冬の寒さが残るある日のこと
「おーい、霊夢~?」
霧雨魔理沙が毎度のごとく霊夢の元に遊びに来る。
「何よ、うるさいわね~」
そして毎度のごとし返答。霊夢の姿を認め駆け寄る魔理沙だが
「れ、霊夢、どうしたんだお前!」
魔理沙はすぐに彼女の異変に気づいた。頬は赤く目は虚ろ。更に…
「お前熱があるじゃないか!寝てろって」
額に手を当てた魔理沙が驚きの声をあげる。
「大丈夫よ、このくらい…」
霊夢は魔理沙の手を払い平然を装う。だが魔理沙にも大丈夫でないことくらい分かる。しかし霊夢も妙なところで維持を張るものだ。 魔理沙はどうすれば彼女を横に出来るだろうかと思考を巡らす。
(…よし)
スッ
「? 何よそれ。」
「寝ないとうつ。いや、間違えた。うつと寝るだ。いますぐ寝かす!」
「ちょ、ちょっと待った!寝る!寝るわよ!」
魔理沙の冗談(?)があまりにシャレにならないので霊夢は降参して大人しく横になることにする。しかし自分の身を案じてくれた魔理沙にひそかに感謝していた。
「しっかし、お前が風邪をひくとはねぇ…」
「どういう意味よ」
「こんな寒い時にまで脇出してるからじゃないのか?」
「ほっときなさい」
カラカラと笑う魔理沙。こころなしか上機嫌な魔理沙に霊夢は口を咎める。それでもやはり少しばかりか元気がない。
「ん?」
机の上の果物の入ったかごが目にとまる魔理沙。
「そうだ、リンゴでも剥いてやろうか」
「剥けるの?アンタに」
「バ、バカにするな!包丁借りるぞ」
台所へ向かう魔理沙を見つめる霊夢。
(でも、こんなとこに果物なんて置いてあったかな?)
少し考えた後一つ考えに至ったが
(まさか…ね)
自らその考えを否定し考えるのをやめた。
気づけば包丁を持って戻ってきた魔理沙がリンゴと格闘していた。
「魔理沙…?」
「話しかけるなっ」
(やれやれ)
相当苦戦しているようだ。危なっかしくて見ていられない。 そして案の定
「イタッ」
指を切ったようだ。ため息をつく霊夢。
「魔理…」
「霊夢~?」
魔理沙にもういいと止めようとした霊夢だが、自分を呼ぶ声を聞いて声の方へ顔を向ける。
そこには…
「レミリア!」
咲夜を従えたレミリアがいた意外な人物の登場に驚く二人。
「どうしたんだ、今日は」
「霊夢が風邪をひいたって言うもんだからね」
「笑いに来たのかしら?」
「まさか。お見舞、よ」
霊夢はまたうるさいのが増えた、と思いつつも彼女らがわざわざお見舞い来てくれたことが嬉しかった。
「あれ?何でお前がそんなこと知ってたんだ?」
「天狗の新聞に書いてあったんですよ。博麗神社の巫女が風邪ひいて寝込んだって」
((いつの間に…))
霊夢が横になってからまだ半刻もたっていないというのに。なんというスピードだろうか。改めて天狗の恐ろしさを知った二人。
「それにしても、霊夢が風邪をひくなんてね」
「アンタまでそれを言うか…」
「?」
先程の魔理沙のセリフと同じセリフ…なんてことはレミリアが知るはずもない。それだけになんだか気に入らない霊夢。なるべく気にしないようにつとめ話題を変える。
「あ、そうだ咲夜、アイツの代わりにリンゴ剥いてくれないかしら」
「ぅぐ」
「い、いいけど…」
スルスルと皮を剥いていく咲夜。流石はメイドだ、と感心する霊夢。魔理沙は悔しそうだったが。
「医者も呼んでおいたから、そろそろ来るんじゃないかしら」
「悪いわね。どうしたのかしら、今日はやけに親切ね」
「あら、慈悲深い私に向かってそれはないんじゃない?」
「その慈悲深い誰かさんはお賽銭でも恵んでくれないのかしら」
「ないわね」
レミリアの返答に皆で笑う。
病人のいる前とは思えないほど“いつもどおり”だった。でももしかするとその意味で皆霊夢に気をつかっているのかもしれない。
「ずいぶんと騒がしいのね、本当に病人なんているのかしら」
「永琳!」
今度は鈴仙を連れた八意永琳の姿が。てっきり薬を持った鈴仙しか現れないと思ったが…
「どうしたのよ、アンタが直接出てくるなんて」
「たまにはね」
「たまには…ねぇ」
「でも珍しいじゃない。あなたが風邪をひくなんて」
「…」
大いに笑う一同。その日は、いやその日も、博麗神社はいつものように騒がしかった。そんなせいか霊夢の風邪の完治が若干遅くなったのだが、霊夢はそんなに悪い気はしなかったという
面白かったですよ♪