幽々子が死んだ。
彼女はその自分の能力を疎い自尽した。
いわく付きの妖怪桜、西行妖の下で。
西行寺家の者共が彼女の亡骸へと集まった。
大きな声を上げて泣き叫ぶ者が居た。
彼女の後を追い、自分の命を絶とうとする者も居た。
ただただ呆然と立ち尽くす者も居た。
死に誘う程度の能力を持つ者が居なくなり、安堵の表情を浮かべる者も居た。
そんな中、私は取り乱す事も無く自らを見失う事も無く、自分自身驚くほど、静かにその景色を眺めていた。
思っていたことはただ一つ、大事な友人を喪ってしまった、それだけだった。
ぱぁーーんっ!
「………」
西行妖の一部分が小窓のように開き、中から幽々子の顔が出てきた。
「………」
辺りを見回す、気づいているのは誰も居ない。
って言うか音で分かるでしょ!?普通!!
桜の木の真ん中が開いたのよ!?
ちょ、妖忌もそんな死体抱きかかえてないでコレ見なさいよ!!
……えっ?分かってんの私だけ?マジ?
すぅ……
小窓が閉じた。
いや、あれ小窓って判断でいいのかしら?
ねぇ本当に気づいた人他に居ないの?みんなネタで私をからかってんじゃないの?
妖忌もうぉ~とか言ってないで……
ぱぁーーんっ!
ま、また出た!!
ほらほら皆見て!泣いてる場合じゃないって!
「(ナニやってんの?)」
話しかけてきた!?しかも声小っさ!!
「(ねぇ……)」
「(あ、あんたが勝手に死んだから……)」
「(えっ、私死んだの?)」
「(そうよ)」
「(そっかぁ……)」
何が「そっかぁ」か!
あんた自害したんでしょうが!
見なさいよこの周りの惨状!
「(ねぇ……)」
「(何よ?)」
「(遊んで)」
「(はぁ!?)」
「(暇なのよ)」
「(しょうがないじゃない)」
「(死んだら暇なものなの?)」
「(多分……)」
「………」
すぅ……
あ、引っ込んだ。
……じゃねえ!何やってんだあんた!
死ぬなら死ぬ!生き返るなら生き返るではっきりしなさいよ!
いやそんな問題じゃない!
すっ……
また出たー!!!?
あれ?手になんか持ってる?
水鉄砲、また妙なおもちゃを……
それを妖忌に向かって
ぴゅっ!
「う!?」
当てた!
なにやってんのよあの娘は!妖忌、狐につままれた顔してるじゃない!
しょうがない……
ぽつ…ぽつ……
ざぁぁ……
「……雨か」
だからそうじゃないって!気づけよ剣の達人!!何のための武者修行だったのよ!
いや、桜の木から時折顔を出す主人の気配に気づくための修行じゃないってことは確かだけど!
そして何故フォローした、私!?
すっ……
「(あははは)」
「(あんたも何やってんのよ!!)」
「(暇なのよ……)」
「(じっとしてなさい!多分これからずっと暇よ!)」
「(えぇ~?)」
「(えぇ~じゃない!)」
「(あ~そ~ん~で~)」
「(今は無理だって!)」
この状況を、私は他人にどう説明すればいいのだろう。
死んだはずの友人が桜の木の中から顔を出して私と会話している。
文字にすればこの程度なんだが、果たして相手に事の真意が伝わるのかどうかは非常に疑問だ。
複雑な心境の私を置いて、彼女はまた何かを取り出してきた。
あれは吹き矢?おい待て
ぷっ! さくっ! ばたっ!
誰かが倒れた!
それ見てアイツまた隠れた!!そして何故誰も気づかない!?
……すっ
「(ははは)」
「(こらっ!もう閉めときなさい!)」
「(すぐ回収したら駄目じゃない)」
「(駄目なのはあんた!)」
「(むぅ~)」
むぅ~じゃないわよ全く!
……って、なに死蝶を出してんのよ
蝶がゆっくりと、従者らに当たって……
ばたっ!ばたたっ!!
倒れたー!?
あああ!何かもう色々と大変なことになってる!
そして何故誰も幽々子の仕業だと気づかない!?
いやいや妖忌!「敵襲だー!」じゃないって!分かってよ!!
くっ!かくなる上は!!
「妖忌ーー!!」
「貴様ーー!?」
違うわよ!気づいてって!
刀抜いてこっちに向かってこないで!
いきなり二百由旬の一閃って!
もう!しょうがないわねぇ!!!
~格闘中~
何でこんな事になったんだろう?
周りには私以外誰も居なくなっていた。
「あはは」
小窓から出てきた幽々子が笑っていた。
「ああ~面白かった」
「良かったわね、幽々子」
「うん、楽しかったわぁ~」
「ねぇねぇ、ちょっとこっちに来てくれる?」
「ん~?どうしたの」
「富士見の娘、西行妖満開の時、幽明境を分かつ、その魂、白玉楼中で安らむ様、西行妖の花を封印しこれを持って結界とする。
願うなら、二度と苦しみを味わうことの無い様、永久に転生することを忘れ・・・」
(封印)
内容も楽しかったです…妖忌w気づけよww
ドラム缶?なんのことですかそれ?