Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

それぞれの移り変わり

2009/03/28 21:44:47
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「────きたわね」



何回目かもわからない、その足音の訪れにゆっくりと紅服の少女は振り向く。
木立の中を抜けて、静かにやってくる白い服。見慣れた顔。見慣れすぎた顔。

「終わりよ。もうすぐ私の象徴──雪がこの地に降りる。さあ、もうゆっくり眠りなさい」
「まだよ。まだ山々には染まりきらぬ赤色がある。乱れ散らぬ紅がある。
完全に木々から色が失われぬ限り、それまでは──私の季節。勇み足がすぎるわ」

そして二人は対峙する。

「過ぎ行く季節は、新しい季節の始まりには敵わない。それが天命。貴女はいつも、どうしてそこまで抗う?」
「ならば、それもまた天命と答えるしかないわ。必死に抗い、その輝きを少しでも人々の記憶に留める事。それが
過ぎ去られていく者の努めよ」

「……変わらないわね」
「…ええ。貴女も」

幾度となく繰り返されたやり取りは、最早儀式に近い。
だが、不思議と二人とも、立場は真逆なのに関わらず──そこには、ある種、互いを知る物同士の敬意のようなものがあった。

「ならば、実力行使よ。いつも最後に勝つのは、この私。それは変わらないわ」
「あら? そう言う割には、最近威勢がないのじゃなくて? そのうち、年内全部が私の季節になっても知らないわよ」

どちらともなく、にいっと笑う。妖力・神力を集中、魔方陣を展開。スペルカードの予備動作に入る。
片手にカードを携え、両の目で相手を捉え。──そして、その相手の名を叫ぶ。

「────秋、静葉!」
「────レティ、ホワイトロック!」

そしてスペルカードの宣言。弾幕が、紅葉が、雪が、風が、光が。幾つもの紋様を描き、
眩い色に、大地を、空を、木々を、染め上げて行く──






────────────────────────


「…頃合、か」


頭上の小さな枝──、そこから白い最後の梅の花が散るのを見届け、レティは呟いた。

あと1月もしないうちに、幻想郷の桜がその花びらを開く。それはすなわち──冬の終わりだ。
秋の神とは違い、自分は終わり行く季節をあるがままに受け入れるのが良し、と思っている。
桜が満開の冬など、いつぞやよろしく『異変』とされてしまうのがオチであるし。

季節は巡り来る。ならば、その始まりから終わりまでも、一番輝ける時を楽しむべきだ。
最も──その時が長ければ長いほど、言うことはないのだが。

空の向こうに、白い帽子に赤の縁取りをした妖精の姿が見える。──春告精(リリーホワイト)だ。
最近は、もう一人黒いのが増えて二人でいることが多い。
白い方は楽しそうに笑顔で、黒い方は仏頂面で、でも離れることなく一緒に、これから咲く花々を定めるかのように
山の方へと飛んで行く。

新しい季節の訪れは近い。
彼女らの邪魔をするつもりは、元よりさらさらないが──妖精の姿を遠く見送りながら、しかし、レティは呟く。

「…でもね。憶えておきなさい。
 ──4月に雪が降ることもあるのよ。それが、たとえ儚く、すぐ消えてしまうものだとしても、その時は──
 その日、その瞬間だけは私の季節だわ」






────────────────────────


里の方で掲げられた、鯉のぼりの一家が風にゆらめいてなびく。
山に点在する桜は一月以上も前に既に散り、その枝々には新緑が力強く広がっている。
季節は──初夏。
湿地には菖蒲の花が咲き乱れ、それが終わる頃には──本格的な夏がやってくる。

風見幽香は、高台から太陽の畑──その名の由来ともなる、今年も向日葵が咲き乱れるであろう大地を眺めながら
一つ大きく伸びをした。

春告精は、その名の通り「春を告げる妖精」である。彼女らは春の訪れを告げてしまえば、はいおしまい、で
後は花屋の店先にいたり、春に咲く花の種をあげれば、咲かして喜んでるぐらいが関の山だ。
端午の節句を過ぎたこの時期には、その姿を見ることすらほとんどない。

既に、照りつける太陽は、夏の日差しといってもいいぐらいの眩しさだ。
今年も日光の量は多く、幽香の分身とも言える向日葵も、例年通り素晴らしい出来になるに違いない。
ましてや、管理しているのは四季のフラワーマスターたる自分である。

「穏やかなのもいいんだけど……少し退屈ねぇ…」

今年もまた暑い夏が──来る。





────────────────────────

──0勝30敗。

通算成績ではない。9月にはいってからの戦績である。



俗に言う「車田落ち」で吹っ飛んだ妹を眺めつつ、離れて腰掛けた岩の上で、もみじ饅頭などを食む。
なあに、大丈夫。あの妹は意外に体は丈夫で打たれ強いのだ。あ。これ結構美味しい。
あの和菓子屋、いい職人が入ったのかも。今度から贔屓にしよう。

「おおおお姉ちゃん!? 何で私知りませんみたいな顔でお菓子なんか食べてるの!?
あの悪魔を倒して秋を迎えるためには、姉妹二人で力を合わせて立ち向かうのが王道、っていうか
何で私だけ戦ってるの!?」

ほら復活した。
いい勢いで吹っ飛ばされた割には、がばっとあんまり傷のない顔を上げて威勢よく食って掛かってくる。

「神様が二人がかりで一人と戦うのって王道なのかしら…。
あと私は秋って言っても紅葉の季節を司るんであって、ぶっちゃけあなたの収穫の季節とは微妙にずれてるし。まだいいかなーって。
応援ならしてあげるから、いまやるなら頑張って頂戴。フレーフレー、みーのりーこ」
「Oh,My God!?」

「ふふ。わたしのこと悪魔ですって。可笑しいわね。──さあ、おトイレは済ませたか? 神様にお祈りは? 
太陽の畑の隅っこで、ヒマワリの種かじりながらガタガタ震える準備はOK?」
「あの神様、役に立たない! チェンジ! チェンジを要求したい! 普段はあのお姉ちゃんもそれなりに優しいけど、
こういう戦闘時には、世紀末に外側からシェルター閉めてくれるぐらいの特級の慈愛溢れた姉を要求したい!
それに、あ、アレよ!? 私をないがしろにすると、その……す、凄いわよ!?
えっと……お、お米も実らないし、お芋も生らないし、葡萄だって採れないわよ!?」
「べーつーにー。私はお花が咲いてればそれでいいしー」
「自己中心的にも程がある妖怪がいた!? う、嘘です、みぎゃあああああああああああああああああ」

「──まだ、9月が終わっただけじゃない。さあ、10月を準備しろ。11月を存分に使え。
お楽しみはこれからだ! ハリー! ハリー! ハリー!」
「お姉ちゃぁああん、お姉ちゃああああああん!? ……………………何コレ、書置き?」



       『12月には本気出す    by静葉』
近年、残暑厳しいですよね。というお話。


言葉どおり静葉様も最後はちゃんと本気になるんだけど
しかし、12月頃になると「飽きたー」とかいって悪魔は去っちゃってるため
やられ損なのはいつもM子様ひとりという現実。

あと本気の静葉様もレティとでいい勝負なので、実はそんな強くなかったり。
ぱるー
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
世紀末に外側からシェルター閉めてくれるぐらいの特級の慈愛溢れた姉を要求したい!

願望ですかww