「そうだ、橙。面白いお話を聞かせてあげましょうか」
「なんですか?」
やわらかい太陽の日差しがさんさんと注ぐ縁側で、珍しくすきま妖怪八雲紫とその式の式、橙が日向ぼっこをしていた。
普段寝てばかりいる主が、その式の式と日向ぼっこというのは稀なのである。
世間ではなにやら彼女にとって不名誉なことが囁かれているが、そんなことはない。
永い時を生きてきてなお傷のない、きめ細やかな肌。
世の男を全て魅了せんばかりの豊満な体。
そして恐怖さえ与えてしまいかねないほどの美貌を兼ね備えている。
何故人は彼女を年増と言うのだろう?そんな人はみんなすきま送りよ。
言うことはまだあるのだが、話を戻そう。
気まぐれで早起きしてしまった彼女は、幼い式の式に昔の話を聞かせてやろうと思った。
式の式も興味津々な様子である。
「あの子、藍もね?あなたみたいに小さい頃があってね。それはそれは手のかかる子で…」
あの子に出会ったのは、彼女の尻尾が九本になりたての頃かしらね~。
だけどまだまだ短くて、妖力も微弱だった。
長さ?そうね、にんじんくらい?体も相応に小さくてね。思わずよだれが垂れてしまったわ。
割と人なつこい娘で、手なずけるのはさほど苦労しなかった。
「狐のお嬢ちゃん、私のおうちに来ない?楽しいわよ~」
「ほんと?いくー!」
「(くっくっく…ちょろいちょろい)」
家に連れ帰ってね、お菓子をあげたらそれを満面の笑みで平らげてくれたわ。
もう私決めた。この娘を式にする。私が教育する。
ああ、ごめんなさいね橙。ティッシュ。興奮してきた、鼻血が…
でも大変なのはそれから。
不安がるあの子をさとすのは一苦労だった。
「ねぇあなた。私ともっと仲良くなりたくなぁい?」
「うん、なりたい」
「じゃあ、あなたを私の式にします。式っていうのはね?…」
ここで小難しい説明が入っちゃうのだけれど、それが失敗だったのかも。
あの子はなんだか震えちゃってね、頑なに式になることを拒んだ。
「やだ…こわい…」
「何も怖がらなくてもいいのよ?何も」
「やだっ!」
「ま、待って!」
「やだやだ離して!」
「落ち着いて。わかった、あなたを無理やり式になんかしないから」
ひとまずここではこの娘を帰してしまうしかなかったわ。
だけどここで諦める私じゃない。
雨の日も、雪の日も、雷が落ちようとも、槍が降ろうとも。
草陰からあの娘を見つめ続けてきた。必要があれば穴も掘った。
そして、チャンスは訪れたの!
「うぅ…どうしよう…」
あの娘は高い木に登ったのだけれど、降りれなくて困っている。
そこで私が助ければ、あの娘は私に感謝。私が大好き。お姉さんの式にしてください!
バッチリだ。だけど不安要素がひとつ。私は木登りなんてしたことない。
ちょっと心配だったけど、そんなの気にしてる暇なんか無かったわ。
「待ってなさい、今私が助けてあげる」
「あの時の…?」
私は必死に木を登る。愛しのあの娘のもとへ、彼女を助けるために。
そしてなんとかあの娘のもとにたどり着く。
「怖かったでしょう?安心して」
「……」
「私にしっかり掴まって。降りるわよ?」
どしーん!
慣れないことをした私は、腰をしたたか打ち、不覚にも気を失ってしまった。
目を覚ました私は、目の前の光景を信じられなかった。
あの娘が私の側にいるの。
あの娘のうるうるした瞳は忘れられないわ~。ああ、燃えてきた。
「だいじょうぶ…?」
「つつ、ちょっと痛いわ」
「ごめんなさい…」
「感謝はされど、謝られる覚えは無いわよ?」
「でも、私のせいで…」
「気にしないの。あなたは無事みたいでよかったわ」
「えっと…それで…その……」
「なぁに?はっきり言ってごらんなさい?」
「私が、おねーさんの式になったら、嬉しいですか?」
「(きたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!)
とっても。だけど、式にしてあげるかはあなたの気持ち次第ね。
私のために式になるんだったらやめときなさいな」
「でも、おねーさんが喜ぶなら、私も式にしてほしい…」
「じゃあ、しちゃおうかしら。私の式に」
「はい!」
「あなたは藍。これからは藍よ。私は八雲紫、ちゃんとそれらしく紫様って呼びなさい」
「はい、ゆかりさま!」
こんなやり取りがあってね~。あの子優しいでしょ?あの子の長所で短所ね。
でも無事あの娘を手に入れることができた。もっと苦労するかと思ったけど、思いのほか容易かった。
これからの毎日は起きたらあの子の顔。幸せ。
だけど子供だからね…やんちゃで、しつけるのが大変だったわ。
今のあの子を見てたら想像できないでしょう?
とある巫女のお話をしたら箸を投げて真似するし。
とあるお爺さんのお話をしたらナイフとフォークを握って真似するし。
あ、橙、今笑ったわね。その時は本当大変だったのよ~?
今にしてみれば皆あの子の可愛いところだけどね。
それでね、ある日大事件がおきた。
私は殺されるかと思ったわ…。失血死よ。失血死するかと思ったわ。
あの子に殺されるところだったの。
「ゆ、ゆかりさま!お、お、お茶です!」
「その調子、その調子、あ、危な…」
「きゃーっ!」
がしゃんっ、ばしゃっ!
「ご、ごめんなさい、ゆかりさま…失敗しちゃいました…」
涙目で必死に前掛けで私にかかったお茶をぬぐう姿はもう我慢ならなかった。
もう無理よ。ちょっと席を立とうかと思ったけど、でもここは主として堪えて、ちゃんと指導してあげなきゃ。
「そこに座りなさい」
「は、はい…」
自らを隠すように短いしっぽを丸め、先っぽを握りお説教に怯える姿は誰が見ても堪えようがなかった。もうゴールしてもいいかしら?
私は一人で外へ飛び出した。
「らぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああん!!!!」
「紅いマスタースパーク…?これは私への挑戦状ね、いいわ。受け取った。太陽の丘で待ってる」
(何かが混ざったが、この話には関係ない。)
「…こほん。藍、よく聞きなさい。
失敗なんて何度でもしていいわ。何回お茶こぼしたって、湯のみを割ってしまったっていいの。
頑張るあなたを怒鳴りつけて叱ろうなんて思っちゃいないわ。
だけど、悪いことはめっ。それは覚えておきなさい。
だからこんなことでめそめそしないで、何回も失敗して、間違えて、ちゃんと覚えていくの。
あなたならできるからね。それまで私がちゃんと見ててあげるから、頑張りなさい」
「ゆかりさまー!」
今は私が手出しする必要もなくなって…ほんと、成長してくれたわね、あの子は。
「よーし、がんばるぞ!しゃっきりぽん!」
私はまた外へ飛び出さざるを得なかった。油断していた。
「らぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああん!!!!」
「紅いデュアルスパーク…!?これは私への挑戦状ね、いいわ。受け取った。太陽の丘で待ってる」
(何かが混ざったが、この話にはやはり関係ない。)
あの子があなたのことで紅いマスパを撃つのはよくわかるわ。もしかしたらあなたも、将来撃てるようになるかもね。
…まぁ、こんなところ。長くなっちゃったわね。そろそろおしまい。
「へへ、藍しゃまの子供の頃ってとてもかわいいんですね」
「そうね。今からは考えられないくらい。
あなたも将来、藍みたいになれるかしらね?」
「なってみせます。頑張りますよ!」
「ちぇぇぇ~~~ん!」と叫びながら
赤いファイナルマスタースパークをマッパで放つんですね?わかります
ロリ藍かわいすぎる
藍様は
可愛い
な
この親にしてこの子あり。
もう一家でクリムゾンスパーク、いやなんでもありません。
>2番の名無しさん
しゃっきりぽん!僕も幼い藍しゃま大好きです。ギャップとか。
>3番の名無しさん
やらんかな。藍しゃま大好きだ!可愛いよ!!
>やっぱり幼女
ですねー
幽「私との約束(超一方的)を二度も破ったのよ!?い、一生懸けて責任とらせるんだからぁ!」
紫「え、幽香?育ち過ぎてて興味ない」
あぁ悲劇。
面白かったです『幻想を貫く朱に染まりし想いの魔砲(クリムゾンすっぱぁきぃんぐ)』。
というセリフが脳内再生されました……が、
幼藍を思い浮かべたら紅いナロースパーク程度なら出せる気がしたので問題ないと思います。ええ問題ないと思います。
そのうち橙も自分の式を持った時に同じ轍を……と考えると複雑ではありますがw
しんっですっ。
僕の中で何かのフラグが立つ音がしました。
次回作はとんでもないものになるかもしれません。
>謳魚さん
一生かけてとは、一生かけてとはプロポーズか!
しかし無念ゆかりんは幼女体系が好きと。でも僕はゆうかりんも大好きです。
>名前を表示しない程度の能力さん
紫「あなたにはわからない、わかるわけがない!この燃え盛る情愛を!」
担架で運ばれながら叫ぶゆかりん。
橙が式を持つとしたら、子豚あたりでしょうかね。
ゆかりんはかわいい。
そしてそれを元に作られたのが
弧狸妖怪レーザーと光と闇の網目、禅寺に棲む妖蝶とアルティメットブディストであった…。
という裏事情を垣間見た気がします。
>11番の名無しさん
1本…2本…4本だと!?
あの赤いレーザーは主にヘモグロビンやらで出来ているんですね、わかります。