Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

優曇華の花・後編

2009/04/18 16:40:17
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弾幕が妹紅の頬を掠める。
初撃は避けた。
相手は竹林を利用して身を隠しながら不意を狙って撃ってくる。先ほどの弾幕も相手の身のこなしも、今までの暗殺者に比べて段違いに強い上に戦い慣れているときた。
「輝夜の奴も本気になったってことか」
さらに敵弾が飛ぶ。避ける。
あたり一面を燃やしてしまえば相手の位置もわかろうというものだがそんなことをすれば山火事、いや竹林火事か。
でも一部くらいなら。うん、後で消火すればいいし。
また弾が飛んでくる。
その弾が飛んできた方向に炎を放った。
「火の鳥・鳳翼天翔!」
「熱ぅ!?」
やっぱりいたようだが、直撃したらしい。
すぐに全身から煙を上げた妖怪が転がり出て来る。そこらの妖怪なら全身火達磨だろうが、そうなる前に服だの耳だのに燃え移った炎は叩いて消したらしい。
長い耳、赤い瞳、長髪。
いままで一度も見たことのない兎、いや妖怪だ。
そいつが涙目になって訴えてきた。
「燃やすなんてひどいじゃないですか!」
「不意打ちしてきたお前には言われたくない。始めてみる顔だけど、どうせ輝夜の使いだろう?」
「そうなりますね。あぁ、髪の毛が」
一部焼け焦げてしまった自らの髪の毛を見て嘆息する兎。
「帰って輝夜に伝えて。あんたが出て来いってな。・・・・・・そういやお前、名前は?」



「へんてこな名前だな」
その兎との話を慧音にしたのだが、これは慧音の第一声だ。それにはまったく同意する。
「長いし漢字は難しいしで、一回で覚えられる自信がないぞ・・・・・・しかし今まであいつを使わなかったのに、今になって刺客として送ってきたということは」
私は不死だ。だから負けても死ぬことはないし輝夜もそれは知っているはず。
それなのに刺客として強い妖怪を送ってきた。
気分が重くなる。輝夜は本気なのだ。
「って、私が落ち込んでどうする」
「私のところに来るといい。お前一人の部屋くらいなら用意できるぞ」
「慧音には迷惑はかけられないよ」
慧音にはよくしてもらっている。輝夜との確執にこれ以上巻き込むわけにはいかない。
「鈴仙・優曇華院・イナバ。優曇華か、どこかで聞いた覚えがあるんだが」
「伝説上の花の名前だろう。珍しいものの好きな輝夜がつけそうな名前だ」
実際は好きなわけではないのだろう。結婚をただ断るのが面白くなかったとでも思ったか、余興であのようなことを・・・・・・・・!
慧音は続ける。
「思い出した。月には優曇華という植物があるそうだ」
「じゃあ月出身の妖怪なのかあいつは」
「成長したら美しい実をつけるらしいが残念ながら私は見たことはない。なんと言ったかな、確か蓬莱の玉の枝」
蓬莱の玉の枝?
父上に要求した品。
「そうか」
どこまであざ笑うつもりだ。
私へのあてつけか、輝夜!


※ ※


それから数日後。

「あれ?」
永琳の言いつけにより外で薪割りをしていたうどんげは、竹林の中からやってくる人物を見つけた。
藤原妹紅。敵。襲撃。
うどんげは身構える。
「これ以上先へは行かせませんよ、人間」
「あ~、いや、今日は戦いに来たんじゃないんだ」
罠の警戒をしているのか辺りを見回しながら、バツが悪そうな顔をしながら妹紅が近寄る。
炎をまとっていないその姿を見てうどんげも警戒を緩めた。
「お前がいるってことは方角は間違ってないみたいだな。嘘吐き兎のいうことを信用しなくてよかった」
「戦いに来たわけでないのなら、どういったご用件で?」
「怪我人がいてね。あぁ、怪我人って言うのは人里のやつだから・・・・・・薬を処方できるんなら治療とかもできるんじゃないかと思って」
妹紅の後ろの草陰が揺れる。攻撃があると踏んで身を隠してもらっているのだろう。
「師匠ならできますけど。あなたからの依頼は受けませんよ」
「私と輝夜の問題に、人里の奴は関係ないだろう?わたしがいるのがまずいって言うならそいつだけ残して立ち去るだけさ」
「まぁ、そうですね」
怪我人が永遠亭を頼ってきたのか妹紅が紹介したのかはわからないが、怪我をしているというのであれば手当てしなければならない。
「わかりました。永遠亭に運んでください」
「あんたがいてくれてよかった。因幡のてゐや薬師相手じゃ会話が成立しないから」
確かに。てゐは嘘ばっかり言って妹紅を怒らせるだろうし、永琳は怪我人だけ置いてさっさと出て行けと言いかねない。
「今度てゐに会ったら一緒に連れてきていただけると助かります。しゃべるだけしゃべったら私の手伝いもせずにどっかにいくので」
「素直に探すのがめんどいって言いなよ。じゃあ、後は頼む」
そのまま妹紅はきびすを返してしまう。たやすく背を向けたのは、うどんげがここで攻撃するような人物ではないと信用した証。
その背にうどんげは声をかける。
「帰るんですか?藤原の」
「私が行ったらドンパチだろう?あと、妹紅でいいよ」
「怪我人を運んできた人を相手に弾幕を張るほど、姫様は常識はずれではないですよ。永遠亭に来るいい口実だと思うし」
それに妹紅は足を止める。
それを口実に今日は来たのだ。ここで帰ってどうする。
顔を合わせれば弾幕ゴッコ。
『死』なんて言葉は二人には無縁のものなのに。
そんなことはわかっていて、それでも竹林からは離れない。
「何を期待していたんだ、私は」
「はい?」
「なんでもないよ。じゃあこのまま怪我人を運ぶ」
「付いていきます」
薪割り用の手斧を置き、うどんげは妹紅の横に並ぶ。
「そうしてもらわないと困る。あ~・・・・・・あなたのことはなんて呼んだらいいんだ?長くて覚えられないんだ」
「師匠はうどんげと呼ぶので、それでいいです」
「優曇華ね。わかった」



輝夜は診療用の部屋にやってきた二人を見つめた。
藤原妹紅と、その横に並ぶレイセンを。
藤原と蓬莱の玉の枝。それを迎える輝夜姫。
何の因果か。
「・・・・・・・・イナバ」
「ひゃい!?」
輝夜のただならぬ雰囲気を感じ取っていたうどんげは裏返った声を出す。
「永琳は調薬中。あなたが怪我人の手当てをなさい」
「わ、わかりました」
「その後で私の部屋に来ること。い・い・わ・ね?」
「はひっ!!」
鋭い目つきで射抜かれ、うどんげはまさに脱兎のごとく診療室へ入りふすまをピシャリと閉める。かわいそうに、きっと障子の向こうで怯えているに違いない。
そして蓬莱の玉の枝が去った後に残される、竹取の姫と藤原の娘。
「輝夜」
「勝負しに来たのなら表に出るから、屋敷の中で弾幕撃たないでね」
「誰がするか」
輝夜・永琳・てゐ・うどんげ。ここで戦ったら永遠亭の4人にフルボッコにされてしまう。それに今日は、今日だけは本当に戦いに来たわけではないのだ。
二人は黙る。
ここに来たまではよかったが話すこともなければそういう間柄でもない。輝夜のほうも平然を保っているように見えるが、どこか居心地が悪そうにも見える。
「どうして私の所にうどんげを送り込んだの」
これを聞くが為に来たのだ。
「最近うちに来たのだけど、中々に優秀でしょ?」
「そういうことじゃない」
それを聞いて輝夜が口元を緩める。人を小馬鹿にしたように。
「お気に召したかしら?私からの贈り物、蓬莱の玉の枝」
「お前と言う奴は!」
私をおちょくって楽しいのかこいつは。
楽しいのだろう。輝夜はくすくすと笑い続ける。
「傷に障った?」
「わかったよ、輝夜と言う奴が言葉で言い表せないほどに最低な野郎だということがよくわかった。なんで父上はこんな奴にっ!!」
「恨み恨まれ。諦めなさいよ、私に勝てっこないんだし」
「ゆるさん、絶対ゆるさん」
「許してくれなんて言ってないし」
プッチン
あぁ、これが堪忍の尾が切れるというやつか。
妹紅は怒りに震えた手で、今しがた入ってきた戸口を指差す。
「今回の件で本気で頭に来たぞ。出ろ、表に出ろ、今すぐ出ろ」
「さっきの人間、大した怪我じゃないから手当てなんてすぐよ。人間の負傷者がいるのだから、やるならそいつを里まで送ってから」
流れ弾で巻き込まないようにと言う意味だろう。これには納得せざるを得ない。
こういう気遣いのできるくせに。
なぁ輝夜。どうしてあの時はしてくれなかった?
妹紅は渋々うなずいてから、
「はぁ、わかったよ」
「怪我人の搬送なら喜んで受けるわ。また来なさい」
「・・・・・・表で待ってる」
妹紅はくるりと背を向けて歩く。


妹紅がその場を去った後。
頃合いを見たのかうどんげが診療部屋から顔を出してきた。出て行ける雰囲気ではなかったのでずっと待っていたのだろう。
「人間の手当ては終えました。軽症でしたので里まで連れて行きますね」
「そうなさい」
「あの・・・・・・姫様」
だからうどんげには今の話を聞かれている。その証拠に、うどんげの顔からは困惑の色が見て取れた。
「あれじゃまるきり悪役ですよ?」
「いいのよそれで」
許して欲しいとは思わない。私は間違いなく誰かを傷つけ、悲しい人間を作り出してしまったのだから。
その人間が、妹紅が私を恨むことを生きる糧としているならそれもまた一つの在り方だろうと。
願わくばこんな関係じゃなくもっと普通に付き合いたいのに。
だが私もそれ以上進むのはやめてしまった。
「イナバ」
「はい」
蓬莱の玉の枝は私と妹紅を繋ぐもの。
うどんげ、あなたをいいように利用している。それを考えた永琳も大概だけど。
臆病なのは私も同じね。
いい加減一歩踏み出さないと。
「私からの仕事、これからも続けて」
今日はうどんげがいたからこそ、この屋敷に妹紅が来てくれた。
この確執をなくせる日は来るのか。
永遠にその機会を失う前に、考えておかないと。


※ ※


優曇華の意味。
伊達でも酔狂でもなく、師匠はこの為に名を授けたのだ。
「私からの仕事、これからも続けて」
姫様から言いつけられた内容は藤原妹紅を倒してくれと言うもの。
でもきっと、この言葉通りの意味ではない。
「喜んで」
罪滅ぼしの第一歩。
二人の間に入って取り繋ぐ。
「戦ってわかったとは思うけど妹紅って強いから、燃やされて兎鍋とか網焼きとかにされても責任は負いかねるわ。ふふ、あなたのお肉ならおいしいのができそう」
「えぇぇ!?」
この前の炎は本当に危なかった。
戦ったふりして逃げようかな。
「逃げないように」
「逃げてたら実は付かないですしね。わかりましたよぅ」
私も成長して実をつけないといけない。
「そうよ。あなたにはがんばって蓬莱の玉の枝になってもらわないと」
「鋭意努力いたします」
自分勝手に逃げ出した臆病な兎はもういない。
これからは・・・・・・・・・






優曇華。
地上の穢れを取り込んで成長する、月の植物。
月から地上にやってきたレイセンに与えられた名前。
成長した優曇華には七色に光る玉が付く。
それこそが蓬莱の玉の枝。
その実は自らのものでもあり、同時に誰かのものでもある。










四季映姫 「貴方がきちんと私の教えを理解しているか見に来ました」
うどんげ  「つまり薬師の修行はオプションなんですね!私、姫様の為にがんばります!」
四季映姫「ふぅ、貴方は罪の念を持ち続けて生きるしかなさそうね」
うどんげ  「・・・・・・え?」
主人公変わってるぅ、別作品になってるぅ、タイトルと合ってないぃ


緋想天においてまさかのボスラッシュ。あれはうどんげへのメッセージですね。どう見ても格上の相手だけど逃げるんじゃないと。
しかし診療部屋でうどんげと二人っきり、ロマンですね。そんな甘いひと時を・・・・・・こほん。


「そこに在る証明」フランについでうどんげについての考察SSには一区切りが付きました。そしたら輝夜と妹紅まで混じってしまった罠。
フランのあの羽を「賢者の石」と考えた人、さすがだなぁと思う次第。
今度は白玉楼組かはたまた地霊殿か。だがしかし、さっきゅんについて一発やりたいネタもある。
てるもことか、さとチルとか、レイアリとか、レイサナとか、ひなパルとか。やってみたいことは数知れず、しかしネタがない。
次回作は限りなく未定。


いまのところ某キャラについてのドシリアスなSSを書いてます。流血シーンはないけど糖分?ギャグ?なにそれな内容なので、完成しても「面白さ」を求める閲覧者の多いここに投稿すべきか悩み中
水崎
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
自分的にはとっても良い作品でした。!!!

でも、最終的に姫様がメインになってたような・・・
>診療部屋でうどんげと二人っきり
ロマンだ!!ロマンが溢れかえってる!!!
2.名前が無い程度の能力削除
でも、優曇華の花って一般的には植物の名前でなくて「ウスバカゲロウの卵」って意味しか知られてないんですよね~