目が覚めると、眼前に輝夜が眠っていた。
「すぅ……」
さぁ、どうしようか……うん、とりあえずは、
「おらぁっ!」
「きゃふぁぅ!?」
殴り飛ばしてみた。
吹っ飛んだ輝夜は箪笥に頭をぶつけ、そのショックで目を覚ましたみたいだ。
「いったぁ~い!」
「お前の存在がか?」
「後頭部が!」
涙目の輝夜が、私を睨む。はは、ざまぁみろ。
「大体何でお前が居るんだよ?」
疑問に思ってたことを投げかける。
すると、輝夜はきょとんとした表情で私を見る。内股でぺたりと座り込んでいる今の状態の輝夜が、そんな表情をすると、なんだかちょっと可愛らし……じゃなかった! 気持ち悪い! あぁ、気持ち悪い!
「妹紅……いえ、モコモコ」
「焼くぞ?」
「ジョークよジョーク、蓬莱山ジョーク」
「どんなジョークだ。で、理由は何なんだ?」
「酷いわ妹紅、忘れたなんて……昨日あんなに激しく、でも優しくしてくれたのに」
「何をしたんだ私は!?」
「わ、私の口から言わせないでよ……」
頬を少し赤らめながら、目を逸らす輝夜。
……何をしたんだ私。
「な、なぁ輝夜、本当に私は何をしたんだ?」
「え、ナニをしたかですって?」
「くたばれ」
「あ、あまり大きな声で言うのは恥ずかしいから……耳貸して」
「……分かった」
輝夜は私の耳元に、子どもが秘密話をするかのように口を近付ける。
「はむっ!」
「うひゃぅっ!?」
いきなり耳たぶを唇で挟まれた。
突然の刺激に、思わず変な声を上げる。
「あら、可愛い声をあげるのね」
「死んでしまえ!」
とりあえず輝夜の右手だけ焼いた。
「次はふざけるなよ?」
「分かってるわよ。ほら、耳貸して」
再び輝夜に耳を貸すかたちをとる。
輝夜が何か言葉を紡いでいるが、あまりにも小さい声で聞き取れない。
「……け……ん」
「は? 聞こえないって」
「じ……」
「だから聞こえない! 一体私は何をしたんだ!」
「ジャンケンをしたのよ!」
「別に耳うちするような内容じゃないだろぉぉぉ!」
「ぎゃぅっ!」
あまりにも腹がたったので、喉を突いてやった。
変な声を上げて、吹っ飛ぶ輝夜。
「……」
「ん?」
輝夜がこちらを向いて小さな口をパクパク動かしている。
もしかして……
「今ので喉潰れたのか?」
激しく首を上下に動かす輝夜。小動物みたいで可愛……じゃなかった! うっとうしい! うん、うっとい!
「うっそ~! 喉なんか潰れてましぇ~ん」
「……」
「目ガァ目ガァぁぁぁぁ!?」
いちいち相手を怒らすのが上手いやつだ。ご褒美に目を燃やしてあげた。
輝夜は燃やしてくれて嬉しいのか、顔を両手で抑えながら床をゴロゴロしている。あはは。
「何するのよ妹紅!」
「流石不死、もう復活か」
「再生するの疲れるんだから!」
「なんか宇宙人が言いそうな台詞だな」
「いや、私実際宇宙人だし」
「あ、そっか。月から来たんだもんな」
「そうよ。全く妹紅ったら」
「あはは、いっけね~」
「あはははは」
「あはははは」
「あはははは」
「あはははは……って何だこの空気!?」
危ない危ない、輝夜・THE・ワールドに片足突っ込んでた。
「まぁ冗談はさておき」
「今まで全部冗談だったのか……」
「私がここに居る理由、教えてあげるわ」
輝夜が真剣な表情をして、私を見る。
背筋を伸ばし、正座をし、全てが凜としている。
その瞳は透き通る程繊細で、それでいて美しく、そのあまりの美しさに、私の身体は氷のように冷え、そして固くなった。
輝夜の時折見せるこの表情は、昔と変わらない。
その美しさは、男が恋い焦がれ、女は嫉妬することすら出来ない程。
私も、この輝夜の表情だけは、慣れなかった。
「私がここに居た、その理由はね……」
唾を飲み込みことすら忘れてしまう空気。それを作り出しているのは目の前の、憎くて憎くて仕方が無かった、私の敵。
そう、憎くて仕方が無かった。つまり、もう過去なのだ。
認めたくは無いが、私は多分もう、輝夜を憎んではいない。
ただ時折見せる、この輝夜の表情だけは、本当に、慣れない。
「妹紅の家に遊びに来たら、まだ妹紅が寝てたから私も一緒に寝ちゃったのよ!」
「…………は?」
ちょっとまて。
さっきまでの空気はどこへいった!
「おいこら輝夜」
「あえてシリアスな雰囲気を醸し出してみました、てへっ☆」
「てへっ☆、じゃねぇ!」
「じゃあ、ぐへっ☆」
「可愛くないわ!」
「どう? たまには格好いい私に惚れた?」
「ばっ!? 誰が惚れるか!」
えへ~と抱き付く輝夜を見て、自然と頬が緩くなるのを感じる。
それを誤魔化すために、自分の顔を燃やしてみた。
「ちょ! 妹紅!?」
「あぁ、顔にハエがいたんだ。多分」
「叩けばいいのに……」
「無暗に生き物を叩いて殺しちゃいけないって慧音が言ってたぞ」
「燃やす方がタチ悪い気がするけど」
「まぁ気にするな」
よし、誤魔化し成功だ。
輝夜が呆れた顔してるから燃やしてやろうかと思ったが、今回は止めといた。
「さぁ、妹紅遊びましょう!」
「って何でだよ?」
「言ったでしょ? 遊びに来たって」
「知らん、私は寝る」
「あーそんなに寝たら武士になるわよ」
「ならないよ! 食べてすぐ寝ると牛になる、だ!」
「流石妹紅ね。私の期待以上のツッコミ(ここでは性的な意味は含まない)をしてくれるなんて」
「くたばれ、私は寝る」
適当に寝転がることにする。大体遊びといっても、私は今の遊びとやらは知らないし。相手出来ない。
そうしていると、背中にピッタリと添えられる何か――輝夜だ。
「おい」
「えへ~」
「何してんだ」
「添寝ごっこ。立派な遊びよ」
「なんだそりゃ」
「妹紅は黙って寝てればいいの!」
「……ふん、勝手にしろ」
背中から伝わる心地良い温度。
決して熱くはないのに、私の身体は、凄く熱くなっていた。
しばらくそうしていると、背中から、寝息が聞こえてきた。
「お前が先に寝るのかよ……」
なんとなく、苦笑いを浮かべながら、私も眠りに沈んでゆく。
輝夜の寝息と、背中から伝わる鼓動を子守歌代わりにして。
そして――おやすみ。
ほのぼのさせてもらいました。
関係ないけど妹紅もかわいいけどけどやっぱり藍様だな。喉飴さんの書く藍様を・・・。
次回作期待してます。(笑)
頬緩みっぱなしですけど、こっちは顔は焼けない!
ずっとにやにやしときますww
素晴らしい
終始にやにやしてしまいましたよw
家族から奇異の目で見られた。どうしてくれるww
これはいい二人・・・
普段私は著者の名前を見る前にタイトルをクリックします。
輝夜Theワールドの辺りでまさか思い、タグを見たらやっぱり喉飴さんでしたとさw
ほのぼのとギャグを両立させた作品で喉飴さんの右に出る人はいないですね。
やはり
輝夜は
最高だ
な
……やってる事はえげつないけど
ただしやり過ぎると永琳先生と慧音先生が更にバイオレンスを引き立てて下さいますので注意!
てるもこ最高ォオオ!!
おや、誰か来たみたいだ。Pizzaの宅配かな?
お前の存在がか?というもこの突っ込みで土台は蹴り飛ばされましたっ!
のどさんの書く突っ込みキャラは何気にブゥァイオレンス突っ込み多いよね!
見てて楽しいけど!w
そういえば私、藍を書いたことないかもしれませんね。
八雲さんたちは難しくて……
>>2様
楽しんで下さってなによりです!
顔を焼けるのは蓬莱人だけですねw
>>3様
にやにやしたら負けですよww
>>4様
ありがとうございます!
そして、良い夢を……
>>5様
今後も蓬莱山ジョークは出るかもしれませんw
>>コメ10様
私の作品と見抜くとは……
なんて嬉しいお褒めのお言葉!
わ、わわ私嬉しすぎて空飛んじゃいますよ!?
>>7様
蓬莱人だからこそ出来る戯れあいですからね。
>>謳魚様
蓬莱人じゃなかったら確実に終わってますw
>>9様
慧音先生は保健の永琳先生と保健室に居ます。
>>10様
少し抑えた方が良いでしょうかねw?
楽しんでもらえたようで幸いです!
>>11様
にやにやしたら燃やされますよw?
うぉおぉおお!!!!!!!!!!!