「いっ!?痛い痛い痛い!!」
普段自分が使っているような柔らかい布団でなく
硬い硬い煎餅布団の上で私は激痛に身悶えするが
私の上に居る男は私が痛む姿を見ても手を止めようとしない
流石に、あまりの痛みに体を丸めようとするのを見て
自分の上に居る男が手を止めようかと言ってきたが
「…だ、駄目ぇ…もっと…もっとぉ~」
だが、私もすでにその痛みが気持ち良い事を知ってしまっている
だから、その痛みを受け続ける
(ああ…痛いけど気持ち良いの)
気がつけば私は硬い煎餅布団の上で気絶していた
目を覚ました私が、此処に来てからどれだけ経ったのかを
ボーっと考える
(…此処に来てから…数週間か)
・・・
事の起こりは約一ヶ月前の事
緋想異変によって倒壊した博麗神社を直す際
要石を面白半分で埋め込んだ事がばれて
隙間妖怪に本気の攻撃を受けた事が切欠である
そして、倒された後で私の頭を足蹴にして
「…幻想郷が消えそうな事をした貴方を生かしておきたくないけど
そうね…それよりももっと厳しい罰を与える事にするわ…」
私の力では切れる事が無い縄で全身をグルグルに巻かれて
口に布切れを巻き付けられ
「…それじゃあね…不良天子…」
ご丁寧に大木にグルグルに縛り付けてから
『地震を起こした不良天人です…縄を解いてね♪』
などと言う看板まで隣に突き立てて放置していかれた
止めといわんばかりに隙間から帰る際に
「そうそう、しばらくは貴方の力は戻らないって言い忘れてたのと
…この道、妖怪や山賊など出るから頑張ってね?」
そう言って、笑いながら隙間に帰っていったのだ
それから数日間…恐怖と共にその場に貼り付けられていた
運が良いのか悪いのか知らないけど
体の頑丈さだけは、そのままにしてくれたおかげで
生き残る事はできたが
近くから変な唸り声が聞こえて来たこともあったし
突然の大雨に見舞われた事もあった
そして、炎天下の中で意識がボーっとし始めていた時
「…なるほど…こいつが地震を…」
自分の足元から、なにやら男の声が聞こえてくると
その男がなにやら刃物を取り出す
その瞬間、背中がぞわりと寒くなった
『妖怪や山賊が出るかも知れないから頑張ってね?』
このまま殺されるのだろうか?
私が恐怖をしていると
目の前の男が手にした刃物を振り下ろした…
思わず目を瞑り痛みを待ち構えるが
痛みがこない、代わりに来たのは縄が切れる感覚だった
・・・
それからしばらくして、私はその男に連れられて
その男の家らしき場所に連れてこられた
無論、必死に抵抗はしてみたが
今は力を封じられているし、何より数日間
縄に縛り付けられっぱなしだったのだ
体中が動けなくなるほどに硬くなっている
「…な、何をするつもりよ…」
その男も、自分が動けないという事を知っているのだろう
今の自分が虚勢を張っている事も多分知られている
だが、それでも私は虚勢を張る
「今はこんなのだけど…あんたなんか一瞬で!」
精一杯の虚勢を目の前の男は
「そこに横になれ」
ただ一言一喝した
低い声でそう言われて、思わず身体が固まる
「な、何をするつもりなのよ!」
「…なに、悪いようにはしない…」
そう言って、男が自分に近寄ってくる
「ひっ!?」
虚勢が一気に崩れる、そして逃げようと後ろに下がるが
脚がもつれて倒れこむ
「安心しろ…気持ちよくしてやるから…」
「や、やだ…やだ…嫌だ!」
そして、その男が私の肩を掴むと
硬い煎餅布団の上に私を押し倒す
私はその日の晩、その男によって激痛に喘いだ
だが、次の日の朝から男が言っていた事に気がつかされる
「…お前には才能がある…」
「…私に?」
その日から、私はその男の下での生活が始まった
「…此処が弱いんだろう?」
「ひぐっ!?い、痛いのに!痛いのに~!」
コリコリになった部分をその男は的確に狙う
「さあ、教えたとおりにやってみろ…」
「あっ…はい…解りました…」
その男から教わった事を、何度も何度も試させられる
間違ったら怒られる、だから恐々と試すと
「もっと力を入れて…」
「は、はい…すいません」
「違う…それじゃない」
「ご、ごめんなさい!」
「それだ…うまくなったな」
何度も怒られるが、成功した時に褒められる
それが嬉しくて、気がついたらその男の技を全て覚えていた
それから数週間後には、男に外に連れ出されて
「…良いか?今度からは実践だ…」
「じ、実践?」
「なに、お前ならきっと皆にも喜ばれるさ」
その男が連れ出された先には一件の小屋があった
「さあ、お前の相手はあいつらだ」
その小屋の中にいたのは数人の男の姿
誰もが、私と私を仕込んだ男の姿を見て微笑んでいた
「…待たせたなあ…」
私を仕込んだ男がそう言うと
小屋に居た男達が笑いながら私を見る
「なーに…これでチャラにしてやるぜ」
「ほう…良い嬢ちゃんじゃないか…」
「さっそくしてもらうとするか…」
思わず逃げ出そうとした私を、仕込んだ男が手を掴み
「…さあ、あいつ等がお前の仕事の相手だ」
私にそう呟く
その男の言葉に私が泣きそうになりながら
仕事をこなすしかなかった…
・・・
「…へへっ…嬢ちゃんまた頼むぜ」
「ああ、すっきりしたぜ」
「次は別の奴も誘うからな」
仕事が終って、疲れからへとへとになっている私に
その小屋にいた男達がそう言って、去っていった
それが、今から一週間前の出来事だった
それからは、ほぼ毎日その小屋に連れて行かれて仕事をさせられる
その間、私を仕込んだ男は小屋の隣で色々と仕事をしてたらしい
正直に言うと、その仕事も今では楽しいと思えている
もしかしたら、私は壊れてしまったのかもしれない
でも気にしない…今の仕事が私には楽しいんだから…
・・・
それから更に一週間たった日の朝…
「…天子…話がある…」
私を仕込んだ男が唐突にそう切り出した
私が正座してその男の前でビクビクしていると
男が煎餅布団を指差して告げてきた
「…今から俺に教えた事の全てを使ってみろ」
いきなりそう言われて驚いたが
言われた通りに、その男が弱いと思うところに攻める
硬くなっている所を攻めると
その男も気持ち良さそうな声を出す
そして半時の間、その男から教わった事を全て試して
「…こ、これで終わりです」
「…そうか…」
少々声が引きつりながらも終わりを告げると
その男が、煎餅布団から起き上がって右手を伸ばしてきた
「ひっ?」
何時も怒られていたので、思わず身構えると
「えっ?」
ただ、ポンポンと頭を撫でられた
・・・
そして、その日から私はその男の家から出て行くことになった
痛い目にばっかりあわせたあの男の命令で
素晴らしい事を教わった私は、早速それを私の知っている人に教えたかった
縄で縛られてから約一ヶ月…
既に空を飛ぶぐらいの事は出来るようになっていた
天界に戻った私は、真っ先に自分に仲良くしてくれた
竜宮の使いに会いに行った
「そ、総領娘様!ご無事だったんですか!」
「うん、大丈夫よ天人だから」
自分が生きていた事に普段マイペースな衣玖が抱きついてきた
此処まで心配してくれたのは衣玖だけ
他の者は口には出さないけど、私を疎ましく見ている
だから、他の人には教えない…
「ねぇ…衣玖」
「はい、なんでしょうか?」
衣玖にだけ…私が地上で教えられた技術を…
「…地上ですごく気持ち良い事を教わったんだ…」
私はそう言って、自分のベッドの上に衣玖を押し倒した…
「そ、総領娘…様?」
「もう、天子って呼んでよ…」
うん、大丈夫…あんなに痛いのに、
気がついたら気持ちがよくなるんだもの…
きっと、衣玖も気に入ってくれるに違いない…
こんなにも…痛くて…でも後から気持ちよくなるんだから…
「はぁぅ!?そ、そこは!」
「あはっ♪…衣玖もこんなにコリコリ…」
「だ、駄目です!あ~~!」
「安心して?気持ちよくしてあげるから…」
「はっ…はぅぅ~」
ベッドの上では放心状態の衣玖の姿…
「どうだった?師匠から免許皆伝って言われたんだけど…」
「こ、腰と肩がほぐれて…すごく楽に…」
そして、気持ち良さそうな顔でそのまま眠ってしまった
「…痛いけど、終った後ってすごく気持ちが良いのよね…按摩って」
× そうそう、しばらくは貴方の力は戻らないって良い忘れてたのと
○ そうそう、しばらくは貴方の力は戻らないって言い忘れてたのと
オチは読めたが、おまけで腹筋崩壊w
やっぱり貴方の書く東方は良いね。
紅美鈴との邂逅、そして弟子入りですね、分かります