「はぁ…どうやって渡そう…」
白狼天狗の詰所の前で、文は溜息混じりに呟いた。
ばつが悪そうに頭を掻く右手。左手には二枚のチケット。
近々山頂近くの空き地にオープンするというテーマパーク、「モリヤーランド」の優待券だ。
前に山の神様に挨拶(と新聞の売り込み)に行ったとき、
信仰の一環としてテーマパークをつくるので一日遊んでもらって感想を聞きたい、と御二柱に頼まれた。
明らかに某ネズミ達に影響を受けたであろうマスコット。
独特というより異常なセンスのパレード。
何故か充実している土産屋(ただし御柱キーホルダーや注連縄ストラップなどが大多数)。
突っ込みどころは満載だったが、新聞の年間購読を条件に引き受けたのだ。
「じゃ、これチケットだから」
「え?なんで二枚なんですか?」
「カップルの感想が聞きたいんだよ。ほら、あの白狼の娘と行ってきたら?」
「そうそう。好きなんだろ、あの娘のこと」
「わ、私は別に…」
「言わなきゃ伝わらないよ?この機会にYou告白しちゃいなよ」
「諏訪子どこでそんな言葉覚えたんだい?」
「紫にもらったテレビで見た!」
「へぇ、あれ映ったのか。とにかく頼んだよ」
「あ、ちょっと!どうしよう…」
なんて伝えたらいい?
貴女と一緒に行きたい。
そう言えたらどんなに楽か。
でも、もしそのせいで私の想いに気づいてしまったら?
椛はきっと私を傲慢で手を焼く先輩としか思っていない。
それでも、彼女と他愛もない話をして過ごすことはできる。
あの時間を壊してしまうくらいなら――
「射命丸様!」
あまりの驚きで、文の時は数秒止まった。
「珍しいですねここに来るなんて。何かあったんですか?」
「そ、そうなのよ。山の神様に頼まれて明日モリヤーランドに行くんだけど明日暇よね?一緒に来て」
なんとか落ち着きを取り戻した文だが、緊張していたせいか、いつもの高飛車が顔を出してしまった。
「ええ、いいですけど…もし都合悪かったらどうしたんですか?」
「貴女の都合は二の次よ。一応聞いただけ」
「鬼ですね…では明日」
「ええ。」
なんであんな態度しかとれないんだろう。
本当はもっといろんな私を貴女に見せたいのに。
でも、貴女の前での私はいつも傲慢で我侭。
これじゃ、想いなんて伝えられそうにない。
* * *
翌日は天気に恵まれ、絶好のデート日和だった。
昨日一睡も出来なかった文は時間の三十分前に待ち合わせ場所に着いた。
とりあえず早く着いて、気持ちを落ち着けたかったから。
でも、そこに彼女はいた。
三十分も前なのになんで?
遅れてはいけないと思ったのだろうか。
彼女にそうさせてしまうほど、昨日の私は怖かっただろうか。
椛は文に気づき、手を振り、彼女に笑いかけた。
「おはようございます。早いですね、朝お強いんですか?」
椛の健気さは寝不足の文には強すぎた。
抱きしめたい衝動に駆られながらも、いつものキャラを取り戻して言った。
「たまたま目が覚めちゃってね。さ、行きましょ」
「あ、はい」
その日は快晴だった。
モリヤーランドのシンボルらしいモリヤサカ殿は特大の御柱やら注連縄、蛇や蛙の飾り物でこれでもかと言わんばかりに飾り立てられているのだが、この日は朝日を浴びてより一層輝きを増していた。
少々やりすぎな気もするが、派手好きな連中の多い幻想郷ではちょうどいいのかもしれない。
そういえばこの日の客には見た顔がちらほらいた。
朝っぱらから腕を組んでいちゃつく黒白と人形遣い。
どれに乗るかもめている吸血鬼姉妹と、その間で困りながらもうれしそうにしているメイド。
異常な量の食べ物を抱え食べ歩く亡霊の姫と、その横で荷物持ち状態になっている庭師。
普段なら皮肉でも言いにいったかもしれない。
でも、椛と一緒の所を見られたくなかったから、敢えて無視することにした。
せっかくのデートを邪魔されてなるものか!
話し合った結果、午前中はアトラクション、午後はショッピングをそれぞれ楽しむことにした。
成程、乗り物に乗って走り回るのもなかなか面白いものだ。
外の世界ではジェットコースターというらしい。
自分で飛んだほうが速いが、この独特のスリルは他では出せないだろう。
何より横できゃあきゃあ騒ぐ椛が可愛かった。
その事でなじられ、
「もう、恥ずかしいから言わないでください!」
と言ったときの顔などはもう死にそうなくらい可愛かった。
「あ、見てください射命丸様!あれすごくかわいい!」
午後になり土産物屋を見て回っていると、椛がうれしそうに声を上げた。
見てみると確かにかわいらしいデザインの髪飾りだった。
なんだ、まともな物もあるじゃないか。
あの方たちもそこまでズレているわけでもなさそうだ。
「あ…でも高いなぁ…」
「よかったら買ってあげようか?」
「えっ!?で、でも悪いですよ。」
「いいのよ。今日付き合ってくれたお礼。」
「じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます!ありがとうございます、射命丸様!」
椛の満面の笑み。
間違いなく、これは今自分に向けられたものだ。
あの笑顔を見ていると、こっちまでうれしくなってくる。
だからつい、照れ隠しに余計なことを言ってしまった。
「しかし髪飾りなんて珍しいわね。貴女はこういうの興味ないのかと思ってたわ」
「私だって女の子なんです!好きな人だって…一応いるんですから。」
ああ、終わった。
椛には好きな人がいる。
どこの誰だか知らないけど、椛が選ぶ男に間違いなどないだろう。
私が言うんだから間違いない。
私の想いは…やはりしまったままのほうがいいのだろう。
ショックを受けた文の眼には、買ってもらったものより安い、けれども引けをとらないくらいかわらしい髪飾りを買う椛の姿は映っていなかった。
* * *
夜になり、ランド内は様々な光でライトアップされる。
あんなことを聞いていなければ心をときめかせたりもするのだろうが、
文の心は今やこの夜の闇よりも深く暗く重くなっていた。
椛がパレードも見たいといわなければ、もう帰っていただろう。
「射命丸様、どうかされたんですか?元気ないですよ?」
何も知らない椛は、文を気遣ってくれる。
その優しさがどれだけ辛いか。
「ううん、ちょっと疲れただけ」
なんでもない、といった顔で文は言った。
「そうですか…あ、パレード始まりますよ!わあ、すごい!」
エレ○トリカルパ○ードばりのフロートの上で、御二柱が大暴れしている。
降り注ぐは弾幕の雨嵐。これを毎日やるのだろうか。
見る側に回避を要求するパレードなんて聞いたことがない。
今回の客は弾幕に慣れた奴ばかりだから問題ないかもしれないが、普通の人間では一分と持たずにピチューンだろう。
結局、御二柱にとってはこれも祭と変わらないのかもしれない。
ふと、椛が目に入った。
眼を輝かせ、よほど楽しいのだろう、尻尾まで振っている。
そんな姿を見て、文の口元が緩む。
それに気づいたのか、椛は文に笑いかける。
そして、弾幕の爆音に負けないように声を張った。
「よかった、やっと笑ってくださいましたね。やっぱり射命丸様は笑顔が一番ですよ。」
この一言で、文は覚悟を決めた。
椛に想いを打ち明けよう。そして…もう彼女のことは忘れよう。
文は椛を連れ、敷地の端にある東屋へ向かった。
そこは絶好の告白スポットらしく、「最高の夜景で彼女をゲットだぜ!」だそうだ。
公式パンフレットにそういう文言はどうかと思いつつ、告白の場所を与えてくれたことに文は感謝した。
「あの…射命丸様、お話ってなんですか?」
「椛…私ね、ずっと貴女に言ってなかった事があるの。」
なんとなく察していたのか、椛は静かに文の言葉を聞いていた。
「私…貴女が好き。友達とか、そういうんじゃなくて…」
「射命丸様…」
「でもね、もういいの。」
「え?ど、どういうことですか?」
「貴女には好きな人がいるんでしょ?私の想いは、貴女には届かない。でもね、こうして貴女に気持ちを伝えられただけで、私は満足なの。私は大丈夫だから、貴女も好きな人と幸せになってね。」
涙を滲ませて、文は全てを打ち明けた。
それを聞いて、椛も決意した。
誰にも告げていない私の想いを、ここで伝えよう。
「…射命丸様、私の好きな人、ご存知ですか?」
なぜ急にそんなことを言い出すんだろう。
椛はやはり私のことが嫌いで、これは報復なのだろうか。
文は泣きながら椛の意図を探ろうとしている。
澄んだ瞳で何も言えずにいる文を見つめながら、椛は言った。
「背は私より少し大きいですね。癖っ毛で深い色の黒髪、瞳は紅く、見つめられると引き込まれるよう。我侭だったり傲慢だったりするけど、本当はもっと繊細で素敵な人なんです。でもそういう所をあまり見せてくださらないから少し寂しくて…」
「ちょ、ちょっと待って!それってまさか…」
「はい、貴女ですよ。」
「だ、だって私、繊細だとか、そういう所見せたことないけど…」
「実際に見なくてもわかりますよ。ただ…私、引け目があったんです。射命丸様には私なんかふさわしくないって。だから、普通に話してるだけでもうれしかったんです。昨日誘ってくださったときも、尻尾振らないようにするの大変でした。」
もう二人とも顔は真っ赤だ。ランドでは一日の締めに花火が上がっているが、二人の耳には届かない。
願いが叶うかもしれない。
文は逸る心を落ち着けながら言った。
「じゃあ椛、その…私と」
「お断りします。」
「な、なんで!?引け目なんて感じることないわ、そんなの…」
予想外の言葉に、文は動揺を隠せなかった。
椛は落ち着いて答える。
「わかってます。でも、射命丸様が告白なさっては駄目なんです!このままじゃ私、貴女に甘えてしまいます。」
椛の顔からは強い意思が読み取れた。だから文も、椛の言葉を聞くしかなかった。
「だから…これ、受け取ってください!」
取り出したのは髪飾り。文が椛に買ったものに引けをとらないかわいらしさだ。
「可愛い…いつの間に買ったの?」
「あ、やっぱり気づいてなかったんですね。よかった!えぇっと、それでなんですが…」
椛はその一言を言おうとするが、なかなか告げられない。
文も息を呑み、椛を見守る。
やがて耳の毛まで逆立てて、椛は言った。
「射命丸s…いえ、文様!私と付き合ってください!」
呆気に取られた様子の文。
本当に火が出るんじゃないかと思うほど顔の赤い椛。
やがて、穏やかな微笑を浮かべ、文は口を開いた。
「あやややや…何を言うかと思ったらそんなこと?断るわけないでしょ…これからもよろしくね、椛。」
「は、はい、文様!」
* * *
「…ということがありました」
「よかったよかった!な、諏訪子?」
「うん!レポートじゃわからない所も色々あるしね~」
守矢神社でお茶をすすりながら、御二柱はモリヤーランドの一般客利用実現に向けてあれこれ話している。
「なんで椛との事まで話さなきゃいけないんですか」
文は文で原稿を書きながらささやかな抗議をする。
「そんなの面白そうだからに決まってるだろ?」
「私達はここの神様だからね、あんた達の事も把握しておかなきゃ」
「お、諏訪子いいこと言った!」
文は適当に神様の相手をしながら明日の一面にとりかかった。
タイトルは…頭きたからこれでいいや。
「パクリだらけ!?モリヤーランドの謎
~御伽の国と著作権~」
このパクリ報道が後のモリヤーランド開園無期限中止のきっかけであったことはいうまでもない。
白狼天狗の詰所の前で、文は溜息混じりに呟いた。
ばつが悪そうに頭を掻く右手。左手には二枚のチケット。
近々山頂近くの空き地にオープンするというテーマパーク、「モリヤーランド」の優待券だ。
前に山の神様に挨拶(と新聞の売り込み)に行ったとき、
信仰の一環としてテーマパークをつくるので一日遊んでもらって感想を聞きたい、と御二柱に頼まれた。
明らかに某ネズミ達に影響を受けたであろうマスコット。
独特というより異常なセンスのパレード。
何故か充実している土産屋(ただし御柱キーホルダーや注連縄ストラップなどが大多数)。
突っ込みどころは満載だったが、新聞の年間購読を条件に引き受けたのだ。
「じゃ、これチケットだから」
「え?なんで二枚なんですか?」
「カップルの感想が聞きたいんだよ。ほら、あの白狼の娘と行ってきたら?」
「そうそう。好きなんだろ、あの娘のこと」
「わ、私は別に…」
「言わなきゃ伝わらないよ?この機会にYou告白しちゃいなよ」
「諏訪子どこでそんな言葉覚えたんだい?」
「紫にもらったテレビで見た!」
「へぇ、あれ映ったのか。とにかく頼んだよ」
「あ、ちょっと!どうしよう…」
なんて伝えたらいい?
貴女と一緒に行きたい。
そう言えたらどんなに楽か。
でも、もしそのせいで私の想いに気づいてしまったら?
椛はきっと私を傲慢で手を焼く先輩としか思っていない。
それでも、彼女と他愛もない話をして過ごすことはできる。
あの時間を壊してしまうくらいなら――
「射命丸様!」
あまりの驚きで、文の時は数秒止まった。
「珍しいですねここに来るなんて。何かあったんですか?」
「そ、そうなのよ。山の神様に頼まれて明日モリヤーランドに行くんだけど明日暇よね?一緒に来て」
なんとか落ち着きを取り戻した文だが、緊張していたせいか、いつもの高飛車が顔を出してしまった。
「ええ、いいですけど…もし都合悪かったらどうしたんですか?」
「貴女の都合は二の次よ。一応聞いただけ」
「鬼ですね…では明日」
「ええ。」
なんであんな態度しかとれないんだろう。
本当はもっといろんな私を貴女に見せたいのに。
でも、貴女の前での私はいつも傲慢で我侭。
これじゃ、想いなんて伝えられそうにない。
* * *
翌日は天気に恵まれ、絶好のデート日和だった。
昨日一睡も出来なかった文は時間の三十分前に待ち合わせ場所に着いた。
とりあえず早く着いて、気持ちを落ち着けたかったから。
でも、そこに彼女はいた。
三十分も前なのになんで?
遅れてはいけないと思ったのだろうか。
彼女にそうさせてしまうほど、昨日の私は怖かっただろうか。
椛は文に気づき、手を振り、彼女に笑いかけた。
「おはようございます。早いですね、朝お強いんですか?」
椛の健気さは寝不足の文には強すぎた。
抱きしめたい衝動に駆られながらも、いつものキャラを取り戻して言った。
「たまたま目が覚めちゃってね。さ、行きましょ」
「あ、はい」
その日は快晴だった。
モリヤーランドのシンボルらしいモリヤサカ殿は特大の御柱やら注連縄、蛇や蛙の飾り物でこれでもかと言わんばかりに飾り立てられているのだが、この日は朝日を浴びてより一層輝きを増していた。
少々やりすぎな気もするが、派手好きな連中の多い幻想郷ではちょうどいいのかもしれない。
そういえばこの日の客には見た顔がちらほらいた。
朝っぱらから腕を組んでいちゃつく黒白と人形遣い。
どれに乗るかもめている吸血鬼姉妹と、その間で困りながらもうれしそうにしているメイド。
異常な量の食べ物を抱え食べ歩く亡霊の姫と、その横で荷物持ち状態になっている庭師。
普段なら皮肉でも言いにいったかもしれない。
でも、椛と一緒の所を見られたくなかったから、敢えて無視することにした。
せっかくのデートを邪魔されてなるものか!
話し合った結果、午前中はアトラクション、午後はショッピングをそれぞれ楽しむことにした。
成程、乗り物に乗って走り回るのもなかなか面白いものだ。
外の世界ではジェットコースターというらしい。
自分で飛んだほうが速いが、この独特のスリルは他では出せないだろう。
何より横できゃあきゃあ騒ぐ椛が可愛かった。
その事でなじられ、
「もう、恥ずかしいから言わないでください!」
と言ったときの顔などはもう死にそうなくらい可愛かった。
「あ、見てください射命丸様!あれすごくかわいい!」
午後になり土産物屋を見て回っていると、椛がうれしそうに声を上げた。
見てみると確かにかわいらしいデザインの髪飾りだった。
なんだ、まともな物もあるじゃないか。
あの方たちもそこまでズレているわけでもなさそうだ。
「あ…でも高いなぁ…」
「よかったら買ってあげようか?」
「えっ!?で、でも悪いですよ。」
「いいのよ。今日付き合ってくれたお礼。」
「じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます!ありがとうございます、射命丸様!」
椛の満面の笑み。
間違いなく、これは今自分に向けられたものだ。
あの笑顔を見ていると、こっちまでうれしくなってくる。
だからつい、照れ隠しに余計なことを言ってしまった。
「しかし髪飾りなんて珍しいわね。貴女はこういうの興味ないのかと思ってたわ」
「私だって女の子なんです!好きな人だって…一応いるんですから。」
ああ、終わった。
椛には好きな人がいる。
どこの誰だか知らないけど、椛が選ぶ男に間違いなどないだろう。
私が言うんだから間違いない。
私の想いは…やはりしまったままのほうがいいのだろう。
ショックを受けた文の眼には、買ってもらったものより安い、けれども引けをとらないくらいかわらしい髪飾りを買う椛の姿は映っていなかった。
* * *
夜になり、ランド内は様々な光でライトアップされる。
あんなことを聞いていなければ心をときめかせたりもするのだろうが、
文の心は今やこの夜の闇よりも深く暗く重くなっていた。
椛がパレードも見たいといわなければ、もう帰っていただろう。
「射命丸様、どうかされたんですか?元気ないですよ?」
何も知らない椛は、文を気遣ってくれる。
その優しさがどれだけ辛いか。
「ううん、ちょっと疲れただけ」
なんでもない、といった顔で文は言った。
「そうですか…あ、パレード始まりますよ!わあ、すごい!」
エレ○トリカルパ○ードばりのフロートの上で、御二柱が大暴れしている。
降り注ぐは弾幕の雨嵐。これを毎日やるのだろうか。
見る側に回避を要求するパレードなんて聞いたことがない。
今回の客は弾幕に慣れた奴ばかりだから問題ないかもしれないが、普通の人間では一分と持たずにピチューンだろう。
結局、御二柱にとってはこれも祭と変わらないのかもしれない。
ふと、椛が目に入った。
眼を輝かせ、よほど楽しいのだろう、尻尾まで振っている。
そんな姿を見て、文の口元が緩む。
それに気づいたのか、椛は文に笑いかける。
そして、弾幕の爆音に負けないように声を張った。
「よかった、やっと笑ってくださいましたね。やっぱり射命丸様は笑顔が一番ですよ。」
この一言で、文は覚悟を決めた。
椛に想いを打ち明けよう。そして…もう彼女のことは忘れよう。
文は椛を連れ、敷地の端にある東屋へ向かった。
そこは絶好の告白スポットらしく、「最高の夜景で彼女をゲットだぜ!」だそうだ。
公式パンフレットにそういう文言はどうかと思いつつ、告白の場所を与えてくれたことに文は感謝した。
「あの…射命丸様、お話ってなんですか?」
「椛…私ね、ずっと貴女に言ってなかった事があるの。」
なんとなく察していたのか、椛は静かに文の言葉を聞いていた。
「私…貴女が好き。友達とか、そういうんじゃなくて…」
「射命丸様…」
「でもね、もういいの。」
「え?ど、どういうことですか?」
「貴女には好きな人がいるんでしょ?私の想いは、貴女には届かない。でもね、こうして貴女に気持ちを伝えられただけで、私は満足なの。私は大丈夫だから、貴女も好きな人と幸せになってね。」
涙を滲ませて、文は全てを打ち明けた。
それを聞いて、椛も決意した。
誰にも告げていない私の想いを、ここで伝えよう。
「…射命丸様、私の好きな人、ご存知ですか?」
なぜ急にそんなことを言い出すんだろう。
椛はやはり私のことが嫌いで、これは報復なのだろうか。
文は泣きながら椛の意図を探ろうとしている。
澄んだ瞳で何も言えずにいる文を見つめながら、椛は言った。
「背は私より少し大きいですね。癖っ毛で深い色の黒髪、瞳は紅く、見つめられると引き込まれるよう。我侭だったり傲慢だったりするけど、本当はもっと繊細で素敵な人なんです。でもそういう所をあまり見せてくださらないから少し寂しくて…」
「ちょ、ちょっと待って!それってまさか…」
「はい、貴女ですよ。」
「だ、だって私、繊細だとか、そういう所見せたことないけど…」
「実際に見なくてもわかりますよ。ただ…私、引け目があったんです。射命丸様には私なんかふさわしくないって。だから、普通に話してるだけでもうれしかったんです。昨日誘ってくださったときも、尻尾振らないようにするの大変でした。」
もう二人とも顔は真っ赤だ。ランドでは一日の締めに花火が上がっているが、二人の耳には届かない。
願いが叶うかもしれない。
文は逸る心を落ち着けながら言った。
「じゃあ椛、その…私と」
「お断りします。」
「な、なんで!?引け目なんて感じることないわ、そんなの…」
予想外の言葉に、文は動揺を隠せなかった。
椛は落ち着いて答える。
「わかってます。でも、射命丸様が告白なさっては駄目なんです!このままじゃ私、貴女に甘えてしまいます。」
椛の顔からは強い意思が読み取れた。だから文も、椛の言葉を聞くしかなかった。
「だから…これ、受け取ってください!」
取り出したのは髪飾り。文が椛に買ったものに引けをとらないかわいらしさだ。
「可愛い…いつの間に買ったの?」
「あ、やっぱり気づいてなかったんですね。よかった!えぇっと、それでなんですが…」
椛はその一言を言おうとするが、なかなか告げられない。
文も息を呑み、椛を見守る。
やがて耳の毛まで逆立てて、椛は言った。
「射命丸s…いえ、文様!私と付き合ってください!」
呆気に取られた様子の文。
本当に火が出るんじゃないかと思うほど顔の赤い椛。
やがて、穏やかな微笑を浮かべ、文は口を開いた。
「あやややや…何を言うかと思ったらそんなこと?断るわけないでしょ…これからもよろしくね、椛。」
「は、はい、文様!」
* * *
「…ということがありました」
「よかったよかった!な、諏訪子?」
「うん!レポートじゃわからない所も色々あるしね~」
守矢神社でお茶をすすりながら、御二柱はモリヤーランドの一般客利用実現に向けてあれこれ話している。
「なんで椛との事まで話さなきゃいけないんですか」
文は文で原稿を書きながらささやかな抗議をする。
「そんなの面白そうだからに決まってるだろ?」
「私達はここの神様だからね、あんた達の事も把握しておかなきゃ」
「お、諏訪子いいこと言った!」
文は適当に神様の相手をしながら明日の一面にとりかかった。
タイトルは…頭きたからこれでいいや。
「パクリだらけ!?モリヤーランドの謎
~御伽の国と著作権~」
このパクリ報道が後のモリヤーランド開園無期限中止のきっかけであったことはいうまでもない。
ラストハッピーエンドで最高!!!!
続編として甘々あやもみ話をお願いします!
モリヤーランドのディテールが気になって初回は本筋に集中できなかったww
良いあやもみ話でございました
>>奇声を発する程度の能力様
最高なんて言っていただけてもう死にそうです。ありがとうございます。
例のD社は恐ろしいですからね、万全に万全を期して…おっと誰か来たようだ
>>2様
自分で書いておいてアレですが私も行きたいです。
でも夜のパレードまで残ってるとピチュりますよ?
文椛は大好きなのできっとまた書くと思います。ですから見かけたら是非ご覧になってください。
>>3様
初めはモリヤーランド構想なんてまったくありませんでした。
しかし二人はどこにデートに行くのか見当がつかず、なら作ればいいじゃないという天啓に従い例のパークのパク…もといオマージュとしてつくりました。
実は薄い内容を誤魔化す策だったりもします。例のパークマジ万能。
あやや視線のアヤモミSSはあんまみないから、すごい良かったです!
面白かったっすwww
乙