何? 白玉楼で暮らしていた頃の話をしてくれ?
こんな爺に話しかけてきたから何かと思えば。
そんな話でいいのか。
それでは、まず何から話そうか。
そうだな、そうだ。
まず、私は数百年の間、庭師を務めておった。
ほんのしがない庭師だ。
朝起きて仕事をこなし、床に就いて、また起きる。
ときには門番のまね事をしたり、剣術などしてみたり。
ただそれだけの暮らしだったが、私は幸せだった。
ごほごほごほ。
失礼。
水を取ってくだされ。
ごくごくごく。
ごほごほごほ。
失礼。どうにも最近、体が弱くて……。情けない。
そう。生活は幸せだった。
なぜなら、私には可愛い孫がいたからだ。
私と同じ銀髪の女孫。
名前を妖夢という。
これがまた、小さくて、あどけないのがまたしても可愛くて。
この前、ようやく家事の手伝いなどするかと思ったが。
最近では、一丁前に剣を振り回し始めて嬉しいやら悲しいやら……。
そして、幽々子様。
私のお仕えするお嬢様。
心より敬愛して止まない。
その美しさは例えようもなく、それでいて気品があって、優しい。
透き通った白い肌。
静かで優雅な佇まい。
ともかく、私ごときの陳腐な言葉では言い表せるものではない。
いいのか。
こんな穴蔵の様な所で、くたばりかけた老いぼれの話など聞いていても何一つ面白くないだろう。
私?
私の体調?
何、そんなものはどうでもいい。
私など間もなく死んで行く身。
うっ。
ごほごほごほ。
失礼……。
私は、このような有様だが、あなたのような若い人に話を聞いて貰えるのが嬉しくて嬉しくて仕方がないのだ。
私のようなものが、少しでも役に立てるのなら、これ以上の喜びはありますまい。
誰しも多少なりはそう考えているはずでしょう。
楽しい月日はあっという間に過ぎるもの。
それこそ、矢の飛ぶように。
幽々子様がいつまでも美しいので、気付きなかったが。
ある時、己の衰えた手を見て、過ぎ去ってしまった途方もない年月に気付いた。
そして、その時には幽々子様の傍らに、私ではなく妖夢が座っていた。
時の流れは楽しく、そして平等に残酷。
それは年をとらない幽々子様にとっても同じこと。
ある日、私は白玉楼を出ることを決意した。
どうしてかって。
決まっている。
若い人よ。あなたにもいつか分かるだろうが、年を取った者に出来る最後の奉仕。
それは、道を譲ることだ。
満足に剣も振れぬ私は二人にとって、最早邪魔でしかない。
異論もあるだろうが、己として間違っているつもりはない。
そしてつい先日、私は修行の旅に出るとだけ告げて、白玉楼を去った。
それからはもう、このような調子だ。
修行など全くしていない。
当然のことだ。端から所行の旅などに出たのではない。何より、体が弱っていけない。
後は、ただ静かに死を待つのみ。
何。悲しくなどない。
あなたにもいつか分かるのだ。
ごほごほ。
失礼。どうにも咳が出て。
興奮したものだから、発作が起きそうだ。
度々、申し訳ない。
ごほごほ。
ああ。何とか大丈夫なようだ。
本当に発作が起きるといかん。
だが、私にも楽しみはあるのだ。
これを見てくれ。
月に二度届く手紙。
これらは幽々子様からのものなのだ。
大分積もったろう。
どれ。
実を言うと、今日も手紙が届いたのだ。
ちょうど、その日であってな。
ふふ。
まだ開けていないのだよ。
何なら。
君もいっしょに読んでみるか。
何。
読まれて困るようなことは書いていないさ。
さ。
どれどれ。
ええっと、何だって。
こんにちは妖忌。
修行を頑張っているみたいで何よりです。
妖夢も仕事を頑張っています。
最近などは、髪が伸びたので妖夢に切って、も、もらったのですが、
だ、だ、大分、き、き、切りすぎてしまったようで、おかっぱ頭になってしまいました。
こ、こ、れでは、これでは、恥ずかしくて里に、お、お買い物にもいけません。
な、な、何。
おかっぱだと。
おかっぱと申したか。
貴公、確かに申したな。
う。ごほごほ。いかん。
貴公。貴公。聞いたか。
う。うぐぐいぐぐ。
う。
う、う、うううううう。
ほ。ほ。ほああああああ。いかん。胸が痛い。胸が……。
幽々子!幽々子!幽々子!幽々子おぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!
あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!幽々子幽々子幽々子ぅううぁわぁああああ!!!
あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん
んはぁっ!西行寺幽々子たんの桃色ブロンドの髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!
間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!
妖々夢の幽々子たんかわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!
永夜抄自機決まって良かったね幽々子たん!あぁあああああ!かわいい!幽々子たん!かわいい!あっああぁああ!
求聞史紀も発売されて嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!
ぐあああああああああああ!!!ゲームなんて現実じゃない!!!!あ…幻想郷も白玉楼もよく考えたら…
幽 々 子 ち ゃ ん は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!!
そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!ババぁああああ!!
この!ちきしょー!やめてやる!!幻想郷なんかやめ…て…え!?見…てる?肖像画の幽々子ちゃんが僕を見てる?
肖像画の幽々子ちゃんが僕を見てるぞ!幽々子ちゃんが僕を見てるぞ!肖像画の幽々子ちゃんが僕を見てるぞ!!
油絵の幽々子ちゃんが僕に話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!
いやっほぉおおおおおおお!!!僕には幽々子ちゃんがいる!!やったよ紫!!ひとりでできるもん!!!
あ、永夜抄の幽々子ちゃああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!!
らっらんららっららんら藍様ぁあ!!萃香!!文ぁああああああ!!!妖夢ぁあああ!!
ううっうぅうう!!俺の想いよ幽々子へ届け!!おかっぱの幽々子へ届け!
はっ。
誠に申し訳ない。
また、このような発作が。
わしの体に時々、起こるのです……。
近頃はめっきり体が弱くなったもので。お恥ずかしい限りですわい。
ごほごほ。
こんな爺に話しかけてきたから何かと思えば。
そんな話でいいのか。
それでは、まず何から話そうか。
そうだな、そうだ。
まず、私は数百年の間、庭師を務めておった。
ほんのしがない庭師だ。
朝起きて仕事をこなし、床に就いて、また起きる。
ときには門番のまね事をしたり、剣術などしてみたり。
ただそれだけの暮らしだったが、私は幸せだった。
ごほごほごほ。
失礼。
水を取ってくだされ。
ごくごくごく。
ごほごほごほ。
失礼。どうにも最近、体が弱くて……。情けない。
そう。生活は幸せだった。
なぜなら、私には可愛い孫がいたからだ。
私と同じ銀髪の女孫。
名前を妖夢という。
これがまた、小さくて、あどけないのがまたしても可愛くて。
この前、ようやく家事の手伝いなどするかと思ったが。
最近では、一丁前に剣を振り回し始めて嬉しいやら悲しいやら……。
そして、幽々子様。
私のお仕えするお嬢様。
心より敬愛して止まない。
その美しさは例えようもなく、それでいて気品があって、優しい。
透き通った白い肌。
静かで優雅な佇まい。
ともかく、私ごときの陳腐な言葉では言い表せるものではない。
いいのか。
こんな穴蔵の様な所で、くたばりかけた老いぼれの話など聞いていても何一つ面白くないだろう。
私?
私の体調?
何、そんなものはどうでもいい。
私など間もなく死んで行く身。
うっ。
ごほごほごほ。
失礼……。
私は、このような有様だが、あなたのような若い人に話を聞いて貰えるのが嬉しくて嬉しくて仕方がないのだ。
私のようなものが、少しでも役に立てるのなら、これ以上の喜びはありますまい。
誰しも多少なりはそう考えているはずでしょう。
楽しい月日はあっという間に過ぎるもの。
それこそ、矢の飛ぶように。
幽々子様がいつまでも美しいので、気付きなかったが。
ある時、己の衰えた手を見て、過ぎ去ってしまった途方もない年月に気付いた。
そして、その時には幽々子様の傍らに、私ではなく妖夢が座っていた。
時の流れは楽しく、そして平等に残酷。
それは年をとらない幽々子様にとっても同じこと。
ある日、私は白玉楼を出ることを決意した。
どうしてかって。
決まっている。
若い人よ。あなたにもいつか分かるだろうが、年を取った者に出来る最後の奉仕。
それは、道を譲ることだ。
満足に剣も振れぬ私は二人にとって、最早邪魔でしかない。
異論もあるだろうが、己として間違っているつもりはない。
そしてつい先日、私は修行の旅に出るとだけ告げて、白玉楼を去った。
それからはもう、このような調子だ。
修行など全くしていない。
当然のことだ。端から所行の旅などに出たのではない。何より、体が弱っていけない。
後は、ただ静かに死を待つのみ。
何。悲しくなどない。
あなたにもいつか分かるのだ。
ごほごほ。
失礼。どうにも咳が出て。
興奮したものだから、発作が起きそうだ。
度々、申し訳ない。
ごほごほ。
ああ。何とか大丈夫なようだ。
本当に発作が起きるといかん。
だが、私にも楽しみはあるのだ。
これを見てくれ。
月に二度届く手紙。
これらは幽々子様からのものなのだ。
大分積もったろう。
どれ。
実を言うと、今日も手紙が届いたのだ。
ちょうど、その日であってな。
ふふ。
まだ開けていないのだよ。
何なら。
君もいっしょに読んでみるか。
何。
読まれて困るようなことは書いていないさ。
さ。
どれどれ。
ええっと、何だって。
こんにちは妖忌。
修行を頑張っているみたいで何よりです。
妖夢も仕事を頑張っています。
最近などは、髪が伸びたので妖夢に切って、も、もらったのですが、
だ、だ、大分、き、き、切りすぎてしまったようで、おかっぱ頭になってしまいました。
こ、こ、れでは、これでは、恥ずかしくて里に、お、お買い物にもいけません。
な、な、何。
おかっぱだと。
おかっぱと申したか。
貴公、確かに申したな。
う。ごほごほ。いかん。
貴公。貴公。聞いたか。
う。うぐぐいぐぐ。
う。
う、う、うううううう。
ほ。ほ。ほああああああ。いかん。胸が痛い。胸が……。
幽々子!幽々子!幽々子!幽々子おぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!
あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!幽々子幽々子幽々子ぅううぁわぁああああ!!!
あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん
んはぁっ!西行寺幽々子たんの桃色ブロンドの髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!
間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!
妖々夢の幽々子たんかわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!
永夜抄自機決まって良かったね幽々子たん!あぁあああああ!かわいい!幽々子たん!かわいい!あっああぁああ!
求聞史紀も発売されて嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!
ぐあああああああああああ!!!ゲームなんて現実じゃない!!!!あ…幻想郷も白玉楼もよく考えたら…
幽 々 子 ち ゃ ん は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!!
そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!ババぁああああ!!
この!ちきしょー!やめてやる!!幻想郷なんかやめ…て…え!?見…てる?肖像画の幽々子ちゃんが僕を見てる?
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油絵の幽々子ちゃんが僕に話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!
いやっほぉおおおおおおお!!!僕には幽々子ちゃんがいる!!やったよ紫!!ひとりでできるもん!!!
あ、永夜抄の幽々子ちゃああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!!
らっらんららっららんら藍様ぁあ!!萃香!!文ぁああああああ!!!妖夢ぁあああ!!
ううっうぅうう!!俺の想いよ幽々子へ届け!!おかっぱの幽々子へ届け!
はっ。
誠に申し訳ない。
また、このような発作が。
わしの体に時々、起こるのです……。
近頃はめっきり体が弱くなったもので。お恥ずかしい限りですわい。
ごほごほ。
固定ファンが盛り上げてくれるんだろうけど
うわ……って口に出しちゃいましたわ……
次も期待してます
普通に予測できなかったし。
ま、知っててもドン引きするぐらいつまらないけどな。
深読みかもしれんが少し考えてみたら鳥肌がたった。
これは妖忌本人の話(誰かが妖忌の話を聞いてる状況)ではない。
話をしてるのは現実世界の精神病患者。
話を聴いているのは現実世界のカウンセラー。
妖忌はゲーム(或いは本)の中で(設定として)存在はしているが実際に現れたことはない。
こういうキャラクターっていうのは現実世界の誰かが自己を投影しやすいキャラクター。
幽々子に心酔してる現実世界の誰かが、幻想(フィクション)との境界もわからずなりきるには適している。
妖忌が男ということもよりいっそうプラスになる。
整理する。
この噺の登場人物は、
・自分の事を妖忌だと本気で思いこんで、口調まで真似て、自分が幻想郷の中に存在することを信じる精神病患者
・二次元と現実の区別がつかない精神病患者を相手にするカウンセラー
の二人だけ。
芥川龍之介の河童みたいな感じですか。
アレはオチが怖かった。
作者の度量に乾杯!