『――と云うわけで、今回の騒動も総てはてゐの仕業だったのでした。 -おわり-』
月面脱兎の鈴仙は、師匠の永琳に言い付けられて、日々永遠亭で起こる出来事を日記にして綴っていた。
「よし、レポート完成♪」
「ヤッホー、イナバく~ん」
本日中に提出する分が仕上がって、ホッと息をつく間もなく闖入してきたのは、七色の人形遣いアリス・マーガトロイドだ。
彼女は百花繚乱騒ぎの折に鈴仙達が遭遇した自律人形の話を聞くために、ここ最近頻繁に永遠亭を訪れているのだ。
「やあ、アリスさん。ちょっとレポートを提出してきますので、お話でしたらその後にして下さ……って、何デスカ今のはっ!?」
「えっ? それは勿論、かくかくしかじか……だからよ」
「なるほど。まるまるうまうま……と言うわけですねーって、判りません! 全然判りませんからっ!」
二人がそんな蒟蒻問答を続けていると、
「それは私が説明しましょう!」
「姫様?」
スパーンッ!!――と、豪快に襖を開け放って現れたのは、永遠亭(名目上の)当主、蓬莱山輝夜である。
「永琳を師匠(先生)と呼ぶイナバくんが居て、そこにアリスが訪ねてきた。これはもう『アリス○偵局』以外のナニモノでもないわ」
現れて早々に難解なトンデモ理論を展開するミレニアム級の引きこもり。
こんなくだらん事を考える暇があるなら、もうちょっとだけ真面目に生活しても罰はあたるまい。
「あのさ。一枚噛んでおいて何だけど、ソレはちょっと飛躍しすぎじゃないかしら? その理由だったら普通に『不思議の国のア○ス』でも良いと思うけど……」
あまりに唐突でマニアックな展開に、思わず頭を抱える鈴仙を気の毒に思ったアリスは、比較的メジャーな方向への修正を提案する。
「いーえ、甘いわ。某重食喫茶の甘口いちごスパ並に甘々だわ!」
「そこまで言う?」
しかし、その提案は思わず身を引く激メニューを引き合いに却下される。
「そりゃそうよ。だって永琳は貴方の師匠(先生)じゃないでしょう? これで『AOice in Wonder Land』の線は潰えるわ」
「……むぅ」
「それにウチには家具屋――もとい、かぐや姫たる私が居るのよ? 加えて此処は幻想郷……。ほぉら、ますます『アリス探○局』でしょう?」
「なるほど。古今東西の幻想エッセンスが混ぜこぜになってる辺りが、まさに『○リス探偵局』という訳ね」
「その通りよ! さすがはアリスね。伊達にアリスを名乗ってないわ……」
結局、話に着いて行けない鈴仙を置き去りに、アリスと輝夜はトンデモ話に花を咲かせた。
「それじゃ、私はお呼びで無いようですので、これで失礼いたします」
『新竹取物語10○0年女王』とか『ア○スったらもお!』とか、誰が知ってるんだ?…という話が出てきた辺りで、
本来の用事を思い出した鈴仙は部屋から出て行こうとする。
「ちょっと待ってイナバくん。まだ人形の話が終わってないわ」
「そうよイナバくん。貴方をからかう為に色々とネタを仕込んで来たから、途中下車は認めないわ」
「結局それですか姫……。っていうか、アリスさんはともかくとして、なんで姫まで『くん』付けなんですか?」
「もう、判らないイナバくんね? さっきから何度も言うように『アリ○探偵局』だからに決まってるじゃないっ!? いいこと? 天才的頭脳の師匠(探偵じゃないけど)と生真面目なネクタイ兔と麗しの家具屋姫。これだけ条件が整った所に訪ねてきたのがアリスと来たら、問答無用で『アリス探偵○』。それ以外の選択肢なんてあり得ないのよっ!!」
「……はぁ」
鈴仙は人の部屋に押し掛けて、訳の分からないオタクトークで盛り上がったあげく、理解不能な価値観を押しつけようとする輩に蔑みの眼差しを向ける。
もう仕事ほっぽり出して不貞寝しちゃおうかな……などという考えが脳裏を掠めたその時、
「お言葉ですが、姫の考えは基本的に間違っています」
バコーンッ!!――と洋服ダンスを開け放ち、永遠亭の頭脳、八意永琳が現れる。
「師匠!? って、何処から出てくるんですかぁ!?」
「あら、永琳。このパーフェクトな理論の何処に間違いがあると言うのかしら?」
永琳は跳ね飛ばした鈴仙の衣服を元の場所に戻すと、何事も無かったかのように話を続ける。
「アリ探だの幻想的要素だのと戯言抜かす前に、ウドンゲが月の兔であるという事実に目を向けてやるべきです。訳の判らない不思議理論を押しつけるのは、あまりにも不憫です」
「し、ししょぉ~」
正に地獄で仏、渡りに船である。但し、永琳の手に写真機が握られていなければ……。
「月の兔……それは宇宙兔であることも意味します。つまり、ウドンゲが為すべき事はただ一つ! 地球中のありとあらゆる制服をコレクションする。――そう、地球制服です!!」
「ま、まさか、スー○ーパイとでも言いたいの?」
「さすがですね、姫。まぁ、ミ○キーパイですけれど。アリスさんは落ちこぼれアイドル……ああ、魔界人だから無理があるわね。ところで、知り合いに魔界人のメイドさんはいらっしゃらないかしら?」
「え? 落ちこぼれって……。スーチー○イは『美少女』しか知らないわよ?」
鈴仙の部屋はさらに訳の判らない混沌回廊へと突入した。
「ダメだ。この幻想狂……」
鈴仙は旅に出ようと思った。今度こそ真っ当な幻想郷を見つけよう……と。
つづかない
だとしたら次はアリスS○S!?
もうあれなんつーか自分の中で最上級のアニメなんすよ、えぇ。
あぁ、アリス探○局みたいなぁ
どっちのアリスもツン…いやいや。