみなさん、こんばんは。魔界のお母さん、私は今シアワセです。
12日の木曜日の夜と言えば、そう、確かな情報と爽やかな汗を届けるニュースタイム、
『今夜も一緒にこぁこぁここぁ』の時間です。どうぞお付き合いくださいな」

長い台詞を言った後なので、ほふぅ、と一呼吸。
それから、ニュース原稿の山から、適当に選んで目を通す。

「最初のニュースは、スポーツの話題から。
マヨヒガで行われている、猫だらけのスポーツ祭典『お燐ピック』の最新ニュースです。
陸上競技を一通り終え、今日から水泳の部に突入したお燐ピック。
韋駄天の橙選手と灼熱の燐選手、互いに一歩も譲らぬデッドヒートになるかと予想されていましたが、
今日、参加選手全員がそろって棄権。優勝者は決まりませんでした。
明日はシンクロナイズドスイミングが行われる予定ですが、既に選手全員が棄権しています」

小悪魔は、読み終わった原稿をゴミ箱にいれて、新しい原稿に手を伸ばした。

「続いては、人形の森在住の魔法使い、アリス･マーガトロイドさんについてです。
都会派のプライドとオトナのディナーで、精神年齢的に一歩リードしていたアリスさんですが、
今日未明に行われた家宅捜索で、実は小学３年生であることが発覚しました。
よって、アリスさん、明日から赤いランドセルを背負って寺子屋に登校することになりました。
これに対し、アリスさんは今日の夕暮れに記者会見をしました。
『なぜこんなことになったのか、見当もつかないが、特に気にしていない。
でも、魔界学校にいた頃は、頻繁にリコーダーの盗難にあったので、今度は気をつけたい。
それと、誤解されると困るので一応言っておくが、私はロリではない』
とのことです。
アリスさん、明日からの楽しい小学生生活が待ち遠しいですね」

小悪魔は、読み終わった原稿で、お菓子の袋いれを作り、次の原稿を手にした。

「さあ、次のニュースです。
外界に存在する自動車を元に、妖力で走る環境に優しい自動車を目標に、
自動車の開発に着手していた八雲財団が、今日、スーパーカーの開発に成功しました。
特に、藍さんの緻密な計算が今回のプロジェクトを成功に導いたということで、
車の名前は、藍さんの愛弟子である橙さんが『スペシャル藍さまスーパーCAR』と名づけました。
『スペシャル藍さまスーパーCAR』、略して『スペ藍CAR』、現在走行テスト中ということです。
スペ藍CAR、材料費を切り詰めたことから、毛玉以下の耐久力を手にしました。
スペ藍CAR、重量の関係でシートを乗せられず、搭乗者は空気椅子奨励だそうです。
スペ藍CAR、万が一の故障に備え、残機を多めに貯めておくことができます。
スペ藍CAR、道のわずかなデコボコに反応してエンジントラブルを起こすそうです。
スペ藍CAR、雨粒に当たっても被弾扱いになって、残機が減るそうです。
この問題を抱えたまま、財団の八雲紫さんは、友人の西行寺幽々子さん、伊吹萃香さんと共にドライブにでかけました。
現在、この３人は行方不明です。目撃情報があったら、連絡お願いします」

小悪魔は、読み終わった原稿で折鶴を追って、タルタルソースをかけて食べた。
そして、フォークを使って次の原稿を巻き取って、それを手元で広げた。

「幻想郷で最もブナシメジに近い生態系を取っていることで有名な水橋パルスィさんの、
母親のペットに勝手に餌をやったことで全米から激しい罵声と拍手を浴びているチルノちゃんの、
友人の友人の友人の友人の弟子である霧雨魔理沙ちゃんの必殺技である『マスタースパーク』を、
わざマシン化することに成功した天才エンジニア河城にとり、通称『にとちぃ』の隠れファンであるメディスンぽんを、
お豆腐と和えて試食したところ、病院送りになった秋静葉ちゃんの属するサッカーチームの、
スポンサーでもあるプリズムリバー財団の社長のルナサ･プリズムリバー大佐が愛してやまない
究極のおやつ『のびーる半霊』を開発されたことでオーストラリアでは既に信仰の対象となっている、
魂魄妖夢ちゃんのクローン化に取り組んでいる博麗神社地下組織の一員である永江衣玖さんの
行動パターンを解析することを何よりも快楽としている、寺子屋生徒の少年たなか君に、
ウナギを売ったことがあるミスティアさんが、今日、食べられました。２歳３ヶ月でした」

小悪魔は、読み終えた原稿をぬか床に放り込むと、足元から水中ゴーグルを取り出して、かけた。

「見える、見えるぞ！あなたの頭上に死兆星が見える！」

満足したかのように、水中ゴーグルをはずして、次の原稿へ。

「さて、次のニュースですが───」

『　
　　　バタンッ

　パチェ「小悪魔！」
　小悪魔「パチュリー様！？」
　パチェ「もう、こんなところにいたのね」
　小悪魔「ぱぢゅりーじゃまー」
　パチェ「なに泣いてるのよ」
　小悪魔「泣いてましぇんっ、ぐすっ」
　パチェ「なんでこんなところに篭もってるの？」
　小悪魔「だって、だって、パチュリー様がかまってくれないから……」
　パチェ「まったく、甘えん坊さんなんだから。しょうがないわね」
　小悪魔「パチュリー様？」
　パチェ「さあ、一緒に来なさい。お茶の時間よ、話相手になってちょうだい」
　小悪魔「ご、ご一緒させていただきます！」
　パチェ「やっぱり私は、貴女がいれてくれるお茶が一番好きだわ」

　　　ブチッ
』

「失礼しました、今のは私の携帯電話の着信音です。実際の会話ではありません。
第一、パチュリー様は今、お風呂にはいっているので図書館にはいません。申し訳ありませんでした」

ペコリと頭を下げると、小悪魔は再び原稿を読み始めた。

「先日、プリズムリバー財団でちょっとしたハプニングが起きていたことが分かりました。
二層式洗濯機に座ってバイオリンのお手入れをしていたルナサ･プリズムリバー大佐が、
誤って、お尻を脱水層の中にスッポリ。あまりのジャストフィットぶりに、自力での脱出は不可能でした。
メルラン中佐とリリカ少佐が救出活動をはじめましたが、いくら引いてもびくともしません。
誰もが諦めかけたその時、『引いて駄目なら押してみろ』と、天の声が聞こえたので、
２人がルナサ大佐を押し込んだところ、脱水槽が突然動き始めました。
数分後、脱水タイマーが故障し、ルナサ大佐は無事救出されました。
本人は『別になんともないわ』と取り乱す様子もなく優雅な午後を再開しましたが、
メルラン中佐は後に『あれから、姉さんがドライになってしまった』と周囲にこぼしていたそうです」

ここで小悪魔、靴を脱ぐと、中から次の原稿を取り出した。

「さあ、次はお待ちかね、ドロワーズ千秋楽の勝敗結果です。
ドロワーズ千秋楽とは、土俵の上で普段着の少女２人が、様々な勝負を繰り広げ、
技のキレと露出度を競う、スペルカードルールに取って代わった新しいスポーツです。
今日１番の目玉であった、連勝記録を伸ばしているチャンピオンのレミリアお嬢様と、リリー･ホワイトの勝負ですが、
試合開始早々、お嬢様がリリーのドロワーズを瞬く間に脱がし、圧倒的な優位に立ちました。
奪ったドロワを高く掲げ、挙句の果てに頭に被る、とやりたい放題のお嬢様でしたが、リリーがここで
『そうか、つまり君はそういうやつだったんだな』
と、痛恨の爆弾発言。レミリアお嬢様は惜敗しました。
その他の試合の結果です。
魂魄家の師弟対決となった妖夢ちゃん vs 妖忌たんの戦いは、
『ジジィが脱いでも何もおもしろくない』という圧倒的な世論パワーから、妖夢ちゃんの圧勝。
すっかりドライになったルナサ大佐 vs 天才エンジニアのにとちぃの戦い、
序盤から両者マシンガンをぶっ放し、PK戦にもつれ込んだ末、ルナサ大佐がタッチの差で勝利。
さすらいの勇者、冴月麟しゃま vs プリズムリバー財団影の支配者、レイラ･プリズムリバー総統の戦い、
レイラ総統が彼岸でビザの取得に失敗し、麟しゃま、不戦勝で初勝利を収めました。
戦いの後、２人は電話で会談、公式グラフィック獲得を目指して同盟を結んだそうです。
素敵な美脚と短いスカートで多くの人妖をとりこにした咲夜さんと文ちゃまの戦いでは、
激しい戦いの中で、鉄壁のスカートの中にたたずむ聖地をその目で見ようと観客たちが大奮闘、
土俵の上に寺子屋生徒の少年たなか君が仰向けに滑り込み、両選手に何度も踏まれました。
このハプニングにより、試合は中止。寺子屋生徒の勇気ある少年たなか君は病院に運び込まれる途中、
『片方は純白で、もう片方はクマちゃん』というメッセージを残していたことが明らかになりました。
ドロワーズ千秋楽本部では、どっちがクマちゃんだったのか千人体制で捜査していくことにしています」

原稿を読み終えると同時に、小悪魔の足元の床がパカっと割れて、新しい原稿が飛び出した。

「あっと、臨時ニュースをお伝えします。
八雲財団の八雲紫さんが試験中のスペ藍CARを無断で拝借、
友人とドライブに出かけていた問題で、新しい情報がはいってきました。
スペ藍CARは、限りなく平坦な道を走行中に、その場を飛んでいた蚊と正面衝突し、爆散しました。
蚊に怪我はありませんでした。
一方、スペ藍CARに乗っていた３人は、無免許運転だったということで、免許取得の勉強をはじめました。
この事件の捜査は地霊殿のさとり刑事が進めていくということで、今後の進展が注目されます」

最後の原稿も読み終わった。
小悪魔は一息ついて、いよいよ番組の最終コーナーに突入した。
原稿なしのぶっつけ本番である。

「さあ、最後のコーナーとなりました。パチュリー様予報の時間です。
このコーナーでは、私の集めたパーフェクトなデータと、愛くるしいパチュリー様への愛の力で、
パチュリー様のパジャマの柄をばっちり予想していきます。
えー、現在、パチュリー様は妹様と一緒にお風呂にはいっていますが、今夜はきっと水玉でしょう。
一週間のパジャマ予想です。
今週は比較的穏やかな展開となりそうですが、
土曜日にはマーガトロイド邸で泊り込みの家庭教師をするので、紫のネグリジェでしょう。
しかし、翌日の日曜日は、ホームシックになっていると思われるので、ウサちゃんで決まりでしょう。
ちなみに、パチュリー様のウサちゃんパジャマは一般公開されていないので、見ることは出来ません。
でも私だけ例外なのです。見ても問題ないのです。見放題かつ独占です。生きているって素晴らしいですね」

ちょうどその時、放送終了時間の訪れを示すタイマーが鳴った。
小悪魔はEDテーマ『貴女の眼鏡にソイソース☆』のテープをかけた。

「おっと、今夜はこの辺で番組終了です。
この番組は、可愛いデビルウィングで明日に羽ばたく、キュートでハイカラな小悪魔がお送りしました。
それでは皆さん、また次の12日の木曜日にお会いしましょう。じゃあね～♪」

ブチッ

この番組は、小悪魔の自腹のみでお送りしました。

　

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