Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

妖怪達への最大の呪い

2009/06/14 13:04:25
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 博麗の巫女が弾幕決闘を作り出して幾許かの時間が流れた
 
 その間にどれだけの異変が起こったのかは分からない

 妖怪達に聞いたら少し前の事だと教えてくれるはず

 だが、人からすればその時間は一生を終えるのには十分であった

 それがたとえ神や鬼、悪魔や亡霊達と戦って勝って来た少女達でも

 時の流れには残酷に過ぎていくものである













 紅い屋敷に住んでいた人間…

 

「…短いものね…」 

 レミリア・スカーレットはそう呟く
 たかが100年足らず…
 妖怪にとってはそれはあっという間の時間だった 

「でも、今まで私が生きてきた中で…一番大切な時間だったわ」

 レミリアが落ち込んだ様子でそう言うと紅茶を飲もうとする
 そして、紅茶を飲むためのカップを手に取ってから思い出す

「…そうだったわね…」

 今までのように空のカップを手にしたら
 瀟洒なメイドがいつの間にか紅茶を入れていた

「貴方はもう…居なくなってしまったのね…」

 だが、もう時を止めてまで紅茶を入れてくれた
 瀟洒でちょっと天然が入っている紅魔館にとっての大切な…

「咲夜…」

 十六夜咲夜は居なくなってしまった
 レミリアも自分が頭を下げてまで眷属になるように伝えたが
 それでもなお、最後の最後まで人間であり続け
 紅魔館の皆に看取られて幸せそうに去っていった

「…なんで…死んじゃったのよ…」

 誰も居ない自分の部屋の中で…

「咲夜ぁ…」

 赤い悪魔は自分の最愛の従事者の為に涙を流した





     ・・・





 
 普通の魔法使いだった人間…



「……もうこんな時間か…」
 
 森近霖之助は静かにそう呟いた
 今日も一日、誰も来ないで静かなものだった

「…ふぅ…」
 
 丸一日読書を続けていたせいか、少々目が痛む
 つけていた眼鏡を外し、目の前にあったテーブルに置くと
 自分の手を目の上に置いた

「………」

 目を閉じて静かにしていると、少し前の事を思い出す
 お店に厄介事ばかりを持ち込んできて
 勝手に商品を奪っていっていた少女の事を

「…静かになってしまったな…」

 あの時は、静かであって欲しいと思っていたが
 実際に静かになってしまえば寂しさが身に染みていた

「…魔理沙」

 霧雨魔理沙は魔法使いにはならなかった
 無論、なることは出来てはいたが
 最後の最後になっても普通の魔法使いである事を望んだのだ

「…最後の最後まで本当にどたばたしていたな…」 

 魔理沙は自分が死ぬ寸前に、今まで借りていた物を
 全て返しに向かった
 そして、借りた先々で魔女になるようにと懇願されたらしいが
 その全てをきっぱりと断り
 最後に香霖堂にやってきて八卦炉を返してから

「自分の家じゃなくて此処で倒れるなんてな…」

 霖之助の手の中に倒れこみ
 遺言を伝えてから眠るように逝った

 魔理沙の遺言はただ一つ
『家の掃除頼む…また戻ってくるから』

「…さて、明日にでも久しぶりに掃除にいくかな」

 霖之助は死んでしまった妹分の為にそう呟いた





     ・・・





 妖怪の山に来た神社の風祝だった人間…



「……はぁ…」

 八坂神奈子は静かに月を見ながらお酒を飲んでいた
 
「…酔えないねぇ」

 自分の目の前には何個もの酒樽が空になっていたが
 今日はそれでも酔う事が出来なかった 

「今まで…何度も体験してきているって筈なのに…」

 今までの間に、何度も何度も体験してきているはずの事だった
 そして、それは仕方が無い事だと思っていたことだった

「…酔って忘れないと…潰れるって言うのに…」
 
 だが、今回はそれが出来そうに無い
 今まで此処まで近く、そして自分を慕ってくれた者
 自分の娘とまで思っていた者…

「…早苗…」

 東風谷早苗…神奈子が消えないように幻想郷にやって来る際
 自分達を慕い周りの関係を全て絶って一緒に来てくれた風祝…

「…ごめんね…弱い神様で…」

 早苗が里に信仰を集めてくれたおかげで
 神奈子達が消える運命からは逃れた
 だが、その代わりに早苗が外で生きていくと言う運命が消えた
 自分達の所為で、早苗に苦労をかけさせた
 その思いを胸に、神奈子がお酒をもう一杯飲み干し

「…ありがとう…早苗」

 お酒の代わりに死んでしまった自分の娘の為に目から涙を流した




 
     ・・・





 紅白の巫女と呼ばれた人間…



「…久しぶりね此処に来るのも」

 八雲紫は赤い鳥居の下で物思いに耽っていた

「…どれだけぶりかしら?此処に来なくなってから」

 目の前に見える神社は昔と変わらない
 今から少し前に妖怪と人間が楽しく宴会を開いた場所
 紫もそこで開かれる宴会が大好きだった

「…いえ、宴会なんか関係なかった…」

 紫が自嘲気味にそう呟く
 宴会は建前…それよりももっと大切な事

「霊夢…貴方に会えるのが楽しみだった」

 吸血鬼を倒し、亡霊も倒し、蓬莱人や閻魔
 神までもを打ち倒して来た無敗の巫女

「だからね…貴方がいなくなってから私は此処に来なかった」

 博麗霊夢…幻想郷の素敵な巫女はもういないのだ
 最強と呼ぶに相応しかった巫女も
 寿命には勝てなかった

 それを何とかする方法が幾多もあっても…
 霊夢は全てをきっぱりと断った

「…もっと早く…言っておくべきだったわね」

 博麗神社の傍に置いてある小さな墓
 その前に紫は立ち尽くし

「霊夢…貴方の事が好きだったわ…」

 言えなかった思いを墓の前に告白した





 




 時の流れは残酷なものであり
 
 妖怪と一緒に遊んでいた人間の少女達がいなくなっても

 それでもこの世界(幻想郷)は回り続けるのだ…

 故に残った者は思い出す…あの楽しかった時間を

 それこそが人間が妖怪に対して残す事が出来る  

 最大の呪いなのかもしれない
 さて、幻想郷はこれで終るほど甘いものではない
 これから少しだけ後の話を見てみよう






 紅魔館から咲夜がいなくなってから数日後
「はぁぁぁあ!」
 紅魔館の一室で門番が集中力を込めて咲夜の位牌の前に対峙していた
「拳魂復活の術!」
 そして閉じていた目を開き両手に力を籠めて位牌に手を伸ばすと
 力を籠められた位牌が人の形に代わっていき
 死んだはずの咲夜の姿に代わる
  
「…死んだはずなのにまだ働けっていうのかしら?」
「あはは、お嬢様が凹んでいるんで慰めてあげてください」
 疲れているはずの門番が、額の汗を拭いながらそう告げると
「了解、とりあえず紅茶を入れる事から始めてくるわね」
 瀟洒なメイドは生前の自分の主の下に向かっていった



     ・・・



 魔法の森の中にある魔理沙の家
「…しかし、生前と違って随分と手入れされているな」
 掃除にやってきたはずの霖之助がそう呟くと
 目の前の相手が口元をにやつかせる
「仕方ないだろ?魅魔様が何時抜き打ち視察に来るか分からないんだから」
「魔理沙にも苦手なものがあったんだね」  
 霖之助が苦笑しながらも嬉しそうに料理を作る  
「今度は何時お店に遊びに来るんだい?」
「あ~…祟り神の研修がもうそろそろ終るからそれが終ったらすぐに」 

 目の前に居るのは二代目の祟り神
 先代は今、二代目に仕事を教えるのに猛烈に張り切っているのだ



     ・・・



 早苗がいなくなって数日間
 凹んでいる神奈子の代わりに諏訪子が山の仕事をこなしていた
「…ふーん…新しい神が山にやってくるんだ…舐められないようにしないと…」
 妖怪の山には、神が代替わりして新しい神が来る場合ある
 もっとも、一人が数個の名前を持っている事もあるから
 一つ名前を貰う事で神になる者も出てくるのだが…

「あ、諏訪子様!お久しぶりです」
「さ、早苗!?」
 
 流石に数日前に亡くなったはずの人物が神としてやってきた事には驚いた

「な、なんで!?」
「えーと…閻魔様の説教を聞き続けてたら最後に
『丁度、神の席が一つ空席になっているのでそちらに行ってもらえませんか?』
 って言われたんで…」 
 そこまで言うと、早苗が諏訪子に頭を下げた
「えーと…未熟者ですが、指南してくれるとありがたいです」

 数時間後、神奈子にサバ折りを決められて気絶する
 新人の神様の姿が見られたという



     ・・・



「…それじゃあね…霊夢」
 紫がそう言って墓から去ろうとして隙間を開けた時だった
「お賽銭ぐらい入れていきなさいよ」
 紫の背中から声をかけられた
 声を聞いた紫が体を硬直させた
 あるはずが無い…ありえるはずが無いのだ
 恐る恐る紫が後ろを振り向くと
 そこに居たのは昔の姿の霊夢の姿
「霊…夢…?」
 目を見開いてその姿を確認する
 驚いている紫に対して目の前に移る霊夢は

「久しぶりね紫」
 昔と変らないように挨拶を返してくれた

「えっ?な、なんで!?死んだはず」
「それがねぇ…やっと楽になったかなと思ったら
 どうも神社の神様にされたらしくって…」

 気がついたらその場に居たという
「今の代の巫女は修行中らしいから、私は神社で留守番
 だから暇でしょうがないのよ…」

 その話を聞いて、とりあえず紫がした事は

「れ、霊夢~~!」

 とりあえず、泣きながら抱きついて頬擦りしてみた

 


 どうも、脇役です…
 
 咲夜は亡霊に、魔理沙が二代目の祟り神に
 早苗は死んでから神様に、霊夢は気がついたら神になっていた
 現実なら死んだら蘇れないけど
 幻想郷なら死んでもこんな復活劇もありそうです


 
 御免なさい此処に小さく書かせてください
 
 三沢光晴さんご冥福を祈ります
脇役
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
こうゆう復活劇も自分の中では大いにアリです!!!

ご冥福を祈ります。
2.名前が無い程度の能力削除
幻想郷ならこんなのもありだと自分も思います!


ご冥福をお祈りします
3.名前が無い程度の能力削除
いいはなしだなー
4.名前が無い程度の能力削除
忘れてた。

三沢選手のご冥福をお祈りします
5.名前が無い程度の能力削除
非常にありそうでいいですね。

幻想郷ならではの復活劇、堪能させていただきました。
6.アイス削除
イイハナシダナー
7.名前が無い程度の能力削除
畜生!騙された!(無論いい意味で
さすが脇役!俺たちには想像も出来ないことを書いてみせる!
そこにシビレル!憧れる!
8.名前が無い程度の能力削除
良い話だ。貴方の作品は相変わらず私の琴線に触れてくる。


三沢さん、ありがとうございました。
私がそっちに逝ったら、また素晴しいエルボーを魅せてください。
9.名前が無い程度の能力削除
だれも美鈴のやった行動には突っ込まないんだな……。
この門番一体何者なのかと小1時間と(ry
10.名前が無い程度の能力削除
美鈴は何処までラーメンマンなのかとw
11.名前が無い程度の能力削除
人間達の復活理由が幻想郷らしさ満開でよかったです。

美鈴少し自重しろwwwww
12.otaconΩ削除
ふむ、最近あなたの「魔界神シリーズ」「恋人は祟り神シリーズ」と立て続けに読ませていただき、さらに先ほどこの話を読了しました。その上で一言言わせて頂きたい。                                                               大好きだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!(あなたの作風とか、キャラに対する愛情とか、作品に対する姿勢が)あなたの作品には、毎回ニヤニヤさせられ、ホロリとこさせられ、しかしハッピーエンドだという・・。そんなあなたの作品が大好きです!まさにあなたは「ハッピーエンドの神」ですね(そのままですいませんorz)。いつか、自分にもあなたのような素敵な物語が書けるようになりたいと思いました。これからも頑張ってください!陰ながら応援しています!                                  三沢さん、ご冥福をお祈りします。
13.otaconΩ削除
なんか改行おかしくてすいません。
14.名前が無い程度の能力削除
幻想少女は永遠に

こんな話もありですよね~
霊夢やら早苗さんなら神格化してもおかしくなさそうだし
15.名前が無い程度の能力削除
この美鈴普通の美鈴ちゃう
美来斗利偉・紅美鈴(ビクトリー・ホンメイリン)や!
16.名前が無い程度の能力削除
ロッテンピッテンサッテン噴いたwwwwwwwwww
17.MOT削除
やっぱり貴方の作品は安心して読むことができますねぇ。安定して面白い。次回作も期待してます。



三沢選手、ご冥福をお祈りいたしております。貴方は死に様までプロレスラーの鑑でした。敬礼。
18.名前が無い程度の能力削除
どうだろ?人間のまま死んでいった決意の重さを軽んじる結末じゃないかい?
特に美鈴の死者への冒涜ぶりには狂気すら感じられるのだが。
19.回転魔削除
おい美鈴www

橋本選手に続いて三沢選手、寂しい限りです。
20.名前が無い程度の能力削除
死ねば神様になれる。ここはそういう国でした。

美鈴がギャグ調なのは仕様ですよね。あとがきなので深くはツッコミません。