「かっなこっだよ~♪」
「…」
「なんだいその眼は」
「いや…」
神奈子と諏訪子の目の前には、生まれたての小さな女の子。
ベビーベットの上でしきりに手足を動かしていた。
「可愛いなぁ、可愛いなぁ…!」
「うん。可愛いねぇ…これが今代の、私達の風祝なんだね」
「そうさ!見てみな、手なんかこんなにちっちゃくて、足だって…ああほら、そんなに動かしたらぶつけちゃうだろ」
「大丈夫だって」
二人並んで嬉しそうにベビーベットを覗き込む姿は、まるでわが子を見守る親の様。
「この子が私達を祀ってくれるようになるまでどの位掛かるのかねぇ」
「さぁね。少なくとも一人で立てるようにならなきゃ無理だろうねぇ」
「そうかそうか。早く立たないかなぁ♪」
「一週間前に退院してきたばっかりで立つ訳ないだろ」
「
…立たないの?
」
「…鹿じゃないんだから」
本気で残念がる神奈子に、諏訪子は
(コイツ…今まで赤ん坊見たことないんか)
と訝しげな視線を送っていた。
何時しか話はこの赤子を風祝としてどうやって育てていくかと言う内容になっていた。
「だからさ、やっぱりこの子は私達が育てるべきなんじゃない?」
「人の胎から生まれた子を、どうやって私達が育てられる?」
「どうやってって…ぼ……母乳?………出すよ、私。頑張って出すよ!?」
「そう言う話じゃない!?」
思考が火星までぶっ飛んだ神奈子に、諏訪子はすかさず突っ込みを入れる。
「信仰を失った私達はとても曖昧。何時消えてしまうかわからないのに」
「消えないようにするために、この子がいるんじゃないか」
「そうじゃないだろ。そうじゃないんだ。私達は神で、この子はまだ、人間だ。人って言うのは制約だらけなんだ」
「……」
「それにこの御時世だ、たとい私達が人の姿をとって現れたとして、『この子を育てたい』なんて言える筈もない。
それがわからないあんたじゃないはずだよ、神奈子」
「……」
「焦るなよ、この子は確かに風祝なんだ。いずれ時が来れば、否応なく私達はこの子の前に姿を現さなくちゃいけないんだ…神奈子?」
「…ん?あ、そうね。可愛いわよねぇ~」
「あそうですか聞いてなかった、真面目損ですねわかりましたもういいです」
「可愛い~超カワイイ~」
初めから諏訪子の話はあんまり聞いてもらえてなかったようだ。
嬉しそうに赤子を見つめる神奈子の横顔に、これ以上は言うだけ無駄だと思い知る。
諏訪子はひとつ溜息をついて、やれやれと肩を竦めながら苦笑した。
触れることは叶わない。
それでも構わないと、神奈子は微笑みながらそろりと手を伸ばした。
「いいかい、私達はお前を待ってる。だから、早く私達の所に来なさい。私達は、いつまでもお前を見守っているから」
そうしてそよ風の様にゆるりと頬を撫でれば。
「…笑った!こっち見て笑ったよ、諏訪子!」
嬉しそうにはしゃぐ神奈子に、諏訪子も笑顔で返した。
「あぁ…この子には私達が、ちゃんと見えてるんだね…」
二人は並んで愛しい命を見つめていた。
いつまでもいつまでも。
いつかの別れの日が来る時まで。
「生まれてきてくれてありがとう、早苗」
「…」
「なんだいその眼は」
「いや…」
神奈子と諏訪子の目の前には、生まれたての小さな女の子。
ベビーベットの上でしきりに手足を動かしていた。
「可愛いなぁ、可愛いなぁ…!」
「うん。可愛いねぇ…これが今代の、私達の風祝なんだね」
「そうさ!見てみな、手なんかこんなにちっちゃくて、足だって…ああほら、そんなに動かしたらぶつけちゃうだろ」
「大丈夫だって」
二人並んで嬉しそうにベビーベットを覗き込む姿は、まるでわが子を見守る親の様。
「この子が私達を祀ってくれるようになるまでどの位掛かるのかねぇ」
「さぁね。少なくとも一人で立てるようにならなきゃ無理だろうねぇ」
「そうかそうか。早く立たないかなぁ♪」
「一週間前に退院してきたばっかりで立つ訳ないだろ」
「
…立たないの?
」
「…鹿じゃないんだから」
本気で残念がる神奈子に、諏訪子は
(コイツ…今まで赤ん坊見たことないんか)
と訝しげな視線を送っていた。
何時しか話はこの赤子を風祝としてどうやって育てていくかと言う内容になっていた。
「だからさ、やっぱりこの子は私達が育てるべきなんじゃない?」
「人の胎から生まれた子を、どうやって私達が育てられる?」
「どうやってって…ぼ……母乳?………出すよ、私。頑張って出すよ!?」
「そう言う話じゃない!?」
思考が火星までぶっ飛んだ神奈子に、諏訪子はすかさず突っ込みを入れる。
「信仰を失った私達はとても曖昧。何時消えてしまうかわからないのに」
「消えないようにするために、この子がいるんじゃないか」
「そうじゃないだろ。そうじゃないんだ。私達は神で、この子はまだ、人間だ。人って言うのは制約だらけなんだ」
「……」
「それにこの御時世だ、たとい私達が人の姿をとって現れたとして、『この子を育てたい』なんて言える筈もない。
それがわからないあんたじゃないはずだよ、神奈子」
「……」
「焦るなよ、この子は確かに風祝なんだ。いずれ時が来れば、否応なく私達はこの子の前に姿を現さなくちゃいけないんだ…神奈子?」
「…ん?あ、そうね。可愛いわよねぇ~」
「あそうですか聞いてなかった、真面目損ですねわかりましたもういいです」
「可愛い~超カワイイ~」
初めから諏訪子の話はあんまり聞いてもらえてなかったようだ。
嬉しそうに赤子を見つめる神奈子の横顔に、これ以上は言うだけ無駄だと思い知る。
諏訪子はひとつ溜息をついて、やれやれと肩を竦めながら苦笑した。
触れることは叶わない。
それでも構わないと、神奈子は微笑みながらそろりと手を伸ばした。
「いいかい、私達はお前を待ってる。だから、早く私達の所に来なさい。私達は、いつまでもお前を見守っているから」
そうしてそよ風の様にゆるりと頬を撫でれば。
「…笑った!こっち見て笑ったよ、諏訪子!」
嬉しそうにはしゃぐ神奈子に、諏訪子も笑顔で返した。
「あぁ…この子には私達が、ちゃんと見えてるんだね…」
二人は並んで愛しい命を見つめていた。
いつまでもいつまでも。
いつかの別れの日が来る時まで。
「生まれてきてくれてありがとう、早苗」
えっ、早苗さんは諏訪さまの妹でしょう?(いやいや何の話だ)
むしろ神奈さまが諏訪さまの娘って脳内が囁くんですが。