「ふわあ」
よく寝た。
寝ぼけ眼をごしごしこすりながらカーテンを開ける。
空は快晴。雲ひとつない。
うんうん。よきかなよきかな。
よし、こんな日は神社に遊びに行くに限るぜ。
朝食を済ませ、いつもの服に身を包む。
ぽふっとお気に入りの帽子を被り、箒に跨る。
さあ行くぜ。
風を切って一気に飛び立つ。
太陽が眩しいぜ。
空を優雅に散歩すること数分。
神社を見つけて急降下。
縁側でくつろぐ巫女を確認。
十時のおやつは饅頭か。
「おはよう、霊夢」
ん?
「あ、うん。おはよう。魔理沙」
少しキョトンとしている霊夢。
いや、多分私もだ。
「どうしたの、いやに改まって」
「いや別に。そんなことはないわよ」
……ん?
「…………」
目をパチクリさせている霊夢。
いや、確実に私もだ。
「ど、どうしたのよ」
「いやだから、何でもないって言ってるじゃないの」
…………。
「……あのねー、何考えてるのか知らないけど、やめなさい。気持ち悪いから」
霊夢が眉をひそめながら言った。
「いや、ちょっと待ってよ。私は本当に何も……」
流石に途中で口に手を当てた。
あれ?
あれれ??
何だ、コレ。
「……魔理沙?」
「…………」
霊夢の訝しげな視線に、私は沈黙で答えるしかなかった。
「また変なキノコでも食べたんでしょう」
永琳の診断は早かった。
「いやでも、キノコなんかでこんな風になるなんて……」
「あなた、今朝は何を食べたの?」
「森で取ったキノコを煮たスープ」
「決まりね」
「ちょっ。ちゃんと診てよ!」
うわ。自分でも背中がぞくっとする。
「間違いないわ。そのキノコの影響であなたは普段とは違う口調――女言葉で話すようになったのよ」
「そ、そんな」
「まあいいじゃないの。所詮キノコの影響なんだから、2~3日もすれば治るはずよ」
「そういうもんなの?」
「そういうもんよ。なぜなら、普通はそれくらいの期間で完全に体外に排せ」
「あー、それは言わなくていい」
「ま、そういうことだから。気にすることはないわ」
そんな感じで早々と永遠亭から締め出されてしまった。
くそう。
なんだってこんな目に遭わねばならんのか。
まあでも、永琳の言うとおりなら、そう心配することもないか。
要は喋らなければいいのだから、2、3日の間、極力人と会わないように、家で大人しくしておけばいいだけのことだ。
……そう思っていたのだが。
「ま~り~さ」
「わ! 霊夢! いつのまに」
「いや、つい気になったもんで」
「もう、明らかに興味本位って感じじゃない」
言いながら、頬が赤くなっているのが自分でも分かる。
ああくそ、なんだこの羞恥プレイ。
「へー、キノコの影響ねぇ」
ニヤニヤしながら霊夢はついてくる。
くそ、なんて鬱陶しい巫女なんだ。
「ねえ魔理沙。折角なんだからもっと喋りなさいよ」
「い、嫌よ。……あっ」
「…………」
ニヤリとほくそ笑む霊夢。
……ああもう、マスパ撃っていいかな? いいよね?
「ホントに新鮮だわ。あんたが女言葉で喋ってるなんて」
「何回目よ。その台詞」
「だって面白いんだもん」
「…………」
「…………」
「…………」
「……何か喋ってよ」
「…………」
「ほう、だんまりを決め込む気かしら」
「…………」
「じゃあ、こういうのはどうかしら?」
「え、わっ」
霊夢はいきなり私の腋をくすぐってきた。
「ちょっ。や、やめてよ。霊夢っ」
「アハハ。魔理沙かわいい」
「だ、だめ。もう、やめてっ……」
「アハハハハ」
「…ってんでしょうがっ!」
「いた!」
あ。
反射的に殴っちゃった。
しかもグーで。
「もう、殴ることないでしょ!」
「あ、あんたが悪いんじゃない!」
「…………ぷっ」
「……あ……」
「あはははは、やっぱり魔理沙、かわいい!」
「~~~~!!」
顔が火照る。
私は羞恥心に耐えられなくなり、その場から飛んで逃げようとしたが。
「あら」
予期せぬ第三者に出会ってしまった。
「アリス……」
「何やってんの?」
「え、や、別に」
くそ。
何だってこんな時に。
「ああ、アリス。いやね、今すごく面白いことがもぐふぁ」
とりあえず、このお喋り巫女の口を塞いでおく。
「?」
「ああ、何でもない。何でもないわ」
あ。
「え?」
キョトンとするアリス。
……抜かった。
「……魔理沙、今……」
「な、何でもない! 何でもないのよ!」
「…………ぷっ」
思わず吹くアリス。
「……あはっ。あはははは。何よその口調? あはははは」
耐え切れず、爆笑するアリス。
「…………」
それを沈黙で見守る私。
この状況に、一層ニヤニヤしている巫女。
……いっそ、殺して。
「ふーん、キノコでねぇ。まああんたらしいっちゃらしいけど」
「…………」
「もう、そんなにむすっとしなくてもいいじゃない」
「……ふん。アリスなんか嫌い」
「あらあら。嫌われちゃった」
クスクスと笑うアリス。
くそ。何を言っても笑われるのがオチか。
「でも、あんただって一応女の子なんだから、女言葉でも全然おかしくないわよ? ねえ、アリス」
「うん。そもそも魔理沙の場合、外見は普通に可愛い女の子なんだし」
「かっ、可愛い?」
「ええ。十分可愛らしいと思うけど」
さらっと言うな。
は、恥ずかしいだろ。
「おんやー、また赤くなってるわよ? 魔理沙ちゃん?」
ぐっ。黙れ巫女。赤いのはお前の方だろうが。
「まあでも、可愛いってのは同意だわ。ちっちゃいし」
「れ、霊夢だって私と大して変わらないでしょ!」
「そんなことないわよ。私の方が3センチは高いもの」
「さ、3センチくらい、すぐに追い抜いてやるわよ!」
「まーまー、そうカッカしないの。どのみち十分ちっちゃいんだし」
アリスが私の頭に手を置いて言う。
「うー……」
私より頭一つ分は背の高いアリスに言われては、黙らざるをえなかった。
「まあいいじゃない。その口調もすぐに治るみたいだし、今は割り切って楽しみなさいな。それに背もすぐに伸びるわよ」
なんかすごく適当なことを言われているような気がするが、実際適当に言っているのだろう。
アリスは案外そういうところがある。
……まあでも。
確かに、それも一理あるかもしれない。
普段なら、やろうと思ってもできないことだし。
……恥ずかしくて。
「……そうね。たまには……女の子らしく、してみようかしら」
「…………」
「…………」
「……な、何よその反応……」
「…………ぷっ」
「…………くっ」
「「あはははっはははは!!!!」」
「…………」
「だ、ダメ……やっぱりおかしい、耐えられない」
「わ、笑っちゃだめよ霊夢……うくく」
「だって、ま、まりさが、まりさが、『かしら』って…くくっ」
「あはは、た、確かにすんごい違和感……ぷくく」
「…………」
「ひー、苦しい……ね、ねえ魔理沙、次は涙目で『もう、いい加減にしてよ!』って言って」
「あ、それより真っ赤になって『私、チビじゃないもん!』とかの方が」
「あーそれも捨てがたい!」
「ほら魔理沙!」
「魔理沙!」
「…………」
ますたーすぱーく。
その後には何も残らなかった。
やっぱり私には似合わないな。
うん。
完
よく寝た。
寝ぼけ眼をごしごしこすりながらカーテンを開ける。
空は快晴。雲ひとつない。
うんうん。よきかなよきかな。
よし、こんな日は神社に遊びに行くに限るぜ。
朝食を済ませ、いつもの服に身を包む。
ぽふっとお気に入りの帽子を被り、箒に跨る。
さあ行くぜ。
風を切って一気に飛び立つ。
太陽が眩しいぜ。
空を優雅に散歩すること数分。
神社を見つけて急降下。
縁側でくつろぐ巫女を確認。
十時のおやつは饅頭か。
「おはよう、霊夢」
ん?
「あ、うん。おはよう。魔理沙」
少しキョトンとしている霊夢。
いや、多分私もだ。
「どうしたの、いやに改まって」
「いや別に。そんなことはないわよ」
……ん?
「…………」
目をパチクリさせている霊夢。
いや、確実に私もだ。
「ど、どうしたのよ」
「いやだから、何でもないって言ってるじゃないの」
…………。
「……あのねー、何考えてるのか知らないけど、やめなさい。気持ち悪いから」
霊夢が眉をひそめながら言った。
「いや、ちょっと待ってよ。私は本当に何も……」
流石に途中で口に手を当てた。
あれ?
あれれ??
何だ、コレ。
「……魔理沙?」
「…………」
霊夢の訝しげな視線に、私は沈黙で答えるしかなかった。
「また変なキノコでも食べたんでしょう」
永琳の診断は早かった。
「いやでも、キノコなんかでこんな風になるなんて……」
「あなた、今朝は何を食べたの?」
「森で取ったキノコを煮たスープ」
「決まりね」
「ちょっ。ちゃんと診てよ!」
うわ。自分でも背中がぞくっとする。
「間違いないわ。そのキノコの影響であなたは普段とは違う口調――女言葉で話すようになったのよ」
「そ、そんな」
「まあいいじゃないの。所詮キノコの影響なんだから、2~3日もすれば治るはずよ」
「そういうもんなの?」
「そういうもんよ。なぜなら、普通はそれくらいの期間で完全に体外に排せ」
「あー、それは言わなくていい」
「ま、そういうことだから。気にすることはないわ」
そんな感じで早々と永遠亭から締め出されてしまった。
くそう。
なんだってこんな目に遭わねばならんのか。
まあでも、永琳の言うとおりなら、そう心配することもないか。
要は喋らなければいいのだから、2、3日の間、極力人と会わないように、家で大人しくしておけばいいだけのことだ。
……そう思っていたのだが。
「ま~り~さ」
「わ! 霊夢! いつのまに」
「いや、つい気になったもんで」
「もう、明らかに興味本位って感じじゃない」
言いながら、頬が赤くなっているのが自分でも分かる。
ああくそ、なんだこの羞恥プレイ。
「へー、キノコの影響ねぇ」
ニヤニヤしながら霊夢はついてくる。
くそ、なんて鬱陶しい巫女なんだ。
「ねえ魔理沙。折角なんだからもっと喋りなさいよ」
「い、嫌よ。……あっ」
「…………」
ニヤリとほくそ笑む霊夢。
……ああもう、マスパ撃っていいかな? いいよね?
「ホントに新鮮だわ。あんたが女言葉で喋ってるなんて」
「何回目よ。その台詞」
「だって面白いんだもん」
「…………」
「…………」
「…………」
「……何か喋ってよ」
「…………」
「ほう、だんまりを決め込む気かしら」
「…………」
「じゃあ、こういうのはどうかしら?」
「え、わっ」
霊夢はいきなり私の腋をくすぐってきた。
「ちょっ。や、やめてよ。霊夢っ」
「アハハ。魔理沙かわいい」
「だ、だめ。もう、やめてっ……」
「アハハハハ」
「…ってんでしょうがっ!」
「いた!」
あ。
反射的に殴っちゃった。
しかもグーで。
「もう、殴ることないでしょ!」
「あ、あんたが悪いんじゃない!」
「…………ぷっ」
「……あ……」
「あはははは、やっぱり魔理沙、かわいい!」
「~~~~!!」
顔が火照る。
私は羞恥心に耐えられなくなり、その場から飛んで逃げようとしたが。
「あら」
予期せぬ第三者に出会ってしまった。
「アリス……」
「何やってんの?」
「え、や、別に」
くそ。
何だってこんな時に。
「ああ、アリス。いやね、今すごく面白いことがもぐふぁ」
とりあえず、このお喋り巫女の口を塞いでおく。
「?」
「ああ、何でもない。何でもないわ」
あ。
「え?」
キョトンとするアリス。
……抜かった。
「……魔理沙、今……」
「な、何でもない! 何でもないのよ!」
「…………ぷっ」
思わず吹くアリス。
「……あはっ。あはははは。何よその口調? あはははは」
耐え切れず、爆笑するアリス。
「…………」
それを沈黙で見守る私。
この状況に、一層ニヤニヤしている巫女。
……いっそ、殺して。
「ふーん、キノコでねぇ。まああんたらしいっちゃらしいけど」
「…………」
「もう、そんなにむすっとしなくてもいいじゃない」
「……ふん。アリスなんか嫌い」
「あらあら。嫌われちゃった」
クスクスと笑うアリス。
くそ。何を言っても笑われるのがオチか。
「でも、あんただって一応女の子なんだから、女言葉でも全然おかしくないわよ? ねえ、アリス」
「うん。そもそも魔理沙の場合、外見は普通に可愛い女の子なんだし」
「かっ、可愛い?」
「ええ。十分可愛らしいと思うけど」
さらっと言うな。
は、恥ずかしいだろ。
「おんやー、また赤くなってるわよ? 魔理沙ちゃん?」
ぐっ。黙れ巫女。赤いのはお前の方だろうが。
「まあでも、可愛いってのは同意だわ。ちっちゃいし」
「れ、霊夢だって私と大して変わらないでしょ!」
「そんなことないわよ。私の方が3センチは高いもの」
「さ、3センチくらい、すぐに追い抜いてやるわよ!」
「まーまー、そうカッカしないの。どのみち十分ちっちゃいんだし」
アリスが私の頭に手を置いて言う。
「うー……」
私より頭一つ分は背の高いアリスに言われては、黙らざるをえなかった。
「まあいいじゃない。その口調もすぐに治るみたいだし、今は割り切って楽しみなさいな。それに背もすぐに伸びるわよ」
なんかすごく適当なことを言われているような気がするが、実際適当に言っているのだろう。
アリスは案外そういうところがある。
……まあでも。
確かに、それも一理あるかもしれない。
普段なら、やろうと思ってもできないことだし。
……恥ずかしくて。
「……そうね。たまには……女の子らしく、してみようかしら」
「…………」
「…………」
「……な、何よその反応……」
「…………ぷっ」
「…………くっ」
「「あはははっはははは!!!!」」
「…………」
「だ、ダメ……やっぱりおかしい、耐えられない」
「わ、笑っちゃだめよ霊夢……うくく」
「だって、ま、まりさが、まりさが、『かしら』って…くくっ」
「あはは、た、確かにすんごい違和感……ぷくく」
「…………」
「ひー、苦しい……ね、ねえ魔理沙、次は涙目で『もう、いい加減にしてよ!』って言って」
「あ、それより真っ赤になって『私、チビじゃないもん!』とかの方が」
「あーそれも捨てがたい!」
「ほら魔理沙!」
「魔理沙!」
「…………」
ますたーすぱーく。
その後には何も残らなかった。
やっぱり私には似合わないな。
うん。
完
普段男勝りで勝ち気な魔理沙が女の子らしくなると
ここまでの破壊力とは
まさに後には何も残らない
なんでかわからんが、魔理沙がオカマっぽく能内再生された。別にウフフ魔理沙(黒歴史・ブラックヒストリィ)では普通に感じるのに、今回に限ってなぜか。
……GJ
魔理沙を愛でる会はもっと広がるべき。