暗く、淡い月光の夜には
夜雀の歌が響くという
もし、そんな歌声を聞いたならば、
人は鳥目にされ、聞こえるもののみが助けとなる
だが、聞こえるのは夜雀の歌だけ
そうなれば最後、人間は襲われてしまう
人里の生まれなら何度聞かされることであろう、妖怪の話である
要は夜道を一人で出歩くなということだ
しかし、そんな話に気も止めず、夜遅くに一人で夜道を歩く若者がいる
大体は無事に帰ってくるが、まれに姿を消すものがいる
それも教訓のひとつとして聞かされていた
姿を消した人間がどうなるのか、それは分からない
ある日、そんな私もとある事情で一人で夜道を歩くこととなった
もちろん気は進まない
しかし大部分は無事に済んでいるという事実は勇気をくれた
だいじょうぶ、なにもおきない
そう思うほど不安は募る
そんな不安を和らげるかのような歌声が、どこからか聞こえてきた
やや激しく、一人でいる寂しさを消してくれるような歌声
気がつけば、私は目がほとんど見えていなかった
歌しか、聞こえない
歌声はだんだんと近づき、力強さを増す
私は、夜雀に対する恐怖とその歌声の美しさでおかしくなりそうだった
姿を消したものがどうなるかは分からない
しかし、今知った気がした
妖怪とは、そういうものだった
歌声は目の前で止まり、私に飛びかかった
もう 歌すら聞こえない
歌しか聞こえない→歌すら聞こえないで夜雀の恐怖が