Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

神器は適切な用法・用量を守って使いましょう

2009/05/15 13:57:01
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三種の神器、と聞いて人は何を想像するだろうか。
多くの者は、はるか古事記の時代よりこの国の帝が受け継いで来たという鏡・剣・玉の三つ、すなわち原初の意味での三種の神器『八咫鏡』『天叢雲剣』『八尺瓊勾玉』を思い浮かべるだろう。
もしかしたら最近幻想郷に入ってきている、家電三種の神器と呼ばれる『白黒テレビ』『洗濯機』『冷蔵庫』をイメージする者もいるかもしれない。もっとも、幻想郷に入ってきているとはいえ稼動することはないのだが。駆動力無くして動く事のない外の道具達は、せいぜい河童の集落やこの香霖堂くらいでしか歓迎されることは無い。世間では八雲紫の家でひっそりと稼動している、と誠しやかに囁かれてはいるが、それは事実だ。テレビはともかく、洗濯機と冷蔵庫は自分から動き回ることがおっくうな僕にとってはひどく羨ましいものだった。しかしそんな八雲紫でも未だ手の届かない神器もある。
それは紅魔館のメイドや、少し前に幻想郷にやって来るなり霊夢達と一騒動起こした山の神社の三人ならその利便性をありありと語ってくれるであろう、『カラーテレビ』『クーラー』そして『自動車』、そう、通称3Cだ。特にクーラーに関しては、どうやら僕の家にあるストーブと真逆のことができるらしい。すなわち周囲の気温を下げることができるというのだ。香霖堂の冬の生活水準はストーブによって大幅な改善がされており、今では霊夢や魔理沙だけでなく、レミリアや御付きのメイドがストーブの前まで丸まりに来る事もある。レミリアに至っては今年の冬には毎日のように来ていた。

―――私は買い物のついでにここに暖まりに来ているだけ。わざわざ貴方の顔を見に来ているわけではないのよ。そこのところを勘違いしないようにしなさい、店主。さぁ、わかったら早くこちらにきて膝を貸しなさい。畳だったかしら?この床だけはどれだけ経っても慣れないわ―――

はぁ。まったくこの僕が何を勘違いするというのか。あれほどストレートに好意をぶつけてきて勘違いも何もないだろう。わざわざ春度事変の吹雪の中、ガチガチ震えながら買い物に来る事などあるまい。照れ隠しの言動などまさに子供で可愛いものだ。今度来たら飴玉でもあげてみるとしようか。きっと喜ぶだろう。
気付けば思考がそれてしまっていたが、とにかくクーラーだ。夏場でも服を変えることのない僕にとってはクーラーはあまりにも魅力的だ。夏はクーラー、冬はストーブ。考えるだけでも素晴らしい環境じゃないか。読書も進むに違いない。八雲紫に頼んでみるのも一興か。

何にせよ、このように三種の神器とは実は相当の種類がある。しかしその全てに共通していることが二つだけある。一つはそれらの神器全てが非常に大きな力を持っていること。もう一つはどれもが誤った使用方法をすれば使用者自身に大きな反作用をもたらすということだ。かつて神々や大いなる王たちが使用したほどの力を用いるには、それなりに適切な用法というものが必要になるのだ。

そんな神器を扱う者として、僕は自身がまさに適切な人間だと思っていた。
名前と用途がわかる程度の能力―――僕のこの能力を用いることによって、それら神器の用途から適切な用法を想像するのはそう難しいことでは無い。だから僕はそう深く考えることなく、気軽に手を出してしまったのだ。無縁塚から新しく幻想郷に入ってきた、とある三種の神器に。
この幻想郷の端で細々と道具屋を営む僕にとって、霊夢や魔理沙のように幻想郷全てを覆うような異変を解決するほどの力は必要が無い。ただ、何かあった時のために目の前の相手一人をどうにかできる程度の力があればいい。その三種の神器のうちどれもが、そんな僕にとってまさにうってつけとしかいいようのないものだった。

僕は無縁塚に落ちていたその三種の神器―――いや、正確に言えばその三種の神技、というべきか。それらが描かれた書を手に、修行に励んだ。流石はこの僕森近霖之助というべきか、神技の用法は書を一目見ただけで理解できたが、あいにくそれを行使するための肉体が無かったからだ。
半分ほど混じった妖怪の血のせいか、僕は日に日に実力を付けていった。そして修行が終わった時、僕の体は大いなる筋肉の鎧に包まれていた。流石はブルワーカー。もうヒョロ男だなんて呼ばせない。わざわざ八雲紫に頼んで通販してもらった甲斐があったというものだ。

そんな体を手に入れた僕が次に踏むべきステップは実践しかなかった。
先日、僕は紅魔館一の、いや幻想郷一のタフネスを誇るという門番の紅氏に実験台になってもらうように頼んだのだ。永遠亭の彼女達でもよかったのだが、例え一時的とはいえ人を死なせてしまうのは後味が悪い。紅氏はそう言う僕を、新たな武術の体得のためといって心から歓迎してくれた。名前を知り、用途を知り、用法を知り、体を鍛え、相手を見つけ、完璧な実践の場を用意したというのに。

―――ああ。それなのに。

包帯まみれの僕が一刻ほど前にここで眼を覚ましたことが全てを物語っている。僕は、間違ったのだ。

紅氏に間違った神技を行使した僕を待っていたのは、かつてその技を使用したという王が奉られる神殿から放たれた裁きの雷だった。
雷に打たれ、技の途中で失速して落ちてゆく僕を抱きとめてくれた紅氏によって幸いにして僕は一命を取り留めていた。

今になって思うのは、やはり三種の神器とは人間の手に余る力だということだ。古来より選ばれし者のみに受け継がれてきた神器たち。そう易々と手を出すべき代物ではなかったと言う事か。高い授業料ではあったが、いい体験にはなったか。
あの神技の書は早いうちに焼き捨てておいたほうがいいだろう。魔理沙が見つけたりしたらどうなるかわかったものではない。



あぁ、それにしても。

ちゃんとあの絵に描いてあった通りにやったのに、一体何が間違っていたんだろうなぁ。あのマッスルリベンジャー。
「ほら店主、この夜の女王レミリア・スカーレットが来てやったわよ」
「あぁ、君か。今見ての通り動けなくてね。代わりに彼等が店のことや周りのことをやってくれてるから、構ってもらうといい」
「香霖堂ゼブラ!!」
「香霖堂マリポーサ!!」
「香霖堂ソルジャー!!」
「香霖堂ビッグボディ!!」
「香霖堂スーパーフェニックス!!」

「「「「「よく来たな、飴をやろう」」」」」

「神槍ッッ!グングニルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

どうもこんにちは。プチでは初めまして、デンです。
アタル版マッスルスパークとスグル版マッスルスパークは二つとも未完成なのに、マリポーサが打った偽リベンジャーの時と違ってキン肉大神殿から雷が落ちてこなかったのは何故なのかと先日上司に相談したら『そんなこと俺にわかるか。だって、オラは人間だから……』とか言われて噴出した時に思いついた一発ネタでした。
キン肉マンがわからないとサッパリ意味不明だと思います。ごめんなさい。

余談ではありますがビッグボディが大好きです。何が知性だ!


それではまたいつか。

*
誤字のご指摘、ありがとうございました。
一番やっちゃいけないキャラ名の間違い。もうちょっとしっかり推敲するようにいたします。
デン
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
上司ジェロニモかよ……
2.名前が無い程度の能力削除
すまない、正直あとがきのジェロニモ上司で一番吹いた
3.名前が無い程度の能力削除
たしかに三種の神器だが、その発想はなかった。
偽マッスルリベンジャーやってるの想像するとシュールすぎるwww
そしてジェロニモ上司のノリよすぎだろw
あとお嬢様が可愛い。
4.名前が無い程度の能力削除
とりあえず霖之助が霖乃助になってますよ。
5.名前が無い程度の能力削除
丁度この前キン肉マン読み終えて、レオパルドンについて調べまわってるところだったと言うのにお前と来たら!
6.名前が無い程度の能力削除
いい仕事場じゃないか!
7.名前が無い程度の能力削除
それを言ったら、ゼブラのインフェルノも脱出成功=未完成か偽物のはずなのに。うーん気になる。
8.名前が無い程度の能力削除
え、ビッグボディってあのマンモスマンより弱いっぽい
9.名前が無い程度の能力削除
あとがきの香霖堂店主争奪戦とジェロニモ上司で一番吹いた
10.名前が無い程度の能力削除
ゼブラのインフェルノは精神力が未熟なので未完成、との事
それはともかく、タグはそういう意味かwww
11.名前が無い程度の能力削除
筋肉マンがわからない俺には、ぬかりだらけだった。
だけど、ツンデレるレミリアの可愛さがハンパなかったので
オールオッケーです。
12.名前が無い程度の能力削除
マッスルリベンジャーするマッチョ香霖とかシュールすぐるw
13.名前が無い程度の能力削除
草薙の剣を所持してんじゃん
14.名前が無い程度の能力削除
Welcome to 幻想郷
15.名前が無い程度の能力削除
勘違いしてないようで勘違いしている予感w
16.名前が無い程度の能力削除
>あれほどストレートに好意をぶつけてきて勘違いも何もないだろう。
>今度来たら飴玉でもあげてみるとしようか。

あんた「好意」を履き違えてるだろwww