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月が浮かび、星が輝くある夜中
夕刻ほどに、少し高い酒を途中の売店で仕入れ
そのままメリーの家に転がり込んだ蓮子
いつものようにソファの上で本に目を通していたが
ふと夜空を見上げると、慌てたようにメリーへと向き直った
「メリー!大変よ!」
「何よ急に」
「今日ってエイプリルフールだったじゃない!!」
直後、向けられる寒い視線。あらあら冷たい
「・・・なにかと思えば。そんな前時代的風習がどうしたっていうの」
「わかってないわねぇ。日本はこういう行事には熱心に活動すべきなのよ」
「行事かしら」
「そうよ! あー、なにか嘘ついとくんだった!」
まるで子どものようにうだうだ呻く蓮子を見やり
やれやれとカクテルを一口いただきながら
「大体、エイプリルフールで嘘が許されるのは午前中だけでしょう」
「別にいいじゃない。丸一日騒ぐところだってあるわ」
「あ、そう」
「・・・あーあ、メリーのお腹むにむにして柔らかそうだから触りたくないなぁ」
「はっ倒すわよ」
言うが早いか、持っていた本でぶん殴るメリー
「なによ! 別にエイプリルフールだから許してくれたっていいじゃない!」
「私は許さないわ」
「まぁ怖い」
よよよと泣き崩れながらお腹をふにふにとつつく蓮子を更にぶん殴る
・・・まぁ、こういう他愛のないじゃれあいは嫌いではないし
自分も蓮子のスレンダーな体を撫で回せたらさぞ気持ちいいだろうと思うのだが
なんとなく蓮子の目論見にのってしまうのが嫌だった
「あーあ、メリー嫌いメリー嫌い」
「はいはい」
「・・・もうちょっと可愛い反応してくれてもいいじゃない」
「お生憎様ね」
カクテルを一気に飲み干し、ベッドの上に横たわるメリー
それをぷーっと頬を膨らませながら見つめていた蓮子だったが
「・・・メリーと一緒に騒ぎたかったのに・・」
ぽつりとそれだけ呟いて、メリーの隣にもぐりこむと
毛布を被って寝息を立ててしまった
「・・・・・・まったく」
大人げなかったかなぁ、と少し反省
蓮子も、別に馬鹿にしたかったからではなく
ただ自分と一緒に、年に一回のイベントを楽しみたかっただけだろうなと
わかっているのに、つい蓮子の相手をしていると意地になってしまう
メリーは首を振ってから顔を少し上げ、時計を確認すると
「・・・あー・・・えーっと、蓮子?」
「・・・・・・」
「・・・大っ嫌いよ。この世で一番・・・」
「・・・メリー」
「なに?」
「・・・あの時計、五分遅れてるの・・・」
「うそっ?!」
「うそ」
慌てて時計から視線を蓮子に戻すと
にたりと笑った蓮子の顔とご対面
「っっ! このあんたって奴はっ!」
「いいのいいのー。メリーもようやく素直になってくれたのねー」
ふはぁと甘ったるい吐息を漂わせながら、べったりとくっついてくる蓮子
「・・・お酒臭い」
「またそうやって色気が無い。台無しだわ。台無しメリーだわ」
「酔っ払いはさっさと寝なさい」
毛布でぐるぐると簀巻き状態にしてやるも、いとも簡単に隙間から抜け出す蓮子
畜生、そのほっそりとした体が羨ましい
「ねぇメリー」
「何よ」
「せっかくだから、するよ?」
「最初からその気だったくせに」
「いいじゃないの別に」
ネコのように喉をごろごろ言わせながらまとわりつく蓮子にため息一つ
苦笑しながら頭を撫でていると、ぱちっと目線が合い
「・・・メリー」
「ん?」
「好きよ。大好き」
極上の笑顔で言われ、またため息
どうせ自分越しに見えた夜空から、日が変わったことを悟ったのだろう
まったく、こういう色気ごとには本当に分が悪い
「・・・ずるいわ、あなた」
「女はずるいものよ」
まだ酒の所為で、ほんのり染まった顔をゆるめながら
互いにキスを交わす二人
グラスの氷が、小さく鳴った
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月が浮かび、星が輝くある夜中
夕刻ほどに、少し高い酒を途中の売店で仕入れ
そのままメリーの家に転がり込んだ蓮子
いつものようにソファの上で本に目を通していたが
ふと夜空を見上げると、慌てたようにメリーへと向き直った
「メリー!大変よ!」
「何よ急に」
「今日ってエイプリルフールだったじゃない!!」
直後、向けられる寒い視線。あらあら冷たい
「・・・なにかと思えば。そんな前時代的風習がどうしたっていうの」
「わかってないわねぇ。日本はこういう行事には熱心に活動すべきなのよ」
「行事かしら」
「そうよ! あー、なにか嘘ついとくんだった!」
まるで子どものようにうだうだ呻く蓮子を見やり
やれやれとカクテルを一口いただきながら
「大体、エイプリルフールで嘘が許されるのは午前中だけでしょう」
「別にいいじゃない。丸一日騒ぐところだってあるわ」
「あ、そう」
「・・・あーあ、メリーのお腹むにむにして柔らかそうだから触りたくないなぁ」
「はっ倒すわよ」
言うが早いか、持っていた本でぶん殴るメリー
「なによ! 別にエイプリルフールだから許してくれたっていいじゃない!」
「私は許さないわ」
「まぁ怖い」
よよよと泣き崩れながらお腹をふにふにとつつく蓮子を更にぶん殴る
・・・まぁ、こういう他愛のないじゃれあいは嫌いではないし
自分も蓮子のスレンダーな体を撫で回せたらさぞ気持ちいいだろうと思うのだが
なんとなく蓮子の目論見にのってしまうのが嫌だった
「あーあ、メリー嫌いメリー嫌い」
「はいはい」
「・・・もうちょっと可愛い反応してくれてもいいじゃない」
「お生憎様ね」
カクテルを一気に飲み干し、ベッドの上に横たわるメリー
それをぷーっと頬を膨らませながら見つめていた蓮子だったが
「・・・メリーと一緒に騒ぎたかったのに・・」
ぽつりとそれだけ呟いて、メリーの隣にもぐりこむと
毛布を被って寝息を立ててしまった
「・・・・・・まったく」
大人げなかったかなぁ、と少し反省
蓮子も、別に馬鹿にしたかったからではなく
ただ自分と一緒に、年に一回のイベントを楽しみたかっただけだろうなと
わかっているのに、つい蓮子の相手をしていると意地になってしまう
メリーは首を振ってから顔を少し上げ、時計を確認すると
「・・・あー・・・えーっと、蓮子?」
「・・・・・・」
「・・・大っ嫌いよ。この世で一番・・・」
「・・・メリー」
「なに?」
「・・・あの時計、五分遅れてるの・・・」
「うそっ?!」
「うそ」
慌てて時計から視線を蓮子に戻すと
にたりと笑った蓮子の顔とご対面
「っっ! このあんたって奴はっ!」
「いいのいいのー。メリーもようやく素直になってくれたのねー」
ふはぁと甘ったるい吐息を漂わせながら、べったりとくっついてくる蓮子
「・・・お酒臭い」
「またそうやって色気が無い。台無しだわ。台無しメリーだわ」
「酔っ払いはさっさと寝なさい」
毛布でぐるぐると簀巻き状態にしてやるも、いとも簡単に隙間から抜け出す蓮子
畜生、そのほっそりとした体が羨ましい
「ねぇメリー」
「何よ」
「せっかくだから、するよ?」
「最初からその気だったくせに」
「いいじゃないの別に」
ネコのように喉をごろごろ言わせながらまとわりつく蓮子にため息一つ
苦笑しながら頭を撫でていると、ぱちっと目線が合い
「・・・メリー」
「ん?」
「好きよ。大好き」
極上の笑顔で言われ、またため息
どうせ自分越しに見えた夜空から、日が変わったことを悟ったのだろう
まったく、こういう色気ごとには本当に分が悪い
「・・・ずるいわ、あなた」
「女はずるいものよ」
まだ酒の所為で、ほんのり染まった顔をゆるめながら
互いにキスを交わす二人
グラスの氷が、小さく鳴った
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堪能しました
ほんのり甘くてよかったです。