Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

博麗幻恋記 幽

2009/04/27 23:32:33
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 パシッ、

 固い紙が畳みに叩きつけられる音が、静かな室内に響いた。
 紫はぎゅっと手持ちの札を握りしめる。汗が額を伝った。
 それとは対照的に、幽々子はにこにこと笑いながら今取った札を眺めて、真ん中の山札に手を伸ばした。

「紫、花札ってどこが面白いんだと思う?」

 幽々子は山札の上に手を置いたまま、紫を見た。

「さあ? 強い役ばっか作って、一方的に相手を追い詰めるのが面白いんじゃない?」

 紫は追い込まれた様な表情で、幽々子をにらみ返した。

「違うわよー、まあそれもあるけれどね」

 幽々子は山札から取った一枚を見えない様に手の中で弄びながら言った。

「山から札を取る時が一番楽しいのよ。なんの札か分からない分、ドキドキわくわくするじゃない」

 幽々子の『芒に雁』は、『芒に月』を打ち、菊と杯が場に出ている。『桜に幕』は所有した上に、『猪鹿蝶』が役として完成していた。余裕綽々。負ける要素は皆無である。
 紫はと言えば、出来れば青短に持っていけるか行けないかで、カス札ばかりだ。
 
「当たるとは限らないわよ? 私の計算ではその札が菊である可能性は六分の一以下。まだ私にも勝ちの目があるわ」

 紫は強がる。
 真ん中で妖夢が半ば退屈そうに場を眺めていた。
 幽々子はにこっと笑うと、その札を裏返した。

「はい、『猪鹿蝶』『飲み』。まだ何か手があるかしら?」

 『菊に青短』が盃を打つ。紫は持っていた札を放り出しながら机に突っ伏した。
 妖夢は欠伸をしながら、花札を片付ける。
 幽々子は無邪気にきゃっきゃとはしゃいで言った。

「罰ゲーム、罰ゲームよ紫」
「解ってるわよ、む~」
「前は何でしたっけ? 逆立ちで鼻スパでしたっけ」
「そんなことした覚えはないわよ、妖夢。前回は一人ポッキーゲームだったわ。せっかく外界のお菓子を持ってきたのにあんなことに使われるなんて」
「そうね、今回は……」

 幽々子が少し残酷な笑みを浮かべた。

「……っとその前に、紫の好きな人を聞かなきゃね」
「はぁ? 私の好きな人ぉ?」

 紫が顔を上げた。

「そうそう、教えて? 紫の好きな人」
「う~ん、急にそんなことを言われてもね」

 紫が困ったように笑った。幽々子がすかさず、紫の手首を握りしめる。

「ねえ、誰が好きなの? 藍?」
「藍かぁ、そうね。藍がいなくなったら、私とっても困るわ」
「……それじゃあ、妖夢?」
「妖夢はとっても可愛いわよね。欲しいわー。お姉ちゃんって呼んで欲しい」
「ダメよ、妖夢は私のだもの」
「あら、残念」
「それじゃあ……ん~」

 幽々子はそう言うと、首を傾げた。

「……私かしら」
「幽々子のことを好きじゃないわけないじゃない」
「ありがとう、紫。私も紫のことが好きよ。でもそうじゃなくって、ちゃんとした好き、の人」
「んー、言いたいのは山々なんだけどねぇ。生憎、そう言う人はいないのよ」
「本当? 本当かしら」
「本当よ、本当。こんなので嘘付いたってしょうがないじゃない」

 幽々子の手にぎゅっと力が籠る。

「じゃあ……もしいたとしたら、服は何色かしら?」
「多分、素敵に派手な色合いでしょうね」
「そうかしら? 意外と質素な服装かもしれないわよ」
「私は派手な色が好きなのよ。質素な色合いはごめんだわ」
「なら、喜ばしい色合いはいいかしら」
「派手な色以外は、認めませんわ」
「服装で人柄を判断するの?」
「まさか、中身も大切ですわ」紫がおどけて言った。
「ふーん、髪は何色かしら」
「やっぱり派手に……紫色とか藍色とか、橙色とか」
「金髪はどう?」
「ああ、いいわね金髪も。自分の髪の色だし」

 幽々子は少し考える。

「なら、黒はダメ?」
「そうね、黒何てつまらないわ」
「帽子は被ってる? 髪型は?」
「強烈に奇天烈な帽子を被っていますわね。髪型はおいそれと形容できない混沌としたものですわ」
「カチューシャとかリボンはダメ?」
「ダメよ、つまらない」

 紫が面白くなさ気に言う。
 幽々子はあることに気が付いて、笑った。

「じゃあ、服装。どんな服を着ている人間かしら?」
「ん、とにかく派手で……時代を先取りしたような服装がいいですわね」
「そうー、ふふふ……」

 幽々子がおかしそうに、笑いだした。
 紫が眉をひそめる。

「何がおかしいのよ」
「人間なんですね、紫様の好きな人は」

 はっとして、紫は妖夢を振り返った。
 妖夢は花札をまとめ終わって、面白そうに紫を見ている。
 幽々子がくすくすと笑う。

「だっ誰があんな下等種族を」
「あんな? やけに必死ねぇ、紫」

 紫は言葉を詰まらせて、赤面した。そして、一つの間をおいて、コホンと咳払いした。

「その人間は、どんな人柄かしら?」
「……日々を活発に、楽しく生きる人間なら百歩譲ってやらなくもないわね」
「本当かしらぁ? うふふ」

 幽々子は手を口に当てて、笑った。

「赤と白何て、とても魅力的な色よねぇ」
「つまらないわね。どこにでもありそうな色だし」

 紫はため息と一緒に、吐き出すように言った。
 幽々子はそんな紫の様子を見て、確信に至った。

「……霊夢、でしょう」

 紫はあくまで落ち着いた様子で、答えた。

「冗談じゃないわ、幽々子。だれがあんな人間を……」
「心拍数上昇中」

 妖夢がぼそっという。
 紫は気が付いて、幽々子に掴まれた手首を見た。柔らかく、優しく。毒を帯びたような気配を感じさせる、白い手。
 幽々子が今日一番に嫌らしい笑顔を浮かべるのを、紫は冷たい汗を流して見つめることしかできなかった。



――――――――




 コーン、とどこかでししおどしが石を打った音が鳴った。

 妖夢は目の前の人間を――いや妖夢自身もまた半分はそれなのだが、やけに世界から逸脱した存在に感じられて、戸惑いを覚えた。
 縁側で正座している人間、博麗霊夢はガラスのような眼で妖夢を見つめている。
 後ろで木々がざわざわと揺れるのを聞いた。

「そういうことです。是非――いや、是が非でも私と御同行していただきます」
「えぇー、これから掃除とかあるのに」

 妖夢は幽々子の命で、霊夢を屋敷に招待するため博麗神社を訪れていた。
 霊夢と二人だけで対面するのは初めてであるが、それにしてもこれはおかしいと妖夢は思った。
 宴会の席での霊夢と、今の霊夢はまるで別人だった。どこが別人なのかと問われれば返答に困るが、全体的の雰囲気に違和感を感じる。まるでそこにいるのにいない様な、気配があるだけの空気が詰まった風船のような、自分とは別の世界を挟んで対面している隔たりがある様に感じられた。

「すみませんがご了承ください。主人の命ですので、譲れません」
「頑固ね、あなたも。ああ、空が白んできたわ」

 霊夢は欠伸を噛み殺して、そう言った。
 遠くの空から、光が満ち始めている。

「出来るだけ早く、あなたを屋敷に御呼びしろと申し上げておりましたので。さあ、早く身仕度を整えてください」
「朝ご飯もまだなのに」

 霊夢は眠たげに眼を擦る。白色をベースにした蝶の紋様の寝巻きが崩れて肩が覗いた。
 妖夢は苛立ちを感じて、霊夢の手を強引に引いて霊夢の寝室に入った。気だるげに捲れ上がった布団の枕元に、丁寧に畳まれた巫女服があった。
 傍目からは分からないが、意外と律儀な性格なのかもしれない。

「ねー、朝ご飯はどうするのよー」
「心配しないでください、朝餉の支度は済ませてきましたので」

 妖夢がそういうと霊夢は渋々ながら服を着た。面倒くさそうに寝間着を脱ぎ棄て、紅白のコントラストを身につける。
 そしてふら付く足取りで洗面所に向かっていった。よほど眠いのだろうか。

 妖夢は縁側に戻って、黙って腕組みをして霊夢を待つ。
 不意に、強い思いが湧きだしてきて、妖夢は胸を押さえた。
 何と魅力のある人物か、博麗霊夢。恐るべし。
 ドクンドクンと鼓動を繰り返す心臓を意識して、刀を抜いた。
 ぎらりと光る必殺の剣。この刀が、彼女の血を吸ってみたいと言っているようだった。
 実際、妖夢も霊夢のことを斬ってみたかった。あんなに綺麗で、儚いものなのだ。それに、妖夢自信霊夢に好意がある、と言うこともあり、その想いが一層妖夢を駆り立てる。

 ああ、斬ってみたい。斬ってみたいな、博麗霊夢。

 しかし、斬るわけにはいかない。幽々子の大事なお客様だし、幻想郷の巫女なのだ。
 しかもどこかの妖怪(主に紫)の逆鱗に触れたら幽々子が危ないのだ(もし、狙われるのが私だけなのなら――いや、それでもやっぱり幽々子様を守れなくなるな。どちらにせよ我慢)。

 妖夢はそう考えて幾度か頷き、刀を振るった。
 いつもより生き生きして銀色の光沢を放っている。現金な刀だ。

 不意に、ピンク色の物が、刀身を掠めた。驚いた妖夢は上を見上げて、立ちつくした。
 神社の境内にも桜が咲いていた。
 妖夢は我が目を疑った。
 桜は、その容貌から嫌でも目に入ってきやすい。幾ら桜と触れ合う機会の多い妖夢でも、咲いていたのに気がつかないほど興はそがれていない。
 一般的に桜は、出会いや別れの象徴であり、妖夢自信幼少の頃より畏怖と敬意、そして少しの恐怖を感じて育ってきた。神社の桜も白玉楼の桜も違いはない。

「……馬鹿な」

 自分は意識を働かせていないため、気が付かなかったのだろうか。まさか。
 幾らなんでもそれはない。ここまで自分は中を飛んできた。当然、空からここを眺めて着地した。
 気がつかないわけがない。
 桜はたっぷりと枝葉に青白い花を付けている。
 まるで、ホログラムの映像が突如として映し出されたようだった。

 妖夢は刀を鞘に戻し、桜の下まで歩いていき、花を一摘み取った。
 確かに、桜の花である。桜の独特な香りが鼻を突く。

「妖夢ー、準備できたわよー」

 妖夢ははっとして振り向いた。
 縁側で、霊夢は快活な表情で手を振っている。

「どうしたの?」
「いや――」

 妖夢はまたも戸惑う。
 今度は明白な気配が、しっかりと霊夢にある。感じる気質は元気そのもの。
 活発で、少しやる気がなくて、笑顔が眩しい霊夢に早変わりしていた。

「何変な顔してるのよ」
「ここの桜はいつから咲いている?」
「えーと……五日前くらいかしら」
「五日前……」

 妖夢が呆然とする。
 霊夢は首を傾げながら妖夢の下に歩いてきた。
 そして、一緒に桜を見上げる。

「綺麗よね、桜って。見てるとこう、しみじみとしたものを感じるわ」

 反応は返ってこない。
 妖夢はまだ呆然と桜を見上げている。
 霊夢はしょうがないわねとも言いたげに鼻を鳴らした。

「……よっこらしょ」 

 気だるそうに言うと、背後から妖夢の胸を掴んだ。

 くにゅ。

「……へぇ?」

 妖夢は一瞬目を真ん丸にして、固まった。
 一瞬だけだった。

「っうあああああああああああ!?」
「あはははは! いえぁああああああ!!」

 響く悲鳴。
 つんざく絶叫。
 盛る巫女。

 もはや朝焼けが美しく照りつける境内は、修羅場と化した。

「どうしたどうした! これぞ博麗一子相伝の乳揉み術! この魔手の前に平伏すがいい! そしてこの霊夢様の(ピー)奴隷と化すのよ!」
「止め……あっ! ぐ、くそ! この変態めぇぇぇ!」
「変態の何がいけないの!? 人間なんて皆変態に決まってるでしょうが!」
「お前と一般人を一緒にするな!! 放せ! 今なら許してやらんこともないぞ!?」
「それはこっちのセリフよ!」
「いや明らかにお前のセリフではないだろ! ちくしょう! 『天人の五衰』!!」

 ドスッと、鈍い音。
 巫女は空中を舞った。
 ぎゅらぎゅらと乱回転しながら舞った。
 そして落ちた。

「ぎゃふん!」
「案ずるな、峯打ちだ(やば、もろ入った。死んでないわよね?)」

 間違っても、招待しようとしたお客さんを殺してしまっては不味いのである。例えそれが外道であろうとも。
 妖夢はぐったりしている霊夢に顔を近づけた。
 顔は真っ青で、口から泡を吹いているが、何とか生きているようだ。

「肋骨が何本か逝ってしまわれたか。南無阿弥陀仏。でもこっちの方が都合がいいわ」

 妖夢は霊夢を背負って、白玉楼へと飛んだ。
 背負った刹那にメシメキミキミキと軋んだ音がしたが、気にしないようにした。



――――――――





「あ~……酷い目にあった。見て、こんなに髪が乱れたわ」
「……酷い目にあった、ですむ問題か? 体はもう大丈夫なのですか」
「気絶してたら治ったわ」
「あんたは本当に人間?」
「人間だけど、少しいやらしいことが好きな人間かしら。手に残る感触がふにふに」
「なんだと!? 忘れろ! 忘れなさいよ!」

 幽々子は少し呆けたように、ぼさぼさになった髪を手櫛で整える霊夢と頬を紅潮させて刀を握りしめる妖夢を交互に見た。
 そして苦笑して言った。

「良かったわ、仲がよろしいようで」
「良いことありませんよ! 朝一番でコンプレックスを貶された身にもなってください!」
「私は小さいのも嫌いじゃないけど?」
「誰がお前の好みを聞いたか!」

 妖夢の怒りはまだ治まらないようで、眉間にしわが寄っている。
 幽々子はキリがないと思い、静かに立ち上がった。

「妖夢、朝餉の用意をして頂戴」
「……承知しました」

 妖夢は不承不承に了解し、縁側から奥へ進んでいった。
 霊夢は幽々子の後を行った。

「おっきい御屋敷ね。掃除大変じゃないかしら」
「大丈夫ですわ。専属の幽霊たちが大勢いますので」

 長い廊下は隅から隅までぴかぴかだった。
 霊夢は時折足の裏を確かめて、足袋に黒い汚れがちっとも付かないことに感動を覚えた。

 幽々子に案内された部屋は畳敷きの、ゆうに三十畳はあるような大広間だった。
 美しい色彩の座布団が三つ、向かい合うように並べられている。

「ここまで広いと落ち着かないわね」
「すぐに慣れるわ。うふふ」

 霊夢は座布団に座った。ふかふかだった。
 幽々子はにこやかに霊夢を見ている。

「柔らかいわね」
「あなたのほど攻撃的ではありませんから」

 すぐに、御膳を抱えた妖夢が部屋に入ってきた。その後から二匹の幽霊が御膳を頭に乗せるような形で付いてきた。

「どうぞ、お客様。白玉楼の朝餉でございます。味わって食べやがれでございます」
「こらこら妖夢。無礼を働いてはいけませんわ」

 粒の立った白米に、ネギと豆腐が浮かんだ味噌汁。虹鱒の塩焼き。それに和菓子とお茶が付いていた。

「いただきます」

 幽々子が頭を下げる。妖夢も後に続いて頭を下げた。霊夢もつられて頭を下げる。
 まずは白米に箸をつけた。

「……ふーん、美味しいじゃない。あなたが作ったの?」
「当たり前です。普段作らない分、今日は腕によりをかけましたから」

 庭師としての業務が本職の妖夢は、普段は食事を作る暇がないので幽霊たちにやらせていた。
 幽霊も元は腕の立つ料理人である。妖夢には劣らないのだが、そこは気持ちの問題である。

「以外ねぇ、見直したわ。凄い凄い」
「それホントに褒めてますか」
「もちろん。尊敬するわ」
「褒めても何も出ませんよ。……私の和菓子食べますか?」

 霊夢は喜んで和菓子をもらい受けた。






 朝食を済ませて、妖夢は後片付けに走った。
 これからは忙しいので、霊夢や幽々子と過ごしている暇はないらしい。
 幽々子は霊夢を呼ぶと、縁側に出ていった。外は桜で桃色一色だった。

「へぇー、凄いわね。どこを見ても桜、桜……」
「白玉楼自慢の庭ですわ。じゃあ、行きましょうか」

 幽々子は上品な履物を幽霊に持ってこさせると、庭へ出た。幽霊は一緒に霊夢の靴も持ってきた。
 霊夢も庭へ出て、ゆっくりと歩き始めた幽々子の後を追った。

 行けども、行けども桜だった。
 桜の森を、霊夢と幽々子はゆっくりと歩いた。流れてくる独特の香りが、鼻をくすぐった。

 しばらく歩くと、幽々子が詠うように言った。
 
「『花見ればそのいはれとはなけれども 心のうちぞ苦しかりける』」

 滞りがなく、抑揚を効かせた詩。
 霊夢は幽々子と並んだ。

「へぇ、どういう意味?」
「桜の花を見ていると、理由は分からないけど胸の奥が苦しくなるよ、という詩よ」

 懐かしさが込み上げてくる。
 幽々子は誰かにこの詩を聞かせるのは久しぶりだった。
 霊夢は感心したように頷いた。

「あんたが作ったの?」
「さあ」
「……さあ?」
「覚えていませんわ」

 霊夢は不思議そうな顔をしていた。
 実際幽々子は稀に喉から込み上げてくる詩を、生前に自分で作ったのか、または誰かの詩を未だ脳の隅っこに残しておいただけなのか覚えていなかった。
 ただ、酷なほどの懐かしさとともに、誰かの大きな背中を靄の向こうに見るだけだった。

「私は桜を見ると不思議な既視感を覚えるのよ。よく分からないのだけれど」
「大変ね、冥界のお嬢様も。私は桜と言えば、お花見の宴会をイメージするわね。そう言えば来週お花見するから来る?」
「是非参上させていただきますわ」

 幽々子が扇子で口元を隠しながら笑う。

「私は桜と言えば、狂気を想像しますわ」
「狂気? 何で」

 霊夢が露骨に嫌そうな顔をする。

「桜は人を惑わし、死をもたらす妖の花ですもの」
「まさか」

 霊夢は笑う。
 幽々子は笑わなかった。

「違いませんわ。桜は呪いの花よ。あなたも惹き込まれないように気を付けないとね」

 霊夢は強張った顔で幽々子を見つめ返した。表情からでも恐怖を受け取ることができる。
 博麗の巫女も、思いのほか怖がりのようであった。

「だったら何で、そんなものを……」
「何でかしらねぇ。やっぱり、惹かれるからかしら」

 幽々子が、醜悪な笑顔で笑う。
 霊夢の背中に鳥肌が立った。反射的に、自分の体を抱いて身を震わせた。

「ああもう! やめやめ、そんな暗い桜の解釈がある何てこの十数年の人生知らなかったわ全く」
「そう、なら得したじゃない」

 霊夢は幽々子を無視してずかずかと進んだ。
 幽々子も小走りで付いて行った。

「あまり先に行くと屋敷に戻れなくなるわよ」
「どれだけ広いのよ、この庭は」
「二百由旬はあるわ」
「それって具体的にどれくらいなのよ」
「約千四百四十キロメーター」
「パッとしない数字ね」

 霊夢は指折り数えてから、首を傾げた。
 少ししたところで、幽々子が言った。

「そろそろ戻りましょうか」

 霊夢が頷いたのを見て、幽々子は踵を返す。
 歩いてきた道に、桜の花びらの上に足跡が残っていた。
 流れる様に、桜の花びらが数枚、二人の間を縫い落ちた。

「ところで、今日は何故私を呼んだのかしら」
「……今更ね」
「今までどうでもよかったけど、急に気になった」

 霊夢は幽々子に目を向けずに言った。
 幽々子はくすくすと笑った。

「嫌がらせよ」

 意味深に言っておけば恐怖や疑心が募る。よもや紫への嫌がらせとは気が付くまい。

「誰への?」

 霊夢はぽつりと言う。

「……というと?」
「私にか、それとも別の誰かに、か」

 幽々子は笑顔を顔に張り付かせて言った。

「さあ、秘密ですわ」

 霊夢は興味なさそうに「ふーん」と唸った。
 この常人離れした勘こそが、霊夢の本質なのかもしれないと幽々子は思った。

「ねぇ幽々子」

 霊夢は唐突に、幽々子の手に指を絡めてきた。
 そしてそれをぎゅっと握る。

「紫と何かあったんでしょ」
「何で?」
「昨日の夜から頻繁に身の回りの境界がズレてる。あいつ眠いの我慢して私を見張ってんのよ。集中力がないから気配も駄々漏れよ」
「……そうね」

 幽々子はそう言っておいた。
 しかし、集中しても紫の気配は掴めない。
 横で霊夢は楽しげに歩いている。

「ああ、大丈夫。会話は聞こえないわ。これ以上の境界弄りはこっちにばれるって思ってるのかしら。可愛いものね。妖夢も変に誤解してたから教えてあげようかしら」
「……いや、教えないでいいわ。困ってる妖夢は可愛いもの」
「あんたってサドね」
「虐めるのは楽しいもの。そうなんでしょうね」
「怖いわね、亡霊は」

 霊夢が半分呆れながらも笑った。幽々子もくすくすと笑う。
 そして、またしばらく歩いた。手に、人の温かみが伝わってくる。

「冷たくない?」
「冷たいって、どこが?」
「手、私の」
「……ん、確かに冷たいけど……あまり気にならないわ」
「そう?」
「それに手が冷たい人は心は温かいものよ」

 幽々子は左を心臓に持って行った。当然、鼓動は感じられない。
 霊夢の手が、やけに熱を帯びているように思えた。

「じゃあ貴女の心は冷たいのね」

 幽々子が笑った。
 霊夢も笑って、手をより強く握りしめた。

「だったら、あんたが冷やしてよ」

 幽々子はまた笑って、手を握り返した。

 どこまで行っても、桜の森は終わらないように感じた。
 少し歩くと、霊夢は身を寄せてきた。

「……霊夢?」

 幽々子が声を出した瞬間、音が遠ざかった。そして、幽々子にも紫の気配が感じられた。
 二人で立ち止まる。

「ほら、動揺した」
「紫はね、知っているとは思うけれど……あなたのことが好きなのよ」

 紫が少しかわいそうになってきた幽々子は言った。この時、原因は自分であるということは、意識の外である。
 それを聞いて、霊夢ははしゃいだ。

「そう、やっぱり。私もあいつのこと嫌いじゃないから嬉しいわ」
「相思相愛ってことね? なんだ、罰ゲームが恋のキューピットになってしまいましたわ」

 幽々子がもういいかと離れようとすると、霊夢がさらにぎゅっと抱きついてくる。

「可愛いからこそ、虐めたくなるってもんでしょ」
「博麗の巫女は嗜虐趣味なのね。怖いわ」

 幽々子も霊夢を抱擁し返した。豊満な胸に埋められて霊夢が笑った。

「あんたってどことなくお姉さん気質よねぇ」
「そうかしら?」
「んー、柔らかいし、安心する匂いするし。あんたみたいな姉が欲しかったかも知れないわ」

 その言葉を聞いて、幽々子の胸が熱くなった。
 心をくすぐられるような心地がした。満更でもない。
 太陽のような笑みを見せる霊夢を、幽々子はじっと見つめた。



―――――――




 屋敷に戻ってきて、幽々子はまだ昼前だと知った。結構歩いたつもりだったが、まだ十時過ぎである。
 何をしようか。このまま何もせずに下らない話をするのもよいかもしれないが、いい加減だれてしまうかもしれない。
 悩んでいると、霊夢が声を発した。

「上手いわねー」

 壁際でしげしげと何かを見つめている。
 それは昔幽々子が手習いで書いた壁掛けだった。妖忌は飛び上がった喜んでくれた逸品であるが、幽々子はどこが凄いのか自分でもよく分からない。

「興味があるの?」
「うん、少し」
「若い身なりでそんなものに興味があるなんて変わってるわね」
「あんたも見た目若いじゃない」

 霊夢が唇を尖らせる。
 そんなに目を奪う物だろうかと、幽々子は疑問に思った。
 廊下にかけられたそれは、金色の額縁に嵌められて悠然している。何と書いてあるかはもう忘れてしまった。正直達筆過ぎて読めない。かろうじて、左下に押しやられている名前――『西行寺 幽々子』という文字がわかるだけだった。

「あなたも書いてみる?」
「ホントに? いいの?」
「もちろん」

 意外な所に僥倖があったものだ。妖夢が来るまではこれで暇をつぶそうと近くの和室に霊夢を招き入れた。
 十五畳程度の部屋だ。床は赤い習字用の下敷きで整えられている。その所々に黒い跡が見える。もうしばらく使っていない部屋だったが、綺麗に掃除されていた。
 幽々子は押し入れから黒い布製の下敷きと文鎮、筆、そして清書用の紙を取り出した。
 墨汁の固めた物を容れ物から出して、水を入れた硯の中で擦る。
 少しして、立派な習字教室の用意が整った。

「基本的なことはわかる?」
「これでも六歳の時は寺子屋通いだったわ。すぐ止めたけど」
「……何故?」

 霊夢は懐かしむ様な顔をして、筆を取った。墨汁の付いていない筆は、白くてさらさらしている。
 それをおもむろに墨に浸して、紙に文鎮を乗っけた。

「あの時は私も子供だったし、先代の修行が厳しくてストレスが堪ってたのよ。隣の子とかにこれで悪戯してたら追い出された」
「……」

 幽々子は黙って見つめる。
 霊夢は左利きだった。常識で、習字は右で書かなければいけないのに。
 流れるように、筆は走る。幻想郷では、筆が一般的だから、慣れていて当然である。霊夢も大分美味かった。
 そして、それはとても素直な字で、読みやすかった。

「……『筆プレイ』」
「いやー、参った参った。あはははは」
「六歳のころからそんなんだったの? 恐ろしい巫女ね」

「――――そう、『博麗』は道具を選ばない」

「何で急に真面目な表情になるの」

 おおよそバカバカしいが、先代は一体何を考えて霊夢を育てたのか。
 むしろ博麗とは代々そんな性格の巫女しかいなかったのか。

「ここで気にならない? 何故、私があなたのプリンちゃんをシャブシャブしないのか。何故、そのむちむちばいんに飛びつかないのか」

 どうやら、昔を思い出したせいで素にお戻りになってしまったようである。

「さあ? 何故かしら。わからないわ」

 しかし、嗜虐派の幽々子も負けるわけにはいかない。
 一度確定した位階は覆らない。故に、負けるわけにはいかないのだ。
 己のサドにかけて、プライドにかけて、負けるわけにはいかない。

「私はっ! 美味しい物は後に食べる派なのよ! デザートは最後ってのが常識じゃないっ。故に今があんたの散り時よ! 花の下に還るがいいわっ春の亡霊!」

 霊夢が筆を振り上げ、幽々子が近くにあった下敷きと文鎮を構える。

「そうっ! ならば相手になるわっ! 花の下で眠れ、紅白の蝶!」

 習字である。

 霊夢の振るった筆を避け、その飛沫を下敷きで防ぐ。そして文鎮を横に振り、前に飛び出してきた霊夢を牽制。
 しかし霊夢は下がらない。見事なスウェイでそれを紙一重でかわし、幽々子に組みついた。

「近距離戦は私の土俵! その乳貰ったっ」
「甘いわっ」

 ぎゅん! と霊夢の手が幽々子の胸に伸ばされるのに合わせ、幽々子も手を伸ばす。

「なっこ、この……!」
「早く堕ちなさい!……あ! ああ!」
「ふふ! 私を舐めていたようね!……んあ! んくぅ! うっうそ……巧い……」


 習字である。

 部屋の隅の空間から血が噴きでていたが、それも瑣末な問題である。








「なんじゃこりゃあ!」

 妖夢が幽々子と霊夢を探し当てた最初の一言がそれであった。妖夢は昼食の用意が終わっていることを幽霊に確認し、二人を探し歩いたのだ。
 そしてとある部屋から叫び声が聞こえ、来てみればこのざまである。
 二人とも汗と墨にまみれて、お互いを威嚇し合っていた。
 霊夢は筆をまるで一本槍に見立て、変顔を作りながら、幽々子を凝視している。幽々子と言えば、両手に文鎮を掴みながら、宮本武蔵さながらの、力を抜いた構えを取っている(問題なのは、顔が宮本武蔵像そっくりな変顔になっていることである)。

「あの、な、何を……」
「キエエエエエエ!」
「ソエエエエエエ!」
「ちょ、何で私の方にグエェッ」

 反応の遅れた妖夢の頭を二刀が捉え、霊夢の筆が喉を突いた。
 気持ち良いくらいまともに貰ってしまった妖夢は白目を剥き、良い音を立てて襖を粉砕し、転がった。

「ぐ……し、死ぬ……」
「あら、どうしたの? 妖夢」
「そんなとこに寝てたら風邪ひくわよ?」
「誰のせいですかァ! そしてお昼御飯ができましたよォ!」
「……ん、そんな時間なの?」
「そうです! もうそんな時間なのです! ついでに言わせてもらいますがその格好はなんですか!」

 幽々子と霊夢は互いの服を見て、てへへと笑った。
 どちらの服も、墨でどろどろになっていた。

「ねえ、お風呂入りたい。んで、着替えも貸して?」
「妖夢ー、お風呂焚いてきて頂戴」
「やりたい放題だな! あんたら!」

 妖夢は文句を言いつつも風呂場に引っ込んでいった。
 喉を押さえているのが、妙に痛々しかった。




―――――――




「いやー、いい湯ね」
「そうね、全くだわ」
「あんた気に入ったわ。こんなことに死んでないで神社に来なさいよ。歓迎するわ」
「ありがとう。貴女の方こそ、生きてないでここで暮らしたら?」
「死ぬのはまだごめんよ」

 笑いが広い浴槽に響く。
 桜の花が降り注ぐ露天風呂は風流の極みと言っていいだろう。檜で組まれた湯船は相当に広く縦一丈横三丈という贅沢さ。
 子供用のプールと言っても差支えないほどの広さである。
 霊夢は水を掌ですくって顔を洗った。

「いい下僕がいるわね。手は出したの?」
「意外なことに」

 幽々子は勿体ぶって言った。

「出してないのよ」
「そうなの? 意外だわ。私は会って五分で(ピー)しようとしたのに」
「あなたって好色?」
「見て分からない?」
「ううん、わかる」

 霊夢は首を竦めて言った。

「性欲って言うのはもっとも原始的な欲求の一つらしいわ。眠たいときに寝るのを我慢する? しないわよね。人間も動物なのよ。いいじゃない、人間だもの」
「だからって誰とも構わず関係を持ったら、畜生と変わらないわよ」
「あんたが言うか。それに私は責められるのが嫌いなのよ。自慢じゃないけど相手を一方的に攻め尽くして泣いて謝って『ご主人様』と呼ばせないことには始まらないのよ、わかるでしょう?」
「凄く……わかるわ」

「すみませ――ん! 外まで聞こえているので――自粛してくださ――い!」

 塀の向こうから、妖夢の叫び声が聞こえてきた。
 生娘には少々刺激が強かったようである。
 幽々子は苦笑した。

「体洗っちゃわない? 背中流すわよ」
「本当に? いいとこのお嬢様と流しっこなんて中々ないことだわ」
「こら、茶化さない」

 霊夢は幽々子に続いて湯船から上がった。白い湯煙が二人を取り巻く。

「それにしてもほんとでかいわね。これだけのバケツプリンがあれば、幸せになれるわ」

 霊夢は幽々子の背中に泡立ったスポンジを擦りつけて、元気に歌い始めた。

「いーいーなーいーいーなー♪ プーリンちゃんっていーいーなー♪」
「もしかしてあなたから見た私って胸だけ?」
「むちむち幽々子につるぺた妖夢♪ あの子のプリンはあーまいんだーろなー♪」
「ちょっと、人の話を……」
「私もたべーよお家でたべよ♪ 揉み揉み(ピー)ぐりがえしで(ピー)(ピー)(ピー)♪」

 バシン!

 肉が強烈な打撃を受けて波打ち、吹き飛ぶ音が高い空に響いた。
 霊夢は腰かけから真後ろに転落して、湯船に着水した。
 流石の幽々子も、あまりに行きすぎた言葉には下品と言わざる負えないものを感じたのである。
 霊夢をありったけの力で張り飛ばして、溜息をついた。

「まさかこの私にツッコませるとは、恐るべし博麗の巫女」
「いっだあ!? あばぼぼ、溺れる――!」

 霊夢は左側の頬に紅葉を刻まれて、ばしゃばしゃと暴れた。すぐに足が付くことに気が付いて、息を切らしながら風呂から上がった。

「う~! ひりひりする~!」
「あなたが悪い」
「叩くんなら、その大きな胸で……たわば!!」

 今度は右を殴られて、体を独楽のように回しながら風呂に落ちた。
 ぷくぷくと泡が水面に噴き出して、それもすぐに消えた。




―――――――――





 風呂から上がって、ぶかぶかの服を着た霊夢は、牛乳を飲んでいた。
 腰に手を当て、ごきゅ、ごきゅと喉を動かし、口に泡をつけながらぷはーっと息を吐き出した。

「いやー風呂あがりはこれよね」
「あなたって本当に凄いわね。ある意味で」

 両の頬に刻まれた紅葉はもう跡形もなく消えている。

「あれくらい楽勝よ。いつも初見の弾幕はばかすか当てられて、その度にリベンジしてるからね」
「なるほど」
「それより一つ言いたいことがあるんだけど」
「何?」
「おなか減ったまま牛乳だけ飲んだら、気持ち悪くなってきた」
「あなたって……馬鹿?」
「見て分からない?」
「ううん、わかる」

「お二人ともー、食事の用意はできてますよー!」

「わーい!」

 ダッシュ。

「気持ち悪いんじゃなかったの?」

 苦笑。



 遅めのお昼御飯を食べ終えて、霊夢は満足げに背伸びをした。
 妖夢はまた、食器を片づけて引き続き庭の手入れに向かって行った。

「次は何をしようかしら」
「猥談しよう?」
「食べたばっかりだから、動くのもあまりね」
「猥談は動かないわよ?」
「生け花なんてどうかしら?」
「生け花しながら猥談……意外とマッチしてるかも」

 精神統一の場で、とんでもない。
 幽々子のチョップが霊夢の脳天に落ちた。

 ごすっ。

「いたっ」
「馬鹿も休み休み言いなさい」
「私のビートは年中無休よ。……あだっ」
「全く、出来の悪い妹を持った気分だわ」

 幽々子は霊夢の額から手を離す。
 霊夢は涙目で額を押さえていたが、笑っていた。

「出来の良い妹は妖夢かしら」
「……そうね。考えたこともなかったけど」
「ここで年がら年中暇してるのかと思ったけど、意外とそうでもないのね。安心したわ」
「何? 心配しててくれたの」
「まさか、ストレスで折角の美人が台無しになるのが残念だっただけよ」

 霊夢は言うが早いか、庭へ駈け出して行った。
 ついてこい、と言うことだろうか。

「美人ね。もう人じゃないけど」

 顔を綻ばせた幽々子は、ぽつりとつぶやく。
 能天気な妹も悪くないと思った。

「何してるのよ――! 裸足で庭に来なさいよ――!」
「……えぇ! 裸足?」

 幽々子は縁側に出て、素っ頓狂な声を上げた。投げ捨てられた足袋が、縁側に転がっていた。
 霊夢は手を幽々子に振り、たたっと駆けだした。

「たあっ」

 そのまま左手を地面につけて足を跳ねあげ、体を捻って後ろ向きに着地。
 つまり左手でのロンダートをきめて、再度足を跳ね上げて、バク転。手を使って着地し最後には、

「うりゃあ!」

 元気よく叫ぶと、バク宙をきめた。
 桃色の蝶が、中を舞う。
 桜の花びらが流れる空間で、それぞれがしっかり独立した桜色、桃色が輝く。
 幽々子には、それがスローモーションになって繰り広げられた。
 やがて少女のむき出しの足は、しっかりと地面を掴んだ。
 スタンッと着地。両手を広げてはいポーズ。
 大きめの服がぶわりと揺れた。

「す……すご……」

 大よそ、少女の運動神経を超越した動きに、幽々子は感嘆した。
 もしかしたら、妖夢よりも凄いかもしれない。そう思わせるほどの動きだった。

「……ということよ。つまり私は、室内でいじいじと花を弄るよりも、外で元気に遊びましょうと言いたかったのよ」

 ずびしと幽々子を指さして、霊夢は白い歯を見せて笑った。
 元気に猥談をしようの間違いではないかと、幽々子は疑問に思った旨があったが。

「私には無理よ」

 幽々子は残念そうに笑った。

「何で?」
「あなたみたいに動けないし、最近は稽古もサボってて体が……」

 霊夢は不満げに舌を打った。

「お嬢だからって調子に乗ってんじゃないわよ!」

 霊夢は猛烈な勢いで走り、幽々子を突き飛ばした。
 幽々子は強い力に抗うこともできずに、ドスンと縁側に尻をつけた。

「いった! 何をするの……」

 霊夢は尻もちをついている幽々子を見下げ、にやりと笑うと再び駆けだした。

「あんたが鬼ー! おーにさんこちらー、手のなる方へー」
「ああっこら!」

 幽々子は慌てて立ちあがるが、もう遅かった。

「追ってくる時は裸足になりなさいよー!?」

 桜の森に、霊夢が消える。幽々子は迷って、佇んだ。
 すぐ下の地面を見る。まばらにピンク色が落ちている、茶色の土だ。
 幽々子は踏み出そうと試してみるが、どうしても、裸足で外を歩くなんて抵抗がある。
 溜息をついて座り込もうとしたとき、どこで見ていたのか、幽霊が履物を持ってきた。

「あ……ありがとう……」

 僥倖だった。これで、彼女の後を追える――そう思って、止まった。
 これで、本当に彼女が追えるだろうか。同じ土俵にも上がっていないのに、彼女を追うことなど、出来よう筈もないのではないか。
 いや、何を考えているんだろう自分は。これは単なる鬼ごっこだ。追えるとか、追えないとか、くだらないことを。

 すぐにそれを履こうとして――また迷って、霊夢が消えて行った桜の森を見た。
 ここまで優柔不断だったろうか、自分は。何だか、彼女のせいでおかしくなっている気がする。大体、自分一人で騒いで逃げて、勝手ではないか。そうだ、勝手だ。勝手に私を突き飛ばして、裸足になれだのなんだの。しかもあろうことか、お嬢様呼ばわりだ。お嬢様、何て虫唾の走る皮肉だろうか。自分だって、博麗といういいとこの巫女をやっているではないか。それを棚に上げて――――。

 そう思うと、どんどん悔しくなってきた。

 そうだ、負けるわけにはいかないのだ――――博麗の巫女如きに。

「……もう」

 幽々子は靴下を脱ぎ棄てた。
 幽霊がそれを止めるが、幽々子は耳を貸さなかった。

「全く、この西行寺幽々子をその気にさせるなんて。大した巫女だわ」

 意を決して、縁側から庭へ飛び降りる。
 じゃりっと、地面に着地した。冷たい土の感触が伝わり、足に刺さる小さな石が痛かった。
 大よそ初めての体験だったが――思ったより爽快だった。

「今行くから、待ってなさい。覚悟して」

 幽々子は不敵に笑うと、脂汗を流しながらひょこひょこと歩を進めていった。


 どっちかと言うと、覚悟していたのは幽々子のほうだったのだが、霊夢は思いのほか近くにいた。
 すぐ傍の桜の木に背中を持たれさせて幽々子を待っていたのだ。
 幽々子は不意をつかれて、立ち止まった。

「ようやく来たわね」

 霊夢はふっと笑って、幽々子を見た。

「なんのつもり?」
「あんたに、もう少し自然と触れ合って欲しかったのよ」

 何だそりゃあと幽々子はため息をついた。

「散歩なら、よくするわよ」
「そう言うんじゃなくて、何ていうのかしら。例えば、足から伝わってくる地面の感じとか。今までとは違う観照力を鍛えるためと言うか。変に大人びてるから、あんたの子供な姿や大人げない姿も見てみたかったというか」
「勝手なことを言うわね全く。裸足で外に出たのなんて生まれて初めてよ。ほら、こんなに足の裏が汚れちゃったわ」

 幽々子は唇を尖らせながら片足を持ち上げた。足の裏は真っ黒だった。

「お風呂入ったばかりなのに」
「お、今の表情いいわ」
「……馬鹿な妹を持つと苦労するのね」
「お嬢を姉に持つととても楽しいわね」
「あなただけでしょう、楽しいのは」
「私だけ? そうでもないわよ。ねぇ」

 霊夢の笑顔で、何かに気が付いた幽々子はため息をついた。

「そうかもね」

 二人で笑い合う。

「と言うことで、ここまで来たらデスゲームをする他ないわ」
「デスゲーム? 上等よ。ルールは?」
「蹴鞠で勝負。先に三回ミスした方が負け。負けた方は自主的に頸動脈を断つ、と言うことでどう?」
「それじゃあんたがノーリスクじゃないの。私が勝ったらあんたの桃を撫でまわしてやるわ」
「じゃ、私が勝ったら切腹してもらうけど、いいわね? 後でやっぱなしなんてダメよ?」
「微妙に変わってるけど、問題無いわ。世の中生きるかしゃぶるか、そこが重要なのよ」
「言ったわね。私、蹴鞠は得意なの。後で泣いても斬首よ? 分かってるわね」
「また微妙に違ってるけど、女にも二言は無し。ノッてあげるわ」


 咲き乱れる桜をバックに、二人の美少女が同時に、不適に笑う。
 両者の意地がまともにぶつかり、ぴりぴりとした空気が流れた。
 会話が聞こえない紫には、二人の姿がたいそうカッコよく見えたことだろう。





「じゃあ行くわよ! 西行十六文キック!!」

 ぎゅらららららら。

「くらえ!」
「これだけじゃあ私は倒せないわよ!? 博麗七連蹴り!!」
「何ぃ! 瞬きの速度で鞠を蹴る……ですって!?」

 どどどどどどどむ。
 ぎゅいーん。

「ちい! ヒロカワヘッドバット!!」

 どか。
 ぎゅーん。

「なんの、オーバーヘッド霊夢蹴り!!」

 どご。
 びゅーん。

「ならば! 西行ダイナマイツ!!」
「させるか! 博麗ダイナミック!!」

 どかどか。
 バチィ!!

「「あ!?」」

 鞠崩壊。

「し……しかし、鞠なら腐るほどあるわ!」
「おお! それならいくらでもできるじゃない! 続行よ!」

 そして、次の犠牲者が中に放られる。

「逆サマーソルト!」
「博麗トラップ! そして三連側宙蹴り!」
「消える魔球!」
「消えない魔球!」
「それは魔球じゃない!」
「あんたのだって消えないわよ!?」
「蹴ってりゃいつかは消えるわよぉ!!」
「うおお!? 消えたァ!」




 一時間経過。





「オフサイドォ! オフサイドォォォォォオ!」
「カバディ! カバディィィィィィイ!」
「オフサイド!!」
「カバディ!!」



 ――――歴史に残る、大乱戦であった。







 そんな戦いを見つめる影が一つ。

「ツッコみたい……! くそ、私があそこにいれば……くそ!」

 あなくちおし。
 魂魄妖夢、修行不足な今日の午後であった。







―――――













「はー、いい汗かいたわね」
「良く分からないけど、爽やかな気分だわ」

 霊夢と幽々子は、泥だらけで屋敷に帰ってきた。妖夢に怒られ、足を洗って、着替えを済ませる。
 もう外は暗くなってきていた。冥界も、夜は暗くなるのだ。

「そろそろ帰りの支度をしなきゃねぇ」

 それを聞くと、幽々子は、この巫女と別れることが非常に惜しくなってきた。
 今さらながら、自分にそんな感情があったことに驚いていた。

「もう? 晩御飯くらい食べて行けばいいじゃない」
「んー、それじゃあお言葉に甘えようかしら」

 言ってみるものだ。
 にこりと霊夢は笑う。
 にこりと幽々子も笑う。

 霊夢は幽々子に促されるまま、和室に入って行った。
 それを見届けて、幽々子は踵を返す。
 ドキドキとした鼓動が、膨れ上がる。らしくない話だが、自分はあの巫女と離れたくないと思っているようだ。

「ごめんなさい、紫」

 恐らくどこからか自分を見ている友人へ、一様謝っておく。
 そして台所に入った。いい匂いが漂ってくる。
 妖夢が、夕食の支度をしていた。鍋の中の芋を慎重に、菜箸で転がしている。

「ねえ妖夢、頼みたいことがあるんだけど」
「……何ですか?」

 今日一日で妖夢も消耗したらしい。いつもより疲れた様子だった。
 幽々子は妖夢の耳元に寄って行き、こそこそと話しかける。
 妖夢は驚いて目を見開いた。

「……いいんですか?」
「大丈夫よ。私が言うんだから大丈夫」
「紫様に怒られませんか~?」
「何とかするってば」
「ん~、しょうがないですね。まあ、いいか。あと一人分くらい増えても」
「お願いするわ」
「それより……う~ん……残念です」
「何が?」
「いえ、独り言です。気にしないでください」

 妖夢はまた料理を作りだした。
 幽々子は満足げにうんうんと頷いて、和室に戻る。
 和室では、霊夢が転寝をしていた。
 こうしていると、やんちゃな霊夢も幾分幼く見える。

「可愛いわねぇ」

 幽々子は霊夢のすぐ傍まで近づいて、頭を撫でようと手を伸ばした。

「……幽々子」

 幽々子の手を掴んで、霊夢は薄眼を開けた。

「あら、起きてたの」
「いや、今起きた」

 ぐいと伸びをして、欠伸を噛み殺す。
 夕食が来るまでの時間、霊夢はずっと、ぼーっとしていた。
 幽々子はそわそわと落ち着かなくてしようがなかったが。

「どうしたの?」
「あんた……いや」

 霊夢は首を振った。

「何でもない」
「変な霊夢」

 今日一日でずいぶん仲良くなったつもりだったが、まだ霊夢に硬い部分があるらしい。それを少し、残念に思う。
 まあ、これから解していけばいいか、と幽々子は暢気に考えた。



「夕餉ですよ」

 しばらくすると、妖夢が夕食を運んできた。

「うわー、美味しそう」
「……」

 パチン、と幽々子は両手を打った。霊夢は焦点が合っていないような眼で、夕餉を見つめた。

「どうしたの? 食べましょう?」
「ん、いや。私はやっぱりいいわ」
「えー? どうしてー? 食べましょうよー」
「なんだか食欲がわかないの。今日はもう疲れたし、家に帰って休むわ」
「まあまあ、一口だけでも」

 幽々子は箸で里いもの煮っ転がしを摘んで、霊夢の口元に持って行った。

「はい、あーん」

 霊夢は興味のなさそうな目でそれを見つめて、ふいと首を振った。

「ごめん、食べれないわ」
「えー?」
「私の巫女服はどこ?」
「何で食べないの?」

 霊夢はため息をついて言った。

「私はまだ、死にたくない」

 妖夢の動きが、ピタリと止まる。
 幽々子はやんちゃな笑みを崩さず言った。

「お姉ちゃんになってあげるわよ? 霊夢」
「それは魅力的ね。だけど、命とじゃとても釣り合わないわ」
「……何故? 生きているも、死んでいるも変わらないと思うけど」
「私はあまり深く考えない性質だから、難しいことは言えないけど」

 霊夢は立ち上がった。

「理屈じゃない。私は生きていたい。幻想郷を支えているのは私だから、死ぬわけにいかないの」
「次の巫女を用意すればいいじゃない」
「自分の居場所をやすやす受け渡す馬鹿は、この世にも彼の世にもいないわ」

 妖夢は刀を抜こうとして、幽々子に制された。半分引きずり出された刀身が、早く出してもらいたそうに、鈍い光を放っていた。
 納得いかない様な顔で、妖夢は幽々子を見つめた。

「ダメよ、妖夢。霊夢の体に傷が付いてしまうわ」
「……しかし」
「紫が出てこないってことは、霊夢にとって、この場は脅威の内に入らないってことなのよ。また今度にしましょう。妖夢」
「はい」

 妖夢は刀を鞘に納め、後ろの籠から霊夢の巫女服を出して、霊夢に渡した。
 幽々子の目には、妖夢も幾分か残念な顔をしているように見えた。
 霊夢は手早く貸してもらった服を脱いで、紅白の巫女服を身につけた。
 彼女とのつながりが切れてしまった気がして、幽々子は寂しく思った。

「こんな別れ方、不本意で、残念だわ。また遊びに来てくれないかしら」

 幽々子が哀願するように言ってみたが、霊夢はつんとしたままだった。

「冗談じゃないわ。こんな幽霊屋敷何か二度と来るもんですか」

 霊夢は障子を開けて、ぼそっと言った。


「じゃ、またね」


 そして、障子が閉められる。
 妖夢は首を傾げた。

「おかしいですね。何でわかったんでしょう?」
「勘、としか言いようがないわね。嫌われたかしら」

 ぷうん、とどこからか飛んできた虫が、里芋に止まった。
 その虫は、すぐにぽろりと汁の中に落ちた。
 もう動かなかった。

「それはないでしょう」
「何でそう思うの?」

 妖夢は冗談めかして笑った。

「今度は遊びに来いって今、言ってたじゃないですか」
「そうね。うふふ」

 幽々子は扇子で口元を隠して、笑った。
 そして、結局最後まで約束を守り通した友人を呼んだ。

「ごめんなさい、紫」
「謝って済む問題?」
「まあまあ、怒らないで」

 紫は不機嫌そうに、隙間から顔を出した。
 両の鼻穴にティッシュをつっこんで、口をへの字に曲げている。
 結構怒っているようだ、と幽々子は思った。

「とんでもないこと考えるわね、幽々子」
「ごめんってば」
「許さない」
「紫様」

 妖夢が口を開いた。

「何?」
「もし、私が斬りかかっていたら、やはり止めに入られましたか」

 幽々子は、その無邪気な横顔から、どうしても、妖夢は霊夢を斬ってみたかったのだということを知った。
 心の中では、紫をかわして、霊夢に致命傷を与える算段をしていたに違いなかった。
 わくわく、という形容が一番当てはまりそうな妖夢の表情を見て、紫は考えるまでもなく、言った。

「決まってるじゃない」
「……そうですか」
「何勘違いしてるのよ」

 嬉しそうに頷く妖夢を遮って、紫は続けた。

「止めに何か、入らなかったわ。あなたに斬られるのなら、所詮そこまでの奴だったってことだし何より――」

 紫は幾分強い口調で言った。

「何より、私の霊夢が、こんなところで死ぬなんて、ありえない」

 妖夢は少し驚いていたが、何も言わなかった。
 そして、妖夢の代わりに、幽々子は扇子で口を覆って反応を示した。

「……へぇ」
「何よ」
「いやね、随分積極的になったなって」
「悪い?」
「悪くはないわ。……ああそうだ。一つ提案があるんだけど」

 びゅうっと風が吹いて、大量の桜の花が散った。
 流れる花々は、桃色の、小さな蝶に見えないこともなかった。
 その様子を見て、妖夢はくすっと笑う。

「もう一度、花札しない?」

 紫は、ひくっと口の端を歪ませたが、ぶんぶんと首を振って、幽々子に向きなおった。

「それは――とてもよい思いつきね」

 妖夢が、花札を取り出しに、よっこいしょっと立ち上がった。

 今度青くなるのは、紫だろうか、幽々子だろうか。
 今夜もまた、バシッとこぎみの良い音が鳴り響く。
エロ馬鹿い霊夢も可愛いかもしれませんね。
そう思った私は末期ですね。
出直してきます。

_|\○_ ヒャッ  ε= \_○ノ ホーゥ!

出直しました。ああ……、長編になるとボロが出ます。文章がまとまってない。orz
この分量でプチと言うのは向いていませんか。もっと切り詰めた方が良いですか。
記念すべき五回目と言うことで、がっつり書いてみました。
ご感想をお待ちしております。
BLS
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
続編待ってましたー、ゆゆれいむとはまたマイナーどころですな
しかしなんという変態霊夢ww
今回はノリが真面目だったり、ほのぼのだったり壊れだったりアップダウンが激しかったですね
まぁ、私は霊夢が愛されていれば何でもおいしく頂けますがw
地味に過保護なゆかりんも可愛かった
次回作も気長に待ってますのでよろしくお願いします

誤字報告
「妖夢自身」が「妖夢自信」になってるところが2カ所ありました
2.名前が無い程度の能力削除
今回もよかったですww
すごく変態な霊夢だwww
色々なところで笑わせていただきました。

次回も期待して待っていますw
3.名前が無い程度の能力削除
霊夢変態すぎるww
4.名前が無い程度の能力削除
さすが霊夢俺たちにできないことを(ry
でも全体見渡してみると結局皆馬鹿ばっかw
そんなお前らが大好きだ!
所々シリアスともギャグともとれる曖昧な表現があったのが個人的に面白かった。
しかし若干句読点が多い気が。
シーンによってペースが乱されたので、そのあたりを工夫するといいかも。

大変面白かった。

誤字?
・妖忌は飛び上がった喜んでくれた~→「飛び上がって」
・霊夢も大分美味かった→「上手かった」
5.謳魚削除
誤字らしきモノ
>>「以外ねぇ~」→「意外」
>>「止めに何か~」→「何故か」
ではないかと。
クレイジーですね、作者様から何から。
だから好きです。
あと霊夢×キスメってほのぼのすると思いませんか?
6.名前が無い程度の能力削除
これは良いゆゆれい
7.名前が無い程度の能力削除
なんという好色巫女
8.名前が無い程度の能力削除
これはいい霊夢とゆゆ様
リクエストまだうけてもらえるなら、ルーミアお願いしたいです
9.名前が無い程度の能力削除
ゆゆれい最高だったぜ!

あの夕食こそが幽々子様の求愛というわけですか
なんとも暖かくも寒気がしますね
でも幽々子様らしいです

とりあえず妖夢さんは(ツッコミの)修行が足りん!
10.名前が無い程度の能力削除
最高でした。続編は何でもOKなのでジャンジャン投稿して下さい。
11.名前が無い程度の能力削除
ここまで来たら「ゆかれいむ」を望みますな
12.奇声を発する程度の能力削除
続編ばっちこーい!!!
13.名前が無い程度の能力削除
この巫女は素敵過ぎます!
14.名前が無い程度の能力削除
後編的な感じでまたお願いします。
15.BLS削除
返信です!

1さん
誤字報告感謝です!
次回作もどうぞ見てやってください!

2さん
そこはかとなく期待してて待っていてください!

3さん
変態な霊夢もよいかもしれませぬ!

4さん
誤字報告ありがとうございます!
アドバイス参考になります!

5さん
誤字報告ありがとうございます!
霊夢キスメ受け付けました!

6さん
霊夢は何にでも合いますね!

7さん
好色いえあ!

8さん
ルーミア霊夢受け付けました!

9さん
病んだ人を書くのは大好きです!
次も誰か病ませたい!

10さん
ありがとうございます!
湯水のように投稿します!

11さん
ゆかれいむプロット立ててみます!

12さん
パラレルワールドみたいな形ですから、後編は残念ながら。
ごめんなさい!

13さん
次も素敵な巫女で居てくれますように!

14さん
この物語はこれで御終いなので……でも後編『的』な感じでなら。
頑張ってみます!
16.BLS削除
追伸です。
誤字を正そうと思ったら、パスを紛失してしまいました。orz
誤字を見つけてくださった方々、申し訳ありません。
以後、十分注意していきますので、今回は勘弁してやって下さい!

ごめんなさい!
||Φ|(|´|Д|`|)|Φ||ヒエー
17.名前が無い程度の能力削除
このあとの~作品が~楽しみだ~~~
18.名前が無い程度の能力削除
続きを早く~~~~
19.名前が無い程度の能力削除
いいですね~、ゆゆれいむ!
今度は幽香×霊夢を見てみたいです。
20.こーろぎ削除
いい、雰囲気ですね
登場キャラみんながいい味をだしてました
21.名前が無い程度の能力削除
霊夢好きだけどさらに好きにさせられました。ありがとう