こんにちは!大妖精です。
実は今日、湖の周りを散歩していたら、とっても怖い事が書かれた紙を拾っちゃったんです。
「(X-5)+(X+3)=X^2-5X+3X-15=X^2-2Xだとおもいます」
怖いでしょ?え、何が怖いのかさっぱり分からないって?
だって、こんなに難しい問題、私は今まで見たことありません。足し算や引き算は、前に紅魔館の門番さんに習いましたけど。
今は掛け算を学んでいます。九九難しい。7の段が鬼門。
そんな私が、こんな難しい算数の問題を見たら、そりゃあ怖いです。何ですかXって。何でわざわざ数式に英語なんて使うのでしょうか。
それに、算数というのは、魔女に必須なスキルだというのも聞いたことがある気がします。
もしやこれを書いたのはすごい魔女で、この数式は重要な魔法の一部だったりするのでしょうか。そして、その魔法を完成させられると困る誰かが、こっそり魔女の家からこの紙を盗み出して、ここに捨てたりしたのでしょうか。
どうしましょう。
とりあえず、友人のチルノちゃんに相談してみようと思います。あんまりアテにはならないですけど。
~数刻前~
「出しやがれ、ちくしょー!!」
「うおおお、出せー!」
湖のすぐ側に生えている木の枝に、大きな檻が2つ吊り下げられている。
1つに入っているのは、永遠亭の薬を盗もうと目論んだ男。
もう1つに入っているのは、毎度おなじみの氷精チルノ。
2人は、檻の中で口々に不満の怒号を上げていた。
「はいはい。そんなに言わなくても、やることやればちゃんと開けてあげるから」
そう言ったのは、湖の傍らに立つ永琳。その手には、1本の鍵が握られている。
「この野郎、何で俺がこんな目に会わなきゃいけないんだ!」
「盗人さん、貴方は感謝するべきよ。永遠亭で盗みを働く人なんて、普通なら即刻この世から消えてもらいますもの。それが、姫の気まぐれで、怪我の一つもなしに助かるチャンスが生まれたのですから」
「あたいは何にも関係なーい!!」
「ごめんねチルノ、姫の命令で、ちょっとだけ付き合ってほしいのよ」
事の顛末はこうだ。
最近、人里で流行りの「永遠亭印の万病薬」という薬がある。風邪も虫歯も見る間に治すという優れものだ。この薬の噂を聞きつけた男は、永遠亭にかかる患者を装って、大量に盗み出そうとした。
だが、当然すぐ兎たちに取り押さえられてしまい、もう命はないものと思われた。そこに現われた輝夜が、ある提案をするまでは。
輝夜の提案というのは「幻想郷に住む、人ならざる者と勝負をして、勝てば今回の件は見逃す。負ければ死んでもらう」というものだった。そこで永琳が勝負に適当な場所と適当な者を見繕い、現在に至っているというわけだ。
相変わらず怒声を上げる2人を見ながら、永琳がにこやかに言う。
「これから貴方たちには、ある問題を解いてもらいます。早く解けた方は檻を開けてあげます」
「問題だと?勉学勝負というわけか」
「ええ、その通りよ。もし普通に闘ったら、貴方が凍らされて即終了。それじゃあんまりでしょ?」
「永琳、そ、その・・・解けなかった方は?」
「・・・」
無言で微笑む永琳。二人はごくっと唾を飲み込んだ。
「へ!よ、妖精なんかに負ける訳がないぜ!」
「うう、あたいべんきょーは苦手だよお・・・」
強がる男と、弱気なチルノ。
永琳の傍らに立っていたてゐと鈴仙が、それぞれ問題の書かれた紙を2人に渡す。
「それじゃあ、勝負を開始します。始め!」
永琳の合図をきっかけに、2人が問題に目を通す。
そこには、因数分解の基礎となる問題が、1問でかでかと書かれていた。
(うげー!何じゃこりゃ!ちくしょう、子供の頃、もっとしっかり勉強しておけばよかった・・・)
それを見て、早くも根をあげる男。その男がちらりと横を見ると、そこには必死な表情で一心不乱に問題を解くチルノの姿が。
(こ、こいつ、勉強苦手なんじゃないのかよ!?)
慌てて自身も問題を解こうとするが、焦っているのと基礎が出来ていないので、全く思うように進まない。
焦燥や苛立ちばかりが先にたち、とうとう男の手は止まってしまった。
「えーりん、できたよ!」
そうこうする内に、チルノが先に問題を解き終えた。
それを受け取って、正否を確認する永琳。やがてにっこりと微笑み「この勝負、チルノの勝ち!」と言い放った。
「やっぱり、あたいったらさいきょーね!」と喜色満面なチルノ。その横で、顔面蒼白な男。
檻から出たチルノは男に「ばーかばーか!」と罵声を浴びせながら飛んでいった。
残された男は、既にこの後何をされるか分かっているようで、魂の抜けた表情をしている。
「さて、負けた貴方には・・・」
「い、嫌だ!死にたくない!助けてくれ!」
男は、巨大なはさみを持った永琳が檻に近づくと、さっきまでと一転し、命乞いを始めた。
「ふふ、妖精なんかには負けないんじゃなかったのかしら?」
あくまで微笑を浮かべたまま、はさみをじゃきじゃきと開閉し、徐々に檻へと近づいていく永琳。
「そ、それは・・・ああ・・・ち、近づくな!・・・うわああああああ!!!」
ばしゃりという大きな音をたて、檻はすぐに見えなくなった。
~再び現在~
「ねえ、チルノちゃん。湖の側でこんな紙を拾ったんだけど、これ何だと思う?」
「ああ、それ、さっき「ぬすっと」とかいう変な名前のやつとべんきょーしょーぶしたとき、あたいが解いた問題だよ。えーりんったら、落としていっちゃったのね」
「え、嘘・・・」
「師匠、本当にあの男を殺しちゃって良かったんですか?」
「今まで盗みを働いたやつで、半殺しになったのくらいはいたけど、殺したやつはいないでしょ?」
「良い訳無いわ。本当に殺しちゃったら人里の守護者がうるさいし」
「え?でも、あの状況じゃ助からないんじゃ」
「あの檻は、水に濡れるとほんの数秒で、格子が外れる仕組みになってるの。だから大丈夫よ。あれぐらいやっておけば、もう二度と盗みを働こうなんて思わないでしょ?」
「はい、まあ、そうですね・・・」
(あの男、ちゃんと泳げたのかな・・・)(というか、永琳はチルノが負ける可能性、考えてなかったのかね?)
「もし泳げなかったとしても、その辺でもがいてれば、妖精たちが助けてくれるでしょ。あと、チルノは結構出来る子よ。ただ、一つの物事に集中すると他が見えなくなるから、馬鹿っぽく見えちゃうだけなのよ」
(地獄耳!?)
ちなみに盗人は、自力で陸に上がっていた。そして永琳の目論見どおり、もう二度と盗みなぞ働かないと心に誓ったそうな。
幻想郷は今日も平和である。
というオチがあったほうがスッキリすると思います。
次回作も期待しています。
(X-5)+(X+3)の本当の答えは2X-2だって慧音先生が言ってましたよ~
だって因数分解は()と()の間に+は入らないぞってなぜかわからないけど黒板に頭突きしながらしゃべってました~
(X-5)(X+3)を計算して答えを出すのは因数分解ではありません
展開といいます
X^2-2X-15を↑の式に直すことを因数分解といいます
ってけーねがいってた
内容については、むしろx^2+9x+20=0のときxは-4か-5になるくらい解かせてもよかったと思う。