Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

シャ(社)ほどステキな商売はない

2009/03/29 12:10:22
最終更新
サイズ
15.62KB
ページ数
1

分類タグ


「――かしこみかしこみもぉ~すぅ~っと。お待たせいたしました、洩矢の神がお降りになります」

 皆さんこんにちわ。今更と思うかも知れませんが私は東風谷早苗。風の平穏を願って神と人とのあいだを取り持つ守矢神社の風祝です。よく巫女とか言われますが『風祝』ですのでお間違えなきようお願いいたします。
 尤も、神と人とのあいだを取り持つ役職を総じて神職と呼ぶのですから、神主も巫女も祝子も呼称の違い程度でしかないのかもしれません。しっかーし、そこで妥協してしまったら『腋巫女二番煎じ』だの『2Pカラー』だの『るいーじ(類似?)』だのと理不尽かつ不名誉な二つ名を戴くことになってしまいます。
 そういったワケで、東風谷早苗は誰が何と言おうと守矢神社の風祝なのです。

「ようこそ、迷える参詣者達よ。よぉーこそ、私が洩矢大神諏訪子だ。ようこそ、よォ~こそっ!」

 さて、いきなり話が逸れてしまいましたが祝詞奏上が終わって諏訪子様が顕れます。顕れるといってもすぐ隣の控え室から出てくるだけで、儀式はあくまでも儀式的なものに過ぎません。
 ちなみに諏訪子様の口上が妙に芝居がかっているのはとあるカリスマにあやかってとのこと。そのカリスマは1mを越す純白の大イタチ(フェレットとは違うのでしょうか?)で、神奈子様が仰るには「カリスマ? 違うね。トラウマだよ」だそうです。
 まあ、それはさておき。本日守矢神社には諏訪子様が仰ったとおり参詣の方が2名訪れています。

「えーっと、兎角同盟代表の鈴仙と」
「焼き鳥撲滅活動家のミスティアで~す♪」

 聞くところによると鈴仙さんとミスティアさんは共通の悩みを抱えているらしく、相談にうってつけの神様がここに居ると文さんに紹介されたんだそうです。

「そんじゃ早速だけど悩みってヤツを聞かせてもらおっか?」
「ちょ、ちょっと待って下さい。なんか話しに聞いてた神様と随分イメージが違うんですけど……」
「文屋(あやや)さんからは赤くて背が高い神様と聞きました~」
「あーうー、そいつは神奈子のことだぁね。今日は外回りの営業で出払ってるから私が留守を預かってるのよ。まぁ、もともとは私の神社なんだけどねぇ……」

 なるほど。確かに諏訪子様は青っぽくて背が低いので神奈子様とは真逆のイメージですね。しかし侮ってはいけません。対外的にはカナ>スワのイメージが色濃い守矢神社ですが、実情はスワ>カナだったりするんです。
 例えば神奈子様の代名詞とも言えるオンバシラ。これのオリジナルは実は諏訪子さまのもので、神奈子様のはその規模を拡張(エクスパンデット)させたものなんです。また、蛇を模ったあの大きな注連縄も諏訪子様への嫌がらせと思われがちですが、背後に控えた大物主様の存在を自己啓示するもので、似たような蛇神様を従える諏訪子様御本神にとっては何の驚異にもならないそうです。
 2柱の関係について諏訪子様は「私はガイザoクで神奈子がバラ○スな関係」と仰っていましたが、神奈子様は「ゾ○マとバラ○スのが一般的だろ。どっちにしても例えとしちゃ間違ってるけど」と仰います。っていうかゾー○とバラモ○は判るんですが、ガイザッ○とバラリ○って何のことでしょうか?
 どうも2柱(特に諏訪子様)の例え話は引き合いが微妙に古すぎる気がします。

「普段神奈子が配ってる神徳も造ってるのは私達なのよ。だから今日は工場直販みたいなもんだと思ってよ」
「なるほど。実は悩みというのはですね――」

 諏訪子様の御説明に納得した参詣者のお二方は本題を切りだします。

「ご覧の通り私達は兎と鳥の妖怪のようなもので、それぞれに兎や鳥が食卓に上らないようにと日夜努力しているんです」
「でもこのあいだお客さんに――あ、私は活動の一環で八目鰻の屋台を引いてるんだけど『鳥と兎がダメなら食える肉がないじゃんか』って言われたんです。だからこうして鰻もあるし、猪とか鹿とか狢とか他にもいっぱい居るじゃな~い♪ って言ってやったんですよー」
「そしたら連中、『いやぁ、四つ脚はマズイだろ』なんて言いやがるんです! 兎も四つ脚だっちゅーの!!」
「まぁ、そーいった諸事情を解決する素敵グッズがあると聞いて、こうしてお参りに来たんですよ~♪」

 見た感じ兎らしい鈴仙さんは世の中の理不尽さに怒りの声を荒げます。しかし、それを言ってしまうと特に理由無くOKな鳥っぽいミスティアさんの方が理不尽極まりないわけで、それでも鈴仙さんを気遣う彼女の強かさ(或いは諦めの良さ)には涙を禁じ得ません。

「そいつは大変だやね。しかしまぁ、そう言うことなら話は割と簡単――」

 2人の話にうんうんと頷く諏訪子様はトレードマークの帽子をサッと外すと、どこぞの全天候猫型歴史改変支援ロボットよろしく御札を1枚取り出します。

「『かーじーきーめーんー(鹿食免)』! 後顧の憂い無くあらゆる肉食を肯定する御免状。コレさえあればこっちに来た御霊は私と神奈子で責任持って穢れを祓うし、菩薩や閻魔にもナシ付けてあるからあっちでもその分の殺生は不問になるという有り難いような迷惑なような御札だよ」

 古来、日本では神道の血穢れ死穢れを忌み嫌う風習や仏教の影響で肉食は魂が穢れるとして幾度となく禁止されてきたそうです。しかし、なんだかんだ言ってもお肉は美味しいですからそう簡単には止められません。そこで魚や鳥はOKとか兎も鳥っぽいから許可するとか獣肉も滋養薬としてなら良いじゃん等々、様々な抜け道やもっともらしい口実が設けられていたようです。
 そんな数ある御都合主義の決定版とも言うべきが諏訪子様の取り出しましたる『鹿食免』なのです。これは『自然の恵みに感謝すれば喰ってヨシ!』だの、『獲物の業を背負って一緒に成仏すりゃそれってグレートな慈悲じゃね?』ってな具合に、中央の政策なんぞ関係ねーというスタンスを信仰に便乗させたいわゆる免罪符。
 その当時はローカル神社に過ぎなかった守矢神社を全国5千余のフランチャイジーを抱えるメジャーへと押し上げた大ヒット商品だそうで、「あの頃は売上げも信仰もウハウハだったのよー」と過ぎし栄華に思いを馳せてはニヨニヨ笑う2柱を見て、信仰することの儚さと今後の身の振り方について割と真剣に考えたものです。

「嗚呼、ソレです。私達が求めているものはまさしくソレなんです……」
「但し――」

 フラフラと夢遊病者のように手を伸ばす鈴仙さんを窘めるように諏訪子様は言葉を続けます。

「但し、コレがあっても信心を忘れたら無意味だし、逆を言えば信心があれば不要な代物。それにちらっと言ったけど喰われる側にとっちゃ迷惑極まりなく、兎や鳥も例外に非ずだ。それでもコレが必要かな?」

 おお、さすがは諏訪子様。ケロケロとした外見だけに威厳には欠けますが、言うべきところはしっかりとフォローして下さいます。とても悪徳商人面でほくそ笑んでた神様と同一とは思えません。

「真に遺憾ですが、私達が声を大にしても所詮は自己都合じゃないかと鼻で笑われるのがオチです。しかしそこに第三者、しかも神様のお墨付きとなればこれ以上に無い説得力を持たせることが出来ます。少なくとも認識を改める切っ掛けにはなるはずです」
「撲滅活動やってる私が言うのもなんだけど、全く食べるなってのは正直無理だと思うの。でも食材の選択肢を増やすことができればメニューも増えるしお客さんだって増えるだろうし、そうなればお客を取られた他の赤提灯も焼き鳥以外のメニューは考案せざるを得ないと思うわけ」

 諏訪子様の問いに答えるお二人の表情はとても真剣で心の底から鹿食面を求めているご様子です。諏訪子様はその真摯さに感慨深く頷くと手渡しにて御札を下賜なされます。

「ありがとうございます、ありがとうございます」
「まぁ、こっちも商売(?)だしこれ以上はとやかく言わないけど、くれぐれも信心だけは忘れないようにね。ミシャグジさんってば祟るときはマジんなって祟るから」
『取リアエズ山津波。噴火ナンカモイイカモナー』
「「「!?」」」

 突然響く不気味な声。参詣者のお二人にも聞こえたらしく、発生源と思しき方を見れば諏訪子様が御自身の帽子と何やら言い争っています。

「こらっ、人が見てるときは喋るなっつってんだろーが!」
『イヤ、祟リト聞イテツイ』
「しょうがないねぇ。ほれ、とっとと後始末する」
『ヤレヤレ。すわっこハ神使イガ荒クテカナワン』

 そう言いいながら諏訪子様が帽子を小突くと、その目玉から妖しげな光線がキュィ~ンと放たr――












 ――ハッ!? 私達はいったい何をしていたのでしょうか? 確か諏訪子様が御札を下賜なされ、信心を忘れるなと御忠告下さったんですよね。……何か他にもあったような気がするんですがきっと気のせいですね。



「お世話になりましたー」
「お気をつけてお帰り下さーい」
「おんやぁ、お客さんかい?」

 ほくほく顔でお帰りになるお客様――もとい、参詣者様をお見送りしているとちょうど神奈子様が御帰還なさいました。

「お帰りなさいませ八坂様。こちら、兎角同盟の鈴仙さんと焼き鳥撲滅活動家のミスティアさん」
「守矢神社によォーこそ。今後とも御贔屓に頼むわね――って、おお、そいつは鹿食免じゃないか!」

 会釈を返すお二人が大事そうに抱える御札を見た神奈子様は感嘆の声を上げます。そして、何事かしらんと怪訝なまなざしを向けるお二人の肩にガシッと手を置くと、まるで威圧するかのような口調で語りかけます。

「兎とか鳥とかいい。鹿を食べるんだ」
「へ? し、鹿??」
「そう、鹿だ鹿。あのセクハラ野郎の使いっ走りの分際でのうのうと草を食んでる鹿だよ鹿! 伊達や酔狂で鹿食免なんて名付けた訳じゃないんだよ。いいかい? 絶滅させる心積もりで鹿を食べるんだよっ!!」

 神奈子様は何故か鹿に対して並々ならぬ恨みを抱いているようで、酉の祭でも献上された鹿を前に悦に浸っているのを何度か見かけたことがあります。
 その辺りの事情は諏訪子様から「直接恨んでるのは神奈子の上司、タケミカヅチって小僧なんだけどね。ほら、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いってやつ」と聞き及んでいますが、狙われる鹿にとっては災難以外のナニモのでもありませんよね。
 さて、今度こそ本当に参詣者様を見送って社殿に戻ると(神奈子様は姿見えなくなるまで「鹿食えよー」と呼ばわっていました。ちょっとしつこいと思います)、諏訪子様が墨と硯を引っ張り出していました。

「若干の需要が見込めそうだし増刷しとこうかなぁと……」
「お手伝いいたしましょうか?」
「そんじゃ台紙を切ってちょーだい。文言は私とミシャグジーずで入れるから。それと神奈子ー」
「んぉ、私もかぃ?」

 今夜は鹿鍋~♪などと鼻歌交じりで狩猟道具を引っ張り出してきた神奈子様。まさかこれから狩りに出かけるおつもりなんでしょうか?

「是非曲直庁の支局には挨拶してきた?」
「ああ、主立った所は一回りしてきたよ。あちらさんも守矢社のことは知ってるみたいだし、改めて協議する必要は無いでしょ」
「んだね。本庁から同意は得てるし顔出しときゃ充分だわ。ごくろーさん」

 神奈子様は諏訪子様とやけにお役所チックな会話を交わして鹿狩りへと出かけてゆきました。後でゴボウでも準備しときますかね。

「早苗~、台紙をじゃんじゃんよこしなさーい」
「はーい」

 さあ、御札づくりです。まず私が切りそろえた台紙を渡すと次に諏訪子様が柏手を打ちます。すると、何処からともなく小さな蛇の姿をしたミシャグジ様達(ミシャグジーず)が集まってきます。
 ミシャグジ様は諏訪子様の使役神にして岩や木々の精霊でもあるそうで、守矢神社の発揮する御神徳を支える屋台骨のような存在です。小さいながらもそのパワーは絶大で、怒らせれば凄まじい祟りをもたらします。

 ――はて? 私はもっと恐ろしいナニかを見聞きしているはずですが……うまく思い出せません。

 集まってきたミシャグジ様達は細長い御身体をくねらせて御札に文字を模ってゆきます。最後は再び諏訪子様が素早く誤字脱字をチェック(正に神速。まるで目が4つあるみたいです)して御朱印を捺して出来上がりです。
 本来ですと御祈祷してミシャグジ様の神力を降ろすのですが、今日は御本神様が手がけているのでその必要も無くとっても楽ちんです。尤も御札を梱包する作業だけは人力でやらないといけないんですけどね。
 およそ1時間の作業で500セットは仕上げたでしょうか? 些か作りすぎの感は否めませんが、ノリノリの諏訪子様が大変に可愛らしかったので私もついつい没頭してしまいました。

「んー、こんなもんかね。さて早苗、そろそろ夕飯の支度しないと神奈子が戻ってくるよ」
「もうそんな時間ですか? それでは諏訪子様、申し訳ありませんが後はお願いしますね」

 片付けを諏訪子様に托してあかね色に染まる空の下を夕餉の支度に向かいます。手早く水汲みをすませるとゴボウを刻んでアクを抜き、磨いだお米を釜戸にセットしたところで神奈子様が戻ってきました。

「獲ったどー!」
「お帰り神奈子。取りあえず風呂行って禊いできな」
 
 諏訪子様と私が出迎えると仕留めた耳裂け鹿を掲げ上げて堂々の勝利宣言。積年の恨みでも晴らしたかのような妙に爽やかで血に濡れた笑顔がハッキリ言って怖かったです。
 神奈子様が湯浴み(件の地霊騒ぎの際、守矢神社にも温泉が湧いてます。むしろ、温泉を湧かせようとして地霊騒ぎを起こしてしまったのですが……)に向かわれたので、獲物は諏訪子様が料理します。
 本来狩猟は諏訪子様の領分で、その御作法も驚くほど(見た目が見た目ですので)に見事です。先述した酉の祭も狩猟に縁の深いお祭りだったそうですが、時代が下がるにつれて農耕意義の強い神奈子様のお祭りへと変わってきたと言われています。
 しかし獣肉(主に鹿)を奉じる儀式は相変わらずで、その事が諏訪子様への御配慮なのか単にストレス解消なのかは存じあげません。ただ、狩るだけ狩って後は投げっぱなしにすることが多いので、たぶん後者ではなかと……いえ、なんでもありません。
 とにかく、儀式に則って鹿の御霊を神(きっと鹿島様)の元へと還した後は、そのお肉を感謝して頂くことが最大の信仰であると諏訪子様も仰っています。手際よく鹿を解体してゆく少女ってのは考えようによっては非常にシュールな光景ですが、他の命を頂いて生きるという行為に貴賤とか見た目とかは関係ないのです。
 関係ないのですが、薄笑いを浮かべながら牛刀を振り回すのは止して貰いたいんですけどね……。



「ふぅ、サッパリしたー」
「お、来たね。さあ、始めよう始めよう。あんまり煮込むと肉が固くなっちゃうからねー」

 入れ替わりで私達がお風呂を頂いている間、お鍋の番をしていた神奈子様がニコニコと迎えて下さいます。すでにいくらかお酒を召し上がっているらしく、とても上機嫌にお鍋をよそって下さいました。
 さて、今夜の主役はもみじ鍋。たっぷりの鹿肉にざく切りの大根とゴボウ。おっと厚揚げも忘れちゃいけません。味付けはシンプルなお味噌。こちらは神奈子様が仕込んだ特製です。鹿肉は高タンパク低カロリーで、布団を売ってでも食べろと言われるくらいに身体を芯から温めてくれます。まさに寒い時期にピッタリのお鍋です!

「そーいえばさ神奈子。鹿食免で思い出したけど、チカちゃんって覚えてる?」
「……忘れた」

 あらかた具材も片付いてそろそろ雑炊で締めようかといった頃、何気ない諏訪子様の問いかけに神奈子様の箸がピタリと止まります。微妙な間と素っ気のない返事にあからさまな嘘を看破した諏訪子様は、とくに咎めることもなく話を続けます。

「彼女ね、結構前からこっちに来てるんだって。鹿食免でひと信仰儲けるつもりなら彼女との折衝は避けられっこないんだから、いい加減仲直りしときなよ?」
「まぁ、考えてはおくよ……」

 件のチカちゃんさんがどこのどなたかは存じませんが、諏訪子様と神奈子様共通の知人と言うことは神、或いは妖怪、何れにせよ人外の存在に間違いないと思いますが……。

「あのー諏訪子様。チカちゃんさんってどちら様なんですか?」
「早苗も名前くらいは聞いたことあるでしょ。千鹿頭智華子(チカトチカコ)って、ここが私の名義だった頃に働いて――もとい祀られてた3柱の1柱だよ。守矢になってからは神奈子と折り合いが悪くて辞めちゃったんだけど、流れに流れて幻想入りしてたみたいだねぇ」

 なるほど、千鹿頭の神様でしたか。
 以前、どうしてウチには2柱も祀られてるのかしらとその来歴を調べたときに見かけた神様の名前です。遙か昔にモレヤ、チカト、ソソウの3柱が諏訪を治めていただとか、洩矢の3代目として狩猟と祭祀を司っていただとか文献や資料によってまちまちです。
 いずれにせよ現在は諏訪の地を離れて安曇野や遠く奥州辺りに行ってしまい、その所在がよくわかっていないとのことでしたが。

 ――あれ、3柱? モレヤが諏訪子様、チカトがチカちゃん様だとすると、もう1柱のソソウ神はどうなってしまったのでしょうか? 神奈子様は大和から転勤(?)してきたと伺ってますし、ナニかとてつもなく重大でむしろ答えと言っても差し支えないヒントを私は知っているはずで――
 ぅぐっ、頭が……割れるように……痛い!

「ちょっ、早苗? しっかりおしよ!」
「早苗、早苗、大丈夫!?」

 突然苦しみだした私に驚いた神奈子様と諏訪子様が駆け寄ってきます。うずくまる私を抱え起こすと心配そうに覗き込む6つの瞳が――って6つ?

 キュィィ~ン



「うーん。やっぱ分霊してるからかな? 術のかかりが浅いみたいだ」
「あのねぇ、早苗は私の祝子なんだからさ。いい加減にしとかないと私としても黙っちゃいないよ?」
「あーうー、判ってるよ。いつまでも隠し通せるもんじゃないし、折りを見てキチンと話すってば」
『スマンナァすわっこ。儂ガ迂闊ダッタバッカリニ……』

 混濁とした意識の下、途切れ途切れに聞こえる神々の会話。そうか、そういうことだったんだ。諏訪子様の帽子がミシャグジ様に姿を変えたソソウの神様だったんですねぇ。嗚呼、急速に意識がとおのいて行く。暗闇と忘却の彼方にSANチェックを――



 あくる朝、目が覚めるとお昼でした。付近には2柱の気配はなく、おにぎりが2個、添え書きと一緒に枕元に置いてあります。

『お腹が空いたら食べるように。梅☆干し入りだよ♪』

 どーやら昨日は飲み過ぎ(飲まされ過ぎ?)で倒れてしまったみたいです。言われてみれば頭はガンガンするし喉もカラカラです。

「すいませーん、どなたかいらっしゃいませんかー?」

 水でも飲もうと台所に向かう途中で不意に呼ばわる声がしたので玄関に向かうと、鹿の妖怪のようなもの(鹿角坊主とマントを羽織った2足鹿)を従えたマタギ風衣装に身を包んだ少女が立っていました。

「鹿ばっかり狩るバランスブレイカーがいると聞いて歩いてきました!」
「キモイって言われた過去が幻想入りしそうなので一緒にきました!」
「そのおかげで存在意義がゆらいじゃったんでついでにきました!」
「まとめてお引き取り願います」


 幻想郷は今日も平和そうです。……たぶん。
年度末進行から現実逃避!
ぎゃあ
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
ああダメだ……話が独特すぎてツボに嵌りました。
いやもう物凄く好きなのに人に勧めにくいったらありゃしない!!