私は幽閉されて生きてきた。長い長い時間、495年。
閉ざされた空間。
UNKNOWN
屋敷のみんなを除けば、ほかの誰も私のことを知らない。
私も、知りたいとはそれほどにも思わない。
完結した空間。
たまに遊び相手が転がり込む。
遊びに来たモノは壊れちゃった。
誰も私のことを知らない。
玩具たちはみんな壊れちゃった。
私を知るものは残らない。
UNKNOWN
※
人間と言うものに、ちょっとだけ興味がわいた。
お外に出ようとしたら、雨が降ってきてしまったけれど。
そこに迷い込んできた新しい玩具が二つ。
紅白のねずみさん。
白黒のねずみさん。
人間と言う名の玩具。
私と一緒に遊んでくれるかしら。ねぇ、一緒に遊びましょう。
弾幕ゴッコは知ってる?ならそれで遊びましょう。
「はてさて、どうする霊夢。やるか?」
「やるしかないでしょうが。神社にはレミリアがいるのよ?」
「あぁ、確かに」
生意気な。
お姉様は手を抜いたのかもしれないが、私は本気よ。
甘い香りに誘われてきたおバカさん。
油断大敵。罠にはまってもがくがいい。
禁忌「クランベリートラップ」
「さすが幽閉されるだけのことはあるわね。思考パターンがすでに問題」
「っと、友達と遊ぶのに罠使うのかよお前。今後はやめといたほうがいいぞ」
へぇ?アレを避けるんだ。
でも友達?
どうせ壊れてしまうあんたたちが?
そう、なら次のスペルを破ってみなさい。そしたら晴れて友達にしてあげる。
禁忌「レーヴァテイン」
「破壊の杖か、壊す気満々だなおい」
「あんた、そんなんだから誰にも相手にされなかったんじゃないの?」
これも避けた。
おめでとう、あなたたちは私のお友達1号2号よ。よかったわね。
でも足りないわ。もっと増やして、みんなでカードゲームをして遊びましょう。
ポーカーなんてどう?
はい、最強のフォーカード。
禁忌「フォーオブアカインド」
「どれだけ増えてもフランはフラン一人でしかない。それに残念、世の中にはファイブカードってのがある」
「魔理沙。それハウスルール」
どこまでもバカにして。
いいわ、それなら別の遊びにしましょう。
これにはハウスルールなんてないし、日本のお遊びだから知ってるわね。
真ん中に囚われ、周りから押しつぶされろ。
禁忌「カゴメカゴメ」
「いい加減にしなさい。真ん中でいつまでもうずくまって泣いてるのはあんたでしょ」
「それにもうちょい人数が欲しいな。フランが4人とかは要らないが」
泣いてる?私が?
笑わせないでよ。
2人でも3人でも遊べるゲームがご所望なのね。
じゃあこれにするわ。永久に迷い、絶望するがいい。
禁忌「恋の迷路」
「迷路ってのは入口と出口があるんだ。出口がある以上、いつかは抜けられるんだぜ」
「あんた、出口を探すのをあきらめたんじゃない?絶望しているのはあんた。それにしても、これまでのスペルって・・・・」
それ以上しゃべるな。
もういい。
あなたたちと遊ぶの飽きたわ。
美しい宇宙への旅、2名様ご招待。
星の虹を見ながら散りなさい。さぞかし楽しいでしょう。
私に破壊できないものなんてない!
宇宙の藻屑と消えろ!
禁弾「スターボウブレイク」
「あんたにだって破壊できないものはある。そして、あんたにしか破壊できないものもある」
「真っ直ぐでいい弾だ。願わくばそのまま煌かんことを」
真っ直ぐ飛ぶだけが芸じゃないわ。
すべては屈折し、反射する。
宇宙は時として歪むのよ。
禁弾「カタディオプトリック」
「何がフランを歪ませた?誰がフランを歪ませた?」
「フランと関わったものすべてよ魔理沙。そしてそれが現実だとあいつは思ってる。本当は・・・・」
「あぁ。いよいよもって引けなくなったな、霊夢」
「あ~もうめんどくさい・・・・フラン!全力でかかってきなさい。そしてあんたのすべてを見せなさい!」
急に熱くなってどうしたのかしら。
いいわ。
495年分の過去。
あなたたちとは経験の差。
見たいのなら見せましょう。
その記憶、すべてを一度に受けるといい!
禁弾「過去を刻む時計」
「あんたの時間、止まって見えるわ」
「時計は今を刻む為にあるんだ。それを動かせ、フラン」
時計の針は進まない。
時計の針は止まったまま。
ここはすべてが止まった空間。
誰もいない暗い空間よ。
ここには誰もいない。ここには私一人。
安心して。そしてあなたたちもすぐにいなくなるから。
秘弾「そして誰もいなくなるか?」
「残念だが私はいなくならないぜ。フランの力を持ってしてもな」
「なぜ疑問系か。フラン、本当のことを言いなさい。本当は誰にもいなくなってほしくはないんでしょう?」
うるさい。
私はUNKNOWN。
誰も私のことを知らない。
お姉様にすら見捨てられた存在の私を、あなたたちは証明できるの?
5世紀もの間、誰にも知られず生きてきた私の存在を人間が証明できるの?
できない。できるわけがない。
「決め付けるのはよくない。やってみなきゃわからないぜ」
「来なさいフラン。スペルごと砕いてあげる」
・・・・いいわ。
なら、受けなさい!
QED
「495年の波紋」
※ ※ ※
フランには悪いことをしたわ。
主は一人でいい。恐れ崇める対象は二人もいらない。だから姉である私は育てられたけど、妹であるあの子は生まれた時から存在しないモノとされて幽閉された。殺されなかったのは、生みの親のせめてもの愛でしょうね。とても残酷だけど。
そしてフランは自らの感情、力を制御する機会さえ失った。その状態で出すわけにいかなかったから、私たちが幻想郷に来た後も、私もあの子を幽閉せざるを得なかった。
でも今なら。私の運命を操る力をもねじ伏せた相手ならあるいは、あの子と向き合えるかもしれない。
霊夢。魔理沙。
頼んだわよ。
※ ※ ※
「今日からあんたはUNKNOWNじゃない。フランドール・スカーレット、あんたの目の前にいるわたしたちが証人よ」
「まずはレミリアと話してみることだな。私たちを存分にこき使ってくれる迷惑な奴だが、いい姉だと思うぜ?」
「・・・・・・・・うん」
「また自分を見失った時は何度でも弾幕ゴッコしてあげるから、いい子は家の中で姉の帰りを待ってなさい」
「あなたは一人だった。そして弾幕を避けきれず、そして誰もいなくなった。けど、いなくなったのはそいつが死んだからじゃないぜ?寂しくしていた一人の女の子は、幸せになったんだ」
お前は、幸せになるんだよ。
このSSを読んだらもう一度挑んでみようかな、と思いました。
次に読むときはこのSSをもっと楽しめるように精進してきます
フランのスペルカードを考察したのは前に同人誌でも読んだ事も在るけど。
スペルカードの物語を此処まで創れると言うのは素晴らしい。。。
『そして誰もいなくなった』は是非とも読んで頂きたい作品の一つです。面白いですよ!というかアレの犯人が途中で判った人なんているのだろうか……?