朝のうちに干しておいた洗濯物を取り込んでいると、居間のちゃぶ台でうつ伏せになっている橙の姿が目に入った。
寝ているのかと思いきや、よく見ると何かをちゃぶ台の上に広げて、それに魅入っているようだった。
機嫌が良いのだろう。揺れる二又の尻尾が何とも可愛らしい。
ついつい気になって、よく確認しようと両手で洗濯物を抱えたまま居間に上がる。
「あ、らんしゃま! 見てください、これ!」
覗くまでも無く、居間に上がってきた私に気付いた橙が自ら見せてくれた。
「これは……ビー玉だね。」
色取り取りのビー玉たちが丁寧にも包装紙の上に並べられている。
「はい! 綺麗ですよね……。」
どこかうっとりした表情を見せる橙。『そんなものより今のお前の方が断然綺麗だ!』 と、全力で豪語してやりたかったが、止めておく。
再びビー玉に夢中になる橙の横で、洗濯物を畳む事にした私だったが、ふとある事が気になってしまった。
「そういえば……そのビー玉たちはどうしたんだい?」
「人里の駄菓子屋で、みんなでラムネを飲んだんです。それで、」
「まさか……割ったのかい?」
余り想像したくないことだが、確認しないわけにはいくまい。
「はい。そうですけど……?」
「なんて事を……!」
ああっ! なんでもっと早く気付かなかったんだ私は!
「で、でもちゃんと後片付けもしましたよ?」
「そんなことはいい! それよりも怪我はしてないか? ガラスの破片で手を切ったりはしてないだろうな!?」
一人熱くなる私とは対象に、橙は苦笑いを浮かべている。
何か言いたげなようだが、まずは橙の容体を診るのが先だ。
私は洗濯物を放り出し、橙の両手を隈なく診た。
「よかった……。どうやら怪我は無い様だな。橙、良いかい? ラムネからビー玉を取り出すときは瓶の口を焼いて……
はっ……! 駄目だ! 火傷してしまう恐れがある……! こうなったら紫様に頼んでスキマから……。」
「もう! らんしゃま! 大丈夫ですって! やっぱりらんしゃまは過保護すぎます。」
「そんな事はない。私ぐらいで丁度良いんだ。本当の過保護というのは、紫様の事を言うんだ。」
「紫様が、ですか?」
「そうだとも。例えば……そうだな。私が今のお前くらいの時だ。」
そういって私は、ちゃぶ台の上にあったビー玉をひとつ手にとって見せる。
「これくらいのサイズの飴玉を食べるときでさえ、紫様は喉に詰らせぬ様にと、私に砕いて食べさせようとしたんだぞ?」
「それは……確かに……。」
どこか乾いた笑みを浮かべる橙。どうやら如何に紫様が過保護だったかが伝わったようだ。
今では良い思い出なんだが……。
「飴玉がどうかしたって?」
狙ったかの様なタイミングで現れた紫様。
突然の事に、私たちは暫し固まってしまった。
「え、ええ。ちょっと昔話を……。」
ぎこちなくも答えた私だったが、紫様は特段気にされた様子もなく、直ぐに私が持っていたビー玉に気付かれた。
「ふ~ん。あっ、それって飴玉? 懐かしいわね。昔はよく藍と舐めたものだわ。どれ、私も一つ。」
「ゆ、紫様! それはっ!」
静止の声も間に合わず、紫様はちゃぶ台に並べられたビー玉を一つ手にとり、口に運んだ。
「もごっ! なっ、何よこれ、ビー玉じゃない!?」
当然食べられる筈も無く、慌てて口から吐き出す紫様。
「「ぷっ……!」」
「こ、こら橙。くくっ、笑うなんて、失礼だぞ?」
「ぷぷぷっ。さ、先に笑ったのは、らんしゃまの方ですよ。ぷぷっ。」
必死に笑いを堪える私たちだったが、紫様の方が堪えきれず、顔を真っ赤にされてしまった。
「う……うわぁぁぁぁん! ゆゆこぉ~~!!」
泣きながらスキマに消えていく主を見送ったとたん、私たちは腹を抱えて爆笑したのであった。
紫様……すみません。正直、堪りません。
「幽々子様? それは……ビー玉ですか?」
「ええ、そうよ妖夢。貴女にはビー玉以外に見えるのかしら?」
「見えませんが……どうしたんですか、突然?」
「……紫に食べられて、私に食べられ無い物が有る筈ないじゃない?」
「一体何を言って……い、いけません! 幽々子様!!!」
あと、幽々子様wwwwww
紫に食べられて…の所が
食べら無い物になってます。
変に対抗心を燃やすゆゆ様。
慌てるみょんな庭師。
いいねえこのテンポ。凄くいい。ああ、ゆゆ様が羨ましい。
特にゆかりんの可愛さが異常です!
この紫様萌えるw