Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

東方小話・第五集

2009/05/10 18:41:40
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◇剣の話


 昔の白玉楼。
 そこの庭で冥界西行寺のお嬢様、幽々子と、
 その剣術指南役を務める剣士が稽古をしている。

「問います」

 稽古の最中に、幽々子が顔を上げた。

「剣とは、なんでしょう」

 剣士は刀を振るう腕を止め、一瞥と僅かな間の後、
 私見ですが、と断ってから珍しく教えを述べる。

「剣とは、忘れない事です。
 他人と自分のその時に振るった技を、心を、そして体を。
 全てを忘れず、そして最後に無想の極致に至るものなのです」

「成程」

 幽々子が頷くと、また黙々と二人の稽古が始められた。


「ゆゆさま~、おししょう~、ふぁあああああん」

 広い白玉楼の庭外れ。
 一緒に稽古をやるはずの約束を忘れられた、小さな妖夢が泣いていた。




































◇訳の話



 昔の何処か。
 人里離れた辺鄙な場所で、妖怪退治の修行をする妹紅と、
 それを教える人間が、修行に精を出している。

「どうすれば」

 妹紅が顔を上げる。

「どうすれば、もっと強くなれる」

 その言葉に、妹紅を黙って見守っていた人間が、すぐに口を開いた。

「訳を持ちなさい。あなたが強くなるための言い訳を。
 一つでも、二つでも、無数でも。
 より効果的な訳を持てたなら、あとは他のことを気にしない」

「……それが八つ当たりでも?」

「それが訳ならば」

 妹紅は舌打ちをして、人間を睨みつけた後、また修行を再開した。
 火の鳥が高く空に目掛けて飛んでいった。




























◇期待の話


 昔の博麗神社。
 巫女の代替わりが済んだばかりのその場所に、
 山の天狗が降りてきた。

「あれが新しい巫女ですか……なんだか頼りなさそうですねぇ」

 天狗が溜息まじりにそう呟く。

「頼りないからいいのよ。
 頼り無さ過ぎて、逆に先が楽しみになるじゃない?」

 いつの間にか、どこからか現れた妖怪がその呟きに言葉を返した。

「まぁ、それはそうですね。
 確かにどちらでも、面白そうではありますね」

「──ええ、とても」

 池の亀相手に遊んでいる少女を眺めながら、
 二人の妖怪は優しく、冷たく微笑んだ。























◇聞く話


 昔の霧雨店。
 変わらない姿の霖之助が店の道具を揃えている。

「こーりん」

 幼い魔理沙が、戸棚に向かっていた霖之助に話しかける。

「これはなに?」

 何処かからか持ってきたらしい、ある品を手渡される。
 霖之助はしばらくそれを眺めた後、

「ああ、これは○○■×といってね。
 使用目的は××××で■■△な時に○×■×するものだ。
 主に大人が使う」

「へー」

 半分も意味を理解していなかったような魔理沙が、
 へへへ、と嬉しそうに笑う。

「こーりんは、なんでもわかってすごいなぁ」

「それ程の事でもないさ」

 最近の魔理沙は何でも自分に渡して聞きたがる。
 それは単に、よどみ無く答える自分の事を面白がっているからだろう。
  
 霖之助はそう考え、魔理沙が品に興味を失った事を確かめると、
 そっとそれを戸棚の上にしまった。


  

 
























◇興味の話


 昔の永遠亭。
 月から逃げてきたばかりの兎と、
 それを匿った月人の永琳が部屋で話している。

「本当に、ありがとうございます」

 休養をとり、落ち着いた兎が頭を下げる。

「いえいえ」

 そちらを見ずに、永琳は薬の具合を検分している。

「あの、なにかお礼がしたいのですが」

「いえいえ」

 硝子瓶の中でこぽこぽと音を立てている何かを見つめている。

「えっと、これからどうすれば……」

「いえいえ」

「あの……」

「…………」

「実は私、前から薬に興味がありまして──教えて頂きたいのですが」

「あら、そうなの?」

 兎の言葉に、永琳が振り向いた。

 誰かに自分の事を興味を持って欲しければ、
 まずその人が興味を持つものに興味持つべし。

 どこかで読んだ本の事を、思い返し、兎はそんな振りをしようと考えた。 




























◇昔の話


 こんにちは、清く正しい射命丸です!
 今回は幻想郷の人達に昔の事を突撃インタビューしてみましたよ!
 ではどうぞ!



「えっと……よく覚えてないですねぇ」

「話したくない」

「んー、黒歴史ってやつなのかなぁ?」

「あー? 今と大して変わってないぜ」

「昔って、いつの事かしら」



 幻想郷の住人は、昔(かこ)を語るのが苦手のようである。


































 
めでたしめでたし


これから読む方 → 東方のアンニュイな小話です。懐かしき駄菓子のお供に。

もう読まれた方 → お疲れ様です。有難うございます。日本昔話好きでした。

前のも読んだ方 → 今回もテーマ物で。次は多分普通かなぁ……たぶん……
ネコん
コメント



1.紅葉削除
忘れられた妖夢かわいいよ
こうも引き込まれる文ってすばらしいですね
次回作も期待してます
2.名前が無い程度の能力削除
振りって何だうどんげw
そして黒歴史ってどういう意味だ霊夢ww
3.GUNモドキ削除
過去編ですか、なかなか良いお手前でした。

アイスカフェオレ飲みながら読ませていただきました。
お供にべっこう飴があればもっと良かったのですが、時間が時間だけに作るのを諦めました。
とはいえまだまだ夜はこれから。
まあ、登校まであと7時間強ありますし、ねぇ?
4.喉飴削除
剣の話と期待の話がツボりましたぜ。
相変わらず雰囲気が良いですね。
純粋に楽しかったです。
5.てるる削除
剣の話がお気に入り
その後を考えてニヤニヤしております

雰囲気良いですね~。
すらすらと染み渡ります
6.名前が無い程度の能力削除
とりあえず幼魔理沙が持ってきた道具についてkwsk