しとしとと、小雨が降っている。
どんよりとした空(そら)は、哀しげに、けれども優しい表情をしていた。
薄暗い森に一軒の小さな小さな洋館。マーガトロイド邸。
七色の人形遣い、アリス・マーガトロイドの住まう館である。
家の主、アリスはこんな天気もいいわね、などと感傷に浸りながらシングルソファに腰掛け紅茶を啜っていた。
ローテーブルを挟み、向かいには黒白の魔法使い。
「なぁアリス、この本面白いぜ。牛乳にレモンを足すとヨーグルトみたいになるんだってよ」
「へぇ、そう。その本は私のだから知ってるわ」
「なぁなぁアリス、プリンにしょうゆかけたらどうなると思う?」
「海栗みたいな味になるんでしょう」
「大正解!この本は面白いな~。
他に何があるかな、今日一日じゃ読みきれないな」
「勝手に持ってかないでよ。あんたはいっつもそうなんだから」
「わかってるわかってる。今日も借りてくぜ」
「私は許してないの。だから駄目」
「まぁ気にするな。借りていくだけだ。死ぬまでな」
「じゃあ死んでもらおうかしら?」
「はは、冗談きついぜ」
アリスは不機嫌そうな顔をしているが、黒白の魔法使いとの談笑は満更でもないらしい。
黒白魔法使い、名を霧雨魔理沙。
黒と白のエプロンドレスに身を包み、大きなマジックハットを被っている少女。
さらさらと流れる金髪に、黄金色の眼。
持論は「弾幕はパワー」。
魔理沙は手に持っていた本を閉じると、それをテーブルに置き、また本を物色し始めた。
おおかた手早く手ごろな本を見つけ、家に持ち帰るつもりなのだろう。
新たな本を見つけ、さて読もうかというところ。
自分が床に積み上げた本の所為で、つまずいてしまった。
「きゃっ」
「す、すまんアリス」
そのまま前のめりに倒れた魔理沙は、アリスに覆いかぶさる形となった。
顔と顔が間近に迫り、魔理沙は彼女の小さな口から漏れる吐息を感じた。
「痛い、どいて」
「う、うん…ごめん」
魔理沙はあわてて飛び起き、何故か手に持っていた本をもとあった棚に戻した。
なんだか慌てている様子である。彼女らしからぬ姿だ。
「(なんだ、なんだこの気持ちは…なんかどきどきするんだぜ)
あ、アリス。私はそろそろ行くぜ」
「もう行くの?珍しいわね。あと本は置いていってね」
アリスが言葉を言い終える頃には、魔理沙の姿はなかった。本と共に。
それから数日後。曇り模様の空が広がり、涙を零しそうな不安定な表情をしている。
アリスはもやもやした気持ちを抱えていた。
「はぁ…」
アリスはため息をつく。
「(あいつが強引に押しかけてくるのはもう慣れたのに…。
来ないと逆に気になるじゃないの)」
ふと、リビングから外を見やる。
すると、窓の外の特徴的なとんがり帽子が目に入った。
アリスは、窓へ近寄り、窓を開けた。
「…魔理沙?」
「お、おう、アリス…」
「何してるの?」
「あ、ああー、アリスん家の窓が壊れてないかチェックしてたんだ」
「……」
「……」
「…ふーん」
「ま、まぁ壊れてないみたいだな。じゃあ帰るぜ」
「待ちなさい」
「んぇっ?」
「せっかく来たんだから上がっていきなさいよ」
「い、いやー、その、用事が」
「(泥棒のくせに嘘をつくのが下手なやつ。)
なぁに?」
「いや、何も…」
強気なアリスに押されて、魔理沙は家に上がった。
「待ってて、今紅茶とお茶菓子用意するから」
「ああ、そんなに気を遣わなくても…」
「あんた、おかしいわよ?いつもなら自分からせがむのに」
「あー、そうかな…そんなこと、ないぜ」
アリスは自ら紅茶を淹れ、人形にはお茶菓子を持っていかせるように命令した。
アリスの淹れた紅茶を啜り、お茶菓子のクッキーを齧る。
無言のまま、時が流れる。
「ねぇ」
先に口を開いたのはアリス。
「ん、?」
「あなた、私のことが好き?」
「は、はぁ!?まっ、ま待てよ、なんだよいきなりんっ」
アリスは自分の唇を魔理沙の幼い唇に重ねる。
強く、けれど優しく。彼女を傷つけないようにしたつもりだった。
「っぷはぁ…!」
「ふぅ…魔理沙、」
「ばかぁぁ!!アリスのばか!ばかばかぁぁぁ!!」
「魔理沙?」
魔理沙はアリスの制止を振り切り外へ飛び出し、箒に乗り飛び去ってしまった。
「私、間違ってたかな…悪いこと、しちゃったかな」
魔理沙は、アリス邸を飛び出し、あてもなく空を高速で飛びまわっていた。
「っ…えぐっ…こんなときは弾幕ごっこだぜ…」
箒の柄を、神社の方向へ向けた。
博麗の巫女、博麗霊夢。
神社で一人きりで巫女をつとめる少女である。
急に空から襲い掛かってきた魔理沙に応戦すべく、彼女は立ち上がった。
「来たわね、魔理沙」
レーザー、お札、ミサイル、針。
様々な武器が飛び交う、弾幕ごっこ。
黒白の魔法使いと博麗の巫女の一騎打ち。
結果は言わずもがな。
「あんた、どうしたのよ」
地にへたりこみ、うつむき黙る魔理沙に問うた。
「涙なんか流して闇雲に弾幕張って。なりふり構わないのはいつもだけど、今日は何か変よ」
「……」
「まぁ、上がりなさいよ。こんなところでめそめそされても迷惑だし」
霊夢は、弱々しくなった彼女を神社の中へ上がらせ、お茶を用意した。
「はい、お茶」
「…」
無言のまま、ずずっ、と差し出されたお茶をすする。
しばらくして落ち着いたのか、魔理沙が口を開く。
「霊夢、聞いてくれる?」
「何?」
「んとね…アリスがさ…」
今日一日の出来事を洗いざらい霊夢に話した。
朝起きて、今に至るまで。
「アリスも案外そういうところあるのね」
「私、どうすればいいんだろ…」
「あんたさぁ、アリスのことどう思ってるわけ?」
「えっ?嫌い、じゃない…けど…」
「はぁ。好きなの?嫌いなの?」
「う、うん……」
「どっちよ」
「わかんないんだよ!
アリスは今までいいやつだと思ってたし、仲良くしてたけど…
あんなことされて、びっくりしたんだよ。あんなことするなんて、思わなかったんだよ」
「ふーん…」
「アリスはぶあいそで。話し方もそっけないけど、ちゃんと話は聞いてくれて…優しいやつだった。
アリスに馬鹿って言っちゃったし、怒ってるかも…」
「だったら、さ」
「これ、持って行きなさいよ。することはわかってるでしょ?」
霊夢が取り出したのはお酒。大して名のある酒でもない。酔えればいい、なんていう雑な酒だ。
魔理沙はその酒を受け取り、再びアリス邸へと歩を進めた。
こんこん。
アリス邸の扉を二度、ノックした。
がちゃり、と音を立てて扉が開く。
「魔理沙…」
「アリス」
「ごめんなさい魔理沙、私間違ってた…」
「いいんだアリス。私も謝らなきゃいけない。ごめんな、あんなこと言って」
「ううん、あんなことされたら当たり前よね…」
「いいって。とりあえず入っていいか」
「あ、ごめんなさい…どうぞ」
家に上がる。ソファに腰掛け、お互い向かい合う。
「飲もうぜ」
魔理沙は、酒の力を借りることにした。
酔うためだけの、どぎつい酒。
…場所は移り、寝室。
「ままぁ♪」
「まりさったら、いけない子♪」
「うぅー、ごめんなさいぃ…でもありすまま大好きだよっ♪」
「私もだぁいすき。可愛い可愛い魔理沙。ぎゅーっとしてあげる」
「あったかい…♪やわらかいよぅ…」
「いい子いい子。なでなでしてあげる」
「ふふぅん…うんとね、私がままって呼んだの、ありすは二番目なんだよ…」
「ふーん…じゃぁ一番目ってだれ?」
「うふふ、ひみつ♪」
「むぅー、魔理沙のいじわる」
酒が回り、裸の心で触れ合う彼女達はとても自然だった。
酒には心のヨロイを剥がしてくれる力がある。
酒に頼らず、本当の心で触れ合うことができるようになったらいいな。
酔いが彼女達を眠りの世界へいざなう。
「ん…ねむくなってきたー」
「私も…。そろそろおやすみ、しましょうか」
「うん。おやすみ、ありす」
「おやすみなさい、魔理沙」
翌朝、寝室にくしゅん、という音が響いた。
「さむ…」
魔理沙が布団を独り占めしていた。
「寝相の悪いやつ」
アリスはベッドから降りた。
窓の外を見る。
朝日がまぶしい。爽やかで晴れ渡った空のその表情は、まるで自分の心を写しているようだ。
今の自分はきっと今までで一番綺麗だと言える。こんなに清々しい気持ちなど初めてだ。
いまだベッドで寝息を立てる魔理沙のもとへ近寄り、耳元で囁いた。
「大好き、魔理沙」
例えば言うなら揚げパンのような甘さ
空模様はアリスの心を映し出しているんでしょうかね。
幼児退行魔理沙・・!!
霊夢「計画通り」
パチュ「さぁ行くぞ寝取りの時間だ」
天子「アリスお姉さまをしっかり守りなさいよ魔理沙……!」
にとりん「行けっ!盟友!…………幸せにね」
なんて会話が飛び交うのですね分かります(違)
マリアリはブレイン…違う
マリアリはジャスティス……!マリアリはジャスティス!マリアリはジャスティス!!(イミフ
ほんとにこの二人は素直じゃなくていじらしくてでもまっすぐで大好きだ!
変態度が少ない作品だと……貴様、昼に書いたな!!
でも、むしろこういう作品の方が大好き。
次回作、楽しみにしてます。
魔理沙上位という固定概念を打ち崩されたぜ…
魔理沙もいろんなやつと○×だけど、原点に戻ってアリマリもいいねww
残念ながら僕のアリスは酔ってお姉さん属性丸出し状態なのであった。(ままって言われてますが
>2番の名無しさん
甘いと言っていただけて何よりです。
彼女らには甘い恋をしてほしいです(よくも恥ずかしいことを)。
ちなみに僕はカレーパンが好物です。
>3番の名無しさん
空模様と心境はちょっぴり意識して書いていたので、感じてもらえたようで嬉しいです。
僕の魔理沙は過度に酔うと幼児退行してゆきます!
>謳魚さん
残念ながら僕はアリマリ派なのでした。
パッチェさん、アリマリを許してくださいッ…!
>5番の名無しさん
アリ→マリです!
つまり、アリマリはジャスティス。アリマリはジャスティス!アリマリはジャスティスだぁぁ!(煩い
>6番の名無しさん
この二人にはいつまでもまっすぐでいてほしいです。
仲違いがあっても仲直り元通り。あー恋愛担当。
>7番の名無しさん
ククク…毎日お昼にネタをちまちまとメモし続けてました。
こういった作品も気に入っていただけて嬉しい限りです。
これからもただ書きたいものを書くだけの者ですが、頑張ります。
>8番の名無しさん
最近は本当にいろんな組み合わせがありますね~。
けれども原点回帰ということで好きな組み合わせのアリマリをば。
ダメだ!マジで真剣なマリアリにいつも通りな挨拶なんて…言えない!
酩酊したマリアリがちゅっちゅしすぎて生きる活力を得ました。感謝
挨拶だったんですか(Σ
生きる活力にしていただけるなんて僕の身に余る言葉です。
次の作品への活力になりますね~。ありがとうございます。