※この作品は、本作品集に掲載されている、年寄りの知恵袋さんの『七夕は雨が多いが幻想郷には幼女が多い』に深い感銘を受け、溢れる衝動を抑えきれずに書き上げたものです。
年寄りの知恵袋さん、勝手にこのような作品を書いてしまい、申し訳ありません。これもひとえに、貴方様の幼女魔理沙の尋常ならざる破壊力ゆえですので、どうかご容赦下さい。
それは、今からおよそ十年ほど前のお話。
魔法の森にある洋風のお家に、一人の小さな女の子がやって来ました。
「ありすー、ありすー」
扉をどんどんと叩きながら、女の子は大きな声で言いました。
やがて、ぎいいと家の扉が開き、金髪の女の人が姿を現しました。
「あらまりさちゃん、いらっしゃい。今日はどうしたの?」
「あそびにきたの」
「そ、じゃあお入んなさいな」
「うん!」
まりさと呼ばれた女の子は、それはそれは嬉しそうな笑顔で家の中に入っていきました。
「気をつけてね」
「うん」
女の子は、いつも部屋の敷居につまづいてこけそうになるので、女の人は女の子がこけないよう注意をしつつ、その後に続きます。
「あ!」
案の定、女の子は敷居につまづきました。
すかさず、女の人が女の子の両脇に手を入れ、後ろから支えます。
「もう、だから言ったのに」
「えへへ、ごめんなさい」
女の人に注意をされても、女の子はあっけらかんと笑うばかり。
女の人ははあと溜め息をつきました。
「とうっ」
リビングのソファーに、ぼふんと女の子が飛び乗りました。
「えへへへ」
ニコニコ笑いながら、足をぶらぶらとさせています。
「じゃあまりさちゃん。今日は何して遊ぼうか?」
腰をかがめて、女の子と同じ高さになって、女の人は問い掛けます。
「うーん……」
女の子は、少し考え込む素振りを見せます。
「そうだ、お人形遊びなんてどうかな?」
「んーと……まりさ、おうまさんごっこがいい!」
その女の子の返事を聞いて、女の人の顔色が変わりました。
「え、いや、お馬さんごっこはちょっと……膝が痛くなるし……」
「やーだー! おうまさんごっこがいーい!」
ばたばたと、女の子は手足を力いっぱいに動かします。
「わ、わかったわ。わかったから、暴れないで」
女の人がなだめるように言うと、女の子にまた笑顔が戻りました。
「じゃあありす、おうまさんになって!」
「……はいはい」
女の人は諦めたように、床に四つんばいになりました。
その背中に、いそいそと女の子が乗りました。
「よーし、ありすごう、はっしん!」
「とほほ……」
女の子の威勢のいい掛け声に合わせて、女の人は溜め息をつきながら、お馬さんさながらに部屋の中を回り始めました。
「わーいわーい、ありすはやーい」
「わ、こら、あんまり暴れないで……」
「あはははは。どうどう、どうどうー」
「もう……しょうがないんだから」
……その日一日、そのお家からは笑い声が絶えませんでしたとさ。
「……絶えませんでしたとさ。めでたし、めでたし」
アリスがお決まりの文句で締めると、周囲からは拍手と歓声が沸き起こった。
「相変わらず、アリスの人形劇のクオリティの高さは一級品だわ。ねえ咲夜」
「ええ。この再現度の高さたるや、この幻想郷においても他に類を見ませんわ」
「むきゅ。魔理沙にも、こんな時代があったのね……」
「そりゃあ魔理沙さんは人間ですからね。何十年も変わらないパチュリーさまとは違って。ひひ」
「……小悪魔、あなた最近一言多いわよ」
「ひゃうっ!? すすすいません」
「まあでも、魔理沙さんがこのまま素直に育ってくれてたら、今私がこんなに苦労することもなかったんですよね……」
美鈴ががっくりと肩を落としながらそう言うと、辺りがどっと笑いに包まれた。
「どうもありがとう、アリス。楽しい余興だったわ」
拍手をしながら、一同を代表して感謝の意を述べるレミリア。
「いえいえ。こんなものでよければ、いつでも」
笑顔で、それに応えるアリス。
「ねー、ところで当の魔理沙は?」
キョロキョロと、辺りを見回しながら問うフランドール。
「ああ、あいつなら……」
ニヤニヤしながら、部屋の隅を指差す霊夢。
その先には、ぎゅっと押さえた帽子のつばで両耳を覆い隠し、何かをひたすら耐え忍ぶかのように、壁に向かって三角座りをしている魔法使いがいた。
了
アリス実は根に持ってたのか。
よほど根に持ってたんだね
なんかものっそい危ないセリフにしか聞こえ(ry