Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

にとりの発明日誌

2009/06/06 08:32:41
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1

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「お邪魔します」
「どうぞ~」

私、こと鍵山雛は、珍しくにとりの家に来ている。
本来、厄神である私は、他人とあまり接触してはならないのだが、
このにとりは何を言っても聞かず、私と仲良くしようとしている。
今日もまた、渋る私をにとりが引っ張ってきたということだ。
にとりにはありがたいが、あまりこういった行為に慣れていない私としては、
どのように振る舞えばいいのか分からず、戸惑うばかりである。
だから今日は、そんなにとりの行動の原因を探ろうと考えてきたのである。



部屋に入ると直ぐに、
にとりはお茶を入れてくると言い残して奥へ行ってしまった。
部屋を見渡すと、机の上に一冊の本が置いてあることに気付いた。
表紙には「発明日誌」と書いてある。
にとりの発明記録を綴ったものだろうか。
……非常に気になる。
私はいけないと思いつつも、周囲ににとりの姿がないことを確認し、
その本を手に取って読み始めた。




○/△(晴れ)

文が訪ねてきた。なんでも、カメラの調子が悪いので見て欲しいとのこと。
案の定、機械の異常が見られたため部品の交換をしたところ、
正常な動作が確認された。
その後は他愛のない会話を続ける。
今日の結論…文は天然可愛い。

○/▲(曇り)

突然山の巫女が来た。向こうの世界の機械をくれると言ってきたので、、
お礼として文の情報と交換することにした。フラグがどうこう言ってきたが、
生憎、天然相手のフラグの立て方は存じ上げないので、わからないと返した。
今日の結論…山の巫女は肉食。






発明、というよりもむしろ日常のことを綴っているらしい。
だが、友達の裏の顔を見た気がして、非常に気まずい思いになってきた。
そろそろ読むのをやめよう、そう考えた時、ふと自分の名前を目にした。
…にとりは、本当は私のことをどう思っているんだろうか。
不安もあったが、彼女の本心を知るためにも、私は日誌を読み進めることにした。


○/□(曇り)

本日は異常なし。
明日は雛が家に遊びに来る。雛は、自分が厄神だからと言って、
なかなか遊びに来ようとしないが、絶対に寂しがっているはずだ。
私は雛のためならなんでもするし、雛の言うことは何でも聞く。
でも、こればかりは雛が何を言っても断るつもりはない。
明日は雛を思いっきり楽しませてあげようと思う。



「にとり……やっぱり貴女はお節介よ…」

思わず呟くが、言葉とは裏腹に頬が緩む。
こんな自分でもにとりは大切に思ってくれている。
そう考えるだけでも心が温かくなってくる。
にとりは私のことをいつも気遣ってくれているのに、
私はにとりのことをどう思っているのだろう。
にとりの想いにこたえることもせず、私は何をしているのだろう…


深い思考に入り込んでいる自分をどうにかするために、
再び日誌に視線を戻す。
すると、完結したと思っていた文章は次のページに続いていることに気づいた。
ページをめくり、文章を読み始める。
そして私は、感謝の気持ちやら感動やらが消え失せていくのを感じた。



今日は来客者が家から出られなくなるようにする、
「鍵山雛は俺の嫁」システムの準備をしておこう。
明日雛が家に入った後、少し足止めをしてからシステムを起動する。
そして、雛は家から出られなくなる。
結果、二人は幸せな毎日を営む。
我ながら完璧な作戦である。
今日の結論…雛ゲットだぜ!





「さて、後はこのボタンを押せば…」

ボタンに指が触れる。
思えば、長い日々だった。。
涙が出る程大変な作業だったよ……
しかし、これも全てはこの日の為。
全神経を人差し指に集中させ、ボタンを―――

「何をやっているのかしら、にとり?」

背筋が凍りつく。
後ろに誰かがいる。
否、この声を知っているはずだ。
しかし、私の脳は理解を拒んでいる。
振り向くべきなのだろうが、振り向けば待ち受けるのは死だろう。
意を決し、まるで鈍い音が出そうなくらいにゆっくりと振り返る。
そこにいたのは、紛れもなく雛。
雛は端正な顔だちを怒りに歪ませていた。
私は即座に計画がばれたことを悟った。
そして長い沈黙が訪れる。


どれだけ時間がたったのだろうか。
私はいつまでこの状態でいればいいのだろうか。
まるで死刑台に上がって死を待つような気分だ。
すると、突然雛が動きを見せた。
ゆっくりと右手を大きく振りかぶり、そのまま、

「にとりのバカっ!」

バシンッ!

「ぶへらっ!!!」

フルスイングされた雛の右手は、私の頬に直撃した。
頬が受けた衝撃は、そのまま私をふっ飛ばすには十分すぎたようで、
私はそのまま勢いよく壁に激突した。

壁にぶつけた背中と、ぶたれた頬の痛みに悶絶している私に近づく雛。
この後どうなるんだろう、という絶望に浸っていると、

「にとり……言い残すことはあるかしら?」

あまりにも冷たい声と恐ろしい笑顔に、私は痛みを忘れた。
本能的に恐怖を感じ、私は一つの動作を取るしかなかった。

「ごめんなさーい!!」

土下座である。

「まったく、何を考えたらこんなことになるの?」
「……えー、それはですねー」
「返答しだいによっては……覚悟してね、にとり?」

雛がそう言ったので、覚悟を決めて言った。

「雛と一緒に住めば、雛が寂しくなくなるかなーと思って…
「―――って、何言ってるのよ!」
「雛のこと大好きだから……何かしてあげたいと思ったんだ」
「……もういいわ」

雛はそのまま俯いてしまい、私は何も言うことができなくなった。

絶対に嫌われた…

そう思い俯いていると、
突然雛が抱きついてきた。

「―――ひ、ひなっ!?」

あまりにも突然だったので、驚く私。
そして、雛の顔を覗き込むと、
雛は顔を真っ赤にしながら言った。

「……にとりの卑怯者」
「ご、ごめんなさい…」
「別に、謝ってほしいわけじゃないわよ」
「う、うん、ごめんなさい」

何をされているのか、さっぱり理解できないが、
雛の温もりだけは理解できた。
雛は自分から抱きつこうとはしない。
だから、今回は雛のやりたいようにさせてあげた。

「厄は後で取り除くから……もう少しこのままで……」
「……雛の気のすむまでどうぞ」

それから、どちらから何かするわけでもなく、
時間の流れるままに抱き合う。

「……ねぇにとり」
「なぁに雛?」
「一緒に住むのは無理だけど、また遊びに来ても良い?」

雛の問いかけは、私がずっと望んでいたものだった。
私は、何をいまさらと前置きして、

「もちろん、雛の来たい時に来ればいいんだよ!」
「ありがとう、にとり……」

そして、そのまま口付けた。





夜、雛とにとりは一緒の布団で眠った。
雛は初めて他人の温もりを感じながら眠ることに幸せを感じ、
にとりは愛しい雛の存在を感じながら眠ることに幸せを感じた。
二人が眠る部屋にある机の上には二冊の本。
一冊は昼間、雛が読んだ本。
もう一冊は、まだ何も書きこまれていない本。
そして、その日記に新たな1ページと、タイトルが付けられた。

「にとりと雛の交換日記」

そう書かれたタイトルは、
部屋に差し込む月光に照らされ、輝いていた。
こんにちは、鹿山です。
大好きなにとひなを書けて若干興奮気味です。
でも、もっと甘くしたかった……
誤字などの指摘、是非お願いします。
鹿山
http://090518.blog58.fc2.com/
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
イイヨイイヨー
2.名前が無い程度の能力削除
口から厄砂糖が…

もっと甘くシタマエ!!
3.奇声を発する程度の能力削除
おっけーぃ!!!!
この調子でどんどん行こー!!!!
4.名前が無い程度の能力削除
厄が浄化されそうな幸せさですね