こいししちゃったんだ、多分

「こーいーししちゃったんだ、」
「誰とですかぁぁぁ！」



──覚り妖怪とその妹のお話。







「あ、お姉ちゃんおはよ」
「良いですか、よく聞きなさい。そういうのは余りべらべらと言いふらすものではないのです」
「すっごい気持ちよくてさ、寝ちゃったんだ。つい……ねぇ」
「ねぇ、じゃありません。で、誰とそのようなことがあったの？」
「のんびり、お空としてたの」
「(のんびり……お空と……！？)」
「とろけそうに気持ちよくって、ねぇ、つ」
「つい、とは言わせませんよ。そういうのを口癖にしてはいけません。はぁ……こいし。ペットとそんなことをするのは…その……イケナイというか、不純だ」
「だって、お空だってしたかっただろうし」
「しかしそれは許してはいけないの！愛情が行過ぎてしまったのかもしれないけれど……」
「どうして？気持ちよかったし体にいいんだよ？すればするほど元気に」
「にゃぁぁ～！あまりしゃべらないの、こいしっ！はぁ、は……」
「初めは痛いけどね、それがだんだんほぐされていって…」
「て、て、その手は何？やめなさい、こいし！」
「静かに～。あまり声を出したらはしたないって、お姉ちゃんが言ってたんだよ」
「よ、よく聞いてこいし。あなたのことは嫌いじゃない。むしろ愛してる。けど、それとこれとは違うというか……」
「簡単なことだよ。私もお姉ちゃんが大好き。だから……お礼、してあげるんだ」
「だめ！やめてこいし～！」
「しょうがないお姉ちゃんだなあ。じっとしててよ、ちゃんとできないでしょ」
「しょうがなくありませんっ！姉妹でだなんて、禁忌に触れてしまうこと…！」
「どうでもいいよ、そんなこと。大体そんな決まりはないよ」
「よく知らないだけです！いつから、あなたはそうなってしまったの……ねぇ……」
「え、お姉ちゃん！どうして泣いちゃうの……？」

　喉になんとも言えぬモノが詰まる。吐き出せそうにも、飲み込めそうにもない。
一体何が、このすれ違いを生んでしまったのだろうか。

「悲しいのです。この眼よりも、あなたが家に帰ってこないことよりも……あなたが変態になってしまったことが」
「か、悲しいって、どうして？それに変態って何のこと！？」
「どのようなことかわかってないのですね。しかし、他人にそんな理由でいけないことをして、許されることはない」
「一体何に対して怒ってるの？無理やりお姉ちゃんにしようとしたこと？」
「とりあえずその事もです。本分は、他人に無理やりしようとすることがいけないのです」
「すっごい気持ちよくても……？」
「もちろんです。そういうことは、段取りを踏んでから…お互いを理解しあってからするものなのです、そういうことは……」
「分かったよ、お姉ちゃん。これから、人にマッサージしてあげるときはちゃんとするよ」
「よくできまし……えっ？ま、ま……？」
「マッサージされてると、つい気持ちよくなって寝ちゃったりするんだよねー。恥ずかし」

桃色尻取りの二重黒死蝶
短いのはごめんなさい。ありがちなネタなのもごめんなさい。