おととい、昨日、今日、明日、明後日。
年中無休フル稼働。お休みは店主の気分次第。
仕事は基本的に引き受ける。でも気分次第で引き受けない。
今日は香霖堂の店主より依頼があった。
デザイン画からして霊夢の衣装。期限は5日。
またか。
最初に発注に来た時は――――だいぶ前の話だが――――断ろうかと思った。何が悲しくて人の名前も覚えてない巫女の服を作らにゃならんのか。
うちは洋服はしても和服は無理よと言ったら、適当にアレンジしていいと言うので袴部分をスカート風にしてやった。半分は嫌がらせたったが、あの巫女ももう少し女という事を自覚したほうがいい。スカートも割かし似合うだろう思ったのもまた事実だけど。
要は依頼を受けたわけだ。後日様子を聞いたところたいそう気に入っていたそうでプチ復讐は失敗に終わったわけだが、別にいいか。
女性だと自覚はしているかもしれないが、どうもあの性格が・・・・・・・・
ついでに裁縫を覚えたいと言う森近さんに手ほどきしてあげる。時間が合えばいつも教えてはいるのだが、霊夢の服を自分で作りたいのだろう。うらやましい奴。これで裁縫を覚えてくれたら、異変の度にボロボロになる洋服の発注を受けずに済むわけだ。もう一人で作れるレベルだと思うんだけどね。
霊夢の服作りは楽しい。自分の作った服を着ているのを見てほくそ笑みそうになるのを堪えることも楽しみでさえあるのだが、いかんせん量が半端ない。
量といえば紅魔館。あそこは以前メイド服を100着ほどまとめて注文に来たことがあった。
私一人でそんな量ができるかとメイド長に文句を言ったら、ならば自分のだけでいいと折れてくれたので今は咲夜のメイド服だけ作っている。私の服(正確には人形達の洋服)のデザインを気に入ってくれたようで、それでうちに依頼をしてきたそうな。こういう評価をもらえるのはうれしい限りだ。おかげ様で、咲夜を使ってメイド服のバリエーションを試すことができるし。
では注文しようとした100着はどうするつもりなのかと尋ねたところ、これまで通り紫に頼んで現代から取ってくるとの事。盗って来るの間違いではなかろうか。それより以前は美鈴が作っていたらしい。万能だなあの門番、是非欲しい。
夜半にも来客は来る。私は寝たいのに。
枝に引っ掛けて破いてしまったから直してくれというものはまだわからなくもないが、次回作はコスチューム変更したいから作ってくれというものまで。何で日が沈んでから注文に来るのかと小一時間問い詰めたい。
レミリアのプレゼントに洋服を送りたいといってフランドールが来たことも・・・・・・・あ。
あれ期限まであと2週間だった。早めに仕上げて届けておかないとね。
今は霊夢の服を作ることに集中しないと。あいつも大きくなった。前回のよりサイズを大きくしたほうがいいかな。
と、森近さんが申し訳なさそうな顔で別の注文の話を切り出してきた。何でも風祝の服も請け負ったそうな。なるほど最近まで現代に住んでいた娘だ、自分の仕事で手一杯でおしゃれをするほどの心の余裕があるようには見えないがファッションは気にしているはずだ。仕方ないのでそれも引き受けることにする。自機昇格祝いも兼ねて送っておこう。
5日後に持っていくと約束をして、森近さんは帰っていった。
それとは入れ違いに鍵山雛がやってくる。彼女も依頼で来たようだ。
どんな服がいいのかと聞いたところ、厄が集まるような色と柄がいいとの事。なんのこっちゃ。
さっぱりよくわからないので無理だと言っておいた。そしたら「所詮七色ね」と挑発してくる。ほぅ?いいでしょう、私に喧嘩を売った事を後悔させてやる。
これも引き受けた。期限は特にないとの事だが、早めに取り掛からないとね。
雛は満足して帰路に着いた。
困った客と言うのはいつの世もいるものだ。雛などはまだ序の口。そばで核融合が起きても溶けない服が欲しいと言い寄って来た頭の弱い奴。火鼠の衣が欲しいと我侭を言う姫。上には上がいる。いて欲しくはないが、これが現状である。
前者には耐熱コーティングでもしてもらえるようパチュリーを紹介したが、我侭姫については人形裁判で裁いておいた。あんたに求婚した覚えはない!
日が沈む頃、使いに出していた上海が戻ってきた。件の我侭姫が火鼠の衣の代わりに注文していた着物を届けていたのだ。だから和服は苦手だというに・・・・。
基本的に私はお金を取らない。趣味の一環で作っているだけだしと、輝夜にも代金は要らないと言っておいたが上海は何か包みを手に持っていた。広げてみると中には手作りの草団子。なるほどこれは突き返すわけにはいかない、おいしくくいただくことにした。
さて、活力も沸いてきたことだし製作を続けますか。
霊夢のこのデザインだと、合わせるリボンはどんなのがいいだろう?胴回りとかサイズを測ったほうがいいだろうか・・・・・・・・ん?
3人目とは今日は来客が多いわね。
いらっしゃい。あなたはどんな服がご所望かしら?
一人称だと独白のようで雰囲気が漂いますよね。
もっと読みたいなぁ
続編でますよね?