「脱ぎなさい」
「は?」
自室のベッドで、だらだらしている天子の前に突然現れた紫。そして、問題発言。天子は思考停止中。
動かない天子に、紫が首を傾げる。
「あぁ、分かったわ。自分じゃ脱げないのね。仕方無いわね。私がやらしく……じゃなかった、優しく脱がしてあげる」
「あんたの発言に思考停止してたのよ!」
「おっと……危ないわねぇ」
天子の拳を、余裕で受け止める紫。
拳が封じられたので、回し蹴りを放つ。が、それも簡単に避けられてしまう。
「っと、あわわ!?」
ベッドの上でそんな激しい動きをすれば、バランスを崩してしまうのは当然。
天子は、仰向けに倒れそうになる。慌ててバランスを取り戻すために、紫の腕を掴んだ。
「あ、あらあら」
「ぅ~……って何してんのよ!?」
「天子が引っ張ったんじゃない」
結局倒れ込んでしまった。
仰向けの天子の上を、覆い被さるように乗っかっている紫。天子が紫の腕を引っ張ったせいで、こんな状況に至る。
「とりあえず離れてよ」
「はいはい」
よっこらせ、と呟きながら離れる紫を見て、年寄り臭いなぁと天子は思ったが、あえて言わないでおいた。
「さぁ、脱ぎなさい」
「だから説明をしなさいよ!?」
「あー……水着に着替えて欲しいのよ」
「水着……って何?」
幻想郷に海は無いが、普通水着くらい知っている。
だが、天子は知らなかった。それは、天界に川などが無いからだろう。水着を着る機会が無かったのだ。
きょとんとしている天子に、紫はかなり妖しい笑みを浮かべる。
「水着、知らないのね?」
「うん」
「なら教えてあげる。ふふふ」
「何か笑い方が怖いんだけど……」
「気にしない気にしない」
天子の本能が告げている。「気にしろ、やつは危険だ」と。紫がじりじりと、ベッドに座っている天子に近寄る。
「ち、近寄らないで!」
「大丈夫、怖くな~い怖くな~い」
「ひいっ!?」
目を妖しく光らせ、息を荒げに両手をわきわき動かせる紫。傍から見れば、女の子を襲おうとしている変態にしか見えない。
紫が、ベッドに乗る。天子は蛇に睨まれた蛙のように、動けない。
「お着替えタイムよ」
「ひやぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
少女、(無理矢理)お着替え中~
「やっ……何よ? この服」
「水着よ。スクール水着。外の世界の人間は、これを日常的に着ているのよ」
「ほ、本当!?」
「だから恥ずかしくないわよ」
「う……うん。って、恥ずかしいから出てってよ」
「女同士、何を恥ずかしがることが――あぁ、胸ね。大丈夫、私は胸に障害を抱えているあなたを差別しないわ」
「抱えて無いわよ! 小さいだけで――」
「あ、認めたわね」
「っ!? ぅ~……もう! いいから出てって!」
「はいはい」
少女、お着替え終了~
「ど、どう……?」
幼い脹らみが控え目な自己主張、普段は長いスカートで隠された白い脚が美しい。
見事なスクール水着を着用した天子が、そこに居た。
「う~ん、似合うわねぇ」
「恥ずかしいんだけど……」
「あら、どうして? 外の世界ではこれが私服なのよ? 嘘じゃないですわ、ええ。本当に」
「だって、普段こんなに肌露出したこと無いし……」
「たまには良いじゃない」
「う~……」
「ま、他にも水着って種類があるけど」
「そうなの?」
スクール水着しか種類が無いと思っていた天子は、小さく首を傾げる。その仕草が、小動物のようで可愛らしい。服装はスクール水着だが。
紫は隙間を出現させ、中から様々な水着を取り出した。 天子も少し興味があるのか、それらを物珍しげに見ている。
「ほら、これなんかどうかしら?」
紫が渡したのは、白いビキニ。スクール水着より露出が凄くなる。
「えー……恥ずかしくない?」
「確かに、胸の無い誰かさんには恥ずかしいかもね。残念な結果が目に浮かびますわ」
紫が扇子で口元を隠しながら、そんなことを言う。その挑発的態度に、天子はカチンときた。
荒々しく、紫の手から白いビキニを奪い取った。
「ふん、見てなさい! さっきの言葉を撤回させてやるわ!」
「それは楽しみですわ」
計算通り、と妖しく笑った紫の顔は、扇子に隠れていて見えなかった。
少女、お着替え中~
「だから何で出てかないのよ、あんたは!」
「あ、ばれた?」
「そんな至近距離で凝視されたら、誰だって分かるわよ!」
「まぁまぁ、気にしないで」
「……目付きがやらしい」
「私があなたみたいな貧乳生意気娘に欲情するわけないでしょう。安心なさい」
「よ、欲情とか言わないでよ!」
「あらあら、天人のくせにその程度で赤くなるなんて……」
「う、うるさい! もうー出てってよー!」
「はいはい、分かったわよ」
少女、お着替え終了~
「どうよ!」
スクール水着の時とは違い、露出部分が多く、おへそまで出ている。
驚くまでに白い肌が、触れれば壊れてしまうのではないかというくらい、儚く華奢に見えた。自信満々に胸を張って紫を指差す。
「無い胸を無理矢理張らないの」
「最悪!」
「でも」
「ん?」
「似合ってるわよ。凄くね」
「んなぁっ!?」
微笑みながら笑う紫に、天子は顔に紅葉を散らす。
「自信満々だったのに、何照れてるのよ」
「だって……その、改めて言われると、恥ずかしいし照れるじゃない……」
うーうー呟きながら、俯いている天子。
「そ、そうだ! ゆ、紫は着ないの?」
「は?」
「私だけ着るの、不公平じゃない? 大体何で私に水着を持って来たのよ?」
「純粋な気紛れと好奇心よ」
「なら、私も純粋な気紛れと好奇心で紫の水着姿見たい!」
予想外な展開に、少したじたじな紫。
追い討ちをかけるように、天子が見たい見たいと喚く。
「紫も水着~!」
「嫌よ」
「何でよ!?」
「そんなキャラじゃないですわ」
「私だってそんなキャラじゃないわよ! ほら、着る!」
「あ、ちょ、こら……強引な我侭娘ねぇ、本当に」
「紫の水着姿見れるなら、それでも良いもん!」
少女、諦めお着替え中~
「で、結局あなたは出てかないの?」
「さっきのお返し~。私を追い出したかったら――」
「まぁ良いけど」
「って……ふぇ?」
「女同士、気にすることでもありませんわ」
「ちょ!? ほ、本当に脱がないでよ!」
「天子が見たいと言ったんじゃない」
「私は着替えを見たいわけじゃなくて……あぅぅ、もう良い! 出てるわ!」
「騒がしい娘ねぇ……」
少女、お着替え終了~
「水着何て着るの、何年振りかしら」
「……」
「何で無言なのよ」
紫は水色のビキニ。
その姿は、というかスタイルは、天子とは真逆で、完璧な大人の雰囲気を醸し出していた。
天子は自分の胸をぺたぺたと触った後、溜め息を吐く。
「ぅ~……」
「いや、そんな恨めしそうに睨まれてもねぇ……ってあら?」
「ん?」
紫が天子の方を見て、何かに気付いたようだ。
天子は、何か分からないといった様子。
「天子、紐ちゃんと結んで無いわね? 解け欠けてるじゃない」
「え!? ちょ、触らないでよ馬鹿!」
顔を赤くして暴れる天子。
「あぁ、こらせっかく結んであげようとしてるのだから、暴れない」
「わ、私がやるから大丈夫よ!」
「だから、そんな暴れたら……あ」
紫が肩紐を掴んだ状態で、天子が激しく体を動かした。
すると、どうなるか。
まぁ、幼い脹らみ二つが露になるわけで。
天子は顔を赤くして、フリーズ。
ついでに、完全に緩くなっていた下もするりと脱げた。
ある意味、素晴らしいタイミング。
「えーと……」
流石の紫も、何て声を掛けて良いか分からなくなっている。
頬を人指し指でかきながら、何かを考えている。
そして、紫が必死に考え出した言葉は――
「天子」
「何よ」
「な……」
「な?」
「ナイス未発達ボディよ」
親指を力強く立てて、言った。
滅多に見せない、爽やかな笑顔で言った。
天子の目を見ないで、上半身と下半身の部分を注目しながら、言った。
「くたばれ!」
もちろん、天子の激しい攻撃が開始された。
少女、戦闘中~
「馬鹿! 変態! えっち!」
「不可抗力何だけど、まぁ一言」
「何よ!?」
「ご馳走さまでした」
「っ!? くたばれぇ!」
戦闘終了。
勝者、八雲紫。
「こんな時でも、容赦無いわね……あんた」
「かなり手加減したけど」
「うぐぅ……はぁ、もうお嫁にいけない」
「いくつもりだったのね」
「うるさい!」
「ま、その時は私が貰ってあげますわ」
「……え?」
ゆかてんいいなぁ、ゆかてんゆかてん
ゆかてん、ゆかてん
おいしいのう、おいしいのう。色々な意味で
そしてゆかりんがツンツンデレだとこんなにもニヤニヤするのですね。
ゆっかてーんゆっかてーん、ゆっかてーんてーん。
素晴らしい!!
>外の世界ではこれを日常的に着てるのよ
ふざけるなwww
ゆかてん良いですよね!
>>2様
わふぁ、お疲れ様です。
>>3様
ゆかてん! ゆかてん!
>>4様
おぅ、ありがとうお客さん! 新鮮なうちに全部平らげてくだせぇ!
>>5様
まさかのタイトル通りでしたw
>>謳魚様
こんなゆかりんも良いですよね!
>>7様
日常的に着ていたら町中が凄いことになりますww
それはありがたいです!