何か良いことはないか、なんて、ちょっとやる気のないことを考えてみる。
はぁ。何でセンチなのかしら。お茶がいつもと違うからかしら。
そんな風に溜め息でお茶を冷ましているとフランが部屋に入ってきた。
「お姉様」
「なにかしらフラン」
ストレートの紅茶を味わう気分で、ティーカップに並々注がれた玄米茶を啜る。少しも紅茶の雰囲気は味わえなかった。
いったい咲夜は何を間違えてこれを淹れたのだろう。今日の注文はカプチーノだったというのに。
「あのね?」
「なぁに?」
流し目の練習をしてみた。しかし妹は私の目を見ていない。
ショックだわ。
「あのねっ……子供の作り方なんだけど」
「なんかつい最近話題にしたような」
「あの後本調べたの」
「余計なことを」
「なんか云った?」
「自分で調べることは大事よねフラン。賢い子だわ」
「えへへ」
危ない。本音で姉妹愛をブロークンさせてしまう所だった。
「あ、そうそう。それでねっ!」
「え、えぇ。何?」
少し気圧された。
「どうもね、キスじゃないみたいなのよ!」
「ウッソダー」
しまった、覆い隠した本音がポーカーフェイスを通過したら抑揚まで消えてしまった。
「それがねっ!」
良かった、興奮してたから気付かなかったみたいね。
「どうもなんかすっごい儀式があるみたい!」
「へぇ、すっごい儀式ねぇ」
「うん!」
姉はとても聞きたくないわ。
「でもどういうのかは良く判らなかった」
「そう。残念ね」
よっしゃ! よくやった私! 箱入りに育てた甲斐があったわ!
「パチェに聞いたら黒魔術だって云ってた」
「……うん、ちょっとお姉さん黙秘して良いかしら」
あいつ確実に判ってて黒魔術だって云ったわね。
「お姉様、儀式知ってる?」
「少しも欠片も微塵にも存じておりませんのことよ」
「残念……」
フラン。あなたにはまだ早い。もう少し待ちなさい。そう、えっと、あと千年位。
「パチェがね」
「え、あ、なにかしら」
ちょっと未来に思いを馳せすぎたわ。
「お姉様と一緒なら、その儀式の本読んでも良いって」
「フラン。そろそろティータイムだわ。お茶請けはショートケーキとプリンのどっちがいいかしら?」
「両方!」
「迷わないわね」
「うん!」
「それじゃ食堂に往きましょう」
「うん!」
パチェのプリンは没収と。
誤字報告
箱入りに育てた価値→育てた甲斐
ではないでしょうか
>玄米茶
咲夜さんww
いや、健康にはよさそうだけどw