Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

ぬくもり

2009/03/06 23:27:27
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あなたに『安心』出来る場所はありますか


ぬくもり


「――――――あぁぁぁあああ!!!」
心地よい天気で心地よい毎日。
ぽかぽかと暖かい日差しとさらりと吹く風。
そんな日常の昼、どこにでもありそうな神社からとある少女の悲鳴に近い(というか叫び)声が響き渡った。
ドタドタドタ―――――バンッ…こつん、
ずでーーーーーーーん

「…………………何してんだよ?霊夢」
たまたま勝手に上がり込んで驚かしてやろうと思っていた魔理沙はその気力も無くし呆れて一言。
部屋に入れば、生温い茶はひっくり返ってるわ小さなオボンは転がり落ちてるわ花瓶は割れてるわ水がもれてるわ(花瓶で)札類はバラバラに散らばっているでとにかく悲惨な状態。
そんな部屋の真ん中でずぶぬれになった霊夢が大泣きしていた。
あの音。
…走った(暴れた)後に花瓶をひっくり返しそれを取ろうとして見事にすっ転んだのだろう。
その証拠に霊夢は左ひざを押さえて痛そうにまだ大粒の涙を流して泣いている。
(本当はものすごく珍しい光景なのだが)
「相変わらずの良いドジっぷりだぜ」
と魔理沙はけらけらと笑いながらこの有り様を眺める。
本当はというと霊夢の叫び声で反射的に(心配になって)思わず様子を見に来たのだが。
(この時点で驚かそうとしていた計画は失敗に終わる)
――――と、魔理沙がそう考えている間に霊夢は目の前の人物を見て驚き(今まで気づかなかったらしい:そんなに影薄くないぜ)思わずその場から立ち上がる。
表情を見るとひざの痛みで半泣きになっていたが、それよりも別の感情の方が強いらしく魔理沙に向かって
「まっ…マママ魔理沙がやったの!!?ねぇそうなのそうなんでしょ
 しょーじきに答えなさいさもなくばぁぁああ!!!」
と、言った(訴えた。)
「何の話だ?」
「とっ、とぼけないで!」
「ドウテイに触る様な行為はまだしてないぜ」
ぶっちぃいーーーん。
「ちっがーーーーーーーうっ!!!」
その後壮大な平手打ち(ビンタ)の音が大きな神社の中で響き渡った。



「―――――あぁ?おせんべい?」
ようやく部屋が片付いた頃、外は綺麗なだいいろに染まっていてもうそろそろ日が落ちる頃だった。
へたんと霊夢は畳の上でくつろいでいる魔理沙の横に座り一息つく。
「…そうなのよ。昨日買ったちょー限定しょうゆ味お煎餅が今日見たら無くなってて…」
落ち込んだ様子で話す霊夢を見て魔理沙はへらりと笑い、ごそごそと自分のポケットからカラになった小さな袋を取り出した。
「あぁ、コレの事か。いやぁお賽銭箱の上に置いてあったからさ、てっきり自分の為に用意されたモノかと―――――ぶ」
あははと反省の色が無い笑みを浮かべていた魔理沙の顔に向かって霊夢は傍にあった座布団を素早く投げる。
素直に直撃し、ボスッという鈍い音がして見事に座布団はダイブした。
「何すんだ」
顔をしかめながら霊夢の方を見ると、霊夢はプイ、とそっぽを向く。
「魔理沙が食べた事ぐらい頬に付いてる食べかす見りゃ分かるわよ!あーもう、くやしいぃ~」
近くにあった赤色のクッションを霊夢は手に取り両手でぎゅ…と抱きしめる。
表情はどうやら不満のようだ。
そんな姿を見て魔理沙は可愛いと思ってしまう。
むう、としているその顔をむにぃ~と引っ張ってやりたい。
そんな好奇心を心に抱いている魔理沙に気づいていない霊夢は話を続ける。
「ていうかどうして私の家にいるの?何時から来たのよ」
「今さっきからだぜ。」
「…。そろそろ弾幕が起こりそうなんだけど」
「お、うけてたつぜ♪」
「ちがーーーーう!!」
思わず霊夢はつっこむ。
魔理沙は相変わらずにやにやと笑みを浮かべている。
(…はぁ…)
あきらめたのか霊夢は大きくため息をした後、その場から静かに立ち上がる。
「どうした?」
「…風呂に入ってくる」
「さっき入っただろ」
魔理沙は何が面白いのかまだ笑っている。
その様子を見て霊夢はむーーという表情を浮かべながら説明する。
「あれは不可抗力!片付けてたら汗かいちゃったからもう一回入るのっ」
「へいへい」
いってらっしゃいと言っている様な感じで魔理沙はひらひらとやる気の無さそうに手を振ると、さっきまで霊夢が持っていたクッションに深く寄りかかり後ろを向いてしまった。
ちょっと虚しく感じた霊夢は思わず魔理沙の背中を眺める。
その視線に気づいているのか、やがて魔理沙は楽しそうに言った。
「なんだ、一緒に入りたいのか?」
「ば、ばかっ!!」
顔を真っ赤にし怒った霊夢はそのままどたどたと荒い音を立てながら風呂場へと直行。
スパンという襖を閉める音が聞こえた後辺りは静かになる。

しん…

(……)
魔理沙はこの静かさをなぜかうるさく感じた。
いや、心の中がざわついているのか。
落ち着かないままでじっとしているとだんだんクッションが暖かくなる。
その暖かさで、うとうとしてきた魔理沙は重たい瞼をゆっくりと閉じた。


「………もう、」
と、霊夢が一言つぶやく。
目の前にはクッションの上できれーーいに寄りかかってすやすやと眠る黒一色な人。
本当は少し冷たく言いすぎたかなと思ったので、ささっと風呂に入った後謝ろうとしていたのだが。
それは良い。
…それは、良い。
「どーして人が困ってる時に限ってのんきに過ごすかなあんたは」
納得出来ない霊夢は転がり落ちている座布団を拾い「えいっ」と魔理沙の顔に向かって投げる。
ぼすっ
「ぶ」
また、鈍い音がした。
しかし魔理沙はちょっと眉間にしわをよせながらもぞもぞと動いた後また眠りにつく。
(起きない…だめだこりゃ)
ますます呆れ顔になる霊夢を知らないまま魔理沙は寝ている。
もう一回投げつけてやろうかと思い再び座布団をかまえる。
しかし、
「………?」
(そういえば、こんなに穏やかに寝るところ見るのはじめてかも)
ふと感じた霊夢はそのまま投げるのをやめゆっくりと魔理沙の横に座り込む。

静かな夜。
静かな辺り。
静かな、隣の人。

(そういえば、いつも寂しい時に限って傍にいてくれてたっけ)

もしかしたら、こんなに無防備に寝れるのはめったに無いのかもしれない。

何だかんだ言いながら私はあなたにとても感謝しているの
もしかしたらあなたも私に対して『ぬくもり』を感じているかもしれないわね
それは、私も同じ様に『ぬくもり』を感じている
それは、とてもとても暖かい
『ぬくもり』

いろいろ考えながら魔理沙の顔を眺める。
相変わらず瞳を閉じたままの魔理沙。
よっぽど疲れていたと思うと思わず苦笑い。
ふと、霊夢は自然に魔理沙に近づいて身を寄せていた。
クッションの端が手に当たってさり…という小さな音が聞こえる。
魔理沙の耳元までゆっくりと近づくと、霊夢はポツリと独り言のように
「……―――いつもありがとう」
感謝の気持ちを口にした。
―――――――そのとき。

ぐいっ

「きゃっ!?」
いきなり腕をつかまれそのまま引きずられる。
魔理沙の上に馬乗りとなった霊夢の目の前で魔理沙がむくりと半ば起き上がる。
「よ、」
霊夢と目が合うと魔理沙はにやりと笑みを浮かべた。
その笑みに何の意味があるのか。
霊夢は予想がついた瞬間ボッと頬が赤く染まる。
「おっ、おぉぉ起きてたの?!」
「今さっき起きたぜ」
「うぅ~~~~」
悔しそうにする霊夢を見て魔理沙は満足そうに笑う。
しかしそれは一時的なもので。
魔理沙は橙色のかかった瞳を細め霊夢の腕をとる。
きょとんとしている霊夢を気にせず魔理沙はずいっと身を近づけた。
「!」
ふわりと魔理沙は完全に起き上がり霊夢を自分の腕の中へと包み込んだ。
抱きしめられた霊夢は混乱しているようでかなり動揺している。
それを落ち着かせる為に。
お礼を言っているかの様に。

「―――――どういたしまして」

魔理沙は小さく霊夢の耳元でささやいた。
霊夢は驚いて目を丸くする。

静かな夜。
静かな辺り。
静かな、2人の時間。


「……ね、ねぇ魔理沙――――ふえっ?!!」

ぽすん。

「おやすみ」
「ちょっ、こ、これで寝るの?!」
「なかなか良いぜ、膝枕」
「は、恥ずかしいわ、どきなさいよ!」
「良いじゃねぇか、少しは寝かせろ」
「…聞く気無いの」
「無いぜ」
「……こうやったら、安心できる?」
「……」
「こうやったら、ぬくもり感じる事が出来る?」
「私は…」
「え?」
「いつも、霊夢が居てくれるから…安心出来るんだ…。だから………」
「…」
「………」
「……もう、言うなら最後まで言いなさいよ…こっちはとっても恥ずかしいんだから…っ、」


―――――私もよ、魔理沙
     いつも傍に居てくれてありがとう


魔理沙が再び眠りについた頃、霊夢は優しく微笑んだ。






あなたに『安心』出来る場所はありますか
ねぇ、魔理沙
こんばんわ。ねここ。です。
一回目に投稿した作品は一度サイトに載せた事がある作品だった為、解除させていただきました。本当に申し訳ございません、鈍感でスイマセン…。

気を取り直して書いた作品は、ほのぼのなマリレイ…を目指して書いてみました。
『誰にでも安心出来る場所がある』
そんな想いを秘めたお話。
ねここ。
コメント



1.脇役削除
ほのぼのしました…マリ霊…いいよね!
2.ねここ。削除
コメントありがとうございます。
ほのぼのしてくれたの事で安心しました^^
マリレイ良いですよね。魔理沙の力強さと霊夢の綺麗さがとても好きです。
3.Aina削除
まり
4.Aina削除
マリレイ最高!