あんなに一緒だったのに。
ずっと一緒だと思っていたのに。
それは愚かな思い込みに過ぎなかったのだと打ちのめされる。
『彼女』とこれから共にあったであろう可能性は。未来は死んだ。
これからは彼女と共に弾幕だらけの戦場を駆け抜けることも、布団の中に潜り込むこともないのだ。これ以上は望みえないほどの包容力で包まれたあの日々。シルクのようなあの優しさを、私は忘れなければならない。この思わず泣き出してしまいそうな喪失感を抱えて生きなければならない。
もう『彼女』はいない。
つまりはこういうことだ。
『彼女』は死んだ。
寿命?もちろん、その日がいつか訪れるのはわかっていた。
しかし、しかしだ。
いつか来る別れを知りながらも、その日はまだまだ遠い未来なのだと根拠もなく思っていたのだ。お前は馬鹿だと罵られてもいい。その瞬間が来るまでは、そう信じて疑っていなかったのだから。
根拠のない自信ほど厄介なものはない。
冷静な頭で考えれば、理論的に考えればすんなりと導き出される答えにも、目を背けて。「もしかしたら」「自分だけは特別だ」と裏づけともなう根拠もないまま甘い幻想を抱いてしまうのだから。富くじなんかもそうだ。確立論的に考えても、当たりなどするわけがないのに、「ひょっとしたら」と思わずにはいられない。そんな幸運などめったに転がり込んではきやしないのに。
話がそれた。
つまり私が言いたいのはだ。
『彼女』を失うのは避けようのない現実だった。なのに、私ときたら彼女と身体を重ねることしか考えてこなかったのだ。毎日のようなにそんなことをしていれば、どうなるかは分かっていたはずなのに。
『彼女』はその怒とうの日々を健気に受け止めてくれていた。自らの命を、文字通りに削りながら私の愛に答えてくれていたのだ。
軋む身体。私たちが出会った頃の面影もない、色あせたその身を『彼女』自身どう思っていただろう。
愛された証だと誇らしく思ってくれていただろうか?
それとも辛いと、苦しいと思っていた?
『彼女』は、己の身に起きた変調を私に悟らせることはなかった。否、私の目が節穴だっただけかもしれない。変わってしまった『彼女』から目を逸らし続け、そして――――。
「馬鹿じゃないの?」
私がそこまで語ると、大人しく耳を傾けていたアリスが沈黙を破った。
縁側にちょこんと腰かけ、出された緑茶を啜っていたアリスは聞き手として満点と言ってよかったが、どのくだりが気に喰わなかったのだろう。私の言葉を遮るようにして暴言を吐いてきた。
「馬鹿って何よ。あんたが私が悲しんでいる理由を教えろっていったんでしょ」
「だから、何でそこまで悲しめるのよ」
アリスは私の後悔による告白を聴いちゃあいなかった。
「たかがパンツが破れたくらいで」
「たかが?!あんたには苦楽を共にしてきたパンツを失った私の気持ちなんかわからないの!」
「いくら愛着があるからと言って『彼女』はないでしょ!『彼女』は!……何?日本人ってそんなに擬人化が好きなの?パンツの次はブラを擬人化し始めるんじゃない?」
「付喪神を知らないの?!パンツだってね、その気になればなれるんだから」
「そんなにもたないわよ、素材的に。100年の酷使に耐えられないわ」
そんなことはない。私があんなに愛用しなければ、あのパンツだって神に成りえたかもしれないのに。
「幻想中を探せばいるかもしれないじゃない!パンツの付喪神が!!」
「それはないわ。それはないわ。絶対それだけはないわ」
どなたか、パンツの付喪神を見つけたらご一報ください。
パンツかよ!
シリアスっぽいかと思ってたらこのオチかよwww
途中から見なければいい話で終わったかも知れないのに・・・w
いぬきちさんの話ならパンツが昇天されたのはアリスに原因がありそうに思えてしまうw
それより、弾幕中にスカートの中からビリッって音がして愕然とするアリスが目に浮かぶんだが。