Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

秋巫女

2009/04/28 14:37:38
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さっさか、さっさか。

その神社の巫女はよほどやることがないのか、さっきから箒を持って境内を行ったり来たりしている。
突き抜けるように晴れ渡った、気持ちいいくらいの秋晴れだ。
涼しく、少しだけ強く吹く風が、縁石に掃き溜まった落ち葉を巻き上げるたび、ああ、また掃かなければいけないのか、と少し辟易した気持ちになるが、彼女にとってそれはたいしたことではない。もちろん掃き掃除を楽しんでいるわけではないが、どこか楽しそうな微笑を浮かべている。彼女は、ざわざわと音を立てる枯れ木の音を、まるで歌を聞くように目を閉じて聞き入っていた。
彼女は秋が大好きだ。なにせ、食べ物がおいしい。魚なんかは冬に向けて脂が乗るので美味しくなるし、神社の内外にある栗やら銀杏やらが実り始め、集めた落ち葉で焼き芋もできる。彼女にとっては天国のような季節といって差し支えない。食欲の秋、万歳。
あんまり気持ちがいいものだから、今日は知り合いを集めて宴会を催してもいいとも考えた。いつもは閑散としている境内にござを敷き詰めて、お酒を飲んだり歌を歌ったり、そのへんで喧嘩が始まったりすることもしばしばあるのだが、ものが壊されたりしなければとりあえずは何でもいい。宴会に必要なものは各々が持ち寄ってくるので、主催者の財布が傷まないのも魅力的である。考えているとまた少し楽しくなって、毎日のように神社に来ては限りあるお茶を水のようにガブガブ飲んで帰って、たまに泊まっていったりする迷惑な魔法使いに、皆への伝言を頼もうと考えた。そうなると、少しだけあいつが待ち遠しくなって、少し悔しくなったりもした。あいつはいつも昼下がりかそこらにやってくる。そのときは、まぁ仕方ないから、お茶菓子の準備をしておいてもいい。
そんなことを考えたあと、ふいに箒を動かす手を止めて、彼女は空を見上げた。空に浮かぶいくつかの雲が、遠くへ向かってゆっくりゆっくり流れていく。あの雲とともに、この秋もまたすぐにいなくなってしまうのだろうか。そう思うと、少し切ない気持ちになった。
人がこの季節になると少し憂鬱になるのは、みんなが彼女と同じように、秋に恋しているからなのかもしれない。
ほんの少しだけ悲しそうに、控えめな笑顔で空を見つめる彼女をまるで慰めるように、小さな風が彼女の髪を揺らした。
落ち葉が転がる音はしなかった。  
HDDを整理していたら出てきました。季節外れですが投稿。
例によって人物像をぼかしてます。
よしなが
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
いい話なのに改行が無くて読みにくいし読む気がなくなってしまうと思います。
見た目も意識した方がよろしいかと。
2.名前が無い程度の能力削除
厨2臭い
3.名前が無い程度の能力削除
こういう改行の少ない文章は創想話以外でも見かけますがそういった演出意図なのだと思ってます。
私は読みにくくなかったですし、文字の詰まってる見た目が好きでもありますので肯定します。
内容に関しては、落ち以外は好みです。
別にみんなは恋してないんじゃないかなー、色んな人が居るし、と思いました。ま、主観ですが。
それ以外は普通の日常話が好きなので楽しめました。