無数の竹が生え並ぶ、迷いの竹林といわれている地。
そこに今、二つの影が対峙していた。
一つは永遠亭の姫、蓬莱山 輝夜。もう一つは不老不死の少女、藤原 妹紅である。
「どうしたの、妹紅? 一人で来てなんて。決着でもつけるつもり? ま、私たちじゃ永遠につかないでしょうけどね」
「決着なんて、そんな大それたことじゃないわ。ただ、一対一で闘ってみたかっただけよ」
「へえ、そうなの。別にいいけどね。永林達に任せてばかりじゃ退屈だし。たまには私が動いてもいいかな」
「それと、闘い方なんだけど、ちょっと変えない?」
「え?」
てっきり、弾幕勝負かと思っていた輝夜は思わず聞き返してしまった。しかし、たいした問題でもないので受けることにする。
「別に構わないけど。どんな闘い?」
「闘いっていうのも不適切かもしれないわね」
そう言うと、妹紅は後ろから何かを取り出す。ボールである。
「これで蹴鞠(けまり)ってのはどう?」
「蹴鞠?」
「そ、蹴鞠」
輝夜にとってはまたまた予想外のことだった。確かに、蹴鞠では闘いというのに不適切かもしれない。
「いいけど、何で突然そんなこと言い出すのよ?」
「大したことじゃないわ。散歩してたらこの球を偶然見つけた。それで蹴鞠でもしてみようかな、って思った。ただそれだけよ」
「ふ~ん。それにしても変な球ね」
「知らないの? サッカーボールて言うのよ」
「あ、それが。実際に見たのは始めてだわ」
「じゃ、はい。最初に蹴っていいわよ」
そう言って妹紅はボールを輝夜に投げ渡す。それを受け取った輝夜は、物珍しそうに眺めている。
「これがサッカーボール。面白い材質してるのね」
「外の世界のものだからね。それより、蹴らないの?」
「あ、そうね」
輝夜がボールを軽く蹴り上げた。ふわっ、と上がったそれは、妹紅のほうに向かっていく。
「一度、こうしてあんたと蹴鞠してみたかったのかもしれない」
妹紅がポツリとつぶやくのを聞いて、輝夜は面食らった。
「……妹紅」
輝夜もつぶやく。すると、ボールが妹紅の前まで来ていた。そして、それを……思い切り蹴り上げた。
「え?」
勢いを付けたそれは、間抜けな声を上げた輝夜の顔面に直撃した。その反動で、再びふわっ、と宙に浮く。輝夜は衝撃で一歩後づさる。
「も、妹紅?!」
今度は叫んだが、その頃にはボールは妹紅の前に来ていた。そして、思い切り蹴り上げる。直撃、顔面に。
「へぶっっっ?!」
再び宙に浮くボール。ちなみに、輝夜の鼻からは赤い体液が流れ出ていた。勿論そんなことは気にせず、妹紅はボールを蹴り上げる。直撃、当然顔面に。
「ぐふっっっ?! ちょっ、ちょっと待って妹ぶはっっっ?!」
止めようとするが、その言葉も遮られてできなかった。
それから、三回程顔面直撃を受けた後に
「止まれーーー!!!」
輝夜が絶叫すると、妹紅がようやく蹴るのを止めた。
「ん? どうしたの輝夜?」
「どうしたもこうしたもないじゃない! 蹴鞠を提案したのあなたよ! これ蹴鞠じゃないでしょ、明らかに! それより何で顔だけ?! 顔は止めて顔は、痛いから!」
「知らないの? 外の世界じゃ手と腕以外ならどこ使ってもいいらしいわよ」
「へえ~そうなの。……いやでも! 狙って当てるのは駄目でしょ、幾らなんでも?! と言うより私の場合使ってるんじゃなくて使わせれてるわよね?!」
「そう。ま、どうでもいいことだけどね」
「どうでもよくない!! こんなの続けるなら帰るわよぶっっっ?!」
またも輝夜の言葉を遮り、蹴鞠? を再開する妹紅。
それからは、輝夜が止めようと必死に声を掛けるのを無視して妹紅がボールを蹴り続けるという惨状が、数十分程続くこととなる。
迷いの竹林にて、少し前まで対峙していた二つの影は一つだけになっていた。と言うより、もうひとつの影の持ち主が地面にうつ伏せの状態で倒れているだけである。
倒れていない方が口を開く。
「私、永く生き続けて気付いたわ。争いごとって、虚しいだけってことに」
そして、倒れている方に背を向けると、静かに立ち去っていく。
最後に、一度だけ振り返り、声を掛ける。
「勝ち戦以外は、ね。あ、そのボールいらないからあげるわ。じゃ」
そこに今、二つの影が対峙していた。
一つは永遠亭の姫、蓬莱山 輝夜。もう一つは不老不死の少女、藤原 妹紅である。
「どうしたの、妹紅? 一人で来てなんて。決着でもつけるつもり? ま、私たちじゃ永遠につかないでしょうけどね」
「決着なんて、そんな大それたことじゃないわ。ただ、一対一で闘ってみたかっただけよ」
「へえ、そうなの。別にいいけどね。永林達に任せてばかりじゃ退屈だし。たまには私が動いてもいいかな」
「それと、闘い方なんだけど、ちょっと変えない?」
「え?」
てっきり、弾幕勝負かと思っていた輝夜は思わず聞き返してしまった。しかし、たいした問題でもないので受けることにする。
「別に構わないけど。どんな闘い?」
「闘いっていうのも不適切かもしれないわね」
そう言うと、妹紅は後ろから何かを取り出す。ボールである。
「これで蹴鞠(けまり)ってのはどう?」
「蹴鞠?」
「そ、蹴鞠」
輝夜にとってはまたまた予想外のことだった。確かに、蹴鞠では闘いというのに不適切かもしれない。
「いいけど、何で突然そんなこと言い出すのよ?」
「大したことじゃないわ。散歩してたらこの球を偶然見つけた。それで蹴鞠でもしてみようかな、って思った。ただそれだけよ」
「ふ~ん。それにしても変な球ね」
「知らないの? サッカーボールて言うのよ」
「あ、それが。実際に見たのは始めてだわ」
「じゃ、はい。最初に蹴っていいわよ」
そう言って妹紅はボールを輝夜に投げ渡す。それを受け取った輝夜は、物珍しそうに眺めている。
「これがサッカーボール。面白い材質してるのね」
「外の世界のものだからね。それより、蹴らないの?」
「あ、そうね」
輝夜がボールを軽く蹴り上げた。ふわっ、と上がったそれは、妹紅のほうに向かっていく。
「一度、こうしてあんたと蹴鞠してみたかったのかもしれない」
妹紅がポツリとつぶやくのを聞いて、輝夜は面食らった。
「……妹紅」
輝夜もつぶやく。すると、ボールが妹紅の前まで来ていた。そして、それを……思い切り蹴り上げた。
「え?」
勢いを付けたそれは、間抜けな声を上げた輝夜の顔面に直撃した。その反動で、再びふわっ、と宙に浮く。輝夜は衝撃で一歩後づさる。
「も、妹紅?!」
今度は叫んだが、その頃にはボールは妹紅の前に来ていた。そして、思い切り蹴り上げる。直撃、顔面に。
「へぶっっっ?!」
再び宙に浮くボール。ちなみに、輝夜の鼻からは赤い体液が流れ出ていた。勿論そんなことは気にせず、妹紅はボールを蹴り上げる。直撃、当然顔面に。
「ぐふっっっ?! ちょっ、ちょっと待って妹ぶはっっっ?!」
止めようとするが、その言葉も遮られてできなかった。
それから、三回程顔面直撃を受けた後に
「止まれーーー!!!」
輝夜が絶叫すると、妹紅がようやく蹴るのを止めた。
「ん? どうしたの輝夜?」
「どうしたもこうしたもないじゃない! 蹴鞠を提案したのあなたよ! これ蹴鞠じゃないでしょ、明らかに! それより何で顔だけ?! 顔は止めて顔は、痛いから!」
「知らないの? 外の世界じゃ手と腕以外ならどこ使ってもいいらしいわよ」
「へえ~そうなの。……いやでも! 狙って当てるのは駄目でしょ、幾らなんでも?! と言うより私の場合使ってるんじゃなくて使わせれてるわよね?!」
「そう。ま、どうでもいいことだけどね」
「どうでもよくない!! こんなの続けるなら帰るわよぶっっっ?!」
またも輝夜の言葉を遮り、蹴鞠? を再開する妹紅。
それからは、輝夜が止めようと必死に声を掛けるのを無視して妹紅がボールを蹴り続けるという惨状が、数十分程続くこととなる。
迷いの竹林にて、少し前まで対峙していた二つの影は一つだけになっていた。と言うより、もうひとつの影の持ち主が地面にうつ伏せの状態で倒れているだけである。
倒れていない方が口を開く。
「私、永く生き続けて気付いたわ。争いごとって、虚しいだけってことに」
そして、倒れている方に背を向けると、静かに立ち去っていく。
最後に、一度だけ振り返り、声を掛ける。
「勝ち戦以外は、ね。あ、そのボールいらないからあげるわ。じゃ」
もっとこう…スポーツマンシップに云々を…