「うーん……ううーん……」
さて私はどうしようかって迷っていた。どうもこうもない。選択肢はそれほど多くなくて、多くないからこそそれぞれが見えすぎて、それだけに選び辛い。いつもそんなものだなって思う。選んだ答えが間違ってるって、思わないようにはしてるけど。
とりあえずまあいいやって思って、私はあんまり真剣に選ばなくなるのだった。何事も。世はおしなべて事も無しとかいう言葉は、ひょっとしたら私の為にあるんじゃないか位に考えたくなるってば。
「ねぇ?」
「ねぇ、って言われても。でもほらあれよ、世は、って言ってるでしょ。あなたのために在る言葉じゃ無いってのよ蓮子。で? 次は何呑むの?」
「ねぇとしか言ってないわ。なんでメリーはそんなナチュラルに私の心を読むのか知りたいなあって常々思ってるのよね。ねぇどうして?」
「それはあとで答えてあげるから。早いとこ選びなさいってば。店員さん困ってるわよ?」
私の注文を待ってる店員さん、見た所私よりは年下の、ということは呑み屋で働いてるのはちょっと問題なんじゃないまあいいか別にと思えるような女の子が、苦笑いで私たちを見てる。前に来たときは見たこと無かったから、新人さんなのかもしれない。そんなにつぶらな瞳で私を見つめないで欲しい。なんだその、もっと焦らしたくなるじゃない?
「生ふたつで」
「私まだ何も言ってないよね!?」
「却下。いいじゃないまだ呑めるでしょ麦酒。美味しいじゃない。プレミアムよ」
私が抗議しようとしたところで、可愛らしい店員さんは『かしこまりました!』と言う声と共に手持ちの伝票にさらさらっと何か書き込んで、この場を去っていく。
「ああもう、ほらー。あの娘絶対バイト慣れしてないってば。見た? 今の。あの初々しい笑顔! 私たちには無い若さってやつよね」
「たち、って言ったか。ババァと申したか」
「前者は言ったけど後者は申してない」
こういうやりとりはいつもの事で、そんな「いつもの事」を定義出来る程度に私たちは一緒に居る。とても有り難いことだなって思うけど、それは口に出さない。
「気恥ずかしいから?」
「いやだから何で私の心を読めるの」
「なんとなく?」
「……それで心が読めるってんなら、大したものよね」
「私もそう思う」
「でもさあ、ほら。何となくーとか勘だとかそういうのは置いといて、心を読めるみたいな不思議な輩が居てもおかしくないと思うのよね。妖怪でそんなのいなかったっけ?」
「覚りの妖怪、とか。確か」
「そんなんだったかしら。忘れたけど。ああもう、近場にそんなのが居たら是非とも勧誘するのに」
「実は私、覚りの妖怪なの」
「ああ、そういうこと?」
「うん」
「だからか。読まれすぎだと思ってたの。私の脳内があなたには駄々漏れだったのね。成る程これも何かの縁だ、君を栄誉ある秘封倶楽部の一員に任命してあげよう」
「いやもう一員だし。構成員二名のうちのひとりだし」
「改めて」
「いやだから」
「気にしない気にしない。世の中に不思議は溢れてる筈なのよ。だったら、私とメリーがその不思議そのものっていう可能性だって、ほら。無きにしもあらず」
「……あきれるほどポジティブよね、蓮子って。メニューを前にしたら優柔不断なくせに」
「メニューは関係ないでしょうが!」
「あるわよ。即断しなさいよ。店員を困らせてやろうなんてとんだサディストだわ」
「困らせようなんて思ってないわ。焦らせたいのよ」
「同じ。ただでさえ呑み屋の店員は大変なのよ、酔っ払い相手にしてるんだから。ならば私たちは良識のある客として、丁寧に接するべきだわ」
「これ怒られてる? 私怒られてる?」
「若干」
「……すみません」
「よきにはからえ」
よきにはからっちゃっう権利を私は賜った。つまり私はやりたい放題ってこと。
「よね!」
「違う」
「……すみません」
手厳しい指摘を受けたところで、先ほどの店員さんがトレイに麦酒を載せて私たちの卓に近付いてくるのが見える。
此処の呑み屋は、焼き鳥をメインに据えた小さな和風居酒屋。焼き鳥メインの癖にレバ刺しが妙に美味しい、しかも表のメニューに載ってない。赤看板に白文字をあしらった例の全国チェーン展開されてる酒場とは勿論趣が異なって、店内だってそれほど広くない。カウンター席と、奥に座敷的なテーブルがちんまりあるくらい。私たちが居るのは座敷の方。お酒を呑むときは靴くらい脱ぎたい。
客の入りは上々のようで、ちらほら常連っぽい客が店員と談笑している。私たちは此処にきてまだ五回を数えない程度の客だけれど、いつかはああいう風になってみたいもの。
「お待たせしました、生ふたつになります!」
「はぁい、どうもー」
メリーが注文の品を受け取るとき、店員に感謝の意を述べる声はいつもより1オクターブ高いと思う。
「気のせいじゃないかしら」
「何も言ってないじゃない!」
「あの、ええと、お食べ物の方は、追加で何かいかがですか?」
おずおずと店員さんが言葉を零す。いいわ。その追加オーダーを促す姿勢、ベタベタだけどオッケー。個人的には90点くらいの点数をあげたい。
とか思ってると、向かいの彼女からつめたい声が発される。
「なにさま?」
「れんこさま」
「なにさま?」
「……すみません」
謝らざるを得ない。そして私の頭は高速回転し始める。お食べ物、お食べ物と来ましたか。ははん成る程この場を見ればお食べ物を促すというのも自然だ至極自然な出来事だ、よかろうよろしかろう今この場において私はベストな回答を叩き出すべく考えるよりあるまいならば考えろ宇佐見蓮子! 今眼の前にある皿は出汁巻き卵(残りふたつ)、浅漬けの盛り合わせ(残り赤かぶが一切れと大根が一切れ)。串焼き盛り合わせ(ねぎま、ぱりぱり焼きとりかわ、ハツ、手羽先、レバー各二本ずつオール塩)とレバ刺しとたこぶつの皿はもうからっぽだ!
「えーと……もうひとつレバ刺し、もろきゅう。と、あと何かお薦めあります?」
また先に言われた!
「あ、ええと、こちらのばくだんなど……」
「ばくだん。珍妙な響きですね。どのような品かしら?」
「ええと、ばくだん、とはですね、ねばっこい物、やまいも、納豆、おくらなどを混ぜ合わせて……それに魚介類です、新鮮なイカと、うちは本マグロも混ぜ込みます! それに卵黄を付け合せて、大変精のつくメニューとなっております!」
「お詳しいのですね、是非とも食べたくなりました。それでお願いしますね」
「は、はいっ! ありがとうございます!」
返事をする際の笑顔が非常に眩しい。
ふと、胸元のプレートに目がいく。最近の居酒屋は、自分の名前を明らかにすることが流行りなのだろうか? と思いつつも。ちょっと見慣れない塩梅だったので、思わず尋ねてしまった。
「ええと……なんて読むんですか? そのお名前」
プレートには、「天子」と記されている。
「てんし、てんしと読みます。珍しい名前でしょう?」
「うん。とりあえず今までは逢ったこと無いかも」
「ですよね、初めて逢った方には絶対ちゃんと呼んでもらえなくて。此処のお店の方にも、『てんこ』って呼ばれてるんです。あだ名みたいなものですかね、今はあんまり気にならなくなりました」
えへへ、と首を傾げる店員さん。後ろで結わえた髪は、解いたらさぞかし綺麗に流れるだろうと思う。
「てんこ。てんこちゃんね。成る程覚えたわ。また此処に来たときは、よろしく」
「はいっ、こちらこそ! お待ちしております!」
満面の笑みを浮かべて、てんこちゃんはこの場を去っていく。
「店員にいちいち名前を尋ねるのもどうかと思うけど」
「コミュニケーションじゃないの」
「……ほどほどにね」
「メリーだってあれじゃないのよ、ばくだんとか前に一回頼んだことあるでしょってかどんなメニューか知ってた癖に」
「反応を見てみたかったの」
やな客だな……とんだサディストじゃないの。
「何か言った?」
「言ってない」
* * *
きゅーっ、と四杯目のプレミアムなモルツを喉に流し込む。
「ああ、ああ、もうおなかいっぱい」
「私も結構おなかいっぱい」
麦酒は呑みすぎると直ぐおなかが膨れてしまうのが唯一の難点だ。
テーブルを改めて見やる。空のジョッキやお皿は既に取り下げられていたけれど、およそ女ふたりで居酒屋に来て頼むメニューじゃないなと考える。頼むものそのものがそれぞれ漢らしい。
「今日は食べ物頼みすぎたんじゃないかしらね」
「うーん、それはあるかも」
普段ならあともう二、三品は少ない。レバ刺しの追加注文と、普段バラで頼む串類を盛り合わせにしたところが上手くなかったのかもしれない。美味かったけど。
「やっぱり一品目はサラダとかの方がいいのかなあ」
「好きなもの頼めばいいじゃない、何も制限なんて無いんだから。これとかあれとか頼まなきゃって、結局自分の好みでしょ? メニューの中から選べばいい。私たちはたまたま好みがサラダじゃなくて浅漬けの盛り合わせだった」
「まあ、そりゃそうだけどさあ」
うん。赤かぶのしゃきしゃき感がね。良くてね。
「難しく考える必要なんてなにひとつない、酒を呑むのに」
頬をそこそこ紅く染めながら、メリーはジョッキを傾ける。漢前だなあ。惚れ惚れする。
難しく考えるな、か。それはそれで、確かにそうだ。酒を呑むのに理由は要らないし、呑みたきゃ呑めばいいし、そうでなかったら呑まなきゃいい。自由、自由だ。実にフリーダム。
だけど。
「でもさあ」
「うん?」
「思考は自由よ、好みと呼ばれる嗜好も自由よ、確かに。でも私はほら、いざってときに迷うから」
「メニュー選ぶときとか?」
「……そういうのもあるけど」
「それこそ何言ってるのって感じなんだけどね」
「ええ?」
「秘封倶楽部に私を誘ったときの蓮子に、迷いはあったの?」
「む」
大学に入って直ぐ、私たちは出逢った。出逢ってしまった。
もう何の説明も要らず意気投合、では無かった。私とメリーは、出逢いからそれなりの過程を経て、ああ彼女と一緒に居られたらきっと愉しいに違いないって。そう思えるような過程があった。
だから。私がメリーを誘ったことに、迷いなんか無かった筈だ。
「……」
なのにどうして、直ぐ答えを返せない。
暫く押し黙っていて、周りからは他の客の談笑が響いている。めいめいの、各々の、愉しい時間。そういう時が流れてるんだなって、私は酔った頭で考える。その喧騒が、何処かとても遠い。
どうしてこう、酒の席で黙っている時間はゆっくり流れるのだろう。酔ってるんだったら、もっと早くなっても良い筈だ。
「そういうときは」
「へ?」
不意に発された声に、私は間抜けな声を出してしまう。
「蓮子、あなたは独りではないということを思い出すと良いわ」
私の対面に座っているメリーは、いつも通りの笑顔で言う。
「私はあなたに誘われて、こうして一緒に居る。それは私が一緒に居たいと思うからだわ? 独り分の気持ちだけでは世界は動かない。自分が居て、相手が居て、もっと沢山のひとが居て、複雑に絡まりあってるのよ。そんな中で単純に、私たちはきっとお互い一緒に居ようと思ってるから一緒に居るわけでしょ。蓮子が悩んだときは私が居るから。だから私が悩んだときは、あなたが私の傍に居て?」
……本当に、本当に。
こういうことを、酔っ払いながら言うのだ。
メリーってば、そういう感じなんだ。
私のことなんか全部見透かした素振りで、そんなことを言う。ぽつりと。何でもないことのように。こんな他愛ない、酔っ払いの場で。
「そういうとこ、好きよ」
「あら。ありがと。私も好きよ。でなきゃ一緒に居ないから」
ふふ、ふふふ、って。変な笑いを零す私たち。ああ、お酒呑んでるといつもこんなもんだなあ。
等という。
そんなやりとりをひっそり見つめていたらしい。
てんこちゃん。
駄目駄目。別に愛の告白って訳でもないんだから。呑み屋の店員なら流すべきよ。軽やかに流すべき。それがぶち下らない痴話喧嘩であったとしても。器物破損をしでかしそうな気配が見えないなら生暖かく見守るべき、その周りに居る客と共に、もしそういう場合にトチ狂って暴れる輩が居たら直ぐ様国家機関に通報すればいいの。
でもそのちょっと震えた感じで酒を呑んでる訳でもないってのに顔を紅くしてる感じが非常に印象良いので百点あげちゃう。てんこちゃんそれ百点! お姉さん百点あげるから!
「落ち着いて」
「私はこれ以上ないほど冷静よメリー。冴え渡ってるわ。P≠NP予想が今なら解明出来る」
「今じゃなくていいから。明日同じ台詞吐けたら納得するけど。複素解析のレポートで音を上げてる癖に」
「それは関係無いでしょ!」
「数学は実にも虚にも全て繋がってるのよ」
「な、仲が良いのは素晴らしきことで……!」
「ラストオーダー?」
「はい、申し訳ありませんが。呑み物と食べ物共にラストオーダーとなります」
呑み物と食べ物が同時にラストオーダーとは珍しい。大概食べ物がラストになるのが早いと思いつつ、ちっちゃい居酒屋ならまあ仕方ないと考えて、私はこの言葉を発するより選択肢は無い。
「てんこちゃんテイクアウトで」
「え!?」
「流していいです」
流された!
「食べ物は大丈夫なので、呑み物は……こちら。酔鯨ふたつ」
「日本酒。日本酒を頼むというのメリー。今夜帰れないわよ」
「私が? 蓮子が?」
「……私が」
「じゃあうちに来なさい」
「えっと、ええと、以上でよろしいですか?」
「よろしいです。大変以上でよろしいです」
「畏まりました!」
ラストオーダーが運ばれてくるのは大変早い。早く帰れって言われてるような気もしないでもない。でも私は実際ふらふらだし、ふらふらな上に鯨も酔っ払っちゃう液体があったらやっぱり呑むしかなかった。
「この残りの赤かぶ食べちゃっていい?」
「どうぞ」
しゃきしゃき。うまし。酔っ払っても箸を使える処に己の日本人気質を感じる。
「お箸ばってんにするのは行儀悪いわよ」
「……お母さんみたい」
「保護者? みたいなもの? かしら。だったら当たってるかも。でもね、結局のとこもちつもたれつ。私が潰れそうなときは、蓮子が面倒みてよね」
「ん……もちろん」
私はここで、迷わない。迷わないで選んだ選択肢は、大概間違ってない。それを私は知ってるから。
「はぁ、日本酒おいしい。流石は鯨も酔っ払うお酒」
「メリー日本酒好きなんだっけ?」
「そこそこ。強いて言うなら、美味しいものは好きよ」
「ああ。それなら私も同意見」
「じゃあ、ゆっくり呑みましょうか。焦る必要なんか何も無い。夜は長いわ、蓮子」
多分、この店を後にして。私はメリーの肩を借りながら、ここから五分も歩かないで済む彼女の家に運ばれていくのだろう。電車に乗って目的の駅で降りられる自信は正直無い。多分終点までがたごと揺られて明日の一限には勿論出席出来なくて、私は適当に家のベッドで不貞寝することだろう。
「そうならないように私の家に連れて行くから。電車乗らなくていいから」
「何も言ってないんだけどなあ」
「実は私、覚りの妖怪なの」
「ああ、そういうこと?」
「うん」
「だからか。読まれすぎだと思ってたの。私の脳内があなたには駄々漏れだったのね。成る程これも何かの縁だ、君を栄誉ある秘封倶楽部の一員に任命してあげよう」
くぃ、と一気に杯を煽って。中身をからっぽにしてしまう。
「それはそれは、光栄なことよね。さあお会計済ませてもう帰るわよ」
「メリーの家に?」
「そう。私の家に」
「迷わないで辿りつく家?」
「迷わないわ。私の家だから」
言葉を交わしつつ、声が別な場所から届いてくるような心地になる。別な場所っていうのは、此処じゃない世界から、別な世界から、ということ。おかしな話。別な世界って、一体なんだろう。それ、見たことあるような気がする。何処かで、私は……
『お会計、9030円になります!』
てんこちゃんの声が聴こえる。またこの店に来よう。そろそろ常連になれるかしら? ごめんメリー、お金明日払うから、今はお願い。
「はいはい。とりあえずお冷飲んで、ね」
ん。いただきます。お水おいしい。とてもおいしい。
* * *
靴を履いて、外へ。雨は降っていない、とても乾いた風が吹き付ける。そのつめたさで、ちょっとだけ頭が覚める。気がした。
空を見上げる。生憎星は見えない。だから今何時かはわからない。けれど何だか、それすらどうでも良かった。今の時間が、何時かなんて? それが今重要なこと?
「ねえ? メリー。私たち、これから寝ればいいだけよね」
「そうねえ。でも寝る前に、歯は磨いてもらうわ」
メリーの家にも私の家にも、歯ブラシは二本ずつある。お互いの分。
一歩一歩確かめながら歩いて、段々メリーの家に近付いていることがわかるだけで十分だった。だから特に時間がわからなくたってよろしい。よきにはからっちゃうってばこの辺り。
メリー宅にはベッドが無くて、布団が一組あるばかり。妙に日本人かぶれしてるような気がしてならない。でも普段ベッドで寝てる身にしてみれば、布団の感触も存外心地良いことも確か。私たちは並んで眠って、その内お互い寝相悪いから絡まってる。ダブル抱き枕。不都合な処は特に無くて、快適な睡眠をもたらしてくれる。
それ以上のことは無い。うん。本当に、そうなんだけど。
「うん、でもねえ」
「どうしたの?」
「んー……なんでもない」
「何よそれ。酔っ払い? ねえ酔っ払い?」
「お互い様でしょ。てれんてれんじゃないのよもう」
「てれんてれん」
「繰り返さなくていいから……」
でもねえ、って。
でもねえ、何だかんだ言ってたのしいよって。
ありがとう、って。
今更私は伝えない。
寝起きだったら、まあいいかなって思う。
でも今はちょっと、ねえ。
「気恥ずかしいから?」
「そういうことにしといて欲しいかな」
「あらそう。ああ、お布団はちゃんと干したし、タオルケットも洗って乾かしてるからね。ふかふかよ、ふかふか」
実に素晴らしい。
「百点あげちゃう」
「ありがと」
もう少しでメリーの家だ。
ふかふかのお布団と、ふかふかのタオルケットが待ってる。
朝目覚めた時の感触を、今から想像できる。
そりゃあ、お布団は狭いにしろ。
絡まって眠ろう。最高な抱き枕。
その肌触りが、きっと、最高に心地よいに仕方ない。
「歯は磨いてね?」
「はい……」
おやすみ、おやすみ、とお互い言葉を交わすまであと少し。
ああ、明日の一限に出るのが面倒くさい。
「うーん……ううーん……」
さて私はどうしようかって迷っていた。どうもこうもない。選択肢はそれほど多くなくて、多くないからこそそれぞれが見えすぎて、それだけに選び辛い。いつもそんなものだなって思う。選んだ答えが間違ってるって、思わないようにはしてるけど。
とりあえずまあいいやって思って、私はあんまり真剣に選ばなくなるのだった。何事も。世はおしなべて事も無しとかいう言葉は、ひょっとしたら私の為にあるんじゃないか位に考えたくなるってば。
「ねぇ?」
「ねぇ、って言われてもね。でも仕方ない。さぼりましょうか? 部長」
「……よきにはからえ」
「うん。よきにはからっちゃうから」
今は曇りだけれど、明日は晴れるといいなって、思った。
酒が飲みたくなるssですねぇ、そしてお腹もすく。蓮子メリーとてんこちゃんがとても可愛らしく、あっさりと読めました。
楽しい時間を、ありがとうございます。
ぶちって山口の辺りの方言で凄いだっけ
随所でニヤつかせるポイントがうますぎる
なんかいい雰囲気でした
やばいってこれ可愛いすぎるだろw