「………ちょっとまって」
「復唱はしないぞ、もう三回もしたからな」
「わかってるけど………」
紅魔館のロビー、お茶を飲みに来た私と演奏会の打ち合わせにきたルナサは同じテーブルでお茶を飲んでいた。
「奥さんは、ESPは使えなかったのよね?」
「ああ」
「………夫は本当に、戦いに出向いていたのね」
「ああ」
「………」
「何の話?」
「咲夜………」
お茶を持った咲夜が現れた。
ルナサは少しだけ表情を緩めると、咲夜に対しても問いかけた。
「なぞなぞだ、ある母子家庭に、戦争で死んだ夫からの、生前に書いたと思われる手紙が届けられた、それには数々の未練と家族への愛を綴ってあった、最後に「多分これが最後の手紙になるだろう、息子達を頼んだ」と書かれていた、しかし妻は、これが夫の書いたものではないと断言した、さて、それは何故か」
「………」
「………」
少しだけ考えて、咲夜は私達にお茶を注ぎ始めた。
てっきりわからなかったんだろうと思ったが、全てのカップに注ぎ終えた咲夜は椅子に腰掛け、自信満々に口を開いた。
「つまり、夫は今まで手紙を書いたことが無かったんでしょ」
「そう、そういうことだ」
「え!?」
思わず声を出してしまった、そんなことが何故わかるんだ?
「頭が固いのね、アリス」
「最後の手紙になるだろうって言っただろう、最後の手紙だなんて、今まで手紙を出した人は言わない、最初で最後、ならともかく」
「………なんだか、こじつけじゃない」
「なぞなぞなんてそんなもんさ、作り話なんだからどっかでわかるようにできてる、不自然なもんなんだよ」
「………じゃあさ、その手紙を出したのって誰なのかしら」
咲夜が開いた口から、また新しいなぞなぞが飛び出した。
「それはなぞなぞじゃない、謎だ」
「でも気になるわよね、そんな意味の無い悪戯普通しないわ」
「………じゃあこれしかないわ、きっとこの奥さんを想って、夫の知り合いが最後の最後まで頑固だった夫の代わりに夫のふりをして家族のために書いたのよ」
「ああ、それはいい話だな」
「じゃあその話はこう続くわね、その手紙を出した知り合いを突き止めた奥さんは、最終的にその知り合いと再婚する」
「いや、この物語は悲劇にしかならない」
私の発言をルナサは真っ向から否定した。
「この夫の知人なら、戦争が終わってすぐに自分自身の手でそれを届けに行くはずだ、それがこの手紙は、どこからともなく届けられたおそらく差出人不明のものだ、こんな回りくどいこと、してどうする」
「ほとんど間違いなく、その知人もまた命を落としたんだ」
………わからない話ではないけど。
「救われない話ね」
「物語はハッピーエンドだけじゃ成り立たない、ハッピーエンドってのは都合がよすぎる」
「でもルナサ、自分くらいはずっと幸せでいたいと想わない?」
「自分だけでいいのか?」
「え?」
「自分だけじゃ、ハッピーエンドにはならないと想う、それって一番お前がわかってるんじゃない?」
ルナサは静かに席を立った。
「打ち合わせをしてくるわ、お茶ありがとう」
「ええ」
「………」
「どうしたの?」
「………いや、どういう意味なのかなと想って」
「考えるまでも無いじゃない、自分だけがハッピーエンドって、自己満足で人生が終わってるのよ」
「………」
「でも、添い遂げたい相手がいたら自分だけじゃダメじゃない」
「あ、ああー………そういうことね」
「………」
咲夜の視線が私に刺さる。
「え、何よ」
「誰?添い遂げたい相手って」
「………何いってんの」
「ルナサが言ってたじゃない」
「あいつの言うことをは信じなくていいわよ…」
「ふぅん…」
少しだけ場の空気が微妙になってしまった。
でも、少し考えさせられたかもしれない。
私が、仮にだけど。
私が咲夜と添い遂げたいと考えているなら、今のように自分の都合だけで遊びに来ていては失礼だ、咲夜の迷惑にならないように、咲夜と一緒にいれるようにして、あわよくば外に出て買い物をしたり、私の家に招いたり。
とにかく相手の都合を考えないと失礼だ。
「ねぇ咲夜、貴女休みってないの?」
「あら、聞いてくれるの?」
「仮によ」
.
「復唱はしないぞ、もう三回もしたからな」
「わかってるけど………」
紅魔館のロビー、お茶を飲みに来た私と演奏会の打ち合わせにきたルナサは同じテーブルでお茶を飲んでいた。
「奥さんは、ESPは使えなかったのよね?」
「ああ」
「………夫は本当に、戦いに出向いていたのね」
「ああ」
「………」
「何の話?」
「咲夜………」
お茶を持った咲夜が現れた。
ルナサは少しだけ表情を緩めると、咲夜に対しても問いかけた。
「なぞなぞだ、ある母子家庭に、戦争で死んだ夫からの、生前に書いたと思われる手紙が届けられた、それには数々の未練と家族への愛を綴ってあった、最後に「多分これが最後の手紙になるだろう、息子達を頼んだ」と書かれていた、しかし妻は、これが夫の書いたものではないと断言した、さて、それは何故か」
「………」
「………」
少しだけ考えて、咲夜は私達にお茶を注ぎ始めた。
てっきりわからなかったんだろうと思ったが、全てのカップに注ぎ終えた咲夜は椅子に腰掛け、自信満々に口を開いた。
「つまり、夫は今まで手紙を書いたことが無かったんでしょ」
「そう、そういうことだ」
「え!?」
思わず声を出してしまった、そんなことが何故わかるんだ?
「頭が固いのね、アリス」
「最後の手紙になるだろうって言っただろう、最後の手紙だなんて、今まで手紙を出した人は言わない、最初で最後、ならともかく」
「………なんだか、こじつけじゃない」
「なぞなぞなんてそんなもんさ、作り話なんだからどっかでわかるようにできてる、不自然なもんなんだよ」
「………じゃあさ、その手紙を出したのって誰なのかしら」
咲夜が開いた口から、また新しいなぞなぞが飛び出した。
「それはなぞなぞじゃない、謎だ」
「でも気になるわよね、そんな意味の無い悪戯普通しないわ」
「………じゃあこれしかないわ、きっとこの奥さんを想って、夫の知り合いが最後の最後まで頑固だった夫の代わりに夫のふりをして家族のために書いたのよ」
「ああ、それはいい話だな」
「じゃあその話はこう続くわね、その手紙を出した知り合いを突き止めた奥さんは、最終的にその知り合いと再婚する」
「いや、この物語は悲劇にしかならない」
私の発言をルナサは真っ向から否定した。
「この夫の知人なら、戦争が終わってすぐに自分自身の手でそれを届けに行くはずだ、それがこの手紙は、どこからともなく届けられたおそらく差出人不明のものだ、こんな回りくどいこと、してどうする」
「ほとんど間違いなく、その知人もまた命を落としたんだ」
………わからない話ではないけど。
「救われない話ね」
「物語はハッピーエンドだけじゃ成り立たない、ハッピーエンドってのは都合がよすぎる」
「でもルナサ、自分くらいはずっと幸せでいたいと想わない?」
「自分だけでいいのか?」
「え?」
「自分だけじゃ、ハッピーエンドにはならないと想う、それって一番お前がわかってるんじゃない?」
ルナサは静かに席を立った。
「打ち合わせをしてくるわ、お茶ありがとう」
「ええ」
「………」
「どうしたの?」
「………いや、どういう意味なのかなと想って」
「考えるまでも無いじゃない、自分だけがハッピーエンドって、自己満足で人生が終わってるのよ」
「………」
「でも、添い遂げたい相手がいたら自分だけじゃダメじゃない」
「あ、ああー………そういうことね」
「………」
咲夜の視線が私に刺さる。
「え、何よ」
「誰?添い遂げたい相手って」
「………何いってんの」
「ルナサが言ってたじゃない」
「あいつの言うことをは信じなくていいわよ…」
「ふぅん…」
少しだけ場の空気が微妙になってしまった。
でも、少し考えさせられたかもしれない。
私が、仮にだけど。
私が咲夜と添い遂げたいと考えているなら、今のように自分の都合だけで遊びに来ていては失礼だ、咲夜の迷惑にならないように、咲夜と一緒にいれるようにして、あわよくば外に出て買い物をしたり、私の家に招いたり。
とにかく相手の都合を考えないと失礼だ。
「ねぇ咲夜、貴女休みってないの?」
「あら、聞いてくれるの?」
「仮によ」
.
ルナサは色々見越した上でこの話を仕掛けたんじゃないかと思うとカッコいいですね。
なぞなぞといいつつ、3人とも真面目に考えちゃうとこがかわいいな