夏。
夏は嫌いじゃない。
セミの声も、広がる大空も。
大きな白い雲も好きだし、そのせいで起きるにわか雨も結構好き。
ひとつ、困ることがあるとすれば。
「いやー、まいったぜ」
そのにわか雨だとやって来る、このずぶ濡れ黒鼠の存在くらい。
「毎度の事ながら本当に参ったぜ」
「毎度の事なら少しは学習しなさいよ。ていうか何でウチなの?」
「近くにあるから」
「なんで毎回ウチの近くを飛んでるのよ」
「お前、雨女なんだな」
そんな事を言って、その黒白はカラカラと笑う。
ちっとも面白くない。だれが雨女だ。
「まあそう怒るなよ。可愛い顔が台無しだぜ?」
「怒ってないわ、別に」
そう言ってタオルを投げやる。
ここ最近、雨が降ると必ずと言っていいほどこんな会話をしている。
多分気のせいじゃないはず。
「じゃ、風呂借りるぜ。夕飯は冷製パスタがいい」
「誰が食べさせるなんて言ったのよ」
「そうめんでもいいぜー」
そう言い残すと、魔理沙は風呂場へと消えていった。
そうめんなんて、ウチにあるわけがない。
というか人の話を聞きなさい。
本当、なんでこんなこと毎回続けているんだか。
自分で自分に呆れてくる。
そんな事を考えながらキッチンへ向かい、パスタの入っている棚を開けた。
数十分後、丁度夕飯が出来上がった頃に背後から魔理沙がキッチンに入ってくる気配。
これまた丁度いいタイミングでやってくるものだ。
「いやー、いい湯だった」
「ちょっと魔理沙。並べるのくらい手伝って……」
「ん?」
振り向けば、そこに居たのは髪を拭きながら丁度キッチンに入ってきた魔理沙。
「なっ……」
私の服を着ている魔理沙である。
「お、トマトの冷製スパか。いいな」
固まる私など気にした様子もなく、ひょいとトマトを拾い上げて口に運ぶ。
そっちの皿、魔理沙の決定ね。
「……ってそうじゃなくて!何よその格好?!」
「裸じゃないぜ?」
「私の服じゃない!」
「別にいいだろー?」
「良くないわよー!!」
猛抗議するも、当の本人は気にした様子もなくさっさと食べはじめた。
これはもう、無駄である。
大きなため息をつき、上海と蓬莱に指示を出す。
魔理沙の服、しわになったら大変だし。
「さて、じゃあな」
「ええ、もう来ないで」
「おう、また来るぜ」
そんな挨拶をして、今日も魔理沙は帰っていく。
勿論、服はいつものい黒白に着替えて。
「あ、そうだ」
「ん?」
今飛び出そうかという魔理沙を引き止め。
「次は晴れの日に来なさい。服、また勝手に着られたらたまったもんじゃないわ」
「……気が向いたらな」
そう言って魔理沙は深く帽子を被り直すと、星を撒き散らしながら飛び立って行った。
ちらりと見えた魔理沙の顔は、飛び切りの笑顔で。
きっと見間違いではないであろうそれに、くすりと笑った。
今日の天気、晴れ。
ところにより、星の雨。
夏は嫌いじゃない。
セミの声も、広がる大空も。
大きな白い雲も好きだし、そのせいで起きるにわか雨も結構好き。
ひとつ、困ることがあるとすれば。
「いやー、まいったぜ」
そのにわか雨だとやって来る、このずぶ濡れ黒鼠の存在くらい。
「毎度の事ながら本当に参ったぜ」
「毎度の事なら少しは学習しなさいよ。ていうか何でウチなの?」
「近くにあるから」
「なんで毎回ウチの近くを飛んでるのよ」
「お前、雨女なんだな」
そんな事を言って、その黒白はカラカラと笑う。
ちっとも面白くない。だれが雨女だ。
「まあそう怒るなよ。可愛い顔が台無しだぜ?」
「怒ってないわ、別に」
そう言ってタオルを投げやる。
ここ最近、雨が降ると必ずと言っていいほどこんな会話をしている。
多分気のせいじゃないはず。
「じゃ、風呂借りるぜ。夕飯は冷製パスタがいい」
「誰が食べさせるなんて言ったのよ」
「そうめんでもいいぜー」
そう言い残すと、魔理沙は風呂場へと消えていった。
そうめんなんて、ウチにあるわけがない。
というか人の話を聞きなさい。
本当、なんでこんなこと毎回続けているんだか。
自分で自分に呆れてくる。
そんな事を考えながらキッチンへ向かい、パスタの入っている棚を開けた。
数十分後、丁度夕飯が出来上がった頃に背後から魔理沙がキッチンに入ってくる気配。
これまた丁度いいタイミングでやってくるものだ。
「いやー、いい湯だった」
「ちょっと魔理沙。並べるのくらい手伝って……」
「ん?」
振り向けば、そこに居たのは髪を拭きながら丁度キッチンに入ってきた魔理沙。
「なっ……」
私の服を着ている魔理沙である。
「お、トマトの冷製スパか。いいな」
固まる私など気にした様子もなく、ひょいとトマトを拾い上げて口に運ぶ。
そっちの皿、魔理沙の決定ね。
「……ってそうじゃなくて!何よその格好?!」
「裸じゃないぜ?」
「私の服じゃない!」
「別にいいだろー?」
「良くないわよー!!」
猛抗議するも、当の本人は気にした様子もなくさっさと食べはじめた。
これはもう、無駄である。
大きなため息をつき、上海と蓬莱に指示を出す。
魔理沙の服、しわになったら大変だし。
「さて、じゃあな」
「ええ、もう来ないで」
「おう、また来るぜ」
そんな挨拶をして、今日も魔理沙は帰っていく。
勿論、服はいつものい黒白に着替えて。
「あ、そうだ」
「ん?」
今飛び出そうかという魔理沙を引き止め。
「次は晴れの日に来なさい。服、また勝手に着られたらたまったもんじゃないわ」
「……気が向いたらな」
そう言って魔理沙は深く帽子を被り直すと、星を撒き散らしながら飛び立って行った。
ちらりと見えた魔理沙の顔は、飛び切りの笑顔で。
きっと見間違いではないであろうそれに、くすりと笑った。
今日の天気、晴れ。
ところにより、星の雨。
なんだかんだ言って面倒みるお姉さんアリスはいいな。
何気ない日常というのはいいものですね。