Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

うどんげ、発掘がんばる! 

2009/04/08 23:55:09
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いきなり地味で悪いのだが、私の趣味は発掘である。

「おー、でっかいなぁ」
「ウドンゲも変な趣味してるよね」

隣で私にツッコミを入れたのは、永遠亭で一緒に住んでいる因幡てゐ。
嘘ばっかりつくくせに、巷じゃ幸せ兎だなんて言われてる。
私の事は、馬鹿にした調子でウドンゲって呼んでくる。
ちなみに私の名前は

「長いよ。さっさと進もう」
「ちょっと待ってよ!」

とってとてと、てゐは、ぱっくり口を開けている古墳の中へと走っていってしまった。
それを見失わないよう、必死になって私はそれを追いかける。

「待って」
「早く来なってば」

てゐはぐんぐん奥へ進んでいく。

「あ」

ふと、てゐの足音が止まった。
私は灯りを頼りに細い横穴を進んでいく。
間もなくてゐに追いつくと、そこは小部屋で行き止まりになっていた。

「行き止まり?」

てゐはゆっくりと上方を仰いだ。

「見て」

私は声を上げた。
三方の壁から、天井へとぐるりと装飾画が続いていた。
大小様々の模様が暗闇に薄ぼんやりと浮かんでいる。

「すごいね」
「うん」

てゐは、装飾画の一つをしげしげと見つめていた。
私は私で他の所を見る。

「凄い、こんなに鮮明に残ってる……」

よほど保存状態が良かったのか、画は細部まで読み取れた。

「何だろう。これ……?」

その内の一つに、何やら奇妙な物を発見した。
怪物……、だろうか。
人型なのだが頭に二本の角らしきものが見える。
しかし、体が妙に小さい。
その横では人型が剣を振りかざしていた。こちらはどうやら、人間らしいが……。
一体、何を表しているのだろうか。
神話か、あるいは。
思考に耽っていると、てゐが声を上げた。

「あ」
「何?」

「すごいもの見つけたよ」
「私はそれどころじゃないのよ」
「いいから来てよ」

私はてゐに促されるまま、逆側の壁へと向かった。
てゐは壁の一点を指さしていた。
そこにはやはり、壁画がある。

「これ、何だと思う?」
「何って、これは、兎?」

どう見ても兎だった。
長い耳と丸い尻尾を持った動物が走る様子が描かれている。
私は兎と答えた。
てゐは、いつになく真剣な表情で壁画と向き合っている。
私は何となく声をかけづらくなって、黙っていた。

「私、違うところ見るから」

そう言って、私は離れようとした。
何か嫌なものを感じていた。
言葉に出来そうで出来ない、心のざわめき。
例えるならば、何か、こう、もの凄い名作を穢しているかのような罪悪感……。

「ウドンゲ」
「え?」

てゐは壁の一点を指さした。
先程の兎の壁画のあった所だ。
心臓がどきりとする。
そして、てゐは意外なほど透き通った声で、はっきりと言った。

「これは私だ」

その時、私の中で何かが砕け散った。



     
     
       ~古墳百鬼夜行~紫とメリーの墓荒らし~





「ウホホホホ……ホ(ふぁーぁ。豪族も退屈ねぇ)」

紫は豪族居館の枯れ草ふわふわベッドの上でごろ寝をしていた。
もはや原始ではない!
獲物にありつけなくてコケを舐め舐めしながら空腹を凌いだ日々。
偶の獲物を皆で仲良く分け合った日々は二度とやってこないのだ。
九尾の埴輪を愛でながら懐かしいあの日々を思い出し、感傷に浸る。
今でも萃香やチルノは一つ屋根の下で同じ釜の麦を食べあう仲だ。
しかし、歴史の彼方に燦然と煌く遮光器土偶のような日々は、
永遠に色あせることなく、今でも紫の胸を熱く焦がしている。

「ウホ、ウホホッ(センチメンタルしている場合じゃないわ。新しい式を探さないとだわねぇ……)」

つい先日、緑が死んだ。
紫は愛する式を手厚く葬る為に、野兎たちを引き連れて墳墓の建設を始めたのだった。
気ちがいと笑うならば笑え! 八雲は情に厚いのだ!!

「ウホホ、ウホホホホ、ウサ!(あのぅ、紫さま、お食事の準備がそろそろ……)」

か細い声が響き、紫の思考を妨げた。
野兎の一匹が紫に食事の時間を告げる。

「ウホホホ、ウホ(あら、ありがとう)」
「ウホホッ、ウサ……(紫さまのお口に合うか心配ですが……)」
「ウホホホホーイ!!(くすくす。心配しなくてもいいわよ。貴女たちの作ってくれる料理はいつも美味しいもの)」

途端に野兎の顔がパァッと明るくなる。

「ウサホホ!!(あっ、ありがとうございます!)」
「ウホーホ(うふふ。ところで貴女、お名前は?)」
「ウッサホーヰ(てゐ……因幡、てゐと言います)」

因幡てゐ。なんと愛くるしい野兎なのだろう。
献身な野兎の姿は、紫の心をガッチリ掴んで離さなかった。

「ウ……ホホ?(貴女……八雲の式になってみない?)」
「ウサホ?(式……と言いますと?)」
「ウッホウッホ!(私の身の回りの世話をしたり、私の代わりに山に芝刈りに行ったり川へ洗濯へ行ったりするのよ)」

てゐは、紫の言葉を聴くと静かに瞼を閉じて言う。

「ウッホヰ!(でしたら……因幡てゐはもう、既に紫さまの式ですよ)」
「ウボァ(まぁ……この子ったら)」

ウィットの効いた言葉に、紫はてゐの持つ可能性を見た。
並の野兎ならばこれほど気の利いた返答はできまい、まるで米が伝来し、動物を追わずとも生活ができるようになった時のような感動を紫は覚えた。

「ウッポポ(とりあえず食事にしましょう。皆もおなかを空かせているでしょう)」
「ウササホホヰ(萃香さまはもうずっと働き詰めでしたからね、あの方は、緑さまが大好きでしたから)」

二人は遠い目をし、フォッサマグサを作らんばかりに叫ぶ萃香の声を思い返していた。

あるいは主よりも、緑と萃香の絆は深かったのかもしれない。
狩りがあれば一緒にでかけていき、戦いがあれば、二人が真っ先に先陣を切った。
背中を預けていた親友の死、それが萃香を墳墓製作に駆り立てる理由なのだった。

「ウホ(萃香……あなた働きすぎよ、あなたが体を壊したら何にもならないじゃない)」
「ウサ……(……)」

紫のぼやきの意味を、てゐは痛いほどに感じていた。
敬愛すべき主人たちの間に、埋めがたい亀裂が生じ始めていることも。
このままでは、宇宙船地球号の仲間達から紫か萃香のいずれかが離脱する恐れがある。
例えそれが大気圏突破を意味するとしても、今のてゐにとっては実現するやもしれない恐怖だ。
何とかしなくては。
遠い目で天井を見つめる紫をよそに、てゐは館を後にする。足音を忍ばせることなんてお手の物。気付かれることなく、あっさりと外へ出てきた。
眩しい太陽が白い肌を照りつける。
気持ちは鬱屈としていても、それをくみ取ってくれる太陽ではないのだ。
日光を手で遮る。今日も暑くなりそうだ。
と、てゐは得体の知れない気配を感じた。

「ウサッ!(なっ!)」

何気なく見上げた顔を降ろしてみると、気味の悪い物体が蠢いている。
例えるなら、動く藻。あるいは草。
いずれにせよ植物で、そうそう出歩くような進化を遂げているわけではない。

「ウサッホ……(気味悪いな……)」

紫がこれを見て気分を害してはいけないと、恐る恐る動く藻を蹴飛ばす。藻は坂を転げ落ちて、平地に叩きつけられた。
そして、それは動かなくなった。

「ウサホ……(なんだったんだろ……)」

気味悪げに見下ろしながら、気持ちを切り替える。
そう、今は不気味な生命体に関わっている場合ではない。どうやって紫と萃香の間を取り持つか。それこそが考えるべき最重要課題なのだ。
決意を新たにしたてゐの元へ、何故か明るい表情の萃香がやってくる。
いつもは真剣な表情に若干の寂しさを交えつつ、古墳を作っているというのに。
不思議がるてゐに、萃香は尋ねる。

「ウホウホホホウホッ?(ねえ、緑みなかった?)」

見なかったかと言われれば返答に困る。なにせ、緑はもう死んでいるのだから。
よもや悲しみのあまり現実逃避したのかと危惧するてゐに、萃香は告げる。

「ウホッホホホ、ウホ。ウホホホホイ、ウホウホッウホ。(いやあ、何か古墳作ってたから緑が蘇ってさ。ちょっと姿は変わってたけど、私びっくりしてさ。驚いた顔したら緑が逃げ出したのよ)」
「ウサ(はあ)」
「ウホホ、ホホッホホホ(だからさ、ここらで緑色で毛むくじゃらの生き物見なかった?)」

てゐは動きを止めた。そしてばれないように坂の下を見て、笑顔で答える。

「ウソホイ(見ませんでした)」

生物はすべからく、土へと還る運命なのだ。無闇やたらに蘇らせてはならない。
そういった自然の理を体現すべく、てゐは緑を蹴飛ばしたのだ。
萃香は残念そうな顔をして、またどこかへと緑を探しにいった。

さてこうなると第一に考えなければならぬことが緑の屍骸の隠滅でありました。
きっと萃香は、紫へと緑が蘇ったことを報告しにいっているに違いありません。
それまでにどうにか取り繕わなければ、この命は失ったも同然。
しな垂れた藻のような緑をまずは頭に載せてみせますが、それは出来の悪い鬘にしかなりませぬ。
これで隠し通せというのは、些か無理といわざるをえません。
ならばどうするか、てゐは緑の屍骸を、両の手に抱き、そのまま駆け出したのでありました。
その足の向かう先は近辺を劈き流れる大河、ガンジスでありました。

「ウサーッ!(母なる大地へ還れ!)」

てゐはその膂力を全てこの瞬間のために。
緑の体は放物線を描き、ぽちゃんという音とともに、ガンジスへと消えてゆきました。
肩で息をするてゐ、そしてその両の眼から流れ落ちるは涙。
本意ではないとはゆえ、友を失ったてゐは、緑の分まで強く生きると誓ったのでした……。

母なる流れに連なるひとつとなって、再び天に召されよ我が友。
てゐは簡単に十字を切り、ナマステと祈ると気持ちを切り替えます。
さて、あらゆる障害を取り除いた今となっては、
てゐにとっての大問題は紫に他なりませんでした。
緑のことは知らぬ存ぜぬを貫き、彼女の提案――式となること。
受諾することははたして自分の益となるか、否か。

どうせ気まぐれで言ってみたのでしょう。
明日になればそんなことあっけらかんと忘れてしまうに違いありません。
そういう主人なのです。あれは。
ならば、今のうちに式としての雇用契約を結んでしまうのが得策にて。
動かぬ証拠を見せ付ければ紫も納得しましょう。
紫の式となれば、古墳作りに借り出される幾百万の野兎たちの頂点に立てるのです。

「ウサ……(うへへ)」

野兎ピラミッドの頂上でほくそえむ自分の有様をとくとくと思い浮かべ、
思わず笑いがこみ上げてきました。
そうと決まればここでじっとしているわけにもいきません。
てゐはぴょんこぴょんこと紫の待つ館へと向かいました。





「蓮子、さっさと行かないでよ」
「ごめんねメリー、気が急いちゃって」

私たち秘封倶楽部、倶楽部っていっても二人しかいない不良サークルなんだけど、今はエジプトまで来ている。
というのも、航空写真を見ていたメリーが、ピラミッドに不可解な揺らぎを見たっていうから――
大学の長期休みを利用して、飛行機を乗り継いで約半日。今では地球の反対側だって一日かかったりしない。
技術の革新はすごいけれど、この殺人的な日射も減らないものかな。ほら、汗だくメリーが舌を出してる。

「ちょっと、休憩しようよ」
「あそこの木陰まで行ったらね」

遮蔽物のない道の真ん中で座り込んだら焼け死んでしまうもの。

「ふぃー、エジプトってすごいね」
「そうね、やっぱり日本とは違うわ」

修行と称して、ピラミッドみたいなテントに入っている人もいた。
怪しげな土器もたくさん売られてた。カルチャーショックを受けていないといったら嘘になる。
それに、乾燥した土地では水も貴重で、水を奪い合ってたくさんの人間が血を流したとか流してないとか。
日本じゃ絶対見られない、海みたいな川も、人間の血で紅く染められたとか――

「蓮子、蓮子」
「え、何? ごめん、ぼーっとしてた」

慌てて答えると、メリーは真剣な顔で遠くに見えるピラミッドを睨みつけていた。

「蓮子、私、ここに来たことがあるかもしれない……」
「え……? メリー、それってどういうこと?」

メリーは時々電波ちゃんだ。もしかすると前世の記憶を思い出したとか言い出して、私をファンタジーワールドに連れ込むつもりかも。
もしもそうだとするのなら、私はしっかりと踏みとどまらなければいけない。
メリーがどこかへ行ってしまわぬように。





「ウホッ――」
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
ちょwてゐw 
2.名前が無い程度の能力削除
何だよこれ……
何だよこれ!
本筋とタイトル関係ねえwww
3.名前が無い程度の能力削除
『~古墳百鬼夜行~紫とメリーの墓荒らし~ 』でおかしな笑い声が出た
あー腹痛い
4.名前が無い程度の能力削除
最初から最後までもうなんていえばいいのww
5.名前が無い程度の能力削除
こ、これが続編か!?
古墳時代になっているのにまだウホウホ言ってるって、どんだけ発展遅いんだ!?
続きがやたらと気になります。続くなんてどこにも書いていませんが。
6.名前が無い程度の能力削除
ウソホイ噴いたw
7.名前が無い程度の能力削除
てゐ大活躍すぎるw ウサホヰ、ウソホイ!
そしてうどんげ発掘がんばってねぇ!
8.名前が無い程度の能力削除
いきなりはむすたさんネタでワラタ
9.名前が無い程度の能力削除
ガンジスwww
歴史って奥深い
10.名前ガの兎削除
なんだこれwww
ギャグの皮被りすぎだろwww
面白すぎわろた
11.名前が無い程度の能力削除
ウホホ、ウッホウホ(いいぞ、もっとやれ)
12.名前が無い程度の能力削除
>(::゜:)
寝るぞーっ!!!
どうみても打ち切りです
ほんとうにありがとうございました