カランカラン、と霧雨道具店の入り口の鈴の音が響く。
店の奥にいる店主はその音を聞き、店のレジのあるカウンターから声を掛ける。
「へい、いらっしゃ……」
しかし、店主の声は最後まで紡がれることはなかった。
店内に入ってきた彼をその目で見た瞬間、店主は息を詰まらせた。
ゆっくりとカウンターまで近付いてくる彼に、心臓の動悸がおかしくなるのを感じる。
その彼、とは――
「お久しぶりですね、霧雨、魔理夫さん――」
「り、霖之助……」
――自分の愛弟子にして、香霖堂店主。
森近霖之助、まさにその人であった。
◆
「ここで待っていろ。お茶と茶菓子を持って来る」
「すみません、わざわざ」
「なに、久しぶりにお前から出向いてくれたんだ。これくらいはさせてもらうさ」
魔理夫は普段の厳しい顔つきからは想像しがたいくらい優しく微笑むと、道具店の奥の和室に霖之助を残したまま、台所へと向かった。
「ふう……」
和室を出て行った魔理夫を見送った後、霖之助はそれまで座布団の上で正座していた足を崩し、息を一つ吐いた。
彼が最後に霧雨道具店を訪れたのは、もう何年前のことだろうか。
魔理沙が、勘当されることになった時以来かもしれない。
霖之助はそれ以来霧雨道具店を出て、香霖堂を営み、晴耕雨読の日々を送っていた。
魔理沙も少女の頃はよく香霖堂に訪れていたが、少し成長して世間に大人と認められる年齢になった頃には、魔法の研究に夢中で、香霖堂にめっきり姿を見せなくなってしまっていた。
それが、霖之助にとって寂しくなかった訳ではない。
何かが、足りない日々。
何かが、欠けている日々。
霖之助は気分転換のために店を休みにして、人里までぶらつくことにした。
人里まで珍しく出歩いたのはいいものの、特に行く当てもなく、霖之助は気が付いたら霧雨道具店の前に立っていた。
そして、吸い込まれるようにふらふらと店の中へ入ったのだった。
「霖之助、ほらお茶だ。茶菓子は……煎餅でいいか?」
その言葉に霖之助はハッとした。
顔を上げると、魔理夫がお盆の上から、お茶の入った二つの湯飲みとお茶請けの入った器を、長テーブルの上に置こうとしているところだった。
「ええ、ええ、ありがとうございます」
「ん? どうかしたのか? ぼうっとしている様だったが」
「いえ……少し昔を思い出していただけです」
「……そうか」
どこか物憂げな弟子の言葉に、魔理夫は少し目を細め、ゆったりとした物腰で霖之助の対面に腰を下ろした。
「で、今日はどうした?」
言葉と共に、魔理夫がお茶を一口ずずず、と啜る。
「いえ……。気が付いたら、ふと店の前にいたのです」
「ふふふ、おかしな奴だな。相変わらず」
「…………」
霖之助はそれには応えず、ただ目を瞑り、無言で微笑を返した。
「店は、いいんですか?」
「さっき入り口だけ閉めてきた」
「そういえば、奥さんは?」
「幸か不幸か、今は出かけている。……一時間は戻らないだろう」
「幸か不幸か」、その言葉に霖之助は心の中で苦笑した。
今、この家屋には霖之助と魔理夫の二人しかいないのだ。
一時間は帰らないという、魔理夫の妻。
あまりにもできすぎた状況だと、霖之助は思った。
おもむろに、魔理夫がゆっくりと腰を上げた。
それに、霖之助は体を硬直させる。
蘇る、情景。
何度も繰り返したことのある体験。
遠い記憶の中にある、既視感
魔理夫はそっと、座ったままの霖之助を、後ろから抱きしめた。
ゆっくりとした動きで、昔より幾許か皺の増えた手を、霖之助の内股に這わせていく。
霖之助は身じろぎ一つしないまま、ただ口を開いた。
「あなたも、寂しいのですね」
魔理夫は、霖之助の太ももを撫でていた手を止めた。
静寂が、二人の間に降りる。
「やれやれ、霖之助には敵わんな」
魔理夫は大きくため息を吐く。
「だが――」
「!?」
魔理夫は荒々しい動きで、霖之助を畳の上へと引き倒し、そのまま馬乗りになった。
突然視界が天を向いた霖之助は、驚く暇もなく覆い被さってきた魔理夫に唇を奪われた。
「んっ! っう……」
「――こうして欲しかったんだろう、霖之助……!」
激しい息遣い。貪るような視線。舐るような舌の動き。
自分の体躯よりも逞しい魔理夫に押さえつけられ、霖之助は目を大きく見開いたまま、高鳴る心臓を必死に押さえつけようとする。
激しくお互いの唇を求めながら、視線を絡める。
もっと、もっと、と互いを求め合う。
とろん、と蕩けるような霖之助の瞳に、魔理夫は己の胸が熱くなっていくのを感じていた。
繰り返し、何度も繰り返し唇を貪り合う。
「ぬ……っふ……うっ……」
思考が焼き尽くされ、ただ体だけが反応する。
呼吸と唾液が混ざり合い、二人が一つに成ってゆく。
やがて、魔理夫は霖之助の体から力が抜けたのを確認すると、彼の最も敏感な部分へと手を伸ばし<以下の文章は幻想郷倫理委員会によって削除されました>
もしや新手のスタンド使いか!?
いやもうマリオって名前で吹きそうになりながら読み進めてたら、
何か妙な空間に突入してしまった
そしてこの前後の霧之助SSに噛み付いてる人のコメントがない事に更に吹いたw
おい