「アリス、居るんでしょう?」
霊夢がアリス邸前にて叫ぶが、返事は無い。
窓から灯が見えるので、居ないことは無いだろう。つまりこれは、無視されている。
「せっかくこんな夜に、わざわざ来てやったのに……そんな態度とは良い度胸ね」
ふふ、と妖しい笑みを浮かべ、ゆらりゆらりと扉に近付く霊夢。
扉に両手をくっつけて、力を込める。良く見ると、手のひらと扉の間に、スペルカード。
「夢想――」
「あら、霊夢」
「ぶはっ!?」
突然扉が開かれて、鼻をぶつける霊夢。残念ながら『夢想ぶはっ!?』というスペルは存在しないため、発動しなかった。
顔を押さえ、俯いて唸っている。痛かったようだ。
「あー……大丈夫?」
「痛いじゃない!?」
「ごめんなさいね。で、こんな時間に何の用かしら?」
「とりあえず中入れてくれない?」
霊夢が中へ足を踏み込もうとするが、
「さようなら」
「ちょ!?」
扉が勢い良く閉められる。だが、霊夢が扉の隙間に足を入れたため、完全には閉まらなかった。
「っ~!? いっ……」
「そりゃあ、痛いわよね。大丈夫?」
勢いが強かったため、霊夢の足に伝わる衝撃は尋常じゃなかった。
霊夢が珍しく涙目になっているのを、アリスは見た。
「何で、閉めたのよ?」
「いや、嫌な予感がしたから。主に、霊夢を家に居れたら厄介なことになりそうだという予感」
「失礼ね! 入れなさいよ!」
「嫌よ。帰りなさい。もしくは来た理由を言いなさい」
「うっ……」
霊夢はさっきも来た理由を誤魔化した。アリスはそれを見逃さない。何か企んでいるのではないかと、疑っているのだ。
「酷い……アリス」
「へ?」
「私、アリスの家に入ろうとしただけなのに……うっ、うぇ……」
「ちょ、霊夢!?」
霊夢が瞳をじわりと滲ませていた。袖で涙を拭い、子どもみたいに泣いている。
アリスにとって、これは予想外すぎた。
「それなのに、疑ったり……足も痛いよ……うぇぇぇぇん!」
「あ、ちょ、泣かないでよ! あーもう! ほら、中入って!」
大声を上げて泣き始めた霊夢を、アリスは大慌てで家に入れた。
「かかったな、馬鹿め!」
物凄く妖しい笑みで、目を光らせる霊夢。
「え? ってきゃあ!?」
思い切りアリスを押し倒す。
突然のことに、対応出来ないアリスは仰向けに倒れた。そのアリスの腹部に、馬乗りをする。
「いたた……霊夢、あんた泣いてたんじゃ!?」
「私があれくらいで泣くと思う?」
「だ、騙したわね!」
「騙しては無いわよ。足は痛かったわ」
「あ、ごめん……」
押し倒されたまま、謝るアリス。お人好しな性格だ。
「一つ、お願いを聞いてくれたら許してあげる」
「お願い?」
霊夢からの聞き慣れない単語に、眉をひそめる。
霊夢は笑顔だが、何を考えているか全く分からない。
「そ、お願い。今からでも良いから、宴会に来て」
「嫌よ」
「あら、即答?」
「あんたがここに来たのは、それが目的?」
「そうよ」
アリスは露骨に嫌そうな顔をする。
霊夢がアリスの元へ訪れたのは、アリスを連れて来るためだった。
最近、アリスが宴会に参加しなくなっていたから。ただでさえ、参加が少ないアリス。今現在も博麗神社で行われているであろう宴会にも、参加していなかった。
それを、霊夢が連れ出しに来たのだ。
「宴会は参加自由じゃなかったかしら?」
「流石に心配するじゃない。ずっと顔見て無いとね」
「あら、霊夢が他人を心配するなんて珍しい」
「私は心優しいからね」
「本音は?」
「宴会後の後片付け、手伝ってくれるのはアリスだけだから」
「そんなことだろうと、思ってたわ」
はぁ、と溜め息を吐くアリス。
そして、霊夢らしいなぁ、などと考えていた。
「改めて訊くわ。私のお願い、聞いてくれる?」
「答えは変わらないわ。嫌よ」
普段あまり見せないような、鋭い目付きで霊夢を睨み、言った。
しかし、霊夢はニヤニヤとした笑みを浮かべたままだ。
アリスにとっては、何がおかしいのかと苛々する。
「何がおかしいのよ?」
「アリス、あんた今の状況を理解してる?」
「状況?」
未だに状況は、霊夢がアリスに馬乗りだった。
しかし、これくらいなら妖怪であるアリスにとっては、そんな障害にはならない。
力任せに起き上がったしまえば良いのだから。
「残念だけど、こんな状況一瞬で逆転出来るわよ」
「へぇ、やってみなさいよ」
「言われなくても、ね!」
力を込めて、起き上がろうとするが――
「我が霊夢に代々伝わる奥義! くすぐり!」
「ひゃぁ!?」
腋に手を差し込まれて、くすぐられた。力が抜け切ってしまう。
「ほらほら、くすぐったい?」
「やっ! んっ……にゃ、くすぐったく……ふわぁ、無いわよ!」
「意地っぱりねぇ」
「大体、博麗ならともかく……んっ! 霊夢って、代々じゃないでしょ! んゃ、そこ、くすぐった……」
「細かいこと気にしたら大きくなれないわよ。胸的に」
「あ、あんたよりは……くっ、んっ、ふ……あるわよ!」
確かにアリスの胸は霊夢より断然あるわけで。というより、霊夢が小さ過ぎるだけなのだが。
アリスの今の言葉は、霊夢を激しく怒らせた。
「ふ、ふふ……私を怒らせたわね?」
「ひっ!?」
「この胸か!? 私を見下すのはこの胸か!?」
「やっ! ちょ、どこ触って、やぅ……」
霊夢は狂ったようにアリスの胸を右手で揉みしだきながら、左手はくすぐる。
「ちょ、くすぐった……あはは! んっ、みゃぅ……ん、あはは! くすぐったいって! わ、私の負け!」
「なら宴会来てくれる?」
「それは……」
「この胸が! くすぐってやる!」
「やっ!? わ、分かったから!」
「よし、なら後3分で許してあげる」
「えっ!? やぁぅ……」
結局アリスが解放されたのは、10分後だった。
笑いすぎて、息が荒く、汗で髪が額にくっついているアリス。少しだけ、涙目だ。くすぐりには弱いのだろう。
「立てる? 大丈夫?」
「こんな目に合わせた本人が……白々しい」
「でも、心配してたのは実は本当よ」
「え?」
アリスの額に、霊夢は自分の額をぴたりと合わせる。
鼻と鼻がぶつかり、吐息を感じてしまうくらいに近い。
肩で息をしている状態のアリスの熱い吐息が、霊夢にかかる。
「研究も良いけれど、たまには顔見せてくれないと本当に心配するのよ?」
「……ごめんなさい」
アリスが素直に謝ると、霊夢はふわりと優しい笑みを浮かべて離れた。
「さ、行きましょう。みんな待ってるわ」
霊夢が手を差し出し、仰向けに倒れたままのアリスを引っ張って立たせた。
「あんまり飲まないわよ、私」
「良いわよ。後片付け手伝ってくれるでしょう?」
「……そうね、手伝ってあげる」
「ありがと。やっぱりアリスが居ると嬉しいわ」
「まったく……調子良いわね」
額に手をつきながら溜め息を吐くアリス。だけど、口元は緩んでいた。霊夢も笑っている。
二人、手を繋いだまま出発した。
夜空にちりばめられた星屑は、二人を明るく照らしている。
空飛ぶ少女たちを、幻想的に包んでいた。
喉飴さんの書くラブラブは幻想郷一!!!
これはアリアリ、アリ過ぎて霊アリ。
特に胸を揉みしだくシーンで興奮しました。
良いな~この霊アリもっと読みたい!
まぁくすぐられてもいないのにハァハァ悶えましたが
私は霊アリなら糖分120%でもいける!
霊夢とアリスは仲良いと信じてる。
感動しましたー。
したー。
たー。
なんか互いに苦労人な感じがしますw
>>薬漬様
そ、そこまで気に入ってくださるとは……ありがとうございます!
>>まりまりさ様
ありですか! 良かったです。
こういう戯れ合い、良いですよねw
>>4様
泳いで!?
楽しかったので、書けたらまた書きたいです。
>>5様
だから?をつけました。糖分基準が微妙だったのでw
>>6様
ですよね!
仲良さそうですよね。
>>奇声を発する程度の能力様
そこまで!?
ありがとうございましたー。
ましたー。
たー。
糖度をもっと! 甘さがほしいんだぜー
いいぞもっとやれ