「輝夜ー! どこだー! 出て来い!」
私、藤原妹紅はあの馬鹿輝夜が恒例の弾幕ごっこの最中に逃げ出してしまったので、探している最中だ。
全く、あの馬鹿は恒例の大事なものというのにどこに逃げたのだろうか。
どこだー! 声は出し続けているも、結局返ってくる声などあるわけもなく、途方に暮れていた。
ちっ、迷いの竹林の中のどこかにいるはずなんだけどな……。
あーもう! 面倒くさい。ここら一帯を燃やしてみようか?
そんな事を考えながらも黙々とあの馬鹿のことを探している。
しばらくすると、居た。
何やら竹を眺めているようだ。
「おい輝夜! 逃げだして何やってるんだ!?」
「うわっ! 妹紅!? 追ってくんな!」
黒く長い美髪を翻し、そのまままたどこかに飛び去っていく。逃げるのだけは早いわね。あいつ。
あいつが去った後の場所を見ると、横に裂けた竹が一つ。
御札が張ってあり、この部分の劣化を防いでいるようだ。
特別な場所なのか?
そんな好奇心を持ち、私はその裂けた竹を除きこんだ。
中に何かあるわけではなかった。
代わりに中を除きこんだときに裏の部分に何か掘られているのがわかった。
『輝夜と出合った竹』
そう、メモ書きを羅列するかのように、ただ単純にそこにそう書かれていた。
あいつは……。
また、あいつのことを探し出す。
いそうな場所といったらあそこぐらいだ。
今度は簡単に見つかった。
最も月がよく見える竹林付近のひらけた場所にあいつはいた。
「相変わらずの満月ね」
そう声をかける。
今度はあいつは驚かずに、さも当然に答えた。
「えぇ。あの時のまま変わらない満月」
「爺さんと婆さんが恋しくなったか?」
「……昔のことには誰にでも執着があるものじゃない? あんたなら良くわかるでしょうが」
そう言われては反論が出来ないな。
元々、昔のことがあったから、この恒例の行事が出来たのだし。
「何も変わらずにはいられないのよ。人は死に、私達は生きる。永遠に」
「……やっぱり、お前はよく分からないお姫様だよ」
とぼけて置く事にした。
――――今夜の満月は一段と綺麗だ。
良い雰囲気してると思います