マヨイガの朝。
「藍、お腹が空いた。ご飯ちょうだい」
「おや、お早うございます紫様。珍しいですね午前中にお目覚めになるとは。
珍しすぎて、紫様の分のご飯はありません」
「ええー。なんなのそれ…」
「いっつも昼まで寝てるんですから。たまに起きる時は、起きるっていってくださいよ」
「えええー。貴方、私の式神よね?私、あなたのご主人様よね?扱いが酷くないかしら…」
「酷い主人にこき使われて、式神が歪んでしまったのです。後、そのだらしない格好やめてください。
橙が見てます。やれやれ、しばし待ちください。適当に作ってきますから」
「はいはい…」
「ゆかいひゃま、おふぁようございみゃふ」
「おはよう。橙、ご飯を口に入れて喋ってはだめよ。藍に怒られちゃう」
「ふぁい。ごくん。紫様、紫様、見てください、お箸でご飯を食べれるようになったんですよー」
「あら、えらいわね、橙」
「がんばりましたー」
「ああ、本当に貴方は可愛いわねえ。かわいこかわいこ。ぐりぐり」
「にゃー。あのう紫様、藍様の事は、可愛くないんですか?」
「んー?そうねえ、だんだん生意気になってきたしねえ…」
「……藍様の事、お嫌いですか?」
「あらあら馬鹿ねえ、何を言っているの」
「え、え」
「やれやれ、茶漬けを持ってきましたよ紫様。て、ちょっと、橙に何かしたんですか?」
「何もしてないわよ…」
「橙、何かされたら、私に言うんだぞ」
「え、あ、あのう、えっと」
「貴方こそ橙を困らせているわよ」
その夜。
「藍、ちょっと話があるの。部屋に来なさい」
「はい。橙をお風呂にいれた後で伺います」
「(主よりも式神優先かい)どーぞ、待ってるわ」
「紫様、参りました」
「お入りなさい」
「はい。御用はなんでしょうか」
「ま、ちょっとこっちいらっしゃい、ほら、ここに座って」
「…紫様の膝の上にですか。」
「そうよ。命令」
「…はい」
「ちょっと、違う違う、後ろ向きじゃなくて、こっち向きなさい」
「え、えええー…。わ、わかりました」
「あら?今朝と違って素直ねえ。ほら、抱っこ抱っこ」
「いえあの、今朝は、ですね」
「うふふ。橙の前だから、格好つけてたのかしら?」
「それは、その……あの、紫様、私はもう子供ではないのです。こ、このような事は…」
「あらあら馬鹿ねえ、何を言っているの」
「え、え」
「もう子供じゃない、ですって?笑わせるわねえ。たかだか数百年を生きただけの妖狐が、
何をいっているのかしら?数千年を生きたこの私の前で。あらあら、可愛らしい事」
「うぅ、紫様、勘弁してくださいよう」
「まあ、橙の前では大人ぶりたいなら、そのようになさいな。子供らしくて、とっても可愛いわよ貴方。
だから、許してあげるわ。可愛い可愛い私の藍。あんまり早く、大人にならないでね」
さいこうだな!
この一言に尽きます。
コメントを見るにつけ、他にも書いてみたいなぁ、また見てもらえるかなぁ、
見てくれる人のためにもっと頑張らないとな、と、やる気とドキドキを感じます。
最後の一文「あんまり早く、大人にならないで(ね)」は、ERという海外ドラマの
セリフを使わせていただきました。主役の一人であるマーク・グリーン先生が
娘のレイチェルにつげた、親の愛情と我侭の篭もった大好きなセリフです。
藍しゃまはいつまでたってもゆかりんの娘!