「
魔理沙の指先って綺麗。特に爪がかわいい。
爪がかわいいって変じゃないか。
変じゃないわ。
よくわからないな。
薄いヴェールみたいなので覆われているみたい。
何も塗ってないぜ。
うん。そのほうが魔理沙には似合ってる。でも。
でも?
ちょっと伸びすぎね。伸ばしすぎはだめよ。
べつにいいじゃないか。
猫じゃあるまいし。だめよ。
そんなもんかな。
そのほうが似合ってる。
そうかぁ?
切ってあげましょうか?
え?
お手入れしてあげましょうか。
またおまえは私を人形扱いするか。
いやなの?
いやじゃないけどさ。ちょっと恥ずかしいじゃんか。
そんなに恥ずかしいの?
見られたくない部分を見られてるみたいでな。
見せて。
しかたないやつめ。
じゃあ手始めに人差し指から丁寧に。
アリスは人差し指から派か。
ん?
爪を切る順番だよ。
そういえば、だいたい切る順番って決まってるわね。
ひとつ収穫だぜ。
魔理沙はどこから切るの?
企業秘密ってことにしとこうかな。
ふぅん。まあいいわ。じゃあ次は親指。
おまえ、すごく神経質な。
どうしてよ。
普通に切ってるように見えて等間隔だぜ。
職業病みたいなものかしら。完全に無意識だったわ。
それと指先器用な。
当然でしょ。
安心して任せられるぜ。
爪切りぐらいでおおげさね。ほら、次は中指。
んー。面倒だからねっころがろう。
まあ動かないならなんでもいいわ。
ここならアリスの顔がよく見えるしな。
バカなこと言ってないの。
いてっ。
あ、ごめん。
勘弁してくれよ。
ごめん。魔理沙。痛かった?
いいよ。動いた私も悪かったしな。
じゃあ、次は。
終わったじゃんか。
足の方もしてあげる。
えー。そりゃ、ちょっとはずいな。
いいじゃないの。
完璧主義者め。やりたきゃ勝手にやってくれ。
子どもっぽいわね。
おまえのほうだろ。
でも、足ちっちゃい。
同じぐらいだろ。
いいえ。魔理沙のほうがちっちゃい。
うるへー。
爪もかわいいし。
褒め殺しの一種か、それともおまえは爪フェチなのか。
いやね。変態じゃないわよ。単に造形美に興味があるだけ。
私に惚れてるんじゃないかと思ったぜ。
バカ。
叩くことないだろ。
ぎざぎざのノコギリみたいに切るわよ。
恐ろしい女だぜ。
ほら今度は動かないでね。
あ、うん。わかったぜ。深爪の痛さだけは勘弁だからな。
なんだか楽しい。
なにが?
魔理沙の爪を切るの楽しい。
そんなのが楽しいのか。
そうね。なんだかえーっと子猫の毛並みを手入れするときに似てる感覚。
よくわからん。
対象が綺麗になっていく事に対する快感。
ふぅん。そんなもんなのか? 私は他人の爪を切るなんて面倒なことできないな。
面倒くさがりね。
アリスは神経質すぎるけどな。
はい。おしまい。
おー、爪先が月のように綺麗な湾曲を描いている。
これぐらい当然よ。次は――
次があるのか。
この際だから、教えてあげる。
マニュキュアとかか?
そうよ。面倒くさいって顔してるわね。
まーな。自分ひとりではできそうにない。
どうするの?
アリスがしてくれるんならじっとしてやっててもいいぜ。
しかたない子ねぇ。
アリスの趣味につきあってやってるんだぜ。
魔理沙も女の子なんだから少しはかわいくすればいいのに。
ガサツなのが個性だ。
まぁ、いまでも十分かわいいけど。
え……。
嘘。
おまえなぁ。
でも少しは本当かもしれないわね。素体としては及第点よ。
すぐにやってくれ。
好きにやらせてもらおうかしらね。爪もけっこう手入れが必要な部分なのよ。実は。
ほー。なんだかちょっとくすぐったい気がする。
爪に神経が通ってるわけないでしょ。
そうなんだけどな。そんな小さなほうきみたいなので塗ってるのを見るだけで、こそばゆい。
少しは我慢しなさいよ。ほら、動かないの。
なにがくすぐったいのかって思ったら。
思ったら?
アリスにつかまれてる指のほうかもな。
え、う?
でも嫌な感じじゃないぜ。
は、恥ずかしいこと言うのね。
アリスの指って繊細だからな。マッサージの技能とかあるんじゃないか。
パワーがないから無理よ。けっこう力を使うらしいわ。
かよわい魔界の姫様だもんな。
姫様じゃないわ。神綺さまの被造物に過ぎないもの。
同じようなものじゃないか。娘みたいなものだろ? 城に住んでる偉いやつの娘のことを姫様って言うんだぜ。
こじつけね。
まーな。でもアリスの指に触れていると、なんかそれだけで気持ちいいぜ。
眠そうにしちゃって。まだ昼間なのに。
アリスのひざまくらも気持ちいいぜ。
もう勝手なんだから。
爪であそばしてやった正当な報酬だ。
高くついたわ。
まだ足りないな。金に換算すれば、四万二千円分ぐらい足りないぜ。
どうしろっていうの?
キスだ。キスしろ。ちゅーしろ。アリス。
ば、バカ、頭悪いこと言ってないの。
あー、ほんと、眠くなってくるなぁ。
ん。魔理沙。
……。
寝ちゃったの? 寝つきいいわね。この際だから口紅とか化粧もしてあげましょう。素のままでも十分かわいいけど。でも、もっとかわいくしてあげる。
といった類の妄想を受信してしまうのが覚りという種族です。古明地さとりと申します。
交通がまったくといってなかった地底で、しかも忌み嫌われた種族でありますから、なにぶん不慣れな自己紹介になったことと思いますが、以後お見知りおきください。皆様方と仲良く交流を深めていきたいと願っております」
4万2千円握り締めて、幻想郷に行きたい。
つまりこれは魔理沙→←アリスの両想いの片思いなんだと考えるんだ。
吹いた後甘いマリアリに脳内変換して保存。
どうみてもマリアリです、本当にありがとうございました。
どっちの妄想なんだいったいw
てっきりメタな分類かと思っていたが…さとり様、俺の妄想も受信してくd(マスパ
さとり……お前………(^^;)
これはマリアリだ、作者がなんと言おうがマリアリだ!そしてさとりん自重。
でも、足の親指の爪は弧状に切ると歩くときに負荷がかかりすぎてまいてしまうので、本当はやめたほうがいいらしいです。
真似てるのか、棒読みなのか。無表情なのか表情豊かなのか。
それが問題だ。
その物語のリアリティを、これほど体験できたのはいつ以来だろう。
ただ交互にセリフが並ぶだけなのに、こんなに豊かなイメージを楽しめるのですね。
感動しました。
これは二人のどっちかの妄想なのかそれとも他の誰かの妄想なのか、本当は妄想じゃなくて記憶なのか気になるところ