むかしむかし、ある荒野にライオンがいました。
そのライオンはとても力が強いけど、足の遅い雌のライオンでした。
足が遅いことを理由にからかわれていたライオンは、次第に他のライオンと距離を取り始めます。
でも、足が遅かったのでまったく獲物をとることができませんでした。
倒れたほかの動物を捜しては貪る日々でした。
苦労してたまに獲得できる新鮮な馬さんも後からやってきた雄のライオンに横取りされてしまいます。
そして可哀想な雌のライオンは雄のライオンに手を出してしまいました。
動物界の掟をやぶってしまった可哀想な雌のライオンは、もうライオン達の前に姿を現すことはできません。
雌のライオンは荒野を追われてしまいました。
荒野を追われてしまった雌のライオンは、あてもなく野をさまよっていました。
他のライオンに見つかってしまわないように。
逃げるようにしてふらつく雌のライオンは、ひとつの小さな太陽を見つけました。
背はまっすぐで緑色の身体をしている。
頭は茶色くて、黄色い葉っぱをたくさんつけている。
顔はまっすぐに大きなお天道様に向けられていた。
──お前は私をいじめる?
──お前は私から逃げる?
小さな太陽は答えない。
──……あなたは私から逃げない?
半ば顔に諦めの色を浮かべながら問うた。
小さな太陽は、うん、と頷いたような気がした。
ある日から、ライオンは小さな太陽に恋をした。
──名前は?
──何をしているの?
──どうしてそんなにきれいなの?
──あなたは皆に愛されているの?
──ヒマワリさん、
流れる日々の果てに、ライオンは深い深い眠りについた。
その体はもう見えない。
目が無いのか。身体が無いのか。わからない。
声、声が聞こえる。耳は生きているのか。わからない。
『私は幻想郷の母』
──誰?
『あなたに、人形をあげましょう』
人形?
『中にはあなたを込める』
私を?
『ほしいもの、あとひとつ。あげる』
──ずっと、ヒマワリさんといたい。
気まぐれ妖怪の気まぐれ。
ライオン、否、人形は目覚めた。
地面についた手が柔らかい土の感触を感じ取った。
「…??」
辺りは土一色。青い空にはいつか見たお天道様がまばゆい輝きを放っている。
辺りを見回す人形は、産み落とされたばかりの子馬のように辺りをきょろきょろと見回す。
使い方のわからない脚で、立つこともままならない。
「ヒマワリ、さん…」
気付くとそこにはいつか見た、相変わらずお天道様を見上げている小さな太陽があった。
安堵した人形は、そのまま意識を手放した。
夢を見た。
辺り一面向日葵でいっぱいで。
私はこの二本の脚で立って歩いてた。
そして疲れたら眠るの。
寝てるのにまた寝るなんて変だけど。
大きなヒマワリさんと一緒に寝た。
何か言っていたような気がするけど、覚えてない。
何かを教えてもらった気がする。
彼女は、目を覚ました。
すっくと二本の脚で立ち上がり、辺りを見回すと黄色一色だった。
もっとよぉく見ると、彼女はとてもとても大きなヒマワリの上に居た。
「きれい…」
彼女は眼前に広がる黄色に胸を躍らせて、向日葵畑にとびこんだ。
雲一つない空にあるお天道様がてらす向日葵畑はとても美しくて、哀しくて。
「ねぇ、ねぇってば!このヒマワリって全部ゆうかの?」
向日葵畑に、氷精が来た。
「…え?あ、いや、違うわよ」
「でもゆうかが育ててたじゃん」
「私は見守っていただけだから」
「ふーん、そうか~」
「あ、そうだ」
幽香は思い出したように言う。
そしておもむろにヒマワリの茎の下のほうを持つと、いとも容易く引き抜いてしまった。
「ゆ、ゆうか!そんなことしていいの!?」
「今日は気分がいいから…」
「えっ、あたいに?」
「あなたにも似合うと思ったから」
「ありがとう、ゆうか!ちょっと自慢してくるね!」
向日葵畑に来る人物が、増えたような気がする。
今でも一番好きな花はヒマワリさん。
ともあれよかったです。この切ない雰囲気が。
それはそうと、改名後の名前にもある種の危ない感じがするように感じるのは
きっと私の心が汚れきっているからに違いない。
きっとそうだ。
良かった。
花を操る程度の能力が可愛く思えてきたw
こんな経緯もアリか、って
>3
おや?上に仲間がいるようだ・・・・
>1番目の名無しさん
超越者の彼らの前では僕は霞んでしまいますが、しっとりしたお話をば。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
>2番目の名無しさん
ありがとうございます。もっといい作品を作り上げるべく努力致しますですよぉ。
>3番目の名無しさん
そう、その通り…!僕はルビをつけるならヒトカタと振るでしょう。
それはそうと、危ないというか大切なことなので問題ナシ。(そういう問題か
>4番目の名無しさん
その通りですっ。ライオンのお話の辺りはダンデライオンからイメージを頂いたり。
良かった、その一言ほど嬉しいものはありませんな。
>5番目の名無しさん
元ネタはとてもいい曲ですしね。孤独な強者、ということでゆうかりんと重ねてみました。
おまけみたいな力の理由はこんなことがありまして、とかだと萌える。
>奇声を発する程度の能力さん
その一言がもらえるだけで次の作品への意欲が沸いてきます。ありがとうございます。
人形→ヒトカタ、ひとのかたち、って結構ありますよね。好きな言い回しの一つです。
つまりゆっかさんはチーちゃんの嫁兼ひまわりの娘さんだったのですよ(亜阿双壊)
故にチーちゃんはひまわりに認められ、末永く幸せにちゅっちゅしたとか。
ゆっかさんにときめき、チーちゃんにニヤニヤしました。
ぺこり。