Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

冒険しようよ!

2009/04/25 21:48:10
最終更新
サイズ
12.42KB
ページ数
1

分類タグ

「大ちゃーん、きいてきいてー!!」

ここは紅魔館近くの湖。
いい天気だったので、大妖精は湖の畔を散歩していた。
そこに、いつものようにチルノが飛んできた。
チルノは異様に興奮していた。
まるで、新しい遊びを自分で考え出し、誇らしげにしている子供のように。

「チルノちゃん、何かいいことでもあったの?」
「ふっふっふ、あたいね、すっごいことおもいついたの!」
すっごいこと?
またとんでもないことを言い出しそうだな。
大妖精は、この推測が杞憂に終わることを祈る。

まあ、推測は当たってしまうのだが。


「あたいね、だいぼうけんをしたいの!ていうかするの!!」


え?大冒険?
なんで?どこで?どうやって?
大妖精が何も言えずにいると、チルノは続けた。
「なんかさ、カエルこおらせるのもあきちゃって。だからあたらしいことしたいの!しげきがほしい、ってやつ?」
まだすべてを呑み込めてはいない大妖精も、辛うじて応える。
「ちょ、ちょっと待って!気持ちはわかるけど、冒険なんて危ないよ?それに具体的に何をするの?」
「んーそうだなあ…やまにいってみよう!ほら、あのてんぐとかもいるし」
「いや、でも…」

山の妖怪は排他的だと前に聞いたことがある。
無理に入ろうとすれば何をされてもおかしくない。
チルノちゃん、私はあなたに無茶なことをしてほしくないの。

大妖精の心とは裏腹に、チルノはますます興奮していく。
「だいじょうぶ!ふたりでいけばたぶんオッケー!」
「私も参加メンバーに入ってるんだね」
「え?きてくれないの?」
「もちろん、一緒に行くよ。でも危ないことは駄目だよ…ってチルノちゃん、待ってー!」
「いっくぞー!めざすは、もりやじんじゃ!おー!!」
そう言うと、チルノは先に行ってしまう。

無事に終わればいいな。
でも、ちょっと楽しみかも。
二人に降りかかるであろう困難を憂いながら、大妖精もまた、チルノとの冒険への期待に胸を膨らませていた。


   *   *   *


二人は山の入り口に来ていた。
意外なことに、ここに来るまで特別変わったことは起こらなかった。
大妖精はほっと胸を撫で下ろしていたが、チルノは気に食わなかったらしい。
「なんでなのさ!せっかくのぼうけんなのになにもおこらないんじゃつまんないよ!」
途中会ったミスティアから餞別に貰った串焼きを頬張りながら、チルノは怒り出す。
「まだ山に入ってないししょうがないよ。きっとこれから何かあるんじゃない?」
大妖精はチルノをなだめて言う。

そのとき、急に辺りの雰囲気が重く暗いものに変わった。
「お?なんだなんだ?」
チルノは目を輝かせる。
大妖精は、急に襲われても平気なように身構えた。
しばらく進むと、この空気の元凶らしい人影が見えてきた。

「また誰かやってきたのね。厄いわねぇ、ほんと厄い。」
その少女の周りには見るからに禍々しい何かがたまっていた。
「ねぇねぇ、あんただれ?あたいチルノ!よろしく!」
大妖精が警戒している中、チルノが少女に話しかけた。
「あら、名乗られては答えなければね。私は鍵山 雛。一応厄神様よ。」
礼儀正しく挨拶する彼女には、戦う意思は見られなかった。
しかし、ここにいると息苦しいのは事実だ。
大妖精は、早くこの場から抜け出したいと思った。
「ねえチルノちゃん、早く先に…」
「やくがみさま!?あんた、かみさまなの!?すげー!!」
チルノには、この重い空気など意味を成さないようだ。
神様と聞いて、目を輝かせている。

「あー…貴女には不幸なんて寄り付かなさそうね。ただ…そこの貴女」
雛はチルノの後ろで未だ警戒を解けずにいる大妖精を見た。
「貴女、不幸に好かれそうね。全部独りで背負おうとするでしょ?」
「そ、そんなことありません!私はただ…」
すべてを見透かされているようで、大妖精は少し怖くなった。
だからつい、強い口調で言ってしまった。
「ふふ、大丈夫。この子といれば問題ないわ。この元気がすべて吹き飛ばしてくれるもの」
雛は優しい笑みを浮かべた。

ああ、この人は悪い人じゃない。
大妖精は、この時初めて警戒を解くことができた。
「ねえ、ふたりでなにはなしてるの?あたいもまぜてー!」
「ふふ、内緒。ところで貴女達、ここに何しに来たの?」
「うんとね、ぼうけんしにいくの!もりやじんじゃまでいくんだ!」
それを聞くと、雛は複雑そうな顔をした。
「そう…気をつけてね。」
そう言った雛は、また優しい笑みに戻っていた。
「うん!じゃ、しゅっぱーつ!さ、大ちゃん!」
「あ、うん!あの…もしかして、あなたは止めようとしたんじゃないですか?」
雛は少し驚いたような顔で答える。
「あら、なかなか鋭いわね。そう、私は貴女達を止めようとした。だけど、あんなにまっすぐな眼をされては駄目なんて言えないわよね?貴女もそうなんでしょ?」

やはり雛は気づいていた。
恐らく、大妖精にとってチルノは単なる友達ではないということまで、彼女はわかっていただろう。
「はい。チルノちゃんには私がついていてあげないと。」
「そうね。でも、頑張りすぎは駄目よ?二人で支えあっていきなさい。」
「はい、雛さん!」
そう言うと、大妖精はチルノの元へ走っていった。
二人に手を振る雛は、妹を見守る優しい姉の表情をしていた。


   *   *   *


山の道のりは思っていたより緩やかだった。
まだまだ目的地は遠いということか。
「雛さん、素敵な人だったね」
「うん、おねえちゃんみたいだった!あたいきょうだいいないけど、おねえちゃんってたぶんあんなかんじだよね?」
二人とも雛のことを気に入ったようだ。
でも、どうもあの空気は苦手だな。
大妖精は苦笑いする。
「うん…あ、見てチルノちゃん、河だよ!きれいだね」
「あ、ほんとだ!よーし、ちょっとおよごうかな!」
二人の眼前にはいかにも山の河、という光景が広がっていた。
川幅は広くないが、水がとても澄んでいる。
「ちょ、チルノちゃん、服のまま!?」
「へーきへーき!とうっ!」
チルノが河へダイビングしようとした、まさにその時。

「待てーい!!」

声とともに、何かがチルノを捕まえた。
あまりに急で何もできずにいる二人に、何者かは声をかけた。
「まったく、いきなり飛び込んだら危ないよ。河童の川流れって知らないの?」
そいつは河童だった。
河童なんて初めて見た。リュックと帽子なのか。
興味深そうに大妖精が見ていると、チルノが口を開いた。
「ちょ、ちょっとはなしてよ!これいたいんだけど!」
「あ、ごめんごめん」
河童がボタンを押すと、チルノを掴んでいた長い何かが引っ込んだ。
「ふう。それすごいね!」
「これかい?のびーるアームっていってね、自在に動かせるんだよ」
「ねえねえ、あんたなまえは?あたいチルノ!」
「私は河城 にとり。よろしくね、チルノ。そっちのあんたは?」
にとりを珍しそうに見ていた大妖精は、少し慌てて答えた。
「あ、私、大妖精です。皆からは大ちゃんって呼ばれてます」
「じゃあ大ちゃん、よろしくね。いやーしかしここにも妖精が来るようになったんだ。でもこの先は危ないよ?」

それまでにこやかだったにとりは、急に妖怪の顔に変わった。
思わず戦闘態勢に入る大妖精。
チルノは状況が掴めなかったらしく、呆気にとられた様子だった。
その様子を見て、にとりはまた笑顔に戻った。
「ああ、ごめんごめん。そういうつもりじゃなかったんだけどね。ただ、この先は天狗の縄張りだ。彼らは排他的だからね、下手に入れば危ないよ。」
「えー?じゃあじんじゃいけないのー?」
チルノはふてくされた顔をする。
「でもチルノちゃん、しょうがないよ。危ないことは出来ないよ。」
「やだ!あたいはじんじゃにいくんだ!」
「うーん、困ったね…私じゃどうしようもないし」
にとりは頭をぽりぽりと掻く。


「私に任せなさい!!」


不意に空中から声がかかる。
その声の主は、三人の元に舞い降りると、腰に手を当て、誇らしげに言った。
「話は聞きました。この射命丸 文に任せなさい!」
「あや!ほんと?ほんとにじんじゃいけるの?」
「ええ、もちろん。私が許可を取れば問題ありません」
「やった!じゃあたのむよ!」
チルノはうれしそうに飛び上がる。


チルノちゃんが喜んでくれてよかった。
でも、なんでこの人はわざわざ助けてくれたんだろう。
大妖精は、我慢できずにこの質問をぶつけてみた。
「あの…文さん?なんでわざわざこんなことしてくれるんですか?」
「ああ、私があの子を好きだからですよ」

文は呆気なく言った。
大妖精の頭は、あまりの驚きで崩壊した。
「な、なななな何言ってるんですか!?チ、チルノちゃんを好きだなんてそんな、あまりにもいきなりすぎで、そんなの間違ってます!!」
「あはは、何本気にしてるんですか、冗談ですよ冗談。あ、もしかして貴女、チルノのこと…」
文はいやらしくにやりと笑う。
「ち、違います!チルノちゃんは友達で…」
大妖精は否定したが、その顔は真っ赤だった。
「じゃあそういうことにしておきますか。私はただ記事のネタがほしかっただけですよ。私が助けてあげれば、自分で記事が書けるでしょ?私の評判も上がって一石二鳥です!ただし鳥を落とした奴は私が許さない」
「は、はぁ…」
相変わらずよくわからない人だ。
でも、チルノちゃんが笑顔ならそれでいいか。
そう思って、大妖精はまだぴょんぴょん飛び跳ねているチルノを見つめた。


   *   *   *


文に連れられて、二人は守矢神社にたどり着いた。
その頃にはすっかり日が暮れていて、境内には誰もいないようだった。
「へーここがもりやじんじゃかー」
「チルノちゃん、前見て歩かないと危ないよ!」
よほどうれしいのだろう、チルノは辺りを見回し、目を輝かせている。
もう陽も落ちて、何も見えないだろうに。
「せっかくだし、神様に挨拶でもしていきますか?」
「あ、うん!」
「でも、いいんですか?もう時間も遅いのに」
「ああ、あの方々なら邪険にしないでしょう。」
「よし、じゃあかみさまのうちにいこう!」



「ごめんくださーい」
「はーい、ただいまー…あら、文さん。そちらのお二人は?」
「あたいチルノ!」
「私、大妖精です。」
突然の訪問に早苗は戸惑っていた。
文に話を聞いて、やっと事態を呑み込めたようだ。
「そうですか、わざわざここまで。遠かったでしょう?」
「ううん、そうでもなかったよ?」
「たぶん色々な事があったから、長く感じていないんだと思います。」
「あ、立ち話もなんですから、奥へどうぞ。文さんもどうぞ上がってください。」
「せっかくですが私は仕事があるので失礼します。では!」
そういうと、文はあっという間に行ってしまった。
確かに自分が送り届けたという事実があれば記事には事足りるのだろう。
「お忙しいんでしょうね。では二人とも、どうぞ。」
「はーい!」
「お邪魔します。」



居間では御二柱がくつろいでいた。
「早苗、誰だったんだい…おや?客かい?見ない顔だね」
神奈子は諏訪子とじゃれあっていたが、見知らぬ客に気づくとカリスマを取り戻し、胡坐で二人を迎えた。
「ええ、こちらチルノちゃんと大ちゃんです。なんでも湖のほうからわざわざいらっしゃったそうで」
「へえ、そりゃあご苦労だったね。なら今宵は大事な客人と宴だ!準備頼むよ、早苗!」
「そう仰ると思ってもう用意してありますよ。はい、どうぞ」
「お、さすが早苗!」
「ねえ、ところでここに何しにきたの?私達に会いに来たってわけないだろうし」
さっきまで横になっていた諏訪子は、起きて早々に核心をついた。
「じつはね、あたいたちぼうけんしにきたの!」
チルノは誇らしげに答えたが、諏訪子は訝しげな顔をした。
「冒険ねえ…具体的には?」
「え?ええっと…」

そう、チルノはただ守矢神社に行ってみたかっただけだ。
行って何をするかなんて、まったく考えていなかった。
大ちゃんとぼうけんして、どきどきわくわくしたい。
ただそれだけで、チルノは山を目指したのだった。

「えっと、うんと…」
具体的にと言われて、チルノは何も言えずにいた。
あたいはなにをしたかったんだろう。
大ちゃんといっしょにぼうけんして…でもぼうけんってなに?
あれ?わからなくなっちゃった。なんであたい、ここにきたんだっけ?
チルノは考えをまとめようとするが、不慣れなもので余計に混乱してしまっている。



相変わらずだなあ、チルノちゃんは。
私はわかってるよ。
チルノちゃんが、何をしたかったのか。
あなたの思いはいつもまっすぐだから、言葉を尽くさなくても伝えられるのに。
一生懸命悩むのもチルノちゃんらしいけど、それじゃ伝わらないよ?
だから今回は、私に任せて。



未だ何も言えないチルノの代わりに、大妖精が口を開いた。
「チルノちゃんは、私と一緒に冒険したかったんです。冒険といっても、知らないところに行って、知らないものを見る。具体的にどこで何をするかではなくて、ただとにかく、普段とは違う経験をしたかったんだと思います。でしょ、チルノちゃん?」
「そう、そうだよ!まさにそれ!さっすが大ちゃんだ!」
チルノの顔に笑顔が戻った。
それを見て、大妖精も微笑む。
「普段とは違う、か。大事な事だね。ハレの日あってのケの日だし、ケの日あってのハレの日だからね。」
神奈子はそう言って盃の酒を呑み干す。
「つまり二人にとって今日は特別な日なわけだね!」
諏訪子はうれしそうに笑っている。
「さあ、今日は二人のお祝いだ!じゃんじゃん呑もう!早苗、酒追加して」
「用意してありますよ。どうぞ、神奈子様」
「さっすが早苗!」
「さなえすげー!!」
チルノにも褒められて、早苗はうれしそうにしている。

この日は朝まで神様と大騒ぎして、次の日に帰ることになった。







本当に、色々な事があった。
色々な人に出会って、色々なものを見た。
チルノちゃんもうれしそうだったし、私も楽しかった。
何より、この冒険で友達がいっぱいできた。
雛さんやにとり、早苗さん、神奈子さんに諏訪子さん。
みんな、またおいでって言ってくれた。

私達はまた、チルノちゃんがカエルを凍らせ、それを私が見ている、そんな日常に戻っていた。
なんだか不思議な気分だ。
あんなに色々な事があったのが嘘みたい。
ちょっと不安だけど、また冒険してみたい。
そんなふうに思えるなんて、やっぱり変だ。でも、嫌じゃない。
私にはハレとかケとかはよくわからないけど、
きっと神奈子さんが言ってたのはこういうことなんだろう。

チルノちゃんがこっちに走ってきた。
何かあったn…ああ、またあの顔だ。
「大ちゃん、あたいすっごいことかんがえた!ぼうけんしよう!」
「いいよ、今度はどこへ行くの?」
「うーん…ちてい!ちれいでんっていうのがあるらしいから、そこいってみよう!しゅっぱーつ!」
「いや、でも灼熱地獄跡とか溶けちゃう…あ、チルノちゃん待ってー!!」

はあ、やっぱりチルノちゃんは無茶ばっかりする。
私がついていてあげなきゃ。
でも、こういうのも楽しいし、いいか。

二人は地底の入り口目指して飛び立った。
この二人なら、どんな困難も乗り越えていくことだろう。


チルノが熱で溶けない限りは。
第⑨作目はやはりチルノを!と思い書いていたんですが、投稿前に確認したらこれ八作目でした…
いつも元気でバカ正直だから失敗もよくするけど、絶対めげない。
そんなチルノが愛おしい。
でれすけ
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
このほのぼのとしたSS。
個人的にとても好みです。
これからもがんばってください。
2.名前が無い程度の能力削除
チルノらしくていい作品ですね。

次は地霊殿編を是非。
そうすれば⑨作目がチルノに
3.でれすけ削除
>>1さん
チルノをメインで書くのは初めてだったので心配だったのですが、
いい雰囲気が出せたようでよかったです。
頑張らせていただきます。

>>2さん
おお、これでばんじオッケー!やっぱあたいったらさいきょーね!!

と、チルノが申しておりました。