Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

最強の紫

2009/05/06 13:10:56
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「・・・天気を操作できるという事は地上の者ではない という事ね。雪も神社も地震も余分な情報だと」
パチュリーの私室、書斎で対峙する二人。
レミリアと紫。
「でも私はどのみち外を出歩けない。こういう時は人に行かせるしか無いって事ね」
「あら、私に行かせようって言うの?」
「だって、その為に出てきたんでしょ?」
そうでなければわざわざ紫がここに来る理由もない。
レミリアは口の端を吊り上げ、席を立つ。他人をあごで使ってやるのは大得意だ。
「タダで行かせる気?」
「紅茶でも淹れたらいいわけ?」
「私は血は飲みませんの」
答えた直後、紫は飛来してきた蝙蝠弾を避ける。それでもなお余裕の態度を崩さない紫も、この状況は想定していたのだろう。
「わかりやすくて結構なこと」
「でしょ?」
「私に勝てると思って?」
「最初から負ける気で戦う奴を相手にしているのよ、勝てない要素はどこにもない」
さらにサーヴァントフライヤー。だがこれも、紫は苦もなく回避してみせる。
紫は負けてやる気でレミリアと対峙している。
紫にとってこの異変は解決するべきものであり、そうしようと行動していたレミリアの妨害を行う理由は彼女にはない。
吸血鬼、日中動けないレミリアに天人を倒す術はない。わざわざ助力を仰ぐ必要も、レミリアの勘違いを正す必要もないし、紅魔館などに立ち寄らず紫自らが真っ直ぐ敵地に乗り込めばいい話なので、ここで紫とレミリアが戦う必要性はどこにもない。
ではなぜレミリアの元へきたのか。
レミリアは考えるのをやめた。私に喧嘩を売るなら買う、目的はわからなくとも戦う理由なんてそれで十分だ。
「いいのかしら?」
「何が?」
「真昼間、屋敷から出れない、弱点多い、毎回霊夢にくっついて出場している私に比べてあなたは実戦から離れすぎている。あら大変、これだと私のワンサイドゲームになってしまうわ」
頬に手を当て、かわいい子ぶる紫。
安い挑発だが、それでもレミリアを刺激するには十分すぎた。なにせ馬鹿にされるのが大嫌いな誇り高き種族なのだから。
「貴様・・・・」
「戦っても楽しくないし、や~めた」
「わざとらしすぎる!何が目的だこのカレー臭!」
プッチン
物理的なものではない何かが切れる音。
「あらぁ?今なんて言ったのかしら、かりちゅまレミリアたんわぁ?」
プッチン
音にならない音がこちらでも。
「カレー臭がしたからカレーと言ったまでよ?ビーフカレー、いえいえそれともポークかしら?くっくっく」
「おほほ」
「ふふふ」
『・・・・・・いっぺん地獄に落ちろ!!』





30分後。
「けほ・・・・・・や、やりますわね・・・・」
「紫、こそ・・・・はぁ、はぁ・・・・」
カリスマのかけらもなく床に大の字に横たわるレミリアと、突っ伏す紫。
「で、結局何が目的だったんだお前は」
「まだ決着はついてないわ」
フラフラと立ち上げる紫。そこまでしてレミリアと戦う理由はなんなのか。
「まだやるの?」
「そのつもりだけれど」
しかしレミリアと紫が戦ったところでまたドロー、引き分けになるだけの気もしないではない。弾幕では紫が一枚上手だが、それを耐えきるだけの肉体と精神力を吸血鬼レミリアは持っている。
「この際、パートナー同伴でどうかしら」
「随分勝負にこだわるわね」
レミリアも何とか起き上がり、椅子の元まで歩いてそれに腰掛ける。その際にバトルの巻き添えを食らって倒れているパチュリーを踏みつけたのだが、疲れているレミリアは気づかない。
「私の不戦勝でいい?」
「ダメに決まっている」
勝ったところで何があるわけでもないだろうが、欲しいのは『勝利』の二文字だ。
「期日は?」
「明日。だから、さっさと異変の主を倒して来て」
「言われずとも」
眼を光らせ、紫は妖しく笑う。レミリアにラストワードを言われた挙句に勝負を持ち越された紫のストレスは有頂天であり、それのはけ口にされてしまう天人にレミリアは同情した。
「負けたら人里の中心で『う~☆』と言いながら下段ガードするというのはどう?」
「その条件、そっくりそのままお前に返すわ」
「受けましょう。では今日はこれにて」





さて困った。
バトル承諾はしたものの、紫は間違いなく式の藍を連れてくるだろう。となれば、対紫戦で藍と同等かそれ以上のものをパートナーにせねばならない。しかし期日は明日であり、ろくすっぽ組んだことがないものをパートナーにつけてはチーム戦として弱体化する恐れすらある。
パチュリー?論外。援護には適任だろうが、開始数秒で背後に回られゴツンと頭を殴られてKOするだけだ。
美鈴?久しぶりに組んでもいいが藍と渡り合えるかどうか。
フラン?コンビネーション云々以前の問題の気もする。
霊夢?いけなくもないだろうが、神社が倒壊してると言っていたのでそれどころではないだろう。
民衆の目の前で下段ガードとは何たる屈辱。
負けるわけには行かない。
悩んでいる暇はない、時間がないのだ。
「咲夜」
レミリアは従者の名を呼ぶ。





「咲夜」
「かしこまりました」
紫との再戦の日。
懐中時計を手に、咲夜はレミリアと紫の中点に立つ。
「公正にジャッジしてくれるんでしょうね」
「お疑いですか?」
「いえいえとんでもない」
おどけて両手を横に振る紫。
その横では藍が激情を必死で押さえていた。その視線の先、レミリアの横にいるパートナーを見て。
そのレミリアと、パートナーの会話。
「いい加減覚えた?」
「100個も覚えられない!」
「あ、こら紙を破くな!まったく、一度は覚えた内容でしょうに・・・・・・最初の10個だけでいいから、その豆腐製の脳みそに詰め込んでおきなさい」
「それならもう覚えた。というか覚えてる」
「ならばよし。いつでもいいわよ咲夜」
会話内容もいささか問題だが、藍が気にしているのはレミリアのパートナーその人だ。
やっとパートナーから目線を外すレミリアが、すぐに藍のキッツイ目線に気づいた。
「何よ」
「我慢ならんぞレミリア、私たちを馬鹿にしているのかっ!」
激昂し、藍はレミリアのパートナー――――チルノを指差した。
妖精は妖怪よりはるかに弱い。その力の壁は絶対であり何者にも覆せない事実。
「たかが式相手に最上級のもてなしをしてやったというのに、随分な物言いね。チルノ、Cの2をやるわ。景気付けには丁度いいでしょう」
「ん、わかった」
「咲夜、よく見ておきなさい。これもコンビの一つの在り方だと。さぁ、始めましょう」
絶対に負けないと言う揺るがない自信ゆえのセリフ。
咲夜がコインを真上に向けて弾く。重力に従って速度を落とし一瞬の静止のあとに落下を始める。
「何年振りかも忘れたけど、とちらないでよね」
「レミリアこそ、最強のあたいについてきなさい」
「最強なのはあんたじゃない」
コインが咲夜の目の前を通過。
「私たちよ」
床を叩く。
同時に藍とレミリアが飛び出しその距離を詰める。
レミリアの2Cが対空射撃技であること、そこから繋がる連撃パターンを藍は事前に調べていた。
「宙に浮かせて殴る気だろうが、そうはいかん!」
「あなた馬鹿?」
さらに両者の距離が詰まる。
「Cの2っていうのはね」
藍の式弾をかわし、さらにその懐へ。2C射撃は未だに撃たない。
スペルカード発動。
「センターで、2枚目のスペカを使うって意味よ!」
紅符・不夜城レッド。
レミリアを中心に紅い波動が荒れ狂う。オーラはその周囲のすべてを、正確に言えば藍のみを盛大に巻き込んで吹き飛ばした。
さらに追撃。宙に体を浮かせた藍の腹に肉体派吸血鬼の拳が、
「はいストップ」
直撃する前に藍の体はスキマ内に引き込まれ、レミリアの拳はむなしく空を貫く。
「あの一撃が入ったらさすがの藍でも耐えられないもの。というわけで逃がさせていただきましたので、あとは私だけで戦いますわ」
「遠慮しなくてもいいわ、出してきなさい」
「そうしたらまた藍を狙うでしょう?」
紫に比べれば藍のほうが組しやすい。その行動自体は当然ともいえるが、彼女はそんな戦術眼で動いたわけではない
単純、愚直、猪武者、鉄砲玉。表現など何でもいいが、レミリアはただ単に『馬鹿にされたから殴り返した』だけ。らしいといえばレミリアらしい行動であり、ゆえにその攻撃に手加減というものはない。そんなものを食らってはたまらない。
初撃をかわせなかった藍を再び出したところで返り討ちにあうだけだろう。無意味とさとり、紫は単独戦闘を選んだ。
レミリアは紫から目線を外さずさらに打ち合わせを行う。二人だけがわかる暗号で。
「チルノ、4番」
「9番がいい」
「じゃあ9の2」
「1の3金右」
「33銀不成・・・って違ぁう!9の2で外したら9の8、わかった?」
「参りました」
「始まってすらいないわ!」
そんな幼児2人のやり取りを紫は生暖かく見つめ、
「M1出演決定?」
「知らないわよ!」
「結婚会見かしら」
「いつかは・・・・恥ずかしいことを言わせるな!」
レミリアは蝙蝠弾を射出。これを苦もなく回避してみせ、紫も応射する。
弾く、相殺する、かわす、反撃、ガードする
「一発勝負よ、チルノ・・・・・・・・・・スタート」
合図に合わせ、レミリアの背後にぴったりと付いていたチルノが弾幕展開を始めた。所詮は妖精、弾幕の薄さはいかんともしがたいがけん制には十分堪えうる密度。
ゆかりの退路を立つように遠方に向けて放たれる弾幕。
(おそらくは近接に持ち込むことが狙い)
紫はそう判断。
不用意に近づいたところに不夜城レッドの狙いであろう。紫はあえて弾幕が飛び交う後方へと下がった。幸いチルノの弾幕は回避できないレベルではないのでここはじっくり距離をとって・・・・
その隙も与えずレミリアが突っ込んでくる。この対応の速さ、こちらが近づいてこないとわかって最初から狙っていたか。チルノの弾幕で行動制限をかけられている紫にレミリアは拳を繰り出す。
「どうした策士、読みが甘いわよ」
「想定の範囲内ですわ」
レミリアの拳打を軽やかに飛び上がることで回避してみせる。見えるのはがら空きになったレミリアの背中。
もらった。
「結界・魅力的な四重『パーフェクトフリーズ!』」
紫よりも先にチルノのスペカがいち早く発動。
紫はスペカを発動できなかった。
唇が、指が動かない。どころか紫が意図せずとも宙に浮いていられる。
急激な寒気が紫を襲う。紫の余裕の笑みすら凍りつかせる冷気。
(まずい、完全無防備じゃない)
「すべてを凍りつかせる冷気。パーフェクトよチルノ」
振り向くレミリアの手には紅槍。
「スピア・ザ・グングニル」
槍が放たれる。
(まだ!)
冷気による拘束から無理やり逃れ、紫はすんでのところで半身を引いて槍をかわす。
チルノの冷気も収まった。レミリアの必殺も凌いだ。
思わず笑みがこぼれる。
「グングニル惜しかったわね、残念」
「そういうあんたは誤解してる」
レミリアいい終えた直後、室内の気温が一気に上がった。
50度、100度、200度。
頭では理解するが、存分に冷気を浴びた体は気温の変化に付いていけない。
「マイナスK」
チルノのスペカ。
ケルビンはマイナス273度。
だがマイナスのマイナスは、
プラス。
「グングニルでピリオドだなんて誰が決めたのかしら?」
その手には紅槍ではなく、紅弾。
スカーレットシュート
迫る紅玉。
そのスペカは緋想天にはなかったわよと、動けない紫は眼で訴えるが、
「パートナー同伴の時点で、すでに緋想天じゃなくなってるわ」
ごもっとも。
答え、自業自得。



「お嬢様。あの動き、チルノと初めて組んだわけではありませんよね?一体どこで・・・・」
「吸血鬼異変の時よ。私って日中出歩けないじゃない?で、ルーミアに日傘代わりになってもらって、戦いではチルノと組んで並みいる強敵をなぎ倒していったのよ。あぁそうそう、あの時紫とも戦って後一歩で追い詰めることができたって言うのに」
「ぇえ??!」
「結局負けちゃってルーミアは変なお札を貼られて以来力が出せないし、チルノは紫にさんざか頭を叩かれたせいでいまいち馬鹿っぽくなっちゃったしでゴールデンチームは解散して今に至るわけだけど・・・・・・弱体化したとはいえまだまだいけそうね。ブランクを埋めれば霊夢も倒せる気がするわ。ねぇチルノ、今度ルーミアも呼んで来なさい」
「いいけど、また紫に叩かれない?」
「当人はそこで延びてるし大丈夫って、いなくなってるわね。でもまぁお咎めなしよきっと」
「わかった!じゃあ」
「恥ずかしいわね・・・・いいわ、やりましょう」
「せーの」

『私達ったら最強ね!!』





「や~ら~れ~た~」
「紫様、お疲れ様でした」
苦笑する供の式。
最近めっきり疎遠になってしまったレミリアとチルノの関係修復。それが紫の目的。
すべては紫のシナリオ通り。
「吸血鬼と妖精、おもしろいでしょう?」
「最強クラスの妖怪、紫様」
「赤と青、絵の具のようにかき混ぜて」
「できる最強の色は紫」
「自分が最強だなんて思ってないわよ。でも、対価は高いわね・・・・」






後日。
人里の大通りに立つ妖怪が一名。
すると彼女は前触れもなくしゃがむと頭を両手で庇った。
そして、一言
「う~☆」

直後、そのカリスマぶりに数十名の人間が鼻から血を噴出して倒れた。



 
うんごめん、タイトルだけど「最強のユカリ」じゃなくて「最強のムラサキ」なんだ、すまない。


「むきゅ?」



もう一つ別プロットを作ってたんだけど、正直どっちがいいのか決めかねた。
しかしこちらが最初に思いついたほうなので書きやすく、とりあえずこちらだけあげました。多分、後日「もう一つ」のほうの話を膨らませて上げることになるんではないかと恐々。困った時は慧音と教授に頼むからいいもん!

最近筆が進まない。
と言うわけで三国志⑨なぞをやって逃避しているわけだが、自分に課した S チートで勝てない・・・・・・
諸君、私は S である。妖術禁止とか、抜擢弱体化とか、登用制限とか、敵兵士数増加とかそんなことは一切やっていない!あえて知力80台の軍師にしてみたり、登用制限のせいで統率40台の武将が第一線で活躍していたり、むしろ10程度の奴も大活躍中だったりとかそんなことには断じてなっていない!孔明の守る城1万に対して5万もつぎ込んだのに援軍が来るまでに落とせなくて涙目とか、計略かかりまくって敵城にすらたどり着けないとか、異民族が怖くて建寧とってないなんてことは(ry
野戦ならまだ勝てるんだけどなぁ・・・・・・だが無理ゲじゃないあたりがまた楽しい。
水崎
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
タイトル最強のゆかりだと思ってしまったww
しかしこう……いいですね、チルノとレミリア。まさかのコンビ。「や~ら~れ~た~」のゆかりんが某先生っぽいし。
三国志9はハマりますよねぇ。わざわざ顔グラ入れ替えたのもいい思い出だwww
2.名前が無い程度の能力削除
チルレミいいよ!ちるれみ!
なかなか見れないCPで楽しませてもらいました。
3.名前が無い程度の能力削除
MU○ENですね?わかります。
4.名前が無い程度の能力削除
話の流れは良かったんですが、妖怪という精神性の生き物が仮初の唇や体が凍らせられたら弾幕が撃てなくなるという部分に、前もって理由付けというか伏線が欲しかったです。
スペカによる弾幕も別に出す直前に声に出さなければならないってルールもないですし。
そこらへんを戦闘描写のうちにさりげなく前もっていれておくと
(肉体的欠損から弾幕の数が少なくなるとか、スペカの弾幕と通常弾幕の発動条件の違いとか、精神の疲弊度からの弾幕の数の違いとか)
この作品では「ああ、そういう設定なのだな」と飲み込めて、最後の凍らせられた事で紫が「スペカどころか通常弾幕さえ撃てない」部分のちゃんとした理由付けになったと思います。
チルノが凍らせる部分がこの作品の肝であっただけにちょっと残念でした。
5.名前が無い程度の能力削除
そうか!
あのガードは過去の体験から編み出したゆかりん対策かwww
面白かったです
6.名前が無い程度の能力削除
珍しい組み合わせでしたが、面白かったです
ちょっと戦闘の部分が薄かったのが残念でしたが…

「ゴールデンチーム」の他の話も読んでみたいと思いました