朝──目が覚めたら、愛しい彼女の顔がありました。
つい嬉しくなって、そっと起こさないように注意しながらもほっぺにキスを。
「……んっ……。」
そんな可愛らしい声とともに身動ぎする文様。
そう、何を隠そう私こと犬走椛は、文様の腕枕に、文様自身を抱き枕にするというこの上ない幸福の真っ只中に居たりします。
文様は自由奔放な方です。でもその割には周りに流されやすかったり……だからこの度のゴールインも、結局私が押し切ってしまいました。
「ゴールではありませんよ。これは寧ろスタートです……私と、椛の。」
「すいません……ひょっとして私、声に出てました?」
余りの気恥ずかしさに、思わず謝ってしまう私。
でも文様は静かに首を振られました。
「そんな事で謝っていてはきりが無いですよ。私達はもう“つがい”なのですから……。」
嬉しすぎる言葉に、顔の火照りを感じてしまいます。
それでも私は、続く文様の甘いお言葉を決して聞き漏らしたりはしません。
「貴女は私の物であり、私は貴女の物でもある。二人の間に、最早遠慮も気遣いも要りません……。」
本当に真剣な眼差しに、ついついうっとりとしてしまう私を、誰が咎められましょう。
「だから私もはっきりと言わせてもらいましょう…………この首輪、いい加減外して貰えませんか?」
「それは駄目です。文様の周りから余計な虫が消えるまで、それは戒めであり──」
愛しいその首もとに填められた首輪をそっと一撫で。
「はははは…………。」
そんな乾いた笑みを浮かべたって駄目なものは駄目です。
「──私からの愛の印なんですから。」
望 む と こ ろ だ