「まったくよく降るわね」
「もう七月だって言うのにねえ」
本当に最近の長雨はどうかしている。しとしとうざったい。
おかげで買出しに行くにもめんどくさくてやる気にならないし、洗濯物も乾かない。
訪れるものと言えばスキマ妖怪ぐらいなものだ。
「なーんもやる気にならないのよね」
「あなたの場合、いつものことじゃない?」
「うるさい」
ごろごろと畳を転がって紫を蹴る。
行儀よく座布団に座って、私の入れたお茶を持っている。
このくそ暑いのによく熱いお茶など飲めるものだ。
「霊夢の入れてくれたお茶ならいつでも美味しいわよ?」
「心読むな」
「あら、顔に書いてありましたわ」
げしげしと転がったまま蹴りを入れても紫の微笑みは崩れない。
動くとさらに暑くなったので、蹴るのをやめる。
そのままぐでーっと伸びていると、紫が私の足を取って膝の上に乗っけた。
「ほら、膝枕」
「普通逆」
「でも膝ですわ」
紫はそのまま私の足袋を脱がした。
なぜかそれがスキマに突っ込まれていたが、気にしない。
箪笥の中の足袋の量はなぜかいつも変わらないのだ。
「でもほんと、よく降るわねえ」
「もうほんといいかげんにしてほしいわ」
紫が障子から外を眺めたので、私もそちらを向く。
縁側からの見慣れた景色だ。
変わったところといえば、せいぜい蝸牛がやたら多いくらいだろうか。
「でーんでんむーしむしかーたつむりー」
なんとなく口ずさむ。
「おーまえのめーだまはどーこにあるー」
ばたばたと足を動かす。
「つのだせあしだせめだまーだせー」
歌い終わったとたんに暑さが増した。
力尽きて脱力する。
「あの、霊夢?」
「なによ、いいじゃない。なんとなく歌いたくなったのよ」
「ええ、それはいいんだけど、その、他の人の前ではやっちゃだめよ?」
「なんでよ」
「えーっと」
紫は視線をそらし、かすかな赤みを帯びた頬で言った。
「女の子が足を見せるのは、はしたないんじゃないかしら」
膝枕
素足
ばた足
三つが瞬間的に結びついて、私の頭は沸騰した。
ザッと、紫から距離を取る。
巫女服のすそを抑えて、口を開く。
「やらしい」
「いや、私のせいじゃないと思うんだけど」
「やらしい」
「むしろ霊夢がこれから慎みを持ついい機会だと……」
「やらしい」
「……ごめんなさい」
紫が折れたのはわかったが、私はなかなか許す、と言えないでいた。
何せまだ顔は赤いし、体は熱いし。足はまるで火箸のようだ。
私がもじもじしていると、紫もそれがわかったのか、助け舟を出してくれた。
「水風呂」
「えっ?」
「水風呂を用意するから、機嫌、直してくれないかしら」
「……いいわよ」
長雨の日のことであった。
「やらしい」が破壊力ありすぎw
この二人はいいなぁ……一緒に入ったのかこの二人w
「やらしい」の所が可愛らし(ry