朝起きると、慧音の家の前に花が生えていた。
小さな小さな、桃色の花。
慧音は、特に意にも留めず日常どおりに寺子屋で授業をした。
花が生えていたことに気がついたのは、帰ってきてからである。
もう春が来たのだな、と感心して水をやった。
翌日、また花が生えていた。
今度は、薄い紫のスミレ。
花の名前に疎い慧音でも、これほど有名であれば知っている。
慧音は水をやったあと、里に下りて農作業を手伝った。
さらに翌日、また花が咲いた。
また翌日。
その翌日。
まるで啓蟄のように、慧音の家の周辺からポコポコと芽吹く花の群れ。
それは、数年前の花が乱れ咲いた異変を思い出させる。
一週間もの間、慧音の家には新たな花が芽吹き続けた。
周囲の森や、家には何の異常も無く。
偶然にしては、あまりにも不自然。
さすがに不審に思った慧音は、妹紅を呼び寄せた。
「こうして、上白沢花屋が開店したのである、と」
「でたらめな語りを入れるな」
「まぁそれは冗談として、どうなってんだこれは」
「わからん」
妹紅の言葉は冗談であっても、花屋が開店できる程度に慧音の家は花に囲まれていた。
その種類、数ともにいまだ増量中。
皆様のご来店をお待ち申し上げております。
「違うというに」
頑なな慧音。
妹紅は無視して、外に出た。
慧音の家は、一般的な木造建築。
茅葺の、質素な一戸建て。
それがいまや、植物に乗っ取られた花やしきと化していた。
慧音も外に出てきた。
慧音と妹紅、二人並んで家を見上げる。
最早、冗談としか言いようが無いほど花は広がっている。
「これはハコベ、勿忘草、アネモネ、チューリップ……ら、ライラック? リナリア?」
「何? その分厚い本は」
「紅魔館から借りてきた花の図鑑だ。調べて何か共通点が見つかればと思ってな」
「何か見つかったか」
「何も」
殴れば凶器に成り得る本を、慧音はしゃがみながらページを手繰る。
一方の妹紅は、呆然と家を見上げていた。
花見と洒落込むにも、これは少々うるさすぎる。
「一体、誰の仕業だろうなー……」
「ある程度、見当はついている。だが、こんなことをする意味がわからない」
「じゃあ、そいつの所に行って聞けばいいじゃないか」
「ちょっと遠いからな。それに、私程度じゃ太刀打ちできない妖怪がいる」
「……そうか。じゃあ、まずはこの花を抜くか焼くかするか。ちょっと派手すぎるだろうし」
言うなり妹紅は、手に火の羽を作り出す。
慧音は、振り返って静止しようとして……
妹紅の頭に、小さな向日葵が突き刺さっているのを見た。
そして、矢文のごとく白い紙が結えてある。
勢い良く血を吹き出して、倒れる妹紅。
死なないだけで、打たれ強くはないのだ。
真っ赤な花が咲いた。
そして、慧音の側にまた一輪の花。
またか、と嘆息しながら慧音は花を調べる。
「マリーゴールド……だめだ、全く関係がない。アイツは、なんでこんなことをしてるんだろうなぁ」
慧音は、妹紅を引きずって家の中に入る。
さながら殺人鬼と、被害者である。
目撃者多数。
しかし、証言は集まらない。
花だから。
「死ぬかと思った」
「死なんだろ」
「まぁそうだけど」
家の中に戻った二人。
格子窓からは、育った花が覗いている。
まるで睨むように。
「やっぱり、人為的なものだよなぁ」
「そうだろうな。ここまでする理由はわからんが……」
「よく知ってるみたいだけど、知り合い?」
「いや、幻想郷縁起で知っただけだ。面識はないと思う」
「むぅ……それより、もうこれ取っていいか?」
妹紅は、頭に刺さった向日葵矢文を示す。
簪のようで、若干似合っている。
「ああ、忘れてたな」
「ひどくないか慧音」
慧音は無視して、矢文を開けた。
抜き取る段階で妹紅は悲鳴を上げたが、また無視した。
死なないし。
「あぁぁぁぁ……」
「何々? 鈍感?」
「それだけか」
「妹紅は、復活はやいなぁ」
いまだ、咲き続ける花の群れ。
花の季節を過ぎ、初夏に至るまで慧音の家は花屋敷になったという。
慧音が真意に気づくのはいつの日か。
答えがどちらであれ、それまで彼女の戦いは続く。
小さな小さな、桃色の花。
慧音は、特に意にも留めず日常どおりに寺子屋で授業をした。
花が生えていたことに気がついたのは、帰ってきてからである。
もう春が来たのだな、と感心して水をやった。
翌日、また花が生えていた。
今度は、薄い紫のスミレ。
花の名前に疎い慧音でも、これほど有名であれば知っている。
慧音は水をやったあと、里に下りて農作業を手伝った。
さらに翌日、また花が咲いた。
また翌日。
その翌日。
まるで啓蟄のように、慧音の家の周辺からポコポコと芽吹く花の群れ。
それは、数年前の花が乱れ咲いた異変を思い出させる。
一週間もの間、慧音の家には新たな花が芽吹き続けた。
周囲の森や、家には何の異常も無く。
偶然にしては、あまりにも不自然。
さすがに不審に思った慧音は、妹紅を呼び寄せた。
「こうして、上白沢花屋が開店したのである、と」
「でたらめな語りを入れるな」
「まぁそれは冗談として、どうなってんだこれは」
「わからん」
妹紅の言葉は冗談であっても、花屋が開店できる程度に慧音の家は花に囲まれていた。
その種類、数ともにいまだ増量中。
皆様のご来店をお待ち申し上げております。
「違うというに」
頑なな慧音。
妹紅は無視して、外に出た。
慧音の家は、一般的な木造建築。
茅葺の、質素な一戸建て。
それがいまや、植物に乗っ取られた花やしきと化していた。
慧音も外に出てきた。
慧音と妹紅、二人並んで家を見上げる。
最早、冗談としか言いようが無いほど花は広がっている。
「これはハコベ、勿忘草、アネモネ、チューリップ……ら、ライラック? リナリア?」
「何? その分厚い本は」
「紅魔館から借りてきた花の図鑑だ。調べて何か共通点が見つかればと思ってな」
「何か見つかったか」
「何も」
殴れば凶器に成り得る本を、慧音はしゃがみながらページを手繰る。
一方の妹紅は、呆然と家を見上げていた。
花見と洒落込むにも、これは少々うるさすぎる。
「一体、誰の仕業だろうなー……」
「ある程度、見当はついている。だが、こんなことをする意味がわからない」
「じゃあ、そいつの所に行って聞けばいいじゃないか」
「ちょっと遠いからな。それに、私程度じゃ太刀打ちできない妖怪がいる」
「……そうか。じゃあ、まずはこの花を抜くか焼くかするか。ちょっと派手すぎるだろうし」
言うなり妹紅は、手に火の羽を作り出す。
慧音は、振り返って静止しようとして……
妹紅の頭に、小さな向日葵が突き刺さっているのを見た。
そして、矢文のごとく白い紙が結えてある。
勢い良く血を吹き出して、倒れる妹紅。
死なないだけで、打たれ強くはないのだ。
真っ赤な花が咲いた。
そして、慧音の側にまた一輪の花。
またか、と嘆息しながら慧音は花を調べる。
「マリーゴールド……だめだ、全く関係がない。アイツは、なんでこんなことをしてるんだろうなぁ」
慧音は、妹紅を引きずって家の中に入る。
さながら殺人鬼と、被害者である。
目撃者多数。
しかし、証言は集まらない。
花だから。
「死ぬかと思った」
「死なんだろ」
「まぁそうだけど」
家の中に戻った二人。
格子窓からは、育った花が覗いている。
まるで睨むように。
「やっぱり、人為的なものだよなぁ」
「そうだろうな。ここまでする理由はわからんが……」
「よく知ってるみたいだけど、知り合い?」
「いや、幻想郷縁起で知っただけだ。面識はないと思う」
「むぅ……それより、もうこれ取っていいか?」
妹紅は、頭に刺さった向日葵矢文を示す。
簪のようで、若干似合っている。
「ああ、忘れてたな」
「ひどくないか慧音」
慧音は無視して、矢文を開けた。
抜き取る段階で妹紅は悲鳴を上げたが、また無視した。
死なないし。
「あぁぁぁぁ……」
「何々? 鈍感?」
「それだけか」
「妹紅は、復活はやいなぁ」
いまだ、咲き続ける花の群れ。
花の季節を過ぎ、初夏に至るまで慧音の家は花屋敷になったという。
慧音が真意に気づくのはいつの日か。
答えがどちらであれ、それまで彼女の戦いは続く。
けーねは朴念仁だから、まだもこたんの方が早く気付きそう。ゆうかりんの恋路はいかに。
しかし、英国とはまたあたらs(座布団没収)。いいぞもっとやれ。
大丈夫。慧音なら花言葉にもすぐ行き着くよ、理論的に考えて。
しかし珍しい組み合わせですね?少なくとも自分は見たこと無いです。
妹紅を攻撃した時のマリーゴールドとかゆうかりん可愛いよ。
花が恋文になるという題名どおりですが、慧音にとってはいい迷惑(?)
>殴れば凶器に成り得る本
いったいどの位厚いんですかww500ページ以上ですか?ww
貴方様のおかげでけねゆっかが脳内に新しくインプットされました。ホクホク。
多分ゆっかさんは全弾幕少女のど真ん中でガチ告白しないと伝わらないんじゃないかと。
あとけーねてんてーは両思いになったら意外と助平だと思うのですがどうでしょう。
楽しんで読めました。ほくほく。
遠回しな愛情表現っていいですねー
花言葉は本によって違ったりするので、どれを参考にしたか書いていただけると嬉しいです。
これは立派な幽香SSです!!!
ヽ|〃
/´⌒⌒丶.
(ハ)ノ))ハ ノ | なにこれ。
リ、ヮ゚ i(ハメ_
|_∪ ̄∪ ̄ _|
| ̄ ̄ ̄ ̄|
|______|
>>ゆうかりん
かわいい
幻想郷の摂理
>>本
幻想郷全ての植物を網羅した書物
チューリップからビオラ○テまで
>>幽香×慧音
某氏の趣味
>>花言葉
スミレ:誠実 ひかえめ
ハコベ:ランデブー
勿忘草:私を忘れないで 真実の愛
アネモネ:あなたを愛します
チューリップ:恋の告白 まじめな愛
ライラック:初恋の感激 愛の芽生え
リナリア:私の恋を知ってください
マリーゴールド:パルスィ
主に http://www.e87.com/word/ の4月を参考
>>慧音
天然でえろいお方
天然だから気づかないよ
>>妹紅
ギャグキャラになってしまった
つまり死なない
『花言葉をググっていたら幽香様が愛しくてしょうがなくなった』
な…何を言っているのかわからねーと思うがおれも何をされたのかわからなかった…
頭がどうにかなりそうだった…ツンデレだとかギャップ萌えだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…